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zoom RSS 「空母いぶき」のリアリティ

<<   作成日時 : 2015/11/14 13:33   >>

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かわぐちかいじ氏のマンガ、「空母いぶき」が1〜2巻が販売になっております。

お話は自衛隊が軽空母を導入、ざっくり言えば海自がフネを、空自が搭載機のF-35Bを運用する、艦長は空自のファイターパイロット上がりです。
「いぶき」は「いずも」級をベースに開発された軽空母で、スキージャンプ台を有しております。


フネ自体の設定に問題はありません。サイズ的にはF-35Bを運用するに足ります。僚艦へのいずもの燃料補給用のタンクなどを取り払えば、艦内スペースは大幅に広くなります。いぶきがそうだという描写はありませんが、そうでないとハンガーの容積が足りなくなるでしょう。
また艦首ソナーは必要ありません、作品中でソナーを撤去しているか否かはわかりませんが、艦首の形状をみるといずもと同じなので、ソナーを装備している可能性もあります。

運用面で言えばかなり怪しい部分があります。まず空母一隻では常に稼働はできません。本来3隻、少なくとも2隻は必要です。また稼働率をあげるのであれば航空機搭乗員を含めて、2クルー制にする手がありますが、今でさえ人で不足の海自には贅沢過ぎる選択になるでしょう。搭載機も然りです、軽空母といえども空母3隻になればかなりの予算と人員が必要になります。それを現在のレベルの防衛費で賄うのはかなりきついでしょう。F-35Bに関してはF-15Jの後継の一部として空自で調達するという選択もありますが。

またF-35Bの運用も空母自体でやることには問題があります。1隻であれば十数機しか機体がない。教導用やスペアの機体を入れても20機程度でしょう。運用コスト上効率的じゃありません。

かつての英軍は空軍と海軍のハリアー部隊を統合しておりましたが、そのような運用がよろしいのではないでしょうか。基本的には2〜3個飛行隊を陸上基地で運用、それを軽空母、揚陸艦、いずも級などで運用できるようにした方が柔軟に運用できるのではないでしょうか。

空母には専門の整備部隊を常駐させ、それ以外の艦では燃料・弾薬の補給だけでもよろしいでしょう。また地上の整備部隊は島嶼などにも展開できるような用意をしておく。つまりヘリ部隊のような運用を想定しておく。

あるいは空母は建造せず、機能をもった揚陸艦やいずも級だけでアドホック的に空母して使用する。

これならば空母が1隻でもある程度、艦載機を運用できるのではないでしょうか。例えば空母を3隻作って全てにF-35Bを搭載するよりもコスト的に安いはずです。


作品中で気になったのが、早期警戒能力です。少なくともこれまで固定翼の早期警戒機、あるいは早期警戒ヘリが登場しておりません。

早期警戒機がなければ、敵の先制攻撃を受ける事になります。それが嫌ならばE-2CやE-2D、E-767の下でしか空母部隊が運用できないことになるでしょう。だとすると空母の能力を限定的にしか使用できません。

現実的な案としては英海軍の用にMCH-101にロールオン・ロールオフタイプの早期警戒システムを搭載して運用することでしょう。これが常識的に考えて2〜4セットと相応のMCH-101、あるいは新たに調達されるUH-Xがこの派生型であればUH-101でしょうか、それらが必要です。

早期警戒ヘリはDDHにも護衛艦隊にも必要な装備であり、これがあまり話題に上らないのは不思議な話です。せっかくヘリ空母があるのですから導入すべきです。

作品中では「いぶき」を中心とする機動部隊にDDHがいませんが、早期警戒システムとMCH-101、さらに対潜ヘリを搭載したいずも級を随伴させれば機動部隊の能力は格段に向上するでしょう。いずも級ならば艦隊に給油もできるし、万が一空母が被弾しても、燃料補給や弾薬の補給の体制を整えておけば、継戦能力が維持でき、またいざというときに戦闘機を失わないための保険としても有用でしょう。さらにはF-35Bの予備機を搭載しておくことも可能でしょう。

実際問題として防衛予算と人員(これも予算問題に含まれますが)の上限を考えると空母導入はかなりハードルが高いでしょう。むしろ先述のようにVTOL機を基本的に地上で運用し、限定的に空母能力を有した、将来型の揚陸艦やDDHなどを利用して局部的に空母的に運用するのが現実的なところではないでしょうか。


とはいえ、今後作品がどの様は方向に展開するか楽しみです。
このような作品を通じて頭の体操をしてみることも有用ではないでしょうか。



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今週木曜日、渋谷で行われた漫画家の田中圭一氏のトークショーに行ってきました。
漫画家の生き残りに関しての興味深いお話が聞けました。
その昔月刊サイゾーで連載をしていたころ、編集長と雑談していたら「今連載中のマンガが終わるので、誰かいい人がいませんか?」と、尋ねられたので、面識は無かったのですが迷わず田中圭一氏を推薦しました。それで彼の連載が始まり、結構長く続きました。
そんなわけで、一度ご本人に会ってみたい思ってきたのですが、長年の希望がかなったわけです。




朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しました。
イスラム国がトヨタのランドクルーザーを使う理由
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2015110200004.html
陸自が導入した輸送防護車は使えない
机上の空論では済まない邦人救出の現場
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2015100200004.html

strong>東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
高額な早期警戒機が日本では「欠陥機」だった
周波数帯をまともに使えない大矛盾
http://toyokeizai.net/articles/-/88753

Japan In Depth に以下の記事を寄稿しました。
【わざわざ旧式兵器を新たに調達する陸自】〜国内企業のライセンス生産守る為?〜
http://japan-indepth.jp/?p=22467

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コメント(9件)

内 容 ニックネーム/日時
日本が空母を持つ事について言えば70・80年代の経済が好調だったときにアメリカから買うチャンスがあったんでしょうけど、あの時期にそれをやったら国内の反発が凄かったでしょうし。
でもキティホーク級位の空母は持ってたほうが軍事的に取れるオプションが多くなっただろうから、今思うと「ひゅうが」以降の無理矢理ヘリ空母よりはスッキリしたように思えるんですよね・・・
八王子の白豚
2015/11/14 16:51
かわぐち先生の作品をよく愛読しています。沈黙の艦隊、ジパング、太陽の黙示録等
フィクションであるがフィクションらしくない。かわぐち先生の作品の真骨頂です。
軍事、国際政治は 堅い内容なので活字では理解が難しいのが一般的です。かわぐち先生の漫画は難しいことをわかりやすくしているので子供でも読みやすいと思います。
元キャプテン
2015/11/14 19:29
艦隊編成も、かなり変則的ですよね。「いぶき」を中心にイージス艦「あたご」と「ちょうかい」、それにDD「ゆうぎり」「せとぎり」とSS「けんりゅう」ですか。正直、原潜でもない「けんりゅう」が艦隊に随伴出来るとは思えませんが。それにオスプレイはありますが、たしかにAEWヘリも無いですね。それらを勘案すると、やっぱり中途半端な艦としか・・・・
KU
2015/11/15 08:21
清谷様

第一話の最終ページに「いぶき」の図面が出てきますが、艦首に「いずも」と同じような感じのソナーがついていました。

ところで、一時、オスプレイの早期警戒型が検討されているという話がありましたが、立ち消えになったのでしょうかね。
ブリンデン
2015/11/15 15:30
日本が空母機動部隊を保有・維持できるか?
現状の予算・体制・環境では無理でしょう。しかし、大幅なリストラや働かねえ高級取りの幹部の首切り、財務省主計官の説得ができれば可能でしょう。
イギリスは日本と同等の予算・兵力です。空母や原子力潜水艦、弾道ミサイルを保有・維持しています。なぜ、できるのか?人件費を抑制しているからですよ。階級・年齢は上に行くにしたがって小さくなり若いうちに勧奨退職の制度があります。浪花節の仲良しクラブではありませんよ。日本軍と違って。
過去、部隊視察に訪れた現役のイギリス軍の中佐が私に本音をぽつりと おたくら=自衛隊を軍人とは思っていない、武装公務員としか思っていない。
今の内局の官僚や将官クラスにリストラする覚悟・勇気は微塵にもありませんが。
明治に軍艦を買うために士官を整理解雇したり、大正の軍縮では将校4万人をリストラし、戦車や航空機を買いました。何かを得ようとすれば何かを捨てなければならないことは世の常です。
元キャプテン
2015/11/16 22:02
お邪魔します。
 まずは「空母に何をさせるのか」ではないかと思います。「アウェイでの航空・海上優勢の確保」であれば6万トン以上のCTOL母艦が必要でしょうが、それをしなければならないのはアメリカぐらいではないかと。日本は先の大戦で潜水艦及び機雷によって海上交通を破壊されて敗北しました。その経験からか海自は対潜・対機雷に注力してきました(的外れな事もありましたが)。近年中国の海洋進出(占有)によって「島を奪われ・押えられる事による海上交通への影響」の可能性が出てきました(旧ソ連は潜水艦がメイン?)。となればやはり「必要に応じて揚陸艦で運用」というのが望ましいのではないかと思われます。
ブロガー(志望)
2015/11/16 23:32
いぶきという漫画はかわぐち先生の作品の中で最も現実味があると思います。
民主党政権時の22防衛計画大綱つまり動的防衛力ですが、 保守系のマスコミー 産経、読売に支持を受けました。
また、民主党は安保法制の対案として 領域警備法案を提出しています。
いつ、どこでがわからない宇宙みたいな話より、目の前の現実・危機に対処することが肝要ではないでしょうか?
民主党の防衛政策の方向性は常識的で真っ当だと思います。動的防衛力というドクトリンは方向性として間違ってはいないと思います。
アメリカの穴を舐めるより、自国の領土を守ることが先決ではないでしょうか?
元キャプテン
2015/11/17 18:37
そもそも、かわぐち氏の作品ってミリオタ視点で見れば突っ込みどころだらけ。
Netrighthunter
2016/01/11 13:37
ミリオタは2巻P89の「ボフォース対潜弾、発射準備!!」と言う台詞に突っ込み入れる。
NetrightHunter
2016/01/15 14:21

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