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zoom RSS ドイツ海軍のP-3Cアップグレードと「我が海軍」のP-1

<<   作成日時 : 2017/12/18 16:25   >>

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Germany contracts second phase of Orion upgrade
http://www.janes.com/article/75371/germany-contracts-second-phase-of-orion-upgrade


http://www.airbus.com/newsroom/press-releases/en/2015/07/airbus-defence-and-space-and-lockheed-martin-to-upgrade-german-navy-p-3c-orion-fleet.html


ドイツ海軍は8機のP−3Cオライオンをアップグレードして使用しています。当初機体に延命化を施し、最近はさらなる近代化の予算を決定しました。

これは2015年からのプログラムで、予定費用は6.594億ドル(約738億円)で、11月にはそのうち、第二フェーズの1,585億ドルの契約がなされました。1機あたりのコストは92億円です。

先の機体延命の改修では主翼や胴体、水平尾翼など機体改修がなされ、機体の寿命を延ばしました。これによって機体寿命は15,000 時間延長されました。現在のフェーズではミッションシステムなどを近代化します。ドイツ海軍は2035年までこの近代化したP-3Cを使用し続けます。

さて、我が海自のP−1の開発、導入と比べてどうでしょうか。

まず海自がP-1導入について主張した、P−3Cは機体寿命がありません、だから新規開発が必用ですと、政治や財務省に対して行った説明は虚偽であることがわかります。
海自のP−3Cをベトナムに提供するという話がありますが、寿命の尽きた機体を提供するんでしょうかね?
そんなことをしたら相手は怒りますよ。
P-1導入が遅れたために延命措置を行って飛ばしているわけですから、語るに落ちた、ということころです

市ヶ谷の常識はよく知りませんが、世間では嘘つきは泥棒の始まり、と申します。

まあ、よその国でこれやったら懲戒解雇ですが、我が国では関係した将官の皆様は優雅に天下りとかされておりられるわけで、そらモラルハザードも起きますよ、てな、感じですよね。民間企業も真似をしておるようです。上の人間が嘘をついて許されるなら下もそれを見習います。そいう組織が精強なんでしょうかね?

本来は真面目にP-3Cの延命プログラムも検討すべきで、それと新型機の開発の両方を政治や財務省にも提示すべきだったわけです。ところがそれをやらず、新開発一点で防衛大臣が反対したのに押し通したわけです。

余程新しいオモチャが欲しかったのでしょう。

ドイツの例では一機あたりの延命コストは100億円前後ということでしょう。
つまりP-1調達単価半額です。更にP-1の開発費(サブシステム含む)、初度費などを含めれば開発費は4,000億円にはなるでしょう。これを仮に70機で割れば一機あたり57億円で、調達単価と併せると約257億円です。つまりP-3C近代化の2.7倍です。

維持整備費については更に大きな差が出ます。P-3Cの場合はミッションシステムを除けば殆ど整備、訓練の設備やパーツは共用です。新たに派生するコストは多くない。

対してP-1場合、すべてを一新する必要があります。これに膨大なコストが掛かる。更に機種転換のコストも掛かります。しかも米海軍のP-8は、機体とエンジンはベストセラー旅客機の737の転用であり、維持整備費が極めて安く上がります。

対してP-1は機体、エンジン、ミッションシステムのすべてが新規開発で、専用です。恐らくはP-3Cより遙かに高い維持費が必用でしょう。しかも初期の機体は量産試作みたいなものです。エンジンもやっと最近安定しだした、ときいております。何しろ民間旅客機のエンジンとか外国の軍用エンジンより一桁少ない時間しか試験運転していませんからね。

しかも案の定開発が遅れ、また調達単価が跳ね上がったためにP-3Cとの併用が続き、当然ながらP-3Cの延命費用も必用です。恐らくP-3Cの近代化とP-1のLCCを比較すれば3.5〜4倍程度にはなるのではないでしょうか。

ぼくはPX-CXの開発権当時に国産化するにしても、空自CXを先行させ、その経験を活かしてP-1を開発すべきだ。その間はP-3Cの希代かでしのげばいいと主張してきました。そうすれば我が国で大型機開発のノウハウが引き継がれるからです。当時はMRJの計画もありませんでした。MRJがなければP-1、C-X開発した後に、若い世代の設計者が経験を積む機会がなくなります。それが日本の航空産業にとっていいことだった、と防衛省はおもっていたのでしょうかね。彼らには航空産業育成?なにそれ、美味しいの?てな、感覚だったでしょう。未だにそうですけども。

PX、CX両方ともいっぺんにやって、おまけにUS-2もやっちゃったんで、人材の薄い日本の航空工業には無理な話でした。これまたC-2、P-1の不具合続出、コスト高、調達遅延の原因となっております。まあ防衛省に当事者能力が無かったんですよね。でも未だにその自覚がない。

新型のP-1を入れた方が安いというのは、程度の悪い情弱な軍オタと海幕ぐらいなものでしょう。前者はともかく、後者は実態を知っていただけに悪質です。天下りとか、組織の利益のために自衛隊を自ら弱体化したわけですから。

P-3C近代化を選べば、浮いた費用で人間を増やすとか、ネットワークに投資するとか色々できたのですが、それができない。しかもグローバルホークとか新しいオモチャが政治導入されたので、余計に予算が削られて、整備維持費、訓練費が削られ、海自のUH-Xで安ければいいんだと、本来向かない安い機体を導入しようなんて胡乱な話がまかり通っているわけです。


海自ヘリ問題、諸悪の根源は「現場の暴走」だ
http://toyokeizai.net/articles/-/155943

装備を調達する場合は全体の将来の装備体系は勿論、維持整備費、訓練費、人権糧食費など他の予算との兼ね合いも検討して、諦めるところは諦めるべきです。いい歳した金モール吊ったおっさんが、「新しいオモチャが欲しい」デパートの床で寝転がって駄々こねるようなお子様のような真似をすべきではありません。それが親のカネならまだしも、原資は我々の税金です。そんなに予算を無駄使いするならば、防衛予算を減らして幼児教育とか、貧困対策に使うべきです。
無駄金を使うことが国防ではありません。



■本日の市ヶ谷の噂■
海自のP-1はその高い維持整備費で予算をドカ食いしているだけではなく、NEC社製のソノブイ関連のコンポーネントが全く使えねぇ、P-3Cの方がマシだ、これで戦争できるかと現場で大ブーイングとの噂。





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コメント(11件)

内 容 ニックネーム/日時
“機体とエンジンはベストセラー旅客機の737の転用であり、維持整備費が極めて安く上がります。”が“機体とエンジンは7ベストセラー旅客機の37の転用であり、維持整備費が極めて安く上がります。”になっていますよ。
蛸八
2017/12/18 17:32
ドイツのP-3Cって、元はオランダ海軍が使用していた機体でしたね。それにしても、かつて同盟関係にあった国だと言うのに、片や安上がりに哨戒機を揃えるのに成功、片や性能もアレで必要な頭数を揃えるのにも四苦八苦。どうしてこうなったorz。あと、NEC製のソノブイ。たしか、来年は偶数年ですからリムパックも開かれるでしょうが、またアメリカさんに拝み込んで、ソノブイを融通してもらうのでしょうか?


>政府 海洋監視の新型ジェット機など整備へ

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20171218/k10011263031000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_006

そんなに新型ジェット機が欲しいと言うのなら、厚木にいるアレな機体を採用すれば良いのにw、なんて一瞬、思いました。でも、それこそ海外へ供与すべきP-3Cの一部でも良いから、海自からパイロットや整備員込みで譲ってもらえば安上がりに揃えられるのに···。おまけに昨年に続いて大型ヘリ巡も作るようですが、そんなに作って、搭載すべきヘリやら動かす人員を確保出来るのでしょうか?



>「来年はぜひ外相専用機を」河野太郎外相、自民党部会で「おねだり」候補に米「650ER」

http://www.sankei.com/smp/politics/news/171218/plt1712180038-s1.html


ここにも新しいオモチャを欲しがる、アレな大臣が1人orz。おねだりするなら外国への売り込みも考えて「ここわMRJ一択で!」くらい言って欲しかったですが。
KU
2017/12/18 21:00
ご指摘ありがとうございます。
訂正しました。
キヨタニ
2017/12/18 22:25
>中国国産レーザー「要地近距離対空防御システム」がドローンを遠距離攻撃し撃墜!

http://blog.livedoor.jp/corez18c24-mili777/archives/51167505.html

いすゞのトラックを使っているのはともかくw、中国ですら実用化しているのに、どこぞの島国の軍隊は未だに研究中....。



>予算編成大詰め 財務相が各省庁大臣と折衝

http://www.news24.jp/sp/articles/2017/12/18/06380832.html

30DDの建造費は単純計算で1隻あたり、約520億円のようですね。性能よりも数を揃えるのが優先のようですし、火器類はともかく、センサーの類いは必要最低限になるのでしょうか。



KU
2017/12/18 22:51
海外の見本市に行くといかに自衛隊が遅れているかわかります。来年は視察予算が増えそうですが有効に使って欲しいものです。
キヨタニ
2017/12/18 23:51
しかしP3−Cを我が国で延命措置を行ったとしてもドイツとは違って数も多い上に、あーだこーだあって1機100億じゃ済まないでしょうね。P−1が欲しい、国産がイイというのはわかりますが、しっかりしてほしいものです。コメントでKUさんが河野大臣の「おねだり」に触れられていましたが個人的には好きですねあの人、危なっかしいですけど。
BB
2017/12/19 01:33
>政府 地上配備型の迎撃ミサイルシステム 導入決定

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20171219/k10011263731000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_012



>「イージス・アショア導入 場所は? 価格は?」

http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/300/286921.html

>>「北朝鮮の脅威を理由にして、防衛装備の導入が、知らず知らずのうちに、費用対効果の視点を欠いた、「行け行けどんどん」の姿勢になっていないか。」

他の高額装備の導入の話が持ち上がった際にも、同じように言ってもらいたかったですが。
KU
2017/12/19 12:45
清谷様

古巣の業界の経済センスのなさには驚きを隠しません。
いっそのこと民営化するのもいいかもしれません。必然的に金のことを考えますから。
金モールの吊るしたおっさんというと清谷さんと同年代の閣下連中=将軍や提督だと思います。中学生並みの経済知識ですか?高校生が起業したり、事業計画をプレゼンしたり、新製品を開発したり、防大の教育に?を感じます。まぁ、現役の頃、自衛隊は人件費タダだからよ!とか存在することに意義がある!と抜かしたバカ幹部 当時3佐の方でしたが、今何をやっているんでしょうか?再就職先でキチガイ扱いされ、相手にされていないのでは?
私は学術研究都市で働いて生活していますが、仕事・プライベートに関わらず 学者・研究者・技術者を相手していますが、自衛隊の将官・1佐クラスの方々より遥かに教養があります。逆に将官クラスはバカに感じます。インテリ層から見ると筋肉バカ集団や土方・肉体労働公務員の親分としか見ていないんじゃないですか?
元キャプテン
2017/12/19 15:11
お邪魔します。
 「我が国は島国・海洋国家で、大陸国家のドイツとは違う」と言う人もいるかも知れません。しかし島国・海洋国家(陸は狭いが海と空は世界有数の広さ)であればなおさら、限られたコストである程度の質と量を確保する事が必要なのではないかと思われます。哨戒機は機体の性能よりも積む電子装備の方が重要かも知れませんし、いっそ新規開発するなら「生き物である人間の制約を受けない無人または遠隔操縦の哨戒機」とか「民間や学術の海洋調査や目的地に行く事よりも乗る事自体や眼下の景色を楽しむクルーズ旅客機も視野に入れた、低空を低速で飛ぶ事を目指した航空機」とかを作って欲しかったです。

>P−3Cは機体寿命がありません、だから新規開発が必用です
>海自のP−3Cをベトナムに提供するという話がありますが

もしかしたら、「メンテナンスや回収のためにお金を下さい」と言ったら「何でそんなものがいるんだ?」になるが、「外国に提供するので」と言ったら「それなら使え。外国に対して恥はかきたくない。」だからではないかと思ったりします。「ケチでありながら見栄っ張り」であれば。
ブロガー(志望)
2017/12/19 22:51
ま、仕方ないですな。
この話はもう病気レベルですね。
いつまで経ってもコスト意識の希薄な事で・・・
そんなにお財布が豊かな訳じゃないのに買い方が下手だと皆から馬鹿にされると思うんですが、もう馬鹿にされてるんでしょうね・・・
八王子の白豚
2017/12/20 01:43
八王子の白豚様

私が現役時代、年収500万以上なのに、浪費して自己破産したり、 ある幹部は自衛隊は人件費タダだからよ〜 !と世迷語抜かすし、まぁ金銭感覚の欠如や経済センスのなさにはびっくりしました。
私は調達や装備関係の仕事をしていて 金や経済には関わりましたが、民間に転職してみて、己のコスト意識のなさや経済に無知であることを痛感させられました。
生産性のない業界と言えばそれまでですが・・
外部人材の登用で 公認会計士や銀行マンを採用したり、防大に経営学部を創設したり、定年前の1年間、給料半分にし、副業で稼いだりするという方法もあるのでは?
自衛隊を民営化したら、必然的にコスト意識が湧くでしょう。
元キャプテン
2017/12/21 16:30

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