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zoom RSS エビデンス至上主義 ロンパールーム症候群の隘路

<<   作成日時 : 2015/10/16 15:49   >>

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 以前のエントリーで以下のように書きました。

>このとき富士重工はIRAN(inspection and repair as necessary、航空機定期修理)の期間を大幅に伸ばすことなどによって、整備コストを低減できると主張しました。空幕装備部はそれを鵜呑みにしたわけですが、ぼくは当時僅かな期間でIRANを延ばすことは不可能だと指摘しました。

 その結果ですが、まさにそれ見たことかで、会計監査院は空自が導入した初等練習機T−7が、2003年度の導入からの17年間で約21億8300万円と見積もられていた整備費用が、実際には10年度までの8年間ですでに約18億2500万円と全体の約8割に達していたとして、改善を求めました。


 つまり富士重と空幕の整備コストを下げられるという主張は嘘だったわけです。まあ控えめにいっても事実ではなかったわけです。
嘘でないならば当時の空幕の装備部航空機課は無能者の集まりだったことになります。


産経新聞・杉本大本営発表:T7練習機のスキャンダルや問題は報道しません
http://kiyotani.at.webry.info/201505/article_12.html


 これについて、会計検査院の文書を根拠にした反論がありました。

http://report.jbaudit.go.jp/org/pdf/240927_zenbun_2.pdf

 IRAN費用は当初の見積もりよりも減っている。その他の費用が増えても、それは想定外である。というものです。でお前を論破した、「負けを認めろ」と主張するコメントもありました。

 なんか、論破、論破と ロンパールームみたいですね。

 率直に申し上げれば、根拠となるエビデンスを盲信するするのはリテラシー能力が欠けた、反知性主義です。

 まずはそのエビデンスを信用するに値するかどうか評価が必要まず必要です。当局の書類だから全て正しいと頭から信じ、特にその一部だけを抜きだし、それを論拠にすべてに拡大するのは知的な行為とはいえません。

 これが中立的な第三者機関が諸経費の定義を決めたのであれば、信用できるでしょう。ですが、空自が決めたものです。つまり泥棒が縄をなっている状態です。

 例えば昨今東芝の不正会計が問題がありましたが、東芝が公的な会計基準を決める立場にあり、自分に都合のいいルールをつくれば、東芝の不正会計は「不正会計」にはなりません。

 このケースでは空自はIRANなどライフ・サイクル・コストのごく一部だけを、評価の対象にしています。例えばバケツに5つある穴のうちのひとつだけを塞ぎ、「バケツの穴は塞ぎました」としているわけです。あとの4つの穴から水が漏れることは言うまでもありません。


 幾度と無く申しておりますが、情報の基本は疑うことです。

 ところがご主張の方々はまず、「航空自衛隊や富士重工は絶対に正しい、嘘も情報操作も行わないという前提に立っていることになります。

 そして実際にT-7練習機の整備費用は予定よりも大幅に膨らんだわけです。空自が富士重に仕事が落ちるようにあえて、項目の一部だけを管理対象にしたのは明らかでしょう。
 IRAN費用=整備費用 ではありません。


 当局の書面が常に正しいのであれば、水俣病も認定されなかったでしょう。10年以上も国はそんなものはないと、しらを切っていました。
ロンパールーム症候群の人たちは、たとえば騒ぎが起こって5年目でこの件に関して、国の書類で不備はない、公害病などインチキだと主張するのでしょう。

 また多くの杜撰な公共事業も同様です。これらも当然始めから破綻がわかっていても、そのようなことはかかれません。適当な数字をでっち上げてそれらしく計画書が作られます。
 でも計画書に書いてあったから、赤字を垂れ流しても計画を作った連中には全く責任はなかった、不可抗力だったと弁護するようなものです。


 そのような主張をするならば。中国の国防費も全面的に信用すべきということになります。中国の国防費は公表額の数倍というのは定説ですが、中国当局の書面を信じるならば、そのような「デマ」は信じてはいけないことになります。
 何しろ国連常任理国様の「権威ある発表」です。


 役人というのは都合のいいように数字や内容を作ることは少なくありません。そして嘘はつかないけども事実を伝えず、相手をご誘導するこも多々有ります。

 ここで何度も紹介しておりますが、石破茂氏が防衛庁長官だったころ、彼が外国製NBC車輌をつなぎで数輌導入したらどうかと行った時に防衛省の役人は、「大臣それは幅が2・5メートル以上あり、道路法の規制でできません」説得し、石破氏は諦めました。
 ところが後日ぼくが国交省を取材したところ、年に1回国交省に書類を出すだけで使用が可能でした。そして現在開発されている機動戦闘車は横幅が約3メートルです。

 その官僚は嘘は言っておりません。ですが事実を大臣には伝えていない。結果として自分たちの長である大臣すら騙しているわけです。こういう役所の作った書類や計画を頭から信じていいわけがありません。

 役所の書いた書類は無批判にすべて信じろという「ロンパールーム症候群」は反知性的であります。ぼくはそのような思考停止に与しません。


 まして、軍事の世界は公開されない情報が多いわけです。公開された都合のいい情報だけを報道するなら文屋も情報機関もいりません。

 そもそもこのT-7のコンペは始めから怪しいわけです。

 当初、富士重工は調達単価を何割も下げました。ご存知のように防衛省の装備は原材料や工数を算定し、それに利益を載せて請求します。調達単価が何割も下がるということは、材料を見直し、工数を大幅に減らすことを意味しますが、富士重工がそのようなことをやったという事実はありません。

 そして二回のコンペで富士重工はIRANの間隔を開けることになどによって整備コストをさげられるとしたわけです。
 繰り返しますが空自は富士重案の方がライフ・サイクル・コストが安いと判断したのです。ですが実際に採用後の整備費用はあっという間に予定していたライフ・サイクル・コストを食いつぶして、整備は大幅に超過しているわけです。
 そして空自が対象としてきた「整備」は実際の整備のIRANなどのごく一部です。

 仮に空自に何らかの富士重に対する配慮がなく、管理すべき整備コストを規定したならば空幕の装備は素人の無能者だらけで、まともなコスト計算すらできない組織だったということになります。


 あくまで空自は正しい、公的な資料は全て正しいだという人をぼくは説得しようとは思いません。それはある種の原理主義であり、宗教だからです。


 実際に整備コストは想定より大幅高騰してもなお、整備費=IRAN費用だったのだ、その整備費用は空自の管理するところはなかったのだと、泥棒が縄をなう式の官僚作文が唯一雑体のエビデンスだと主張するならば、ご自身の信じるのもを信じてくださいとい言う他はありません。このテの人に限ってご自分が意識とリテラシーが高いと思い込んでいるようですが、それはイリュージョンです。
 いくら丁寧に説明しても、始めから結論ありきの知性とリテラシーのない人に何を説明しても無駄でしょう。


 
朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しました。
陸自が導入した輸送防護車は使えない
机上の空論では済まない邦人救出の現場
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2015100200004.html


東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
陸自「攻撃ヘリ部隊」は、自滅の危機にある
オスプレイ大量調達の前に見直すべきこと
http://toyokeizai.net/articles/-/84832
エアバスは、なぜ日本政府に激怒しているのか
不透明すぎる日本の防衛調達の問題点
http://toyokeizai.net/articles/-/84639

東京防衛航空宇宙時評で軍事見本市、DSEIのレポートを掲載しています。
 http://www.tokyo-dar.com/














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コメント(8件)

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お邪魔します。
 問題は「それをどう捉えるか」ではないかと思われます。例えば「北斗晶は検診を受けていたにも関わらず、乳がんがリンパにまで転移していた」に対し「検診など無意味、あれは医者の金儲け」と捉える向きもあれば、「検診が完璧でないとすれば、どの程度のものなのか、どういった場合に有効でないのか」と捉える向きもあります。「どう捉えるか」には(常識も含めた)基礎的な知識と論理が必要であり、それらがなければ「それを生かす」どころか「それに振り回される」破目になるのではないかと思います。行きつく果てが「自分の信じたいものだけを信じ、したい事だけをしたいようにする」?
ブロガー(志望)
2015/10/17 11:46
清谷様へ

私の住んでいる町長はこんなことして情報を入手しています。
町の温泉のサウナで住民と裸の付き合いをして防災無線の進捗状況、農業用水の整備状況、職員の 働き具合等を住民から聞き出しています。私が思うには、職員の報告を鵜呑みにしない、都合の悪いことは隠蔽しているのでは?と町長は思っているのかもしれません。裸になれば肩書きは関係ありませんから。
自分が陸士の若い頃、師団長は駐屯地の浴場にて若い隊員と触れ合っていました。目的は上記の町長と同じ理由だと思います。
師団長も町長も幕僚や職員の報告が必ずしも正しいとは思ってもいないことです。裸の王さまにならないように戒めています。
元キャプテン
2015/10/17 12:21
清谷様へ

7月の大分で起きた 末棟1海尉が自宅に放火し、子供が4人焼死した事件について私なりの考察・推察を述べさせていただきます。
結論から述べさせていただくと職場のパワハラ・ストレスがメンタルの不調を招き、事件の間接的な要因になったと個人的には思っています。まず心療内科で治療を受けていたこと、毎週末、呉から大分 片道300キロかけて自宅へ帰っていたことから呉の職場に心理的にいたくないことが行動が物語っています。
単身赴任がストレスか? 本心はしたくないでしょう。しかし子供が8人いて官舎や賃貸住宅に物理的に住むことは不可能です。また修学している子供も転校を余儀されるでしょう。幹部自衛官は単身赴任・転勤は当然で 彼もそのことは覚悟しています。
マスコミ報道であった夫婦喧嘩は動機とは考えにくいでしょう。
インターネットでは保険金殺人とか愛人ができて子供が邪魔になったとか あることないこと尾ひれついています。あるオバチャンは鬼畜だとかロクデナシのバカ親父だと罵っています。それは思考停止、脳みそのシワが増えません。
疑問を持つことも大事ですが想像力・ イマジネーションも 情報を得るには重要 だと思います。
そこで清谷さんに質問ですがジャーナリストにとって想像力 ・イマジネーションは必要な資質・能力なのでしょうか?
元キャプテン
2015/10/17 12:50
論破した、と主張された方々も「防衛省の公開情報は正しい」という前提があってあの場で論を展開したはずです。
キヨタニさんは「そもそもその情報の信憑性が怪しい」という前提で論を展開していたので、論破も何も無かったのではないかと思います。
スタート地点が違う議論はゴールが同じになるはずがありませんからね。
八王子の白豚
2015/10/17 16:01
問題は整備費用が上昇した原因でしょう

@アメリカ合衆国における生産者物価の上昇を背景として同国からの輸入部品の単価が上昇したこと
A部品の製造中止等に伴う代替部品の取得に伴い価格が上昇したこと
B富士重工の提案では一定数量を一括して調達することを前提とした単価を使用していたのに対して、実際には貴省が商社等から必要数量を個別に購入するなどしていて調達条件が提案の内容と異なっていること
などによるもの

防衛省はこの詳細を明らかにすべきです。この程度は軍事研究でも掲載できる情報です。防衛機密とはなりえません
2CU
2015/10/19 13:48
車でいえば、車検代だけが維持運営費で、タイア代や保険、ガソリン代なども維持費にふくめていませんでした、みたいな話です。それをまともに信じるのは知性が低い、率直に申せばバカということです。
キヨタニ
2015/10/19 18:35
清谷様へ

常識を疑え!これに尽きます。
原子力ムラの日本の原発は事故は起きないとか太平洋戦争の神州不滅の日本は負けるはずがないという与太話は平気で信じ込んでいました。 常識を鵜呑みにするのはある意味、思考 停止ではないでしょうか?常識は時代と共に変わるし、個人の価値観や環境によって異なります。 そりゃ常識は主観的なものですから。
元キャプテン
2015/10/19 23:33
再びお邪魔します。

ネットで以下の記事を見つけました。

細切れにされた文章
他人の文章をしっかり読んでいないのではなく、読むことができないのだ。
http://iwatam-server.sakura.ne.jp/column/112/index.html

 清谷様は「お上の言っている事の"全て"が正しいわけではない。」といった事を言っておられます。例えば「10式戦車は74式及び90式戦車の後継として開発された」というのは"正しい"のでしょう。しかし「お上(ある人達)の言っている事は"全て"正しい」「お上(ある人達)の言っている事は"全て"正しくない」で考えている人達がいます。そういう人達にとっては「清谷は、お上の言っている事は"全て"正しくない=お上は嘘つきなどとほざくふてえ野郎だ」になるのではないかと思われます。
ブロガー(志望)
2015/10/25 20:40

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