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zoom RSS 三菱重の水陸両用車に将来性はありや?

<<   作成日時 : 2015/06/25 09:02   >>

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〔アングル〕三菱重の水陸両用車に米海兵隊が関心、BAEなどが協業模索
2015年 06月 24日 06:23 JST ロイター
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL3N0YQ2BZ20150623

三菱重の水陸両用車に米海兵隊が関心、BAEなどが協業模索三菱重の水陸両用車に米海兵隊が関心、BAEなどが協業模索

>三菱重工業 が研究を進める新型の水陸両用車に、米海兵隊が関心を示している。これまで突破できなかった技術的な壁を超えらえる可能性があるとして、特にエンジンに注目。海兵隊向け次期車両の開発に携わる英BAEシステムズ と米ゼネラル・ダイナミック(GD) が、それぞれ三菱重と協業を模索している。

>AAV7の水中での速度は時速7ノット(13キロ)。日本の関係者によると、三菱重が研究中の車両は時速20─25ノット(37キロ─46キロ)だという


 この三菱重工とGDの話は既にブログや記事で書いたかと思います。その話を聞いた時はGDしか名前は出てきませんでしたが、BAEも色気をだしているところは面白いですね。

ですがそもそも論で言えば、この手の水陸両用装甲車が必要かつ有用でしょうか。
 兵器の長射程化、精密誘導化、小型化が進んでおり、C4IRも進んでいる現在、上陸作戦のあり方は大きな変換期に来ていると言えます。
 
  そのようなときに思想の延長線上の、現用品に毛が生えたよう程度のものを大金かかけて開発する意義があるでしょうか。
 つまり蒸気機関車から電気機関車への過渡期に、高性能な蒸気機関車をつくるような話になるじゃないでしょうか。

 ある意味米海兵隊は、それがわかっていたからオスプレイの開発と導入にこだわってきたわけです。成功したかどうかは別として。

 基本的に水上航行能力と、防御力、陸上での生存性はトレードオフの関係にあります。それを実現することはピストルのように小型で隠し持てて、ライフルのように長射程で精度の高い射撃ができる銃が欲しいというようなものです。

 因みに普通の水陸両用装甲車、例えばAMVなどでも防御力を上げたタイプは水上航行が不能になっています。

 高速で水上航行し、リーフや防潮堤を超える踏破性能を有し、また十分な防御力を付加させるのは至難の業です。例えば巨大なエンジンを搭載したフロートでも付けて、上陸時に切り離すとかなら可能でしょうが、コスト的にも現実的ではないでしょう。

 むしろ高速の揚陸艇に通常型で踏破性能の高い装甲車を搭載するとか、空挺型の装甲車の方が現実的でしょう。むろんこれらも一長一短があるでしょうが、高速水陸両用車よりは技術的にも予算的にも現実的だと思います。

 また日米共同開発には問題もあります。米軍と自衛隊では開発にかける金額が文字通り桁違いです。開発費は折半と言われたら出せないでしょう。EFVだってあれだけ大金かけたわけです。
 日本側が調達数に併せてR&Dの比率を決めようといっても聞いてもらえるでしょうかね。恐らく日本側のそのような交渉能力はありません。共同開発をやるにしても米国企業の下請けでしょう。BAEといっても実態は米国支社の元UDがやるでしょうから、米国企業のようなものです。
かといって防衛省と三菱重工だけで開発予算が確保できるのか。現実的な製品が開発できるのか過去の実績をみると甚だ不安です。

 もっと根源的な問題は何輌調達するの、ということです。せいぜい数十輌の調達ですから、それに大金かけて開発するんですかということです。仮に50輌調達するとして、開発費に500億円かかれば調達単価が10億円として(多分それ以上かかるでしょう)開発費を頭割りすれば実質20億円、戦車の倍です。96式自走迫撃砲みたいにたった24輌しか調達しないのに新車種を開発するようなことになるんじゃないでしょうか。

 だいたいAAV7だって1回も南西諸島で上陸の試験もせず調達を決定しちゃった「軍隊」がまともなリサーチや試験をするんですかね?輸送艦から下ろす実験も●●でたった一回やったきりでしょう。あとは富士学校と土浦の武器学校で水遊びやって程度です。
世の中をなめているとしか思えません。

 率直に申し上げて、水陸両用部隊を編成するにあたって、まともなリサーチもしない組織に、次世代の水陸両方戦闘を想定し、しかるべき戦略やドクトリンを組み立てるつもりも能力もないでしょう。英海兵隊への調査でも今年になってからです。

 少なくとも5年ぐらい前から、世界の水陸両両用隊を調査すべきだったでしょう。ところがそんな知恵もないし、カネも出さない。カネが惜しいので、なんとなく米海兵隊を横目でみて、その劣化コピー。で、ろくに考えもしないでAAV7やオスプレイを大人買いしちゃったわけです。


 胡乱な水陸両用装甲車の開発よりも、必要な情報や知恵にちゃんと投資をするという、世の中のアタリマエのことが当たり前にできない組織の、あり方を変えるほうがさきでしょう。



span style=font-size:larger>東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
自衛官を国際貢献で犬死にさせていいのか
海外派遣の前に考えるべきこと(下)

http://toyokeizai.net/articles/-/73521
<自衛隊員の命は、ここまで軽視されている
海外派遣の前に考えるべきこと(上)

http://toyokeizai.net/articles/-/73492
川崎重工は「世界のヘリメーカー」になれるか
http://toyokeizai.net/articles/-/73114
「国際軍事見本市」が、日本の国防力を高める
日本での初開催イベントの意義は大きい
http://toyokeizai.net/articles/-/71866
防衛省の装備調達は、これから大きく変わる
キーマンの防衛省装備政策課長に聞く<上>
http://toyokeizai.net/articles/-/70516
日本の防衛産業は鎖国から開国へシフトする
キーマンの防衛省装備政策課長に聞く<下>
http://toyokeizai.net/articles/-/70529
防衛省装備調達に欠落している"大事なもの"
兵器調達の際に「時間」「総額」の概念がない
http://toyokeizai.net/articles/-/69177


WEBRONZAに以下の記事を寄稿しました。
オーサさんに聞く「マンガ」の魅力と不思議(上)
初めて読んだ高橋留美子先生の『らんま1/2』に自分で色を付けました
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2015060400004.html
北欧女子オーサさんに聞く「マンガ」の魅力(下)
「日本語がお上手ですね」と毎回聞かれると……
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2015060400005.html

Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました
【少女漫画男性主人公に異変アリ】〜ガチムチ、オタク、キモメンらがモッテモテ!〜
http://japan-indepth.jp/?p=18452
【お粗末な自衛隊の「衛生」装備】〜チュニジアでテロにあった女性医官は「特別」なのか?〜
http://japan-indepth.jp/?p=17323
【陸自ファーストエイド・キットが貧弱な件 1】〜陸幕広報は取材拒否〜
http://japan-indepth.jp/?p=17056
【陸自ファーストエイド・キットが貧弱な件 2】〜中谷防衛大臣の答弁に違和感〜
http://japan-indepth.jp/?p=17059







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コメント(20件)

内 容 ニックネーム/日時
清谷様

この話題についての記事を待っておりました。

ところで米軍も最新の強襲揚陸艦アメリカ級ではウェルドックを一旦廃止していますが、海兵隊の要望で3番艦からウェルドックを復活させるというニュースがあります。

水陸両用装甲車の必要性はわかりませんが、米海兵隊もLCACなどを使った揚陸にはこだわりがあるように思います。

ところで、三菱重工が開発している水陸両用装甲車は、防衛省の委託を受けて開発中なのでしょうか。それとも、自主開発なのでしょうか。
ブリンデン
2015/06/25 09:44
ゲリラ・コマンド、弾道ミサイル防衛、離島防衛と中途半端な結果に終わっています。
戦略、思想はどうでもいい。予算を獲得し、消費をすればいいんだ。成果はどうでもいい。本質はそうではないかと思います。
民間企業の事業は採算性・利益を求められますがやはり、お役所仕事なのでしょうか?
当たり前のことを当たり前にやることは一見簡単そうですが実に難しいことです。利権・組織内政治・パワーバランスが常識を狂わせるんでしょう。他の視点からの批判・チェックが必要なのでしょう。
元キャプテン
2015/06/25 10:01
これは三菱の自主開発と聞いておりますが、内局は期待をしているようです。ただ実用化は三菱側は15年はかかるだろうといっていたそうです。であれば、今回の試作は製品直前というものではなく、実証試験的な代物である可能性が高いでしょう。
キヨタニ
2015/06/25 14:07
清谷様

補足の解説、ありがとうございます。要素開発的な性格が強そうですね。
ブリンデン
2015/06/25 14:10
日本に水陸両用・海兵隊は必要か?
まず、そこから考えて、ドクトリンn編成n装備でしょう。 装備ありきではないでしょう。清谷さんは日本に海兵隊は必要だと思いますか?
離島防衛を重視するという政策から水陸両用戦の教範=テキストが出来上がっているのでしょうか?
持論を述べさせて頂くと海兵隊は要りません。既存の特殊部隊・空挺部隊で事足ります。問題は部隊の投射手段・輸送手段が問題です。ヘリの航続距離を増す、航空機の数を増やす。そこが課題ではないでしょうか?上陸作戦は戦史を見ても困難で犠牲を要します。圧倒的な制空権・制海権の確保が前提です。また上陸時、敵火に曝されます。日本は70年以上、海兵隊=海軍陸戦隊を持っておらず、水陸両用戦のノウハウは途絶えています。
元キャプテン
2015/06/25 15:50
実用化に15年・・・しかも、実際に使い物になるかどうか分からんシロモノに過度に期待・・・・いや、私もこのニュースに接した際は「早期に実用化されれば、AAVともオサラバ出来るw」と本気で考えてしまいましたが(>_<)。だけど15年は長いですよね・・・・あくまで技本(この10月には無くなりますが)はじめ、官側がアレコレ口を出さなければ、それなりのモノが出来上がりそうな気もしますが。

それと空挺戦闘車。以前のお話だと、コマツがそれらしいモノを開発中、ということで宜しかったでしょうか?いっそのこと、ドイツからヴィーゼル2を、或いはロシアからBMD-4Mを(各バリエーションも含めて)買っちゃえば良いのに、なんて思いましたが。
KU
2015/06/25 19:19
水陸両用車は軍用じゃなければ需要があってもいいように思えるんですがね〜

軍用としての価値はどうなんでしょう?
戦艦と同じでいずれ消え行く装備ではないかと。
八王子の白豚
2015/06/25 22:58
興味深いのは、日本語の記事には” 海兵隊のトゥーラン中将”と明記してるのに、英語版では匿名にしてるところです。 三菱か内局からロイターに漏れ、英文にする段階で伏せた。 そんなところでしょうか。 
 
そもそも、Dolan中将(Lt. General John L. Dolan)は空軍属の在日米軍司令官であって海兵隊ではないですよね。  このあたり、作意を感じます。
  
英文の記事を見ると中将の発言は否定的に見えます。 恐らく、日本に駐在していから”とりあえず” 現地企業を視察したとか。 ”防衛省側が薦めるので話しだけ聞いた”程度の話でしょう。 
 
ネトウヨが見ると「海兵隊のトップ、三菱の試作車両があまりに凄いので緊急来日! AESAレーダーのようにまた盗まれるのか!」とか騒いしちゃいそうですよね。
 
ロイターは膨らまし過ぎな記事が多いですね。。。
えいち
2015/06/26 04:41
えいちさん英語版でも匿名になってないですけど?
元キャッチャー
2015/06/26 19:58
で、この人じゃないのかいえいち氏?
https://en.m.wikipedia.org/wiki/John_A._Toolan
元キャッチャー
2015/06/26 20:24
>だいたいAAV7だって1回も南西諸島で上陸の試験もせず調達を決定しちゃった「軍隊」がまともなリサーチや試験をするんですかね?
>少なくとも5年ぐらい前から、世界の水陸両方部隊を調査すべきだった

と書かれていますが、中国の海洋進出(侵略)がHOTな話題となる現在ならともかく、5年前に「両用戦力の整備」はきたのでしょうか?
そして、政治的な要求を無視していないでしょうか?「島嶼奪還能力を確保する」という対内、対外的アピールがあっての購入であり、運用研究(調査)ではないでしょうか。

清谷さんには、「自衛隊はポジリストを採用する組織」であるという認識や社会情勢などが抜け落ちていると感じました。
前はセーラー
2015/06/26 23:39
まあモノになるかのか?装備品としての実用性を含む将来性はどうなるか分かりませんが。

三菱とGDの共同プライベートベンチャーでやる分には自由にやらせといたら良いでしょう(まあ公金使ってないんだからドコからも文句言われる筋合いはないんですが)。

変に防衛省にしろ海兵隊が絡まない方がいい結果がでるかも知れない。
海軍亭主
2015/06/27 07:28
>、5年前に「両用戦力の整備」はきたのでしょうか?
白書では10年ぐらい前から西方重視を謳っています。また水陸両用部隊のような部隊を編成する前にはリサーチや根回しもいります。つまり1年や2年
でできるものではありません。

実際にぼくは5年ぐらい前から水陸両方部隊の話は中の人達から聞いております。ということはそれ以前から動いていたということでしょう。

キヨタニ
2015/06/27 12:58
米海兵隊がAAV7の後継求めてんだから採用されたらパテントで開発費はなんとかなるんじゃないのと、アメさんが水陸両用車を要るっていってんだからオワタ代物じゃないんじゃないかね
元キャッチャー
2015/06/27 16:22
次世代の水陸両方戦闘
世界の水陸両方部隊
水陸両用の間違いでは?
2015/06/28 12:44
お邪魔します。
 問題は「上陸作戦の際、敵は”何で”反撃してくるか、陸に上がる前後という最も脆弱な状態を”どうやって”守るか。」ではないかと思われます(事前に空襲や艦砲射撃等を徹底したとしても、敵陸上戦力を”完全に”駆逐する事は困難)。水陸両用車は敵が”銃”で反撃するという前提の兵器と思われます。また陸上と水上をある程度連続させられるという利点もあります。しかし敵の反撃が”地対艦ミサイル””携帯ロケット弾”だった場合、通常の艦艇及び車両でも容易でないこれらに対しては「船としては本物の船に劣り、車としては本物の車に劣る」水陸両用車の弱点がクローズアップされるのではないかと思われます。
ブロガー(志望)
2015/06/28 18:10
続きです。
 水陸両用車の長所は「車にとっては深過ぎ、船にとっては浅過ぎる状況にも対応可能」と思われますので、上陸作戦よりも「湿地帯、または川・水路が網目のようになっている場所での運用」の方が向いているものと思われます。「水浸しの土砂または瓦礫の中での救助他の活動」のために、民間型の水陸両用車を消防・警察・自治体等も合わせて調達し、それを必要に応じて「上陸し、かつ残った敵を掃討した後の、船と陸とのピストン輸送に活用する」のが良いのではと思ったりします。
ブロガー(志望)
2015/06/28 18:11
米軍のリップサービスを記事にしただけでしょ。過去の蓄積が無いのに、アメリカより良いモノが出来る可能性は無いですよ。日本の軍事技術全般に言える事です。
マリンロイヤル
2015/06/28 22:23
何とも視野の狭い記事でした(笑)
今夜のオカズ
2015/07/15 23:37
ヘリコプターは兵士を守れませんし空挺車両は機関銃にも耐えられない代物ですよ。
10式戦車を浜辺に空輸できるなら水陸両用車も要らないかもしれませんが。
かんずめ
2015/09/27 19:16

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