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zoom RSS オーストラリアへの潜水艦売り込み 北村淳氏の記事の根源的な誤り

<<   作成日時 : 2016/03/04 14:01   >>

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オーストラリアへの潜水艦売り込みに目をつけた米国
「そうりゅう」を米国が推す本当の理由とは? [北村 淳]
http://miu.ismedia.jp/r/c.do?vTl_eUw_SZ_sds

>政府高官やシンクタンク(アメリカの軍需産業から資金が出ている)から「そうりゅう」を後押しするような声が上がっているのは、米海軍関係者たちによると「当然のことながら、日本のためではなくアメリカの軍需産業のため」である。

>オーストラリアがフランスやドイツと共同開発した場合、兵装や戦闘指揮システムなどは、おそらくはヨーロッパ勢が持ち込むことになってしまう。一方、「日本との共同開発となれば、兵装やコントロール装置の分野でアメリカが入り込める可能性が高くなる。というよりは、日本とオーストラリアが相手ならば間違いなく入り込める。したがって、アメリカの軍需メーカーに取ってもビックビジネスとなるのだ」

結論部の前段はその通り。
ですが後段は全くの誤りです。既にオーストラリアはどの候補になろうともシステムは米国製を搭載することをほぼ決定しております。これば米国のインターオペラビリティの確保のためです。
これは新聞報道でも随分前から度々報じられてきたことです。

ですからロッキードマーチン、レイセオンがともにシステムの提供に名乗りをあげているわけです。

米国としてはフランス製だと、米国のシステムの情報が盗まれることを恐れております。
ですからDCNSの目は無いだろと見られております。
そしてドイツのプランはペーパープランに過ぎない。

ここでも北村さんの記事を読む限り、現用の潜水艦をそのまま採用するかのように書いてありますが、それは違います。システムを入れ替えるわけですから、ソナーなどセンサーにあわせて、船体も変えないといけない。ですから日本の提案にしても「そうりゅう」の改良型となるわけです。

北村さんが見逃している米国の狙いは、日本製の潜水艦に米国製のシステムを搭載することによって、次は海自の潜水艦に自国製システムを採用させよう、ということでしょう。

毎度ですが日本の潜水艦は世界一という根拠ない話を信じている人たちも多いのですが、システムに関しては圧倒的に米国のほうがマシです。日本のソナーなどの能力、特にソフトの面での能力が低いことは「世界の艦船」でも当の海自の開発担当の将官OBが書かれております。

海自の現場にしてみれば本音は米国製システム導入は大歓迎ではないでしょうか。対艦ミサイルにしろ、概ね米国製や外国製の方が評判が高いようです。

本来この記事のキモはこのオーストラリア潜水艦に日本製船体と米国製システムの採用によって、日本に自国のシステムを提案(というか押し付ける)ことが可能性があることです。
そして困ったことに、そのほうがまともな潜水艦ができるとおもいます。

国内産業を育成するのであればクズのようなソナーとかを天下りとバーターで本来必要ないDDHにまで採用することではなく(実際計画当初ソナーを搭載する予定はなかった)、海外のメーカーと戦えるようなシステムを開発できるように指導、誘導していうことでしょうか。
つまり海外の開発動向に目を配り、それなりの基礎技術にも投資するということです。当然ながら独自の技術を持っていれば、輸入する際にも交渉の手札となります。またその技術をより深く理解することもできます。

そのためには何かを諦めるべきです。例えばP-1の開発なんぞぜずに、P-3Cの延命で乗り切っていればそのような予算が確保できたかもしれませんが、覆水盆に返らずです。
官民ともに、その能力も当事者意識もないならば米国製システムを導入すべきです。
欧州メーカーと競わせればそれなり値引きや技術移転も引き出せるでしょう。でも、これまでのFXやらの経緯をみていると自衛隊ははじめに米国の本命を決めてしまうので、そういう駆け引きができないようですが。


それから潜水艦輸出で問題となるが日本の官民の能力と出口戦略です。
こんな4兆円とも言わるビッグビジネスを、殆ど経験がない我が国やって大丈夫なの?ということです。
おそらくは多くの困難が発生するでしょうが、それに対処する能力と気位があるのか、と。

また生産能力の向上が必要です。完全に三菱重工が契約を獲得するなば、生産能力の倍増ぐらいが必要です。設備も人員の教育も必要です。オーストラリアである程度の生産をするにしても、ベンダーレベルまで増産体制を確保する必要がある。
それが可能なのか。また、オーストラリアのプロジェクトが終了した時に生産能力は過剰となります。その際に余剰となった人間をどうやって食わせるのか。あらたな客先をを見つけるのか、オーストラリアの次の契約をとれるのか、いずれもダメだった場合も考えるべきです。
三菱重工に今後もセンス輸出を商売として続ける覚悟があるのかどうかが大きな問題です。

本来三菱と川重の2つの潜水艦ビジネスは統合すべきです。そうしないと生産の調整も難しいでしょう。
両方の建造能力を維持するために、16年でまだ使える潜水艦をスクラップにするという贅沢を続けてきましたが、これも再考すべきです。そんな短期で潜水艦を使い捨てにしている国はありません。実際我が国だって、潜水艦16隻体制から22隻体制に移行するにあたって延命をおこなって使用しています。
また両社にはそれぞれベンダーがおり、これを統合することが調達コスト及び、運用コストの面でも必要となるでしょう。

生産能力の増減に対する柔軟性とコスト削減のために、事業統合を本気で検討すべきではないでしょうか。

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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
2社統合賛成です。
また、遅れているソノブイヤ、ソナーシステムの米国並みへの技術力UPをなんとか実現してほしいところです。
軍事オタク
2016/03/05 09:30
>>生産能力の増減に対する柔軟性とコスト削減のために、事業統合を本気で検討すべきではないでしょうか。

事業統合の主体が問題である。

日の丸ディスプレーとか銘打って鴻海と真向勝負して惨敗の例もあるし、政府主導で民間企業の活動に介入するのはいかがなものか。

もちろん、企業同士が自主的に統合するのなら話は別だが、両社は一流企業のメンツがあるし、余程経営が危機に出も瀕しない限り、無理な話だろう。
真の愛国者ゆりか
2016/03/05 14:53
欧米製のシステムともなると、ロッキード・マーティンを筆頭にタレスにL3にBAEシステムズも候補でしょうか。国内メーカーだけが全てじゃないですものね。そら、お偉いさんは天下り先が減っては困るだろうから、屁理屈を並べて反対するなり、商社を噛ませて価格を吊り上げさせたりと、いろいろやらかすでしょうけど。にしても、海自も空自と同様かそれ以上にアメリカベッタリかと思いきや、妙なところで意地を張るんですね。
KU
2016/03/05 16:14
ふむ、「そうりゅう」がホントにそのまま売れるんかいなと思って見ていましたが、やはりアメリカの援護射撃は下心がありましたか。
ま、そんなもんですよね〜
でも船体だけでも売って実績を作っておきたいところなので、システムは頑張って追いつく努力をしていくしかないですね。
関係各位の頑張りに期待しますか。
八王子の白豚
2016/03/05 21:01
お邪魔します。

>システムに関しては圧倒的に米国のほうがマシです。

 山本七平氏は大砲の照準に関して「日本は個人の名人芸に依存し、アメリカはシステムでそれを行った」といった事を書いていました。日本人は「技術や(体制等の)仕組みで実現する」といった発想に乏しく、「誰かが首を縦に振りさえすれば実現する」という考えが根強いものと思われます(「砲弾を運ぶトラックを動かす燃料が無い」と言ったら参謀に「フィリピン人どもをこき使って運べ」と罵倒されたとか)。潜水艦のシステムも「個人の名人芸さえあれば良い」といった考えなのでは。

>クズのようなソナーとかを天下りとバーターで本来必要ないDDHにまで採用することではなく

 もしかしたら信濃が移動中に米潜水艦に沈められた事が関係しているのかも知れません。空母にしろヘリ母艦にしろ作戦で単艦行動は無いでしょうが、単なる移動なら単艦行動はあり得ますから。尤も自艦での捜索を任務としない(ヘリが中心)大型艦のソナーがどの程度探知できるかは分かりませんが。
ブロガー(志望)
2016/03/08 23:14
ブロガー(志望)さん、信濃は確かに回航中に潜水艦に沈められましたが、その当時信濃を護衛していた駆逐艦は武勲艦・幸運艦として有名な雪風を筆頭に歴戦の駆逐艦揃いでした。
信濃の沈没原因は被雷したことよりもそこからの浸水を抑えることに失敗したことです。大和型の水密構造が想定どおりに機能していれば沈まずに済んだかもしれませんが、事態を甘く見た艦長の判断ミスと乗員の錬度不足が原因とされています。
多分海自が海洋での対潜活動に注力しているのは米軍の要請以外にこういった大型艦をポンポン沈められた経験が原因なんでしょうけど、肝心のソナー関連の開発に十分な投資をしてなかったんでしょうね、こうやって国産ソナーが叩かれるのは。
>クズのようなソナーとかを天下りとバーターで本来必要ないDDHにまで採用することではなく
私もDDHが駆逐艦に分類される艦艇である以上ソナーはあっていいと思います。確かに対潜活動の主役は艦載ヘリではありますがね。
ただ、キヨタニさんはソナーの性能に疑問を持っているようなのでそこは考えた方が良いでしょう。国産装備品は時間とお金をかけて開発してない物が多いですからね。
八王子の白豚
2016/03/12 17:04
八王子の白豚様、お教えいただきありがとうございます。

 それからソナーを付けると艦のバランスの関係でスキージャンプを付けるのが難しくなると聞いた事があります。尤も米の揚陸艦のようにVTOL機運用に絶対必要というものでもありませんが。米の揚陸艦は「ヘリ(+オズプレイ)による陸上兵力の一気投入」が主任務なので、それの妨げになるので付けなかったと思われますが、「VTOL母艦を空母のサブセットとして用いる」には有用と思われます。海自にいずも型をそういった用途に使うつもりがなく、国防においてそういった用途が小さいのであればそれで良いのですが、そこまで考えてやっているのかに不安があります。

 後ソナーを装備すれば「問題解決(終了)」で、「技術革新や対抗手段の発達」という形で"継続"しているとは考えていないのでは。中国の潜水艦も静粛化が進んでいるので、近い将来探知できなくなる、いやもう既にできなくなっているかもしれないと聞いた事もあります。
ブロガー(志望)
2016/03/15 23:31
ブロガー(志望)さん、たぶん仰る通りなんだと思いますよ。
ただ、当の海自がそれを認めたくないんじゃないかと思います。
八王子の白豚
2016/03/16 21:15

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