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zoom RSS 円安のデメリットを説明してこなったマスメディア

<<   作成日時 : 2014/10/23 13:01   >>

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 さて、先月末からの急速な円安が進行したためか、最近円安の問題点を指摘する報道や主張がメディアで増えてきました。

 ぼくに言わせれば、何を今更です。

 安倍首相の就任前から、円安誘導の問題点は分かっていたはずです。
 ところが安倍人気に日和ったのか、メディアは円安のデメリットを解説することも、警告することも少なく、デフレがインフレになれば景気が良くなるという安倍政権の言い分ばかりを垂れ流してきました。

 無論円安にもメリットがあります。ですが、メリット・デメリットの両論併記を行って報道、解説するのが新聞やらテレビやらの仕事でしょう。

 マスメディアはまた以前から円安になれば景気がよくなるという安易な「信仰」を垂れ流してきました。典型なのが円が高くなると大変になるという、町工場の映像がステレオタイプに流されていました。 TV局の人間の頭の中はステレオタイプの、しかも古い時代の情報しかはいっていないからでしょう。

 ですが、円安になったら町工場は大変になっているのが現状です。
 また町工場でも下請けにあまんぜず、技術を磨き輸出を増やしているところもあります。
 技術のない工場は生き残れません。
 
 どう考えても賃金ではベトナムやバングラにかなうわけがありません。
 多少円安になっても技術のない工場は淘汰されます。

 
  アベノミクスは昭和の時代ならばまだ有効だったかもしれません。
  当時は輸出はほとんど国内生産されたものでしたし、国内の個人消費も増えていました。
  また国の借金もさほどありませんでした。

 ですが、今や「輸出企業」といっても海外で生産している企業は少なくありません。例えばコンデジ(コンパクト・デジタルカメラ)なんて、ほとんど海外で製造されています。しかも台湾とかの企業のOEMだったりします。これを輸入するわけですから、円安になるとコストが上がるだけです。
 昔ほど円安のメリットはありません。

 しかも多く報道されているように、トヨタなどの輸出大手は円安で利益を得ても下請けに還元していません。下請け、孫請けは輸入される原材料費やエネルギーの高騰で大変です。賃金をあがるどころの騒ぎではありません。これで景気が良くなるわけがありません。

 そもそも我が国のGDPの6割が個人消費で食品、雑貨、被服、多くのものが輸入品です。更にエネルギーもこれまた輸入です。円安になればすべてを消費者に転嫁できません。輸入業者、卸業者、小売店、消費者に負担が増えます。
 また飲食店や、美容院などサービス業も同じです。
 日本の企業の多くは中小零細であり、サービス業の多くは零細です。
 

 中小企業といった場合、100人以下の企業などといいますが圧倒的に多いのは10名以下、5名以下の零細企業が実情です。 ところが5人以下の零細企業の統計なんぞほとんどありません。数の上でもっとも多い零細企業のデータがないところで議論をしても無意味でしょう。

 実際問題として9月に出展したギフトショー(実際は小売の見本市)で出展者や来場者とあれこれお話したのですが、皆さん円安で極めて厳しいというお話ばかりでした。

 また農林水産業も、国内向けの製品を作っている工場にしても原材料、エネルギーなどの値上げは大きな負担になっています。
 円安は困るというのは輸入業者のポジショントークだとおっしゃる人がおられますが、上記のような現実を見ればそれが事実ではないことがよく分かるはずです。

 政府による円安誘導は消費者、国内工業、一次産業からお金を収奪し、ごく一部の輸出依存度が高い大企業と株式を大量に保有している資産家、外国の石油会社や投資家です。
 多額の国富が国外に流失し、円高で儲けた企業は内部に利益を蓄積します。
 株長者がクルマや時計を景気良く買ったからといって、この収奪分を上回る消費をしてくれるわけではありません。



 大体インフレで景気が良くなるならば、オイルショックの直後なんぞは空前の好景気だったでしょう。プラザ合意の後ももう日本は駄目だという悲観論を唱えるエコノミストばかりでしたが、その後円高によって日本企業の競争力は逆に強まり、空前の業績を上げた輸出企業は少なくありませんでした。

 以前から繰り返して申しておりますが、それほど円安にしたいならば海自の護衛艦が釜山あたりに一発艦砲射撃を行うか、F2戦闘機で大連あたりを空爆すれば宜しい。
 あっという間に円安です。でもそれで景気が良くなるでしょうか。

 

過去の清谷信一ブログ(当ブログ)記事 - アベノミクスによる円安誘導を批判したもの:

      ↓    ↓    ↓


自民党 安倍総裁の経済観を疑う 自民党には投票せず
2012/11/26
http://kiyotani.at.webry.info/201211/article_9.html


やっぱり「安倍首相」はダメだわ、と思いました。
2012/11/29
http://kiyotani.at.webry.info/201211/article_12.html


円安、インフレで景気は良くならない。
2012/12/05
http://kiyotani.at.webry.info/201212/article_5.html


安倍不況が始まる
2012/12/16
http://kiyotani.at.webry.info/201212/article_9.html


三本目の矢がないアベノミクス
2013/03/07
http://kiyotani.at.webry.info/201303/article_5.html


アベノミクスは砂上の楼閣 安倍首相は「世間」を知らない。
未だに銀のさじを咥えている
2013/07/11
http://kiyotani.at.webry.info/201307/article_12.html


アベノミクスに対する素朴な疑問
2013/04/18
http://kiyotani.at.webry.info/201304/article_7.html


補助金的な円安では景気は回復しない
2013/10/22
http://kiyotani.at.webry.info/201310/article_13.html


豆腐屋を潰して景気回復を図る安倍首相
2013/11/04
http://kiyotani.at.webry.info/201311/article_3.html


 
 


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Japan in Depth に以下の記事を寄稿しました。
【防衛駐在官の質の向上を図れ】〜外務省出向システムでは機密情報が防衛省や内閣府に届かない?〜
http://japan-indepth.jp/?s=%E6%B8%85%E8%B0%B7%E4%BF%A1%E4%B8%80


東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿あました。

御嶽山への自衛隊派遣、口を挟むとサヨク?必要なのは事実に基づく冷静な議論
http://toyokeizai.net/articles/-/49744

戦傷者は「想定外」という、自衛隊の平和ボケ
「国内では銃創や火傷は負わない」との前提
http://toyokeizai.net/articles/-/47994

結論ありき」で高額な兵器を調達する怪
防衛省概算要求に隠された問題<前編>
http://toyokeizai.net/preview/dd9c698dc49dbfafe1fdddad129294461604ead0











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コメント(10件)

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アベノミクスは消費税増税した時点で破綻しました。再増税したら本当にアウトですね。
マリンロイヤル
2014/10/23 16:09
>マリンロイヤルさん
そのような勘違いをされる方が多いですが、消費税は景気に全く関係無いですよ。
政府が消費税を増税して、その税収分をそのまま使えば、需要は全く減りません。
それどころか消費性向の逆数分、需要は増加して、景気は良くなると言うのが経済学の定説です。
では何で景気が悪化しているのかと言えば、それは中国を筆頭とした新興国の景気が、4月前後から著しく悪化しているからです。
円安になっても新興国の不景気のため輸出数量が伸びなくて、代わりに一定量の輸入に対する輸入額が円安のせいで増加して国民の実質所得を著しく減らしました。
この交易条件の悪化による赤字と、実質所得の減少と、景気の減速=GDPへのマイナスの影響はほぼ同規模であり、これこそが景気の悪化原因で他にはありません。
また株価も円安も、ほぼアメリカの景気指標に連動しており、アメリカの景気が回復してドルが上がるかどうかに連動しているだけです。
ハッキリ言って、日本国内の消費税だの公共投資だのの財政政策や金融政策の及ぼせる影響はどんどん小さくなりつつあり、米中の景気の圧倒的なスケールに左右されるだけの、ある意味、韓国の様なポジションに日本は相対的に近付きつつあります。

X
2014/10/24 00:27
>ところが安倍人気に日和ったのか、
それは無くて、単純に2007年頃の好景気の時の円安の印象の強さから抜け出せていないだけだと思いますね。
今回の円安が国内の生産増加にあまり寄与していない理由について、言及する人が少ないのが不思議ですが、民主党時代の派遣法の改悪が最大の原因だと思いますね。
あれで企業は円安になっても国内で雇用を増やして生産を行う気が無くなりました。
派遣や臨時雇用を禁止しても、正社員の仕事は増えないで単に派遣の仕事が海外に流出するだけだと言う自明の事実を理解できない偉い人やマスコミが多いのが問題ですね。
X
2014/10/24 00:33
円安だからといって、企業は簡単に工場を国内に戻せないので、輸出が増えるはずがありません。
もともと人件費が高いのに、電気料金まで上がっている現状で、モノ作り復活といわれても。
interneet
2014/10/24 12:43
>>Xさん
マクロの需要の見積もりを財務省は間違えてますよ。2013年は、選挙に勝った自民が12年末に作った13兆円の補正と金融緩和で伸びたのです。ところが、財務省はこの13兆円を無視して14年の予算を組んだために、最初から13兆円分需要が不足してます。消費税増税さえしなければ、こんな心配は無用でしたが、いちばん割合の大きい個人消費を抑えるなんて、財務省の経済運営は間違いです。日本経済の外需依存は20%以下なので中国ウンヌンは関係がない、やはり消費税増税が最大の要因ですよ。
マリンロイヤル
2014/10/24 23:24
景気を良くする為に何をすればいいのか、大学で経済を学んでいる「優秀な」官僚・学者の皆様ですら決め手が無いようです。

無知蒙昧なる庶民は黙って見ているしかないんでしょうかね・・・
八王子の白豚
2014/10/25 14:37
>マリンロワイヤルさん
>日本経済の外需依存は20%以下なので中国ウンヌンは関係がない、やはり消費税増税が最大の要因ですよ。
そのお説は成立しません。
20%の外需依存率でも、輸出が5%落ちればGDPの成長率は1%落ちる計算になります。
今の日本の潜在成長率は1%程度なので、それだけでもゼロ成長、大不況になります。
ここも皆さん非常に勘違いが多いところなのですが、外需依存率の低さが外需に対する感受性を決めるわけでは無いのです。むしろ潜在成長率と貿易依存度との比較で考えなければなりません。
貿易依存度10%でも潜在成長率1%の国と、貿易依存度が50%もあっても潜在成長率10%との国なら、共に輸出が10%落ちた場合、貿易依存度10%の国は0成長になってしまいますが、貿易依存度50%の国はまだ5%成長するわけです。
単純に貿易依存度を比較して、外需の影響は無い!などと言う誤ったレトリックを信じてはいけません。
何より実際に、貿易赤字は増大し続けてる訳です。外需が関係無く、消費税で内需が縮小したのが原因と言うなら、貿易赤字は縮小しないと矛盾します。これ一つとっても、消費税は無関係で中国等の新興国の不振が不況の原因なのは明らかです。

>財務省はこの13兆円を無視して14年の予算を組んだために、最初から13兆円分需要が不足してます。消費税増税さえしなければ、こんな心配は無用
これも矛盾してます。
13兆円、即ちGDPの2%以上公共投資をカットしても、なお現在1%弱の成長が14年に見込まれて居るのですから、それこそ消費税の影響は無いという証拠でしょう。
消費税増税が無ければ3%以上成長したと仰るなら、お説に矛盾は無く、議論が成立しますが。

X
2014/10/26 04:15
>八王子の白豚さん
一年、二年の短期の景気は、アメリカとか中国の景気にも影響を受けるので、日本にできる事は殆どありません。早い話が、リーマンショックとかで不景気になるのは、日本が何をしても避けられないし、コントロールできません。
しかし五年とか十年のスパンなら、殆どの経済学者は既に決め手を見出していて、ただ政治的に不人気な政策になるので実行されないだけです。
即ち、労働市場の規制緩和、兼業農家へのバラマキを止めてJA解体、原発の再稼動、TPP推進、大学の縮小、地方自治体の整理と地方中核都市への集中促進、地方公務員のリストラなどです。
現内閣で期待できるのはTPP位ですが、それも経済政策ではなく外交目的で推進してるためですね。
X
2014/10/26 04:37
デフレ下だと銀行は国債の金利で楽して儲けられる。
そこへ日銀貴族も官僚も天下る。
 
甘い汁を吸いたい連中です。
景気がどうなろうと彼らには関係ありません。
 
方策としては、日銀法を改正して、日銀を政府の管理下に戻すことです。
「景気を良くする」これをコミットするようにさせるのです。
現在の日銀の状態は、GHQの占領政策のままです。(通貨発行権を政府から剥奪した状態)
日銀法改正・・・それをやらない限り、本当の景気対策などありえません。
mao
2015/03/21 19:14
>maoさん
もうそろそろ、そのような呪術的世界観から脱して下さい。
「日銀がコミット」した所で景気は良くなりません。
一億人が燃える火の玉必勝の信念に燃えても、アメリカ軍には勝てないのと同じです。
歴史から学びましょう。
日銀は黒田総裁が異次元緩和する前から、既にGDP比で米国やEUのQEを上回る量的緩和を行っていたのです。
それでもインフレにも円安にもなりませんでした。
米国やEUが金融危機に陥っていたからです。
黒田総裁以後も、円安・インフレ基調になったのは、米国やドイツの景気が回復に向かっていて、原油高トレンドだったからです。
だから一転、原油安になれば、昨年10月に黒田総裁がバズーカを打ってもインフレ率は低下して行ったのです。
日銀がコミットしてできる事は一時的な心理的ショックを市場に与えるくらいが限界です。
日銀は世界中の原油の需給にも、米国や中国やEUの景気を左右する事も出来ないのですから。
さらに言えば、インフレ下でこそ銀行は儲けられるので、あなたの認識はこれまた事実に反します。
原油高、株高、黒田バズーカで日本のメガバンクが史上最高レベルの利益を上げているのがその何よりの証拠です。
あなたが言っている事は、事実を無視している上に、B29を必勝の信念さえあれば竹槍で落とせるというのと同レベルの呪術論です。
X
2015/03/22 13:30

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