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zoom RSS 【笛吹けど踊らず】当事者意識欠如の日本の防衛産業

<<   作成日時 : 2015/08/21 15:43   >>

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豪潜水艦受注、欧州勢に押され巻き返し図る日本勢
ウォール・ストリート・ジャーナル 2015年8月18日
http://jp.wsj.com/news/articles/SB12074596417245674887704581177461427854374


>総額およそ200億米ドル(2兆4800億円)に上るオーストラリアの
次期潜水艦導入計画は、6カ月前には日本企業2社が受注獲得の
本命だった。だが、ライバルの独仏企業があけすけに受注競争を
仕掛けているのと対照的に、日本勢は政府主導の秘密主義の
せいもあってか動きが鈍く、受注に失敗する可能性が出てきた。

>両社関係者は豪州では公の席には1回も現れていない。
豪州政府主催で3月に開かれた潜水艦計画の会議にも、
また受注者が海外での建造を決定すれば、多数の失業者が
出る可能性のある造船都市アデレードで7月に開かれた
議会公聴会にも両社からは誰も出席しなかった。

>前出の香田退役海将は、「日本勢はコンサルタントなどの
支援を得なければ負けると思う」と危機感をあらわにし、
「ダンスを踊ったことがない人が、いきなり国際社交界の
社交ダンスの中に入るのだから、ダンスのレッスンは
必要だろう」と話す。



 本来「製品」から言えば、豪州の潜水艦商戦は日本に圧倒的に有利なはずです。が、現実には極めて苦戦を余儀なくされております。

 理由は色々あるのですが、以前から申し上げておりますように、当事者であるメーカー、三菱重工、川崎重工に当事者意識がないことです。

 お上が動いてくれて、話を決めてくれたら話に乗っていいよ、というスタンスです。自分で仕事を取ってこようという意識が皆無 です。まあ、そんなんだから勝てるはずのUH−Xでも川重は負けたのでしょう。

 
 また仮に契約が獲得できそうになっても、重工両社の利権調整に難航するでしょう。それ以前に、その調整の困難さが、受注を難しくしています。
 
 本来1社でいいところ、2社も潜水艦を作る、それも神戸で工場が並んで作る必要がどこにあるでしょうか。2社を維持するために無理やり16年で潜水艦を退役させてきました。潜水艦に限らず、統合再編が必要です。ところがメーカーにも国もその気がありません。

 防衛省には他国の国防省のような商売の経験もノウハウもなく、経産省との連携も極めてあやふやです。しかも官邸には武器輸出の実態に詳しい人間がいないから、防衛省のバイアスのかかった情報を元に戦略を立てており、まさに「武士の商法」です。
 これでは勝てる戦いも勝てません。

 ですから、前から次善の策として商社を窓口にすることを提案しているわけです。それでも、結構難しいでしょう。何しろ日本のメーカーは事実上、国営企業と同じであり、ほんとうの意味でもビジネスを知りませんから、商社がいくら間に立って相手の言うことの意味を「翻訳」しても、状況や相手の言うことが理解できないでしょう。

 大手の防衛産業の場合、大抵が防衛部門の売上は数%に過ぎません。仮に防衛部門の売上が会社の1%で、これが10%伸びても、会社全体でいえば0.1%に過ぎません。ですから、トップマネジメントも防衛には関心が低いわけです。

 しかも、世間様から「死の商人」とし呼ばれるのを極度に恐れています。そんなに「恥ずかしい商売」なら止めればいいのに、止めません。

 しかも本業に対して貢献していないといっても、止めるわけには行きません。OBやら社内からうるさい事を言いわれるので、自分の任期中は放置プレイということになります。

 防衛事業部のトップにしても基本的にビジネスセンスがありません。顧客は防衛省だけ、天下りさえ受け入れておけば、「顧客」から文句は言われません。利益はコストに上乗せされる。国内での競争も殆ど無く、かつての国鉄や、郵便みたいなものです。

 かつてのソ連の企業同様に、そもそもビジネスとは何か、から勉強しなければならいわけです。

 率直に申し上げて、大手企業に輸出を期待するだけ無駄でしょう。むしろやる気のある中小企業、ベンダーを支援すべきです。彼らの輸出のノウハウが無いならば商社とかに販売は任せてもいいでしょう。

 やる気のない主契約者は防衛省が排除すべきです。どうせ10年後、20年後、調達予算は減りますから、いずれ事業規模を維持できなくなり、撤退するのは目に見えております。輸入調達が遅くなるか、早くなるのかの違いにすぎません。 そのような企業に血税を突っ込んで事業部門を維持してやる必要はありません。

 それが嫌ならば、やる気のある防衛省の調達や、海外輸出にやる気のある中小企業を応援し、彼らを優遇することです。大手企業の防衛部門を彼らに売らせてもいいでしょう。大手企業にとってはケチな金額の商売でも、中小企業にとってはビッグビジネスですし、人件費や間接経費が少ない中小企業が効率的に商売を回せば、利潤も上げられるはずです。



東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。

次期ヘリに富士重工を選定したのは間違いだ
やはり世界市場の動向を見ていない
http://toyokeizai.net/articles/-/80320

自衛隊は、やはり「隊員の命」を軽視している
戦闘を想定した準備はできていない<上>
http://toyokeizai.net/articles/-/78310

現行の救急キットでは多くの自衛隊員が死ぬ
戦闘を想定した準備はできていない<下>
http://toyokeizai.net/articles/-/78336



 

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コメント(17件)

内 容 ニックネーム/日時
一社独占を避け、競争確保と産業維持で二社体勢とかいう話がありますが、どうせ三菱と川崎の下流にある下請業者は一社分しかないんでしょうねえ。今年は三菱の下請けで来年は川崎の下請と言った形で。
人馬笛
2015/08/21 19:21
突然失礼します。初めて質問させていただきます。
失礼があったら申し訳ないです。
上記の内容のほかに 様々な視点にたつとインドネシア〔イスラムも含む〕に配慮しているのではないでしょうか?〔さんざん兵器の道具を補給してきましたが
にわかミリオタです。
2015/08/21 22:47
まあ、誠意に欠ける商売人のドイツ人が大して高性能なわけではないUボートを口の上手いフランス人と組んで売り込んできたら、そりゃ負けますわな。
売り方を知らない、セールスができない日本勢は品質で勝負するしかないでしょう。
でも、そのパターンは負けフラグですよね〜
八王子の白豚
2015/08/22 00:21
国内兵器産業の問題は企業だけでなく、官民のズブズブ構造が根幹にあるのだと思いますが。
本州や九州を機動戦闘車にするなら、90式とさほど戦闘能力が変わらない10式を製造する意味がない。
最初から新造などせずに、90式をアップデートすれば済んだ事です。
90式の射撃コンピュータは、パソコンがMS-DOSだけで動いていた時代の代物です。
今ならスマホのサイズでもっと高性能のものが用意できるでしょう。
小型化で空いたスペースに、ネットワーク機能を増設するなど難しい事ではありません。
作られたばかりの10式より、長年の運用で問題点の改良がされ、
整備ノウハウの蓄積がある90式の方が高い稼働率を維持できるでしょうし。
アップデートをやらなかった理由は一つでしょう。
天下り先を確保する為に三菱本体の儲けを多くする。
内部の入れ替えだけでは、三菱本体はさほど儲かりません。
機動戦闘車の開発も天下りした元陸将のゴリ押しで進められたようですし。
兵器一種類の新規開発と採用が、天下りを受け入れた企業への、
御褒美の一つになっている可能性も考えられます。
ヘリの採用がゴタゴタ続きなのも、もしかしたらその辺の事情も絡んでいるのかもしれません。
水陸両用車も結局新規開発する方向のようですが、もしかしたら・・。
採用や開発の決定時期を、高官の交代と企業顧問の入れ替えと比較すると
内部事情の片鱗が見えてくるかもしれませんが。
そう考えると一社独占より二社の方が都合がいい。
単純に考えて、天下り先が二倍になりますから。
そうなると一度開発決定したら、どれだけ問題があっても、どれだけ開発費が高騰しても、
防衛省には中止の決定などできません。
OBである元高官のメンツが潰れますから。
まあ、あくまで推測です。
張子の虎にウンザリ
2015/08/22 04:01
清谷さん
三菱や川重の何処が国営企業なのか説明して下さい。
資本的には全く有り得ないんですけど。
トカマク
2015/08/22 04:56
50トンの90式をトレーラー積載したら70トン超になるから
貨物フェリーや道路橋梁が保たない、だから長距離機動は困難との説があります。
でも韓国や台湾などは半世紀前から50トン級の戦車が主力なんですよね。
これらの国の半世紀前の道路や橋梁が現代日本のそれより強度があったとはとても思えない。
要は戦車など軍用重機材の積載通行は特例で認めていたんじゃないですか。
だったら日本も認めればいいんですよ。設計上道路も橋梁もトレーラー込み70トン超で大丈夫なはず。大した通行量でもないんだし。
憲法でさえ解釈変更出来るんだから道交法の改正なんざ屁みたいなもんでしょう。
そもそも10式や機動戦闘車が必要だということは、日本にまとまった機甲戦力が必要だということでしょう。
ならば数百両の90式を北海道に飼い殺しにするなど本来は許されないはず。
集団的自衛権がどうこうより、こういった実際の運用に関わる諸施策の改善のほうがずっと大事だと思います。
でもこういう地味な施策は政治家も官僚も誰もやりたがらないのでしょうね。
予算や人員が増えるわけでもなく、メーカーに仕事が回るわけでもな
い。
本音じゃどうせ戦車を必要とする大規模陸戦なんか起こりっこないと思ってる。
だったら適度にカネの回る新戦車と機動戦闘車でも作っとけ、といったところでしょうか。
きらきら星
2015/08/22 14:06
張子の虎にウンザリにウンザリする
エイブラムスの近代化改修が幾らするのか知ってればそんな発言は出ないわー。
トカマク
2015/08/22 19:05
張子の虎にウンザリさんへ
最後の一行で読む価値無い駄文だと判りました(^o^)
?
2015/08/22 22:59
お邪魔します。
 仕事は「食って行く、金を稼ぐ」だけではなく、「自己実現」「社会参加」の側面もあります。今日本の防衛産業に関わっている連中にとって防衛産業など「血と死と人の恨みに穢れた"穢れ"仕事」であり、「楽して儲けられる」か「しがらみで仕方無く」でやっている事でしょうから、「自己実現」にも「社会参加」にもなりようがないので、「まともに」やる気など起こらないのでしょう。それと「いざとなればアメリカ様が支援してくださる、それどころかアメリカ様が代りに戦ってくださる」という意識もあるのではとも思ったりします。
ブロガー(志望)
2015/08/23 14:44
続きです。
 リンクで行った東洋経済のサイトに「地方衰退」に関する記事があって、「衰退・縮小→一層の目先(の利益や人間関係等)への執着→以下同」の悪循環について書かれていました。地方や防衛関連だけではなく日本全体で「意欲のある人間程嫌気がさす」状態になり、その中から日本を出て行く人間も出てくる事でしょう(代りに外国から、その国が引きとめなかった人間が入って来る?)。「燃え尽きた恒星から流出したガスの中から新たな恒星が生まれる」ように、「意欲や能力のある人間が日本から出て行く」事は「日本」にとっては良くない事でも、「世界」にとっては良い事かも知れません。
ブロガー(志望)
2015/08/23 14:49
今晩は、チャイカです。
>今日本の防衛産業に関わっている連中にとって防衛産業など「血と死と人の恨みに穢れた"穢れ"仕事」であり、「楽して儲けられる」か「しがらみで仕方無く」でやっている事でしょうから、「自己実現」にも「社会参加」にもなりようがないので、「まともに」やる気など起こらないのでしょう。

ブロガー(志望)様のこの御指摘ですが、三菱は嘗て、会長が「国防は三菱の義務だ」と言い放ちましたが。

この言葉は強烈な自負と愛国心、義務感そのものであり、其処に穢れ云々は存在しませんが、如何でしょうか?

チャイカ
2015/08/24 00:07
ブロガー様とチャイカ様へ

仕事のモチベーションとして社会参加と自己実現があるという主張には支持をいたします。マズローの欲求の5段階には生存の欲求n安全の欲求n所属の欲求n承認の欲求n自己実現の欲求とあります。本能から精神的充実まであります。 具体例として宇宙飛行士の油井さんは前職は空自のパイロットですが空では満足せず宇宙に欲求を求め、2空佐という地位と公務員という安定性を捨て自己実現のために宇宙飛行士を目指しました。
特殊作戦群を創った荒谷さんは特殊部隊への冷遇と無理解に不満を持ち、定年前に制服を脱ぎました。自己実現が満たされなかったのではないでしょうか。
仕事のモチベーションや離職の動機にはマズローの欲求が関係します。欲求の段階毎、組織の地位によって求めるものがちがいます。学生は就職という安全の欲求、バイトは正社員という所属の欲求、正社員は上司・同僚に実績を認められたい。経営陣・管理職は会社の発展・利益を求める。
青臭い理想論ですが金だけの関係は信頼関係は築けません。金の切れ目は縁の切れ目になります。 大概の方は生活費を稼ぐため、食るため に仕事をすると思っています。金が目的ではなく、手段・方法にしか過ぎません。
元キャプテン
2015/08/24 18:10
これは官邸主導の案件でしょう。普通はモンキーモデルを造って輸出するんでしょうが、そこら辺が分かって無い官邸サイドから「最新技術を出せ」とか言われてるんじゃないのかな(笑)
マリンロイヤル
2015/08/24 20:42
提訴キタ━(゚∀゚)━!

>Airbus:日本の陸上自衛隊次期多用途ヘリコプターの受注敗北で提訴を検討

http://www.technobahn.com/articles/201508250854180000.html

まぁ、パートナーにも恵まれなかった気もしますが。
KU
2015/08/25 19:39
再びお邪魔します。
 人の真意を知るには言葉「だけ」ではなく「行動」も見なくてはなりません。時には「行動」の方に顕著に表れる事もあります。例えば三菱が米シアトルにMRJの開発拠点を設けたのは「このままでは埒があかない」という危機感の表れでしょうし、もっと言えば「日本国内"だけ"の夜郎自大にはしない」という事でしょう。で清谷様が当ブログで示されてきた日本の防衛産業の振る舞いの根底にあるものは何かと考察した結果が先の投稿です。三菱の会長は真面目に国の為を考えているのかも知れませんが、そのような考えが日本の防衛産業を動かしているように思えません。
ブロガー(志望)
2015/08/25 22:59
続きです。
 三菱やホンダが航空機を作るのは「リーガルジェットやビジネスジェットは市場が広がるので、新参者にも入る余地がある」と考えているのでしょう。一方防衛産業は「価格の高騰と調達数の減少の悪循環」に陥っています(安かろう悪かろうの途上国市場では中国に勝てない?)。欧米の防衛産業は「生き残る」ために合従連衡を行っていますが、日本の防衛産業は「(旨みもしくはしがらみが無くなったら?)いつでもやめてやる」とでも思っているのかも知れません。
ブロガー(志望)
2015/08/25 23:05
軍事機密や国益に関わることなので
もう少し専門家の意見も聞きたいですね。
一つの意見で固めるより多様なバランス感覚を持たせた方が中身も建設的な内容にまとまったと思います。
餅は餅屋
2015/08/26 00:29

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