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zoom RSS 日刊SPA!梨恵華の自衛隊ネガティブキャンペーン

<<   作成日時 : 2017/07/18 15:03   >>

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自衛隊員の数がどんどん減っている! これではもう日本を守り切れない
https://nikkan-spa.jp/1353087

ドイツに行っている間、気になっていた日刊SPA!の「自衛官守る会」顧問、梨恵華氏の記事です。例によってとトンデモなんですが、ねつ造までして我田引水をしています。それがまだ自衛隊に対してメリットのあるプロパガンダになっていれば救いもあるのですが、自衛隊が、如何に待遇が悪くて、魅力がない職業であるかと吹聴してネガティブキャンペーンにしかなっていません。

別に自衛隊礼賛するのはかまいません。人によって色々見方はあるだろうし、商業誌で稼ぐためなら礼賛した方が商売的に楽ですから。ただしそれが事実あるいは、事実に基づいた記事であるならば、です
ですがアマチュアのブログならばともかく、カネを貰って書いている商業媒体でねつ造して、プロパンガンダやるのはどうでしょうかね。最近安倍首相が覚えて、しきりに使ってらっしゃる「印象操作」そのものです。

この件はブログで取り上げようと思っていたら、この記事には既に元海自幹部で、軍事ライターの文谷数重氏がすでに批判を書いておりました。これを読んでいただければ日刊SPA!のこの記事が如何にトンデモなねつ造記事か分かります。


梨恵華さんのような女流防衛ジャーナリストとやらはたいてい調べないでヨイショしかしない
http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/tb.php/1841-4c2c7860

>>自衛官と給料ベースの違う国会議員は残業手当や休日手当なしでも生活に困ったりしませんが、自衛官候補生の初任給は13万8000円です。自衛官が残業手当や休日手当がないという意味は大きいのです。実質、基本給では自衛官の給料は地方公務員の中程度なのですが、残業手当や休日手当を入れるとその差は歴然です。それを考えると自衛官の仕事は給料ベースでほとんど魅力がないと言えるのではないでしょうか。

これに対して文谷氏は以下のように指摘しています。
>だがこれは最初の三ヶ月だけの数字だ。任期制隊員が新入隊員教育で教育隊に入っている間の給与額だけにすぎない。給与というよりは防衛大や自衛隊生徒のようなお小遣いだということだ。ちなみにこの間は一律で衣食住全部タダ。
>そして新入隊員教育が終わった段階で別に一括して18万もらえる。これは契約金の性格も持つが入隊から1年6ヶ月勤務すれば返さないで良い。つまりは3ヶ月で均せば6万の支給が別にある。これを加えれば教育隊にいる間の平均額としては19万程度となる。
>そして2士、旧軍でいえば2等兵や3等水兵になれば、今ではだいたい月給16万かそれ以上もらえる。結婚していなければ営内生活なので衣食住はタダ。そして以降は毎年昇給する。さらに毎回の任期満了(2年)で任期満了金として100万前後もらえる。これは毎期のボーナスとは別だ。
>つまりは、兵隊のうち任期制隊員でも衣食住込みで月20万程度の待遇は得られているということだ。「自衛官候補生の初任給は13万8000円」というのは不適切である。
>だが、この「『自衛官守る会』顧問」の梨恵華さんはそう書いている。知らなければ不勉強であるし、それを調べないのも怠惰である。知っていてそう書くなら不誠実である。

その通りです。
自衛官が特別国家公務員といっても国会議員や政策担当秘書、公設秘書などと比較するのはおかしい。彼(あるいはボス)は選挙に落ちれば無職です。つまり身分が安定していないわけです。それと同列に扱うのはフェアではありません。

そして他の公務員などと比較して「自衛官の仕事は給料ベースでほとんど魅力がないと言えるのではないでしょうか」とあるが、これも事実ではないでしょう。自衛官の給与は一般公務員よりも宜しいわけです。ですから、財務省は一部の非戦闘職種を通常の公務員の身分にしてはどうか、といっているわけです以下のような試算もあります。

自衛官30歳の年収は約500万円。高卒勤務でもこれくらいあれば結婚できそう?
http://arenani.info/?p=314

>30歳高卒自衛官の場合の年収は、約400万〜500万円と言われています。これには結婚後の手当がふくまれている場合が多いので、独身の自衛官の場合は400万円以下の人もいるようです。

>下記は高卒で自衛隊に入隊した場合の例です。
勤続4年目(22歳) 3曹 216,400円(11号俸)
勤続12年目(30歳) 2曹 275,100円(34号俸)
参照:【自衛隊】結婚したら給与・扶養手当はどれくらい貰えるの?
>上記の金額は月額ですので、この他にボーナスを加えると…
275,100円×(12か月+ボーナス約4か月)=約440万
>さらに扶養手当なども含めれば、年収500万円前後になる人が多いですね。
関連⇒ 自衛官のボーナス(夏)2015年6月30日支給です

>30代前半の平均収入はH25年度ですと、男性で約430万円。
30代後半になると、男性で約500万円だそうです。
30歳の高卒自衛官も、大体この平均年収くらいです。
>高くもなく、安くもなくと言ったところですね。

退職金はこんな感じです。
http://xn--wbtv94dmwgnobuzpmwdlzlvsn.com/
年金はこんな感じです。

自衛官の定年後の年金は具体的にこれくらい。意外と多い?
http://arenani.info/?p=1186
>最終階級が曹長で勤続年数が19歳〜54歳の420か月、奥さんが専業主婦の場合、上記の条件に加え、年金が支給されるまでの6年間は再就職先で年金を納めなければいけません。再就職しなかった場合でも国民年金は納めなければならないので要注意です。
この場合で貰える年金額は、年間約300万円と言われています。
妻がずっと専業主婦だった場合は夫婦二人で年間約300万円です。
月額約25万円ですね。

果たしてこれがそれほど劣悪な待遇でしょうか。民間の自営業や非正規雇用の場合(著者の梨恵華さんもフリーランスですからこの部類です)は国民年金のみですから、月額は一人6万円程度、二人併せても12万円程度です。

>>「ボーナスが3回ある」「退職が早いが、その分恩給がもらえる」「資格をたくさん取らせてもらい、任期制自衛官の任期満了退職時にはたくさんの資格を持っている」「自衛隊に入れば衣食住はタダだ」といった言葉を売り文句にしていました。すべて、今はすでに廃止されているか、一部を除いて自腹に変更されました。昔は自衛隊に入隊するメリットがあったのですが、どれも今は廃止され自衛隊員の減少を止めることはできません。

「退職が早いが、その分恩給がもらえる」も嘘です。自衛官に恩給は存在していません。恩給がもらえるのは旧軍関係者だけです。

>>今は公務員の減給が叫ばれ、残業手当や休日手当がないにも関わらず、一律自衛隊も給料削減、官舎削減、隊舎の中は電気代もトイレットペーパーも全て自腹、制服も一部は貸与されるもののほとんどが自分で買うことになっています。もちろん、糧食費は最初から給料ベースを考える前に引かれています。

これまた嘘です。文谷氏は以下のように述べております。

>「全て自腹」は嘘でしかない。隊舎の電気代もトイレットペーパー代金も自腹ではないからだ。
  隊舎の電気水道熱源の代金は国が支払っている。玄関から廊下、居室、娯楽室すべてそうだ。そこにあるテレビも冷蔵庫も国が電気代を支払っている。個人が負担するのは、私物のテレビや冷蔵庫の電気代だけ。共用があるのにそれを使わず、私物を持ち込んている分だけだ。電力消費量としてはひとりあたり年2000円程度分だが、それを体面上とっているだけ。当然個メーターはない。それ以下の器材、たとえば携帯電話は対象ではない。

>また、トイレットペーパーを自腹にしているのはほぼ陸自だけ。本来は自衛隊側が準備すべきものだが、金をケチるあるいは中央に吸い上げて末端に数を与えていない結果でしかない。海空で聞いたことはない。これはコピー代も同じ。
>これも広報あたりの言い出す、大げさな自衛隊の困窮を鵜呑みにしたものだ。本来調べることを調べていない。

更に申せば、大概の制服関連は支給されています。支給されていないのはセーターなどです。

>>安倍政権になり、景気が少しずつ良くなりました。雇用が回復し、賃金も上昇傾向になりました。そうなるとみんな待遇がよくキレイで余裕のある仕事を選びます。自衛隊への応募数は急降下しました。

これまた事実誤認です。まず雇用が回復したのは安倍政権の手柄ではなく、単に就労人口が減っているだけです。

そして、応募が減っているのは主として任期制自衛官=非正規雇用です。
著者は本来任期制自衛官=非正規雇用、曹、幹部の応募数を分けて書くべきですが、それをやると記事が「面白くなくなる」ので書かないのか、単に知らないのか知りませんが。
地本の複数の偉い人に聞くと、任期制自衛官の人気が無くなったのは、自衛隊を退職した後に正規雇用につける可能性が低くなるからだと仰っておりました。ですからぼくは、退職自衛官の地方公務員への再就職などを提案してきました。

恐らく著者は任期制自衛官が定数から少ないことを、応募が少からだと思い込んでもいるのではないでしょうか。任期制自衛官で1、2士は定数の4割に過ぎません。士長を入れても7割です。
ですが、これは防衛省、自衛隊に当事者能力が無かったからです。防衛費はほぼ横ばいで、装備などが高度化、高額化しているわけですから、部隊数を減らさないといなかったわけです。そうして人件費を減らして装備やネットワーク化に回すためです。そうであれば将官以下兵隊まで減らします。何しろ年金、退職金まで含めれば将官やシニアオフィサーの人件費は兵隊の一〇倍以上です。更に申せば彼らには副官、秘書官、運転手がつきますから、実際の人件費削減はもっと可能になります。

ところが、曹以上の「正社員」に手をつけると抵抗が大きく、しかも周囲から悪者扱いされるので、全く手をつけず、削減が容易な任期制自衛官=非正規社員だけを削減したわけです。つまりは易きに流れたわけです。
人民解放軍ですらやっていることを自衛隊はできなかったわけです。おかげで部隊はスカスカ、整備費やら必要な予算が確保できません。これもいわば自業自得。
更に申せば諸外国の軍隊のように一定以上の年齢で一定以上の階級になっていないと軍を出されるというシステムも存在しないので、全員定年までいることができます。諸外国の軍隊に比べたら余程身分が保障されています。この分でも諸外国の軍隊よりも自衛官は随分と優遇されています。

著者は煽ります。
>>もう、最終局面なのです。

>>安保法制で戦争が起こるぞという報道が繰り返しなされたことで、自衛官応募年齢の子供を持つお母さんたちが強固に自衛隊に入隊することを反対するようになりました。またそれと同時に公務員は給料が高いから民間ベースまで減らそうと、全ての公務員の給料を減らすなかに自衛官も含まれてしまいました。

他の公務員がそのままで、自衛官だけ引き下げならば問題でしょうがそうではないでしょう。それに著者の言うとおりならば、公務員全体が「魅力の無い職業」になって、応募が減っているはずです。先軍政治の北朝鮮のように、「軍人」だけ特別待遇しろと著者は言いたいようです。

>>周辺国のリスクは高くなり、危険は高まり、出動回数が増えるなか、給料も退職金も下げられ、頼みの綱の住宅もどんどん取り潰され、取り潰されていない官舎もこれまで安く住めたものが都心では高いところでは十万を超えるようになりました。これでは自衛官の給料で生活ができません。再就職が見込める年齢の人たちはどんどん退職しています。

これまた事実ではありません。退職者が激減しているならばここ5年ぐらいの曹以上の中途退職者の数を具体的に挙げるべきです。前期のように曹〜将官までの人員は増えております。また防衛省がウェッブサイトで公開している防衛予算の資料にある毎年の充足率は大きく下がっていません。

>>この4月に自衛官の給料は下がります。2015年に決まった自衛官を含む公務員の給料削減で、自衛官だけ暫定処置として来年の4月まで現給保障がありました。その間に住宅ローンなど生活の見直しをしろということでした。でも、ローンや教育資金見直しは簡単じゃないのです。子供に賃金下がるから大学はあきらめろって言えないでしょ?
>>「主人の給料だけでは食べていけんから、子供を預けてパートに行ってます。やっと生活しているのに、官舎代が上がって、給料が下がるって? これ以上シフトは入れんわ。うちらの生活はどうなるの?」と自衛官の奥様に聞かれました。
>>答えることはできませんでした。

そしてこれまたご案内のように、曹クラスでも自衛官の待遇が悪いほどはありません。いいか悪いかは別にして、自衛官は潰しが効かないといわれて、再就職が難しい。簡単に再就職先が見つかるご時世ではありません。ですから防衛省も苦労をしており、再就職のために予算も少なからず、とっているわけです。
 
 また上の自衛官妻の話も民間からみればあきれるようなお話です。先に述べたような待遇ですから、さほどひどいとは言えません。しかも官舎は上がっても、民間相場よりは安いはずです。民間では共働きは当たり前です。夫婦共に非正規社員という家庭も少なくなくありません。更に申せば自衛隊でも共働きは少なくなく、駐屯地に託児所まで税金で増やしています。民間から見ればうらやましい環境でしょう。
 この自衛官妻が実在の人物ならばかなり世間を知らない方、ということになります。

文谷氏は以下のように述べています。
>そこにいじめやら自殺やら過労死を挙げないのは、不人気の理由を左派に押し付けたいといった意図によるものだろう。

 自衛隊内部の問題はいじめやパワハラです。特にやる気にあり、現状を変えようとする人間に対しての嫌がらせは極めて問題ですが、この人はそこを問題として指摘しようとしません。自衛官はみんな仕事熱心で滅私奉公、自己犠牲の塊であると信じているのでしょう。

 率直に申し上げて、これは親自衛隊を装った、反自衛隊のプロパガンダであるとしか思えません。何しろ、嘘とでっち上げと思いつきをならべて、自衛官は如何に魅力のない仕事かと宣伝しているわけです。

 仮にご本人が本心から自衛隊を応援しているつもりであるならば、喜劇としか言いようがありません。



Japan in Depth に以下の記事を寄稿しました。

海自ヘリ選定巡る下克上と内局 その1
http://japan-indepth.jp/?p=34774
海自ヘリ選定巡る下克上と内局 その2
http://japan-indepth.jp/?p=34784
海自ヘリ選定巡る下克上と内局 その3
http://japan-indepth.jp/?p=34792





『キノコホテル創業10周年記念大実演会<サロン・ド・キノコ〜飼い慣らされない女たち>』
2017年6月24日 at 赤坂BLITZ

https://okmusic.jp/news/186265








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コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
「これまた嘘です。文谷しは以下のように述べております。」の、文谷氏が文谷しになっていますよ。
蛸八
2017/07/18 15:53
ご指摘ありがとうございます。訂正します。
キヨタニ
2017/07/18 18:37
しかしまぁ、このSPA!の連載も良く続いていますよねぇ。少なくとも編集部的には、何ら問題なし!ということなんでしょうね。



>防衛費また過去最高へ ムダな兵器を軍事専門家がチェック

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/209641

>>最近、指摘され始めたのがオスプレイの護衛問題だ。

そんな話は、最初に導入話が持ち上がった時点で分かりそうなものですけどorz オマケに護衛専用のオスプレイを買う気なんですか? いやもう...アホすぎて突っ込む気もしません。
KU
2017/07/18 20:15
私もその記事は読みました。
全体的に言いたいことは分かるんですが、読んでみた感想としては
「待遇改善を訴えるなら必要性に疑問符が付く高額装備の調達を止め、明らかに無駄な調達や安く買えるはずのものを高く買っているのを止めればそんな費用なんぞひねり出せるだろうに」
でした。
この恵梨華さん、防衛費を増やして全ての問題が解決するって考え方みたいですが、見方が一面的過ぎますね。
八王子の白豚
2017/07/19 00:01
昔、現役の頃にメガバンクに勤めていた彼女に生涯所得をシュミレーションして貰いました。中小企業のサラリーマンとほぼ同じ生涯所得。 定年が早く、再就職しても年収200〜300万、嘱託やアルバイト雇用。再就職先でも定年60歳まで5〜6年の期間しかなく、スキルやキャリアは構築されない。会社も人材投資はしない。メリットやインセンティブはない。 50過ぎた柵の中という世界で生きてきた頭の固いオッサンは適応がしにくく、 自己否定や自己批判なんかでかるはずもない。自分の人生の大部分を否定できるわけがない。
元キャプテン
2017/07/20 14:33
お邪魔します。
 最近買った山本七平氏の本の中に「あるものを祭り上げ、そのあるものを"盾"とする事で自らへの反対や批判を封じる」という事も書いてありました。それはかつては「天皇」や「英霊」とかだったのでしょうが、「現場の自衛隊員」をそれにしようとする人達も出てきたという事ではないかと思われます。"盾"にしているという事が、そいつがそれを本心ではどう思っているか語るに落ちていると思われますが。
ブロガー(志望)
2017/07/22 22:24
https://ameblo.jp/calorstars/entry-12305498030.html

なんかまたすごい事書いてますね…。
じゃこれで自衛官に死者が出た場合どうするんだ、と。こうなると、本当に「自衛官を守る」と言いながら、「自衛官を守らない」という、まさしく1984に出てくるダブルシンクみたいな事を平然とやってるように思います。
ふきのとう
2017/08/28 17:30

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