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zoom RSS ああ堂々の自閉隊、もう一機のP−1がパリにたどり着けず。

<<   作成日時 : 2017/06/28 12:27   >>

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海自最新鋭機、仏にたどり着けず 関係者「恥ずかしい」
http://www.asahi.com/articles/ASK6V4JD1K6VUTIL02H.html?iref=comtop_8_03

>フランスで開かれた国際航空ショーに参加するため日本を出発した海上自衛隊の最新鋭のP1哨戒機2機のうち1機が、機体トラブルのためショーに参加できなかったことが分かった。日本の航空機製造の技術をアピールし、国際的に売り込む場となるはずだったが、「たどり着けなかったのは恥ずかしい」と政府関係者は話す。

> 途中で2機は、ソマリア沖の海賊対策で派遣中の部隊のためにジブチに設けられている拠点に寄った。そこでの点検で1機にトラブルが発覚。交換部品の到着を待っているとショーに間に合わず、1機をとどめ置いて、残る1機だけでフランスへ向かったという。ショーにはフランスのマクロン大統領が訪れ、防衛省の若宮健嗣副大臣も出席した。


先日のブログで、P-1の稼働率は低いという話をしましたが、この記事は図らずもそれが露呈したということになります。

パリはP-1哨戒機を買うか?
http://kiyotani.at.webry.info/201706/article_10.html


無論何かトラブルがあったときのことを考えての複数機の派遣であり、そのトラブルが発生したわけですから、それ自体は問題があるわけではありません。
一番の問題は事実を防衛省と海自が隠蔽したことです。


航空ショーに実機を出展する場合、1機だけだすことはあまりありません。特に遠くの国からならばそうです。トラブルがあって引き返したり、現場で飛べなくなることがあるからです。飛行展示も行うならば尚更です。数年前に米海兵隊のオスプレイがファンボローに来た際も、3〜4機が来ていました。これは飛行展示ができなくなると、特に我が国では、「そら、オスプレイは信頼性が低いのだ」と、プロパガンダに利用されたりするから、多めに予備機を持ってきたわけです。

今回は始めから飛行展示をする気はなかったのでしょう。だから2機だけ。更に申せば、保有機数は10機程度で稼働率はかなり低い。その中で2機を裂くのは海自にとっては歓迎できる状態ではなかったはずです。

新鋭機だからまだ問題点が出尽くしていないと弁護する人たちがいます。それはその通りです。
ですが、パリ航空ショーに派遣するということで、普段よりも入念に整備をした上で、しかも前年は英国のエアタトゥーにも参加した経験もあり、欧州までの飛行も未経験ではない。その上でトラブルが発生し、それをマネージできなかった事実は重く受け止める必要があります。

こういう事実を隠蔽するということは、多くの不都合が正当化され、そのため問題が改善されることなく、現場に面倒を押しつけられる悪循環が生まれていることも想定されます。

ぼくは自衛隊の主要装備からトラックなどにいたるまで、稼働率を原則公開すべきだと考えます。それは軍事機密だという話もありますが、納税者には「無敵皇軍」的なイメージを宣伝しておいて、その実稼働率は低い、問題が多い装備は少なくありません。

国産するのは稼働率を維持するためだ、防衛省は主張し、それを肯定する声も少なくありません。ですが、本当でしょうか。そうであれば、なんでMCH-101の初期の稼働率は13パーセント、海自のP-3Cは6割程度、陸自のヘリは5割程度で、何でこんなに低いのでしょうか。

そしてOH-1に関してはこれまた防衛省は公表していませんが、エンジンの不具合で2年も飛行停止です。
稼働率が低い理由のひとつは、整備予算の確保が難しいことですその大きな原因は国産兵器のお値段の高さです。航空機で組み立てだけで、2,3倍、ライセンス生産(といっても結構輸入コンポーネントが多い)3〜6倍、機関銃に至っては10倍です。整備費が確保できなくなるのも当然でしょう。

果たして輸入よりも高くても高い稼働率を維持できるというのは本当でしょう。またそのためには5倍も十倍も高い調達コストを是とするのは許されるか。
いくら法外な値段になっても稼働率の維持のためという「免罪符」になっていないでしょうか。しかもそれが実現されているとは言いがたいでしょう。

ぼくも基本的には国産を否定はしません。ですが、そのためにはリーズナブルな調達コスト、稼働率の保証、そして実戦的な装備であるかなどの要素を満たしている場合です。よその7、8倍も高い調達単価で30年近くたっても調達が完了しない、そしていつ完了するかも分からない89式小銃のような装備を本当に国産する必要があるのでしょうか。

こういうことに対する説明責任をバックれて、提灯記事を書く媒体を通じて「無敵皇軍」的な印象操作をしていては、問題が納税者、政治家、メディアで共有されません。結果して稼働率は改善されず、新装備の調達に際してもそれが問題となることはなく自衛隊は弱体化していきます。
その弱体化を国民は知らされていません。有事にツケを払うのは現場の隊員もそうですが、我々国民です役に経つと信じ込まされてきた自衛隊が役に経たなかった、その責任を誰がとるのか。

まさに、自衛隊ではなく自閉隊ではありませんか。

外部からの批判にされるのを極端に恐れ、仲間内で褒めあって現実を直視できない。実態がバレるのが怖いから本来必要な情報開示も拒否する。そして負の連鎖を生む。こういう組織が強い組織であるはずがないわけです。それは前の戦争でも分かっているはずですが、自衛隊では戦史をまともに勉強していないか、他人事と思っているのでしょう。

ぼくは航空ショーなどの自衛隊の実機を展示したり、展示飛行をすること自体は賛成です。直接その機体を輸出しないにしても、我が国の防衛航空産業アピールのための広告塔にはなります。
また派遣を通じて諸外国の同業者との意見交換をすれば、装備庁や部隊の人間にとってもいい刺激となり、見聞をを広げ、国際的な常識を勉強する機会になります。

それは現状の井の中の蛙状態からの脱却にも役立ちます。現在世界の防衛航空産業界では日本の「顔」がみえません。自衛隊機の派遣はその「顔見せ」になるわけです。現状世界の軍事航空媒体においても、日本の情報は殆どありませんし、あっても見当違いなことが書かれている場合が少なくありません。それもあって前にぼくはジェーンズで書いていたわけでもあるのですが。

そこで恥をかくのも勉強です。恥をかくことは人間を成長させます。
逆に現状恥をかかないために、隠蔽工作を繰り返しているから防衛省や自衛隊、防衛産業は成長しないわけです。内輪で褒めたり、自己正当化する組織は腐敗します。


ですから、このような派遣は航空ショーに出展する中小企業のバックアップにもなります。問えば単に油圧部品を主点するだけよりも、これはP-1に使われているというようなアピールも効果的になります。

そのために年に何億円かのコストがかかって安いモノです。

ですから、かなり昔から政治や行政のそれなりのポジションの方には、航空ショーに自衛隊機を派遣すべきと政治家や官庁の高官にも勧めてきました。


ですが、今回の派遣はお粗末です。P−1が売れるかも=支持率アップにつながるよね、という浅ましいアレ首相のダボハゼ的な思いつきで、僅か数ヶ月で準備期間も短いなかで実施されました。

本来ならば毎年の計画で、どこそこのショーに何を出すかを計画を決めて予算をつけるべきだし、その予算の一部は経産省が負担するなどしてもいいでしょう。
場当たり的、首相の功名心で部隊を動かすことは国益にはなりません。政治の私物化は学校法人の許認可や強姦事件のもみ消しだけではないようです。

まあ、防衛大臣も自民党に投票することが防衛省や自衛隊のためだといかいっちゃう人ですからね。最高司令官閣下も自衛隊はテメエの私兵、ぐらいに思っておられるのではないでしょうか。



Japan in Depth に以下の記事を寄稿しました。

海自ヘリ選定巡る下克上と内局 その1
http://japan-indepth.jp/?p=34774
海自ヘリ選定巡る下克上と内局 その2
http://japan-indepth.jp/?p=34784
海自ヘリ選定巡る下克上と内局 その3
http://japan-indepth.jp/?p=34792





『キノコホテル創業10周年記念大実演会<サロン・ド・キノコ〜飼い慣らされない女たち>』
2017年6月24日 at 赤坂BLITZ

https://okmusic.jp/news/186265





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コメント(6件)

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空自のC-2もフランスの国際航空ショーへ参加させればいい経験になったかもしれませんね。
Masaya Hariu
2017/06/28 13:31
>自衛隊はテメエの私兵、ぐらいに思っておられるのではないでしょうか。
これが私が最も危惧する所です。これでは隊員が可愛そ過ぎます。無能な首相がちょっと逝ってこいってノリで戦略も何も無く海外の戦地に趣く羽目になったらそれこそ犬死と言うもの。
それとP-1関連ではトレードデーしか展示しなかった事も不満の一つです。トレードデーだけで帰ることは珍しく無いのですが、遠路はるばる日本から持ってきたのにアピールも何もしないのでしょうか?MRJもなのですが、実際に買ってくれる顧客にしか見せない様な事をして果たして売れるのでしょうか?知名度の無さは問題だと思わないのでしょうか?日本製品を広く海外にアピールしようとは思わないのでしょうか?某首相の思惑とは逆ですね。日本製の飛行機は海外では極めて珍しく情報も殆ど無いのは仰る通りで航空雑誌の扱いも小さいですね。日本の航空雑誌に北朝鮮の戦闘機の写真が載る程度の頻度でしょうか。0では無いけど影が薄い、珍しいけどあまり情報が無い、日本の航空雑誌、軍事雑誌を英語に翻訳して見せてあげたい位ですね。それだけ情報が少ないので一部のマニア以外日本の航空機や自衛隊についてあまり知られていません。その大事な機会を自ら放棄してしまうとは。P-1を見てアトランティックより欲しい!なんて思うパリっ子だって現れるかも知れなし(笑)。MRJについては論外です。シンガポールでもやる気のヤの字もありませんでしたから。
やれやれ
2017/06/28 14:24
あと自衛隊のプレゼンスといえば引きこもりのブルーインパルスと言う組織もありますね。一度アメリカに行って飛びましたが評判は散々でした(雑誌は真逆の事が書いてあって驚いた)。お隣韓国のブラックイーグルスはT-50販売の尖兵と言う役目もありますが熱心に海外展開したりパイロットだけでも派遣したり他国のチームに教えを請うたりと色々交流を持ったりして腕前を相当上げました。今では東アジアでは彼らの右に出るものは無いでしょう。世界でも上位にランクされると思います。韓国も整備費をケチって共食い整備で日本以上に悲惨なはずなのにブラックイーグルスだけは例外的に凄く頑張っています。アクロチームは空軍の親善大使みたいな側面もありますから少しは姿勢だけでも見習うべきではないかと思いますがね。
やれやれ
2017/06/28 14:27
お邪魔します。
 「稼働率は100%が当たり前で、そうでなかったら怠慢」と見られるので発表したくないのではないかと思われます。単純なものなら兎も角、ある程度以上複雑なものはきちんと機能する状態を維持するのにも相応のコストがかかり、ましてや100%はコストがかかり過ぎて事実上不可能ですが、そういった事が理解できない人間がいるので。
 青森で健診での癌の見落率が4割にのぼるのではとの推測が発表されました。100%を目指すと受ける側の負担が大きくなり過ぎるとの理由で2割程度と見込んでいたようですが。これでまた「健診は無用の長物か否か」の議論が出てくるのではないかと思ったりもします。
ブロガー(志望)
2017/07/01 15:50
実は各幕僚監部では装備の稼働率を把握していません。部隊レベルでしか分からない。これで戦争ができるのか心配になります。
キヨタニ
2017/07/01 17:17
ま、稼働率が悪くても「張子の虎」で十分と自らを規定している自衛隊なんだし別にいいんじゃありませんか?
ただ、国民の多くは自衛隊を「国防上必要な組織」と認識しているので、有事にケツを拭く紙ほどの役にも立たない組織だと分かった時に曲がりなりにも必死で戦った旧帝国陸海軍以上に信頼を失う事は確実です。
勿論実際の戦争で自衛官達が必死で戦ってくれることを疑うものではありませんが、それにしても色々お粗末すぎますね。
八王子の白豚
2017/07/02 21:35

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