清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所 

アクセスカウンタ

zoom RSS F35戦闘機にまだ多数の「欠陥」 原因は米国の工業力の低下じゃないかね?

<<   作成日時 : 2016/02/05 11:31   >>

ナイス ブログ気持玉 23 / トラックバック 0 / コメント 13

F35戦闘機にまだ多数の「欠陥」 運用予定に影響も 米軍報告

http://www.msn.com/ja-jp/news/world/f35%e6%88%a6%e9%97%98%e6%a9%9f%e3%81%ab%e3%81%be%e3%81%a0%e5%a4%9a%e6%95%b0%e3%81%ae%e3%80%8c%e6%ac%a0%e9%99%a5%e3%80%8d-%e9%81%8b%e7%94%a8%e4%ba%88%e5%ae%9a%e3%81%ab%e5%bd%b1%e9%9f%bf%e3%82%82-%e7%b1%b3%e8%bb%8d%e5%a0%b1%e5%91%8a/ar-BBp6kkd

>米軍が開発中の次世代ステルス戦闘機「F35統合打撃戦闘機(JSF)」に、依然として危険な欠陥が多数残っていることが、米国防総省の報告書から明らかになった。すでに米軍史上、最も高額となっているF35開発プロジェクトが、さらに複雑化するのは必至だ。

>精密技術試験の結果、同戦闘機に多数の欠陥が見つかった。F35にはこれまでにもソフトウエアのバグ、技術的な欠陥、予算の超過などの問題が起きており、今回の試験結果によって開発計画の信頼性に再び疑問符が投げかけられた形だ。

>新たに報告された問題の中でも恐らく最も深刻なのが、パイロットが脱出するための装置、射出座席の欠陥だ。パイロットの体重が62キロ未満だと、座席が後ろ向きに回転し、パイロットの首を後ろにのけぞらせて死に至らしめる可能性もあるという。

>海兵隊向けのF35戦闘機では「複数の欠陥と限られた戦闘能力」という問題が見つかった。また、空軍向け機でも「継承された複数の欠陥」があるため、年末の運用開始予定が遅れる可能性があると、報告書は指摘している。


筋が悪いのはわかっているが、大きすぎて潰せないプロジェクトの典型でしょう。

まあ、一番損をするのは納税者なんですけどもね。F-35には問題が多いというのは、常々指摘されてきたことです。ですが、どこぞの島国の空軍は「米空軍と同じ玩具じゃなきゃ嫌だ」と駄々をこねて、ろくに検討もしないまま、カタログ見た程度で調達を決定。しかもコストだけは更に高くなり、技術移転は殆どゼロの国内組立を選んで、自国の戦闘機生産基盤をターミネートしてしまったわけです。

しかも国民や国会にはF-35A二個飛行隊がいつまでに戦力化できて、そのためにはいくらの予算が必要かということもまったく説明しておりません。配備は遅れ、その間に中国の航空戦力は増強されておりません。
防衛省、空自には新しいおもちゃの買い物という概念はあるけども、航空優勢の維持と、時間、予算という概念が極めて希薄に思えます。

それはそれとして、米国に限らず、英国もそうですが、アングロサクソン系の国々の兵器開発は、コストは急騰しているが、現場レベルので齟齬が多く、開発が遅れて余計にコストがかかる傾向が続き、これが常態化しています。

これは兵器産業に限らないのですが、企業の収益が短期で大きな利益を上げることを求められているのが原因じゃないでしょうか。

四半期ごとに高い利益と高い株価、配当が求められるわけです。経営者は大抵株でボーナスや報酬をもらいますから、株価が高くなれば自分も儲かります。自分の任期させ儲ければ、後日会社が潰れてようが平気という人たちが経営しております。

当面の利益をあげるの一番いいのは固定費を減らすことです。
従業員、特に熟練した人件費の高い従業員を解雇することです。あるいは若くて未熟だが、人件費の安い人間に入れ替える。工場を外国に移す。更に工場を売却します。こうすれば固定費が削減されます。
また従業員の教育とか長期に渡る開発費をバッサリ切る。

そしてキャッシュを増やして自社株を買い増す。そうすれば株価があがり、自社で保有している株には配当を払う必要がありませんからキャッシュが増えるし、経営者も万々歳となるわけです。

新しい技術が必要ならば外部のベンチャー企業でも買収すればよろしい。


ところがこういう企業は「いきもの」としての企業の体力が大きく落ちます。当然ながら長期に渡る新製品の開発能力は大きく大きく落ちます。例えば東レが10年単位の時間をかけて、炭素繊維を育てたようなことはまずできません。


開発するにしても新規の開発には大きな資本が必要となるので、既存製品の改良が中心となったり、外注先のOEMが中心となります。


社内に開発部隊だけがあっても、実際に製品を製造する際にはすり合わせが必要です。ところが設計と生産が分離するとすり合わせはうまく行きません。ボーイングが787で失敗したのは、自社工場まで外部に売り飛ばしてたことが大きく影響しています。

例えばアップルなどその典型例です。iフォンにしても、部材の殆どが外国で、コアコンポーネントは殆ど日本製です。組み立ては中国です。

これがスマホ程度ならば大して問題は顕在化しませんが、戦闘機や艦艇など大きなシステムであれば、問題が多発します。


また米国の防衛大企業の多くはシステムインテグレーターといえば聞こえはいいのですが、現実のプラットフォームは殆ど、外部任せです。要は体のいい口入れ屋、手配師みたいなものです。
更に申せば、米英の装甲車開発能力はかなり下がっております。頼みは買収した外国企業です。

社員の方も、ちょっと粉飾したような実績を作ったらそれをテコに次のよりペイのいい職場に移ります。
こうして人材が空洞化して、引き継ぎすら満足に行われません。社員は転職に備えて手柄やノウハウを独り占めにして、囲い込むのでノウハウや知識の共有化が難しい。
これで長期に渡るプロジェクトがまともに運営できるでしょうか。


現在シェールガスブームがきっかけて、米国の工業の国内回帰が始まっていますが、現場では熟練工がおりません。何しろ熟練した社員を放り出して、彼らはマクドやウォルマートで低賃金で働くしなくなくなったわけです。
現場を離れて何年も立てば、熟練工として即戦力にはならないし、年配者は既にリタイアしているでしょう。

以前、アメリカの格付け会社が、ヤクザな投資ファンドなどに高い評価を与えて、トヨタなど日本企業の
格付を引き下げたことがありますが、現在も体質は変わっていません。


中長期的にみれば米英企業の開発能力は低下していくでしょう。そのような現実があるからこそ、防衛分野で現業に強い日本の企業と組みたいなと行っているのかもしれません。

株屋や金貸しの「アナリスト」やら「ストラテジスト」とかいう胡乱な予想屋の「アメリカはこれだけ進んでいる、日本は遅れている」という御託を信じていると、現実がみえません。
無論日本企業には、意思決定が遅いとか、様々なもんだいがあることも事実です。

ですが、アメリカの真似をすれば成功するというものでもないわけです。ダイエーもソニーもアメリカ企業の真似をしてダメになりました。

米英の企業はもっと企業の存続と、中長期的な経営を考えないと行き詰まると思います。


strong>Japan In Depth に以下の記事を寄稿しました。
【補正予算が第2の防衛予算に】〜政権批判しない野党とメディア〜
http://japan-indepth.jp/?p=24881


【納税者も驚愕、陸自衛生学校体育館狂騒曲 その1】〜「戦争ごっこ」レベルの第一線救護〜
http://japan-indepth.jp/?p=24303
【納税者も驚愕、陸自衛生学校体育館狂騒曲 その2】〜最前線で隊員の命を救えるか?〜
http://japan-indepth.jp/?p=24309
【納税者も驚愕、陸自衛生学校体育館狂騒曲 その3】〜浮世離れ?「衛生」総本山で疑惑のコンサート〜
http://japan-indepth.jp/?p=24312
【納税者も驚愕、陸自衛生学校体育館狂騒曲 その4】〜「謝礼は互助会等から支出】の不思議〜
http://japan-indepth.jp/?p=24337
【納税者も驚愕、陸自衛生学校体育館狂騒曲 その5】〜「コンサートごっこ」をしている場合ではない〜


東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
防衛補正予算1966億円の買い物リストを検証
ヘリ、装甲車などの装備を買おうとしている
http://toyokeizai.net/articles/-/100679

富士重勝訴でも晴れない防衛調達費の不透明
防衛省の調達システムは問題が多すぎる
http://toyokeizai.net/articles/-/97503
フランスは原発テロの悪夢にうなされている
自爆覚悟のテロは、防ぐのが難しい
http://toyokeizai.net/articles/-/93096
高額な早期警戒機が日本では「欠陥機」だった
周波数帯をまともに使えない大矛盾
http://toyokeizai.net/articles/-/88753


朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しました。
イスラム国がトヨタのランドクルーザーを使う理由
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2015110200004.html
陸自が導入した輸送防護車は使えない
机上の空論では済まない邦人救出の現場
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2015100200004.html




テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 23
ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ガッツ(がんばれ!)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(13件)

内 容 ニックネーム/日時
お邪魔します。
 人類の長い歴史の中で働く事は「食って行く為に"仕方なく"する事」で、しなくてもよければする事ではなく、楽をするためのズルもなされてきました。欧州ではプロテスタントによる「隣人内の実践」、日本では鈴木梅岩の「労働即仏行」等で労働「それ自体」を自己目的化する思想が現れ、それによって近代資本主義を生まれました。しかし近代資本主義が成立すると仕組みが人間の意識を規定し、思想自体は隅に追いやられていきました。米英の工業力の低下は、思想が失われ仕組みによって維持されてきた資本主義の綻びの現れではないかと思われます。
ブロガー(志望)
2016/02/05 23:09
会社は儲けるよりも生き残る方が難しい。
知人の経営者の言葉です。
日本には歴史が1000年を越える企業がいくつか存在します。おそらく家族的な経営が功を奏したのではないでしょうか。私は資本主義の世界でも浪花節はある程度必要だと思います。市場原理主義者の価値観・思想は私の価値観に合いません。確かに経営するには適切な利益は必要であることは論を待ちません。従業員を食べさせ、株主に利益を配当しなければなりません。利益が目的かというと必ずしもそうとは言い切れない部分があり、寧ろ手段でしかないのでは? 会社というのは社会的責任とかステークホルダーというものを考えないといけないと思います。
私は理想的な企業として下町ロケットのような町工場です。主人公の社長だったら、地獄の底までついていきますよ!そんな社長はトキのような存在ですが・・
元キャプテン
2016/02/06 12:24
清谷様

先日、東京でロッキード・マーチンの日本支社長の記者会見があったそうですが、その際、件の内容を質問した記者の方はいらっしゃらなかったのでしょうか。

Twitterなどを見ていると有名な航空機評論家や軍事ライターの方が参加していたようなのですが‥
ブリンデン
2016/02/06 13:27
ブロガー(志望) 様

我が国の資本の蓄積と職業倫理の関係論の歴史においては、鈴木正三や、石田梅岩の石門心学が一般的ですが、これらを差し置いて、あなたが鈴木梅岩を取り上げたことに何らかの意図があるのですか?

ご教授いただければ幸いです。

浅学ゆえ、鈴木梅岩を初めて知りました。
真の愛国者ゆりか
2016/02/06 18:29
ぼく以外には同様な質問はした方はおいでではないですね。後オーストラリア向け潜水艦に関する質問など面白いと思いました。
キヨタニ
2016/02/06 19:21
 しかし、次期戦闘機の候補としては、米国製は引き算して行くと妥当な選択だと言うしかありません。何時技術情報が中国に流出するか知れたモノではない欧州製なんか、怖くて使えたものじゃない。
英知の人・エイチマン
2016/02/06 22:37
ソ連という「明白で国家の生存に関わる脅威」が存在した冷戦期であれば今ほど予算を気にせずにガンガン開発をやれたのでしょう。
F14やF15はそういう背景であれだけの高性能を獲得できたともいえますし・・・
それにここまで話が大きくなった計画となるともう潰すのは無理でしょうから、空自も米軍と心中する覚悟を決めるしかありませんね。
結果としてファントムが退役し、追加購入がされないF2もいなくなる将来、F35が開発失敗となった時に空自はどうするつもりなんでしょうか?
まさか「心神」(F3?)を開発する言い訳にこれを利用する気とも思えませんし・・・
いっそのことボーイングにお願いして「サイレント・イーグル」でも採用したほうがマシだったんじゃないでしょうか?
八王子の白豚
2016/02/07 00:09
スイスやドイツなどのヨーロッパ系企業も、負けず劣らずですけどね。
劣化は製造や開発だけでは無く、経営企画財務経理のような分野まで、くまなく広がっています。
単に自社製品と競合他社製品を比較して、自社の開発投資が不十分であることを認識するというだけのアウトプットに、ボスコンだのマッキンゼーだの高いコンサルを使い、何億も浪費しています。社員はその成果物を使って、ただ上にアピールするのが上手いだけの人しかおらず、実質的な仕事ができる人は残っていない、またはできる環境に無いのです。
あんな風に会社全体を社内政治とプレゼン要員だけで固めて、実質は全部社外に出してしまって、大丈夫なのかと心配になります。
X
2016/02/07 05:38
真の愛国者ゆりか様、おっしゃられるとおり「鈴木正三、石田梅岩でした。ご指摘ありがとうございました。

後「隣人内の実践×⇒隣人愛の実践○」
ブロガー(志望)
2016/02/07 10:24
>軍オタの“知識自慢”に自衛隊員が大迷惑

http://nikkan-spa.jp/1041939

ヲタになるにしても、こういう部類の人間にだけはなりたくないですね(^^)。何事にも最低限の礼儀というものがあるでしょうに。何かと清谷さんに突っかかるのも、こうした手合いでしょうか。

>>F35

だからタイフーンを買えとあれほど(ry。
製造自体は順調にいっているようですね。たしか日本向けの1号機のお披露目は今年の夏でしたか。

それと先日、見つけた記事ですが⬇

>自衛隊のヘリ導入数が今後大幅に減少か?

http://blog.livedoor.jp/corez18c24-mili777/archives/46680871.html

自衛隊は自衛隊でも陸自のようですが、陸幕はどうしたいのでしょうね。ロングボウをガーディアン仕様に改修するとか、ガーディアンその物を輸入するとか、そうしたビジョンと言うか動きが全く伝わってこないのですが。単に当事者意識が希薄なだけ、にも見えますけど。
KU
2016/02/07 11:05
技術情報が仮想敵に漏れるのは出来れば避けたい話ですが、
自軍装備の技術が漏れる事と自軍装備の有用性が脅かされる事とは必ずしもイコールでは無いと思います。
米国戦闘機一択で行く方針も、米欧戦闘機混在で行く方針も、それぞれメリットデメリットのある話だと思います。
きらきら星
2016/02/08 14:58
アメリカって海軍でもズムウォルト級やLCSとか計画失敗じゃないかと思う。
F35のエジェクションシートですが、かわぐちかいじ氏の「空母いぶき」では押しボタン作動式になってたけど…。
NetrightHunter
2016/02/10 21:50
再びお邪魔します。

 旧ソ連の崩壊によって海上には「米海軍の強敵」がいなくなったように思われました。そこで米海軍は「海上から大陸への干渉・関与」に重点を置く事を考えました。それで造られた(空母や揚陸艦よりも手軽に実現)のが「対地駆逐艦」ズムウォルト級だと聞いています。しかし中国の急激なキャッチアップ(追い付いたわけでも、ましてや追い越したわけでもないが)等で「やはり海上優勢の確保が大切」になり、その事で「方向性」から若干ずれてしまったのではないかと思われます。

 LCSも同様の構想で生まれましたが、「相手国の沿岸で戦う」にしても「こちらが優勢か否か」を考える必要があったと思われます。「こちらが優勢」なら哨戒艦艇、もっと言えば民間船の改造等で十分ですし、そうでないなら「普通の軍艦」でないと対処し切れません。そこが十分でなかったら「帯に短し襷に長し」のLCSが生まれてしまったのではないかと思われます。
ブロガー(志望)
2016/02/13 18:41

コメントする help

ニックネーム
本 文
F35戦闘機にまだ多数の「欠陥」 原因は米国の工業力の低下じゃないかね? 清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所 /BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる