清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所 

アクセスカウンタ

zoom RSS 『自衛隊の「AAV7」大量調達は世紀の無駄遣いだ』 そこは同感。

<<   作成日時 : 2014/09/13 13:10   >>

ナイス ブログ気持玉 26 / トラックバック 0 / コメント 7

自衛隊の「AAV7」大量調達は世紀の無駄遣いだ
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41690

 自衛隊の「AAV7」大量調達が壮大な無駄遣いだ、という点は同感です。ですが主張はこの著者とかなり異なります。

 問題を整理すると、まず防衛省は世界にどのような水陸両用部隊があるのかも、まともなリサーチをしてこなかった。最初から米海兵隊のデッドコピーを作るつもりだったわけです。その点でアウト。

 リサーチに数十億円ぐらいかけても大したことはないでしょうに、いつもの調子でこれをケチったわけです。例えば英軍やオランダ軍あたりの海兵隊に、オフィサーや下士官を何人か送り込んで研修させるとかの知恵が無いわけです。

 自前で戦闘機まで持って、予算規模は二桁以上違う「異次元」の組織を、わずかな予算で真似しようというわけです。これから初めてマイカー買おうという、手取り年収300万円のサラリーマンが、フェラーリやベントレーを一ダースぐらいもっている金持ちの真似をするようなものです。

 で、海自につくるか、陸自につくるかすらも、検討しなかったわけです

 世間では「一両惜しみの百両損」という言葉がありますが、市ヶ谷では知られていないようらしいです。すべてにおいて防衛省、自衛隊は情報にカネをケチるという通弊があります。ですからクズのような装備を輸入したり国産したりを繰り替えているわけです。

 世界にどんな部隊があり、どのような目的でどのような運用をしているのも知らず、自分たちがどのようなことをするために、どのような部隊を作るかも分からず、とりあえずビール」ならず「とりあえず海兵隊」というノリでプロジェクトを始めちゃったわけです。
 これでまともな組織が作れるはずもない。

 当然水陸両用装甲車についても同じです。
 自分のところで作れなかったから、米海兵隊と同じ玩具が欲しいと買ってしまったわけです。まあ、今回の場合多分に政治的なオーダーが入っているとも思われますが。

 ところが現在、強襲揚陸作戦については完全に迷走状態に入っているわけです。第二次大戦型の強襲揚陸作戦は、技術の進歩によって不可能になってしまった。
 ですから米海兵隊ですら湾岸戦争では行わなかった。

 対戦車火器や精密誘導兵器、UAVやC4IRが発達した現在、陸地から10マイル程度の沖合から速度の遅い水陸両方装甲車での強襲揚陸は装甲車にとっても母船にとっても自殺行為です。

 ですから米海兵隊は母艦は水平線のはるか向こうに留まって、そこからの揚陸を考えているわけです。オスプレイはその考えの延長の産物です。

 そもそも水上を高速で移動するボートと、装甲車とでは要素が全く相反します。これを両立させるのは極めて困難です。それを実現しようとしたからEFVは無理があったわけです。

 つまり根本的に強襲揚陸作戦のあり方を考え直さないといけないところに来ています。ところがリサーチもせず、第二次大戦型の強襲揚陸を考えているわけです。まあ、富士学校の研究でも業者の団体のつくったリポートをそのままコピーして、恥じること無く発表しているぐらいですから、陸自の研究レベルは推して知るべし、です。
 富士学校の「研究」では米国も諦めたEFVのような車輌が水陸両用装甲車の主流になると述べていましたが、外国の専門誌ぐらい読んだらどうでしょうか。

 そんなことだから、陸幕では今年になって業者から米海兵隊の個人装備一式を買い集めるとか、泥縄をやっているわけです。

 また揚陸作戦に先立って特殊部隊を投入するという知恵もありません。特殊部隊専用の航空部隊もありません。これまた現代の軍隊の常識の外です。どこの貧民国の三流軍隊でしょうか?

 繰り返しますが本来あるべき将来の島嶼防衛、水陸両用作戦とはどのようなものか、そのような研究がなされていません。強襲揚陸は不可能という前提で、考える方策も必要でしょう。
 そのようなリサーチも研究もまともにしていないのですから、軍事のプロとしての見識を疑われても仕方ないでしょう。

 しかもAAV7はまともな評価試験すら行われておりません。これに関しては下記の東洋経済オンラインに書いた記事を参照してください。


 この筆者の意見で一番違和感を感じるのは、以下のところです

幸いなことに、日本には少なくともACVなどよりははるかにEFVに近い水陸両用強襲車を開発製造する技術力が存在しているのである。少なくとも国防費の倍増なしでは日本防衛はおぼつかない国際情勢に直面している現在、52両もの老朽AAV-7という“世紀の無駄遣い”だけは絶対に避けなければならない。

 我が国にそのような技術はありません。FSXの時もそういう国産技術信仰的な意見も多くありました。ですがそれは幻想にすぎません。

 実際三菱重工、ユニバーサル造船が試作を作くりましたが、ハシにも棒にもでした。
 防衛省の幹部によると、三菱重工はあと15年あれば作れるといっているそうですが、それは随分と楽観的です。日本のメーカーはこれまで同種のものを作ったことも、自衛隊が運用したもこともない。全てはこれからです。ですが例によって基礎研究や開発費、試験費をケチるでしょうからまともなものが出来る可能性は極めて低いでしょう。
 こういう怪しげな装備は輸出もできないでしょうから、調達コストは極めて高くなるでしょう。となると、調達数が減って調達数がますます減るという悪循環に陥って調達がますます進まなくなる。途中でとっくに旧式化といういつものコースを辿ることになるでしょう。
防衛省内部では三菱重工とロッキード・マーチンを組ませるという思惑もあるようですが、そもそもこの種の水陸両用装甲車が時代遅れという可能性が強いでしょう。

 無理して多額の投資を行ってそのようなものを作るより、もLCACやL−CATなどの揚陸艇で、通常の装甲車に毛の生えた程度の水陸両用装甲車を陸地の近くまで運ぶ、あるいは水上からのアプローチはやめて、ヘリでの空輸に特化するなどの発想の転換が必要かもしれません。
 現在の延長線上だけに解を求めるべきではないでしょう。

 軍事を語る際に、多くの識者、特に親米派と呼ばれる人達は、我が国と米国というフレームの中でしか考えていません。それでは事実は見えないし、外国音痴のアメリカ人と同じです。世界は米国と日本だけから成っているわけではありません。
 昨年ぼくは英海兵隊を取材しましたが、非常に興味深いものがありました。アメリカの海兵隊とは根本的にあり方が違います。
 むしろ参考にするのであれば、英国やスウェーデン、スペイン、ブラジル、台湾その他想定規模の似ている水陸両方部隊を持った国でしょう。

 カネをかけてできるだけ世界に多くの実例を求めてリサーチし、入念にコンセプトを練り上げて、実験や演習を重ねた上で、水陸両用部隊を編成すべきです。

 また最低防衛費を2倍にしなければいけないというのも賛成できません。他国の3倍のコストの装甲車とか、他国の8倍のコストの小銃の調達をする、あるいは戦車の300輌に定数が減らされるのに、まだ使える340輌もある90式を潰して、発展性もない新型の10式を調達するような放蕩をしている組織です。まずは無駄遣いを止めるべきです。
 100円のカップラーメンに500円も無造作に出す子供のお小遣いを2倍にしたら、100円のカップラーメンに
1000円を出すようになるだけです。
 
 

   東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
結論ありき」で高額な兵器を調達する怪
防衛省概算要求に隠された問題<前編>
http://toyokeizai.net/preview/dd9c698dc49dbfafe1fdddad129294461604ead0

オスプレイの拙速導入は、安倍政権による濫費
防衛省概算要求に隠された問題<後編>
http://toyokeizai.net/articles/-/47070?page=3


 
フジテレビ、愛国報道の「異様な光景」
ジャパンエキスポは排他的なイベントではない
http://toyokeizai.net/articles/-/45401?page=2
 

コマツが防衛事業から撤退すべき5つの理由
取り組み姿勢が、キャタピラーとは対照的
http://toyokeizai.net/articles/-/45208

英航空ショー出展、中小企業「匠の技」とは?
盛んな商談、航空機ビジネスに食いこむ好機に
http://toyokeizai.net/articles/-/44434

新しい防衛航空宇宙専門サイトを始めました。
「東京防衛航空宇宙時評・Tokyo Defence & Aerospace Review」

http://www.tokyo-dar.com/



友人の サンドラ・へフェリン嬢の新刊です。

満員電車は観光地!?~世界が驚く日本の「日常」~
ベストセラーズ
サンドラ・へフェリン/流水 りんこ

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 満員電車は観光地!?~世界が驚く日本の「日常」~ の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



友人の林信吾の新刊です。

伊達・上杉決起す!: ジパング大乱 (徳間文庫)
徳間書店
2014-08-01
林 信吾

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 伊達・上杉決起す!: ジパング大乱 (徳間文庫) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル










テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 26
ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた 驚いた
ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!)
面白い

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
初めまして!
著書の「専守防衛」や、
雑誌「コンバットマガジン」の連載を、毎月、
興味深く読ませてもらっている者です。
35年前の高校生の頃から、戦史や軍事に興味がありました。
「なぜ、陸上自衛隊の戦車は、諸外国の新型に比べて登場が10年以上遅いのか」
「なぜ、陸上自衛隊は、装甲車や歩兵戦闘車を持たないのか」と疑問に思っていました。
岡山県に住んでいるのですが、
高校時代、日本原駐屯地に見学に行った時、
74式戦車でなく、61式戦車を運用していてびっくりしました。
7年ほど前、こだわりの店主のいる玩具店に、
89式小銃の電動ガンを見に行った時、
店主が、「日本原の隊員も初めて見たって言うんだ。」と教えてくれました。
当時はまだ、64式小銃だったんでしょうね。

長くなりましたが、
これからもブログ楽しみにしております。
ひこっち
2014/09/13 14:30
ありがとうございます。
キヨタニ
2014/09/13 14:52
清谷様
太平洋戦争前の大艦巨砲主義のDNAみたいなものです。航空機の時代なのに戦艦大和や武蔵を建造する。大和一隻で零戦1000機の資材・資金に相当する。70年前から進歩していません。
本題に戻り、防衛省・自衛隊の問題点である無駄遣いや不経済の体質ですが、所詮、ハコモノショッピング官庁であり、親方日の丸なので懐が痛まない。経済学や経営学を教育しない。故にコストや費用対効果という概念がないと思います。現役時代、こんな呆れた台詞吐いた馬鹿幹部いましたよ!自衛隊は人件費タダだからよ! こんなレベルの認識だから、定年後の再就職で躓きます。自分の記憶が正しければ、アメリカ軍の将官の大部分はMBA・経営修士を持っています。間違ったら、ごめんなさい。
自分の知っている元将官は退官後、ハーバード ビジネススクールへ留学し、MBAを取得しました。現在、ある企業の重役をしております。
公認会計士、エコノミスト、元銀行員、軍事ジャーナリスト等の第3者をメンバーとする評価機関が必要です。時間と金は無限大では、ないことを認識させなければならないと思います。
元キャプテン
2014/09/14 06:22
お邪魔します。

 リンク先を見ましたが、もはや「強襲揚陸」はできないというか「コストかかり過ぎで割に合わない」ように思えました。「制海・制空権をはおろか沿岸部の陸上兵力も完膚無きまでに叩き潰した後に輸送船で悠々と上陸」か「相手の隙を突いて上陸」のどちらかしか無いように思えます。中国にすれば「在日・極東米軍含めて完膚無きまでに叩き潰す」のは(少なくとも現状では)無理でしょうから、後者の「隙を突いて上陸」になるものと思われます(南沙諸島他で勝手に施設を作っているように)。となれば日本がまず為すべき事は水陸両用車や強襲揚陸艦ではなく、(密輸・密漁・密入国も含めて)監視体制を強化する事ではないかと思います。

 前に当ブログでオズプレイは降下速度が遅く、敵前降下には不向きとありました。となれば(背後に回り込めない程小さい)離島に兵を送り込むには(敵から攻撃されない程度に)近くの海面に兵を下し、その後空から上陸を支援するのが良いと思われますが、ヘリコプターまたはオズプレイに搭載可能な上陸用舟艇があるのか気になります。

 最後に地対艦ミサイルですが、江畑氏の著作に「アメリカ以外では長距離地対空ミサイルは空軍の管轄(戦闘機との連携のため?)」とありました。地対艦ミサイルも捜索や終末誘導を航空機でするなら空自、艦艇でするなら海自の管轄のように思えます。陸自なら水平線までで、それなら(数が撃てる)無誘導のロケット弾や補助ロケット付誘導砲弾等と組み合わせた方が良いのではないかと思われます(ミサイルで揚陸艦やその護衛艦、ロケット弾や砲弾で上陸用舟艇といった)。
ブロガー(志望)
2014/09/15 16:15
強襲上陸だの離島奪還だのに現を抜かす前に、接近拒否戦略をキチンとやるべきでしょう。アメリカの海軍大学教授がこんな提言をしてますよ。http://blogos.com/article/94439/概ね同意です。
マリンロイヤル
2014/09/16 17:34
A2ADにおいて、特定海空域における敵対国海空軍の活動制限については、接近阻止というより領域拒否である。
真の愛国者 ゆりか
2014/09/17 06:37
自衛隊における装備品の調達は常に例外なく「米軍もこういう装備を持っていますよ」と」財務官僚(軍事知識のかけらも無いド素人)を説得して予算を確保することから始まってるので、既に米海兵隊で運用しているAAV7を買うというのは予算をもらう際に言いやすいでしょうからね。(子供がお母ちゃんにお小遣いを増額してもらうのに似ています)
ただ、AAV7って後継の開発がポシャった絶滅危惧種ですよね?
米軍への義理立てのために買うのでなければ今更感ありまくりですね。
もっとも国産するって言ってもアレな出来栄えのが出来るのが目に見えてるし・・・
買うべきはこいつじゃないだろ、って意見はすごく理解できます。
陸自は目を覚まして欲しいです・・・
八王子の白豚
2014/09/21 02:37

コメントする help

ニックネーム
本 文
『自衛隊の「AAV7」大量調達は世紀の無駄遣いだ』 そこは同感。 清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所 /BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる