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zoom RSS MRJ初飛行。 日本の航空産業の行方

<<   作成日時 : 2015/11/11 22:04   >>

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やっとMRJが初飛行を行いました。

何はともあれ、という感じです。
初めてのパリ航空ショーでは、日本大使公邸で開催したレセプショを開くも潜在顧客もプレスも招待せずに日本の関係者ばかりで飲み食いしており、当事者意識の無さに呆れましたが、その後意識改革もあって、なんとかここまで来たというところでしょうか。

重工本体ではなく、三菱航空機として独立させたのも功を奏したのでしょう。

前世紀、後半に日本で航空産業が育たたなかったのは、経産省の作戦ミスと防衛でリスクのない商売に慣れた業界の体質が大きな要因だったでしょう。
航空機以外でも売れるものは多数ありましたし、航空機は防衛庁が無リスクで全量買い上げてくれる。それは企業努力せずに、膨れ上がるGDPにスライドして売上があってきた。これでスポイルされて当然です。

リスクを負って、航空機で勝負する必要も薄い時代でした。

その昔747の開発でつまずいたボーイングが日本に737の身売りを打診してきたことがありましたが、あの時それを受け入れていれば今頃ボーング、エアバスに継いで1極となっていた可能性もないもでないでしょう。エンブラエルですらあそこまで成長したのですから。

ところが日本の官僚にも業界にもそのような度胸は無かったわけです。

軍用機が輸出できない我が国ですから、民間機に特化すればよかったわけです。
それをおこなっていれば、今頃航空産業の姿は大きく変わっていたでしょう。
そうであれば、防衛産業もマーケットを意識した製品づくりを行えたのではないでしょうか。

対して欧州には強い危機感がありました。独自の旅客機メーカーがなければアメリカにやられる。多分エアバスがなければ、今頃どこの国もボーイングの言い値で旅客機を買わざるをえなかったでしょう。であれば、これほど海外旅行が手軽にはなっていなかったでしょう。

そのエアバスは30年もかけて税金じゃぶじゃぶ使って、どうにか商売になることろまで成長しました。そのくらいの負担は我が国だってできたはずです。くだらない箱物に使う予算があれば航空産業に出す補助金なんて安いもんでした。ところが乗数効果も期待できない土建にばらまいて無駄遣いをして、今の借金の山です。


また航空機メーカ−はボーイングやエアバスなどの下請け仕事で潤ってきましたらから、ますます自分でリスクを取って商売をするという気質が日本の航空機メーカーからなくなり、防衛費が下がってきても官需にしがみつく体質が染み付いてしました。

こんな体質ですから、防衛省向けの機体でもまともなものができない。何しろどんなクズをつくっても天下りさえ受けいれれば買い取ってくれるわけです。リスクがない。イスラエルみたいに常に戦争をしているわけでもなく、実戦で機体が使用されるなんて運用側もサラサラ考えていない。

そんな状態で世界一線の航空機が開発できるでしょうか。まともな思考力がある人間ならば、大本営発表的な、自衛隊の兵器の能力を疑いたくなるのが普通でしょう。

川重はC-2の民間転用を未だに謳っていますが、それは無理です。市場で売るためのMRJは機体開発と平行して滞空・型式証明を取る作業をしてきましたが、苦戦の連続で多額の費用をかけてきました。多くの外国製コンポーネントを採用しているMRJでもこんな状態です。

はじめから市場で売るつもりもなく、無駄に国産コンポーネントを使用した機体でそれが可能でしょうか。更に申せば、完成してから滞空・型式証明をとるとなると何倍もコストが掛かるのが普通です。
MRJよりも遥かにセールス機数が少ないであろう、C-2民間転用機にそこまでカネを掛けるでしょうか。
しかも間違って10機ぐらい売れたら大変です。採算分岐は完全に赤字、そこでも機体の寿命が尽きるまでアフターケアをしなければならない。YS-11で嫌というほど体験した悪夢の再現です。

そんなことも知らずに、C-2の民間転用機は世界で引く手あまただと大騒ぎするのは、リテラシーの欠如です。
それが中学生ぐらいまでならともかく、技術愛国心に燃えたいい歳した大人が信じているのは痛すぎる光景です。まあ、その手の人たちに限って事情通という自意識が高かったり、選民意識をもっていたりするので大変です。

MRJで三菱重工の航空宇宙部門は市場での厳しい現実に直面し、そこで売れる機体をつくるべく奮闘してきました。日本の航空産業にとってこれは大きな財産です。MRJが成功し、後に続く機体、後に続く企業が出てきて欲しいものです。

陸自のUH-XでエアバスのX9が選定されていれば、ヘリの分野でも市場参入が加速され、売上も大きく伸びたでしょう。UH-Xの選定には政治的な介入があったとの声もききます。多分その通りでしょう。要求されるものが当初と全く異なっていました。

ですが、政治的介入があったとすればそれは極めて大きな失敗でした。日本のヘリ産業の遅滞を招くだけではなく、日本はゲームのルールを途中で変えるアンフェアで信用出来ない国であるというイメージを強く諸外国、ことに欧州に与えました。
一同失った信用を回復することは容易ではありません。
また、今後欧州大陸最大の防衛航空宇宙企業であるエアバスから意趣返し受ける可能でもあります。

航空産業よりも日本の政界や官界のセンスや常識により問題があるように思えます。


朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しました。
イスラム国がトヨタのランドクルーザーを使う理由
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2015110200004.html
陸自が導入した輸送防護車は使えない
机上の空論では済まない邦人救出の現場
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2015100200004.html

strong>東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
高額な早期警戒機が日本では「欠陥機」だった
周波数帯をまともに使えない大矛盾
http://toyokeizai.net/articles/-/88753

Japan In Depth に以下の記事を寄稿しました。
【わざわざ旧式兵器を新たに調達する陸自】〜国内企業のライセンス生産守る為?〜
http://japan-indepth.jp/?p=22467

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コメント(9件)

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まあ売れないでしょうね・・・少なくとも機体サイズ同等はエアバスA400が居る。

足の速さでジェット機でもエンブラエルC-390・・・

軍用機転用民間貨物機という余りにもニッチな市場にライバルが多すぎる老舗C130も現在です。

自慢のスピードも悪い燃費の引き換えで経済性を重視する民間市場では不利以外何ものでもない。
エンリステッド
2015/11/11 23:13
MRJですか、「良い物を作ったんだから売れるはずだ」でこの10年くらいに家電業界が味わった辛酸を舐めさせられるような気がしますね。
その性能が自己満足では売れませんよ?
それなりに下調べをして仕様を決めているのでしょうけど、MRJのライバルは既に市場で実績を残してきています。これを打ち破るのは生半可な努力では無理でしょう。
営業部門も製造部門も更なる努力が要求されますね〜
まあ、頑張ってもらいましょう!
八王子の白豚
2015/11/12 00:41
>乗数効果も期待できない土建にばらまいて無駄遣いをして、今の借金の山です。

まず、この御指摘については、欧米先進国と比べるならば、道路舗装率や上下水道等、戦後の日本の社会資本は、大幅に遅れており、これ等の改善の為、どうしてもこの分野に力を入れざるを得ませんでした。その上、欧米先進国では財政再建下でも、社会資本整備の予算額を拡大してきましたから、ある意味、現状は仕方がなかった点もあるのでは?唯、もう少し事業の精査成り、何なりが必要なのは、確かですが。其れから、私が以前から再三に渡り、述べている様に技術開発の為、試行錯誤が必要であり、また、高コストで有っても、技術基盤育成の為、国産が優先される事が有ります。一例として、エアバス A400MはC−2以上の開発費を掛け、すったもんだの挙句、漸く実用に至った経緯が有りますから、C−2はまだ是からではないですか。その上、高度の技術を持つ欧州や実戦経験豊富な南アやイスラエルですら、有人ステルス機のロールアウトに至っていないにも関わらず、日本は制約が大きい中、MRJの初飛行に成功しましたし、ATD-Xの初飛行が待っています。ですから、この分野では、過去、紆余曲折が有ったにしろ、進むべき道はそれ程違えなかったのではないでしょうか?また、陸自のUH-Xで『政治的介入があったとすればそれは極めて大きな失敗でした。』この御指摘はある意味尤な点も有りますが、その国の国軍なり、防衛組織の装備選定や武器輸出はある意味、『政治』では?日本は太平洋を隔てた米とは隣国同士で日米安保下にあります、その上、太平洋上には、両国に逆らえるだけの力を持つ国や勢力は存在しない。欧州とは、この点一つを取っても違いますが…。

如何でしょうか?
チャイカ
2015/11/12 04:56
随分前ですが当時の三菱航空機の江川社長が「前な良い物を作っれば売れると思っていたが、考えが替わった、売れるものがいいものだ」と仰っておりましたが、この発言を聞いた時にMRJは行けるかもしれない、と感じました。現実を目にして三菱航空機の意識は確実に変わっていると思います。

>インフラ
使わない公民館とか箱物、戦場ヶ原で止まる新幹線とか、これらはまともなインフラ投資ではないでしょう。年度末の不要な工事も然りです。こういうのがあまりにも多すぎた。また30年で家を壊して新築するというシステムのせいでストック形成がすすまず、不要な土建企業の温存となったことも問題です。

キヨタニ
2015/11/12 10:51
C−2はまだ是。
よく誤解されていますが、C-2が安く上がっているといいますが、A400Mはエンジン開発費や耐空証明などの費用も開発費に含まれており、両者をクラvべて高いの安いの言っても仕方ない。
そもそもC-2は不正地での運用を考えていない、事実上、「ランプドアをもった民間輸送機」であり武人の盤用に耐えられない代物でしょう。またPKOや人道援助でも運用が制限されるし、戦時には尚更使用が制限されます。

しかも当初P−1と共用部品を多用するとしていたが、それが無理でかなり専用コンポーネントを使用するはめになって開発費、調達費が高騰している。

これらを航空評論がや専門誌が指摘しないのは問題だし、またこれらの事実を無視してC-2が成功というのは現実を見ていないと思います。

C-2は戦争がおこらない限り、成功というのであればそれは否定しませんが。戦争が無いことを前提とするならば戦闘機も必要ないし、自衛隊も必要ない、ということになります。

MRJがここまでこぎつけたのは先のような意識の改革、そして海外製のコンポーネントの多用という現実路線をとり、マーケットのニーズを真面目に学んだからです。以前の親方日の丸体質で開発していればずっと前に失敗して撤退していたでしょう。
>欧州とは、この点一つを取っても違いますが…。
欧州だって、特に英国は安全保障では米国頼みです。イスラエルだってそうです。ですが、要求することはしています。米国だよりだからと相手の要求をすべて受けいれ、国益を差し出すのは外交とはいいません。それは独立国ではなくかつてのフィリピンのような属国、植民地の所業です。それをまともな国は現実路線とはいいません。

キヨタニ
2015/11/12 10:52
キヨタニ様
ご無沙汰しておりました。さて,本文中,「・・・日本はゲームのルールを途中で変えるアンフェアで信用出来ない国であるというイメージを強く諸外国、ことに欧州に与えました。」と,ありますが,これは,調達に関する公示が出た後,“政治介入”があり,調達結果に重大な変化があった,とされる情報を,キヨタニ様が“調査取材”によって得た,という理解でよろしいでしょうか?エアバス社社長が急遽来日し,結果に不満がある,との報道はありましたが,その後,訴訟に発展するものか注目していたところではあります。こんな事は望んではおりませんが,証拠(陳述でも)があれば,これは私が子供のころにみた,疑獄レベルまで・・・続報を,お待ちしております。
関心
2015/11/12 17:57
UH−Xに関してはプロジェクの核心に近い関係者と長年接触してきましたが、明らかにFHIするはずはない流れでした。決定後の話はそれまでとは全く異なっています。仕切りなおしたUH−Xは、防衛需要を使って、輸出や民需で売れる機体を作ることが第一でした、それが防衛以外での販売はさほどい着たいぜずに、安いほうがいいにまるっきり変わっていました。
人間で言えばまるで人格が替わってしまったかのような感じです。

エアバスヘリのCEOの会見にも出席しましたし、彼を積極した外国のメディア関係者とも情報交換をしましたが、怒りはかなりのもののようです。それはエアバスだけではなく、独仏政府関係者もです。ただ訴訟は難しいでしょう。ですが意趣返しを何処かで行われる可能性はあります。
キヨタニ
2015/11/13 00:35
インドネシア政府が日本製ではなく、中国製の高速鉄道を採用したことに菅官房長官も激怒しているようですが、インドネシアの担当大臣は「技術よりお金」で中国製を採用したんだそうです。
まさしく「技術愛国心に燃えたいい歳した大人」による「痛すぎる光景」と言わざるを得ません。
ひゃっはー
2015/11/16 21:22
お邪魔します。
 先日ラグビーW杯で強豪南アフリカに勝ったら、それまでラグビーに興味の無かった人達が大はしゃぎしました。MRJもなまじ脚光が当たったばかりに、口や手を出す輩が出てきてかき回されないかが心配です。例えば「国産部品をもっと使え」「あたかももの凄い航空機であるかの如く持ち上げ、そうでないと途端に掌を返す」「世界の航空会社が普通にやっている『ボーイングとエアバスを両天秤』をJALがやったら、それに難色を示すといった。
 それからC-2の民間転用ですが、それは「少ししか調達しない・できないのにわざわざ独自開発する必要があるのか」への「言い返し」ではないかと思われます。ですから実際の売買の話が持ち上がったら「機密が…」といった「言い返し」をするのではないかと。そこで”心情”を察して「何をか言わんや、よく了解した」と言わないと、日本ではKYのレッテルを貼られるのでしょうけど(UH-Xででも同様?)。
ブロガー(志望)
2015/11/16 23:13

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