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zoom RSS 総火演 そんなにエライか「富士山撃ち」

<<   作成日時 : 2014/09/02 21:22   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 32 / トラックバック 0 / コメント 12

 さて先日、恒例の陸自の富士総合火力演習が終わりました。

 あいも変わらず、榴弾砲を空中で富士山型に炸裂させる芸当を披露し、これを陸自特科の練度の高さだと自賛しています。
 多くの人達が、自衛隊の技量の高さに驚き、自衛隊への信頼を高めたことでしょう。


 ですが、大丈夫ですか。
 自分たちまで「俺たち最強」とか思っていませんか。

 確かに高い技量は必要でしょうが、率直に申し上げて、実戦ではなんの役にも立たない技能です。総火演で富士山撃ちに感動した人達には感動に水をさして申し訳ないですが、事実を知ることは必要です。
 

  陸自の特科は先進国からは20〜30年は遅れています。

  富士山撃ちなら現在の自走砲を使えば誰にでもできます。

 陸自では未だに射撃は紙の地図を頼りに、音声無線で行っています。ですが、先進国はもとより南アフリカやUAEなどでもデジタル化された前方観測部隊から司令部がデータ情報を得て、各砲に目標のデータ、チャージの種類、仰角、発射数などをデータ通信で行います。
 

 こういうC4IR、ネットワーク化では、陸自は悲しいくらい遅れています。 UAVもFOSSはペイロード、航続距離も足りない事実上の失敗作で信頼性も低い。
 このため事実上砲兵観測用のUAVはありません。
 パキスタン軍ですらもっとUAVを活用しています。


 人民解放軍ですら導入しているレーザーで終末誘導を行う精密誘導砲弾の導入もいまだありません。

 航空機による火力支援や火砲による火力支援を行う前方火力統制を行う部隊もありません。


 いわば超音速戦闘機が普及している時代にレシプロの戦闘機で戦うようなものです。
 昔ながらの「牧歌的」な砲撃を行っていては、精度の高い砲撃は無理ですし、敵のレーダーやISRアセットによって場所を特定され素早く反撃されてあっという間に砲兵陣地は壊滅です。



 国内では最大射程で榴弾砲を撃てないために、最大射程の射撃は米国の演習場での訓練だけになりますが、これは年に数門だけが派遣されます。つまり最大射程で射撃を経験した隊員は極めて少ない。

 こういう極めて深刻な事態にあるのですが、陸自には危機感が全くありません。現状を放置して新自走榴弾砲という玩具を欲しがっています。

 現大綱では火砲は300門となります。であれば、使える火砲もスクラップにする必要があります。仮に新型榴弾砲が必要でも大した数でなく、これを新たに開発・生産すればコストは極めて高くなるのは火を見るより明らかです。とうぜんネットワーク化や前方観測手段の近代化、精密誘導砲弾の導入などは先送りになるでしょう。

 しかも現状、弾薬の備蓄も少なく、弾薬を運ぶ兵站も極めて細っています。

 にも関わらず,火の出る新しい国産玩具を欲しがるわけです。総合的な戦闘力を向上させようという意識が感じられません。

 
 かつて海自は自分たちの掃海能力は世界最高と自画自賛しておりました。
 ところが湾岸戦争後の掃海に派遣されて、他国と一緒に「実戦」を経験すると、自分たちがいかに時代遅れだったかを思い知らされました。これを期に掃海システムの近代化が行われました。

 外の世界を見ないで「俺たち最高」と仲間内で盛り上がっていれば実戦で痛い目をみます。

 それを納税者までが無邪気に信じるのは極めて危険です。
 別に自衛隊にシンパシーを感じるな、とはいいませんが、現実は現実として認識すべきです。


   東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
結論ありき」で高額な兵器を調達する怪
防衛省概算要求に隠された問題<前編>
http://toyokeizai.net/preview/dd9c698dc49dbfafe1fdddad129294461604ead0

 
フジテレビ、愛国報道の「異様な光景」
ジャパンエキスポは排他的なイベントではない
http://toyokeizai.net/articles/-/45401?page=2
 

コマツが防衛事業から撤退すべき5つの理由
取り組み姿勢が、キャタピラーとは対照的
http://toyokeizai.net/articles/-/45208

英航空ショー出展、中小企業「匠の技」とは?
盛んな商談、航空機ビジネスに食いこむ好機に
http://toyokeizai.net/articles/-/44434

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コメント(12件)

内 容 ニックネーム/日時
大丈夫!陸の火砲が実戦で火を吹くことなんざ当分ありゃしません。
だから観客相手の職人芸を披露し続けていればいいのです。
それで何の問題もありません。
陸の情報通信体制が前世紀の化石だったとしてもいいじゃありませんか。
どうせ南西作戦に陸自の出番なんてありゃしないんだから。
陸自を出すには海空自の支援能力だけでは無理だし、
米軍に頼もうにも陸自とネットワーク体制が無ければ共同作戦は無理。
あちらさんから断ってきますって。
どうしても陸兵が居るのならアメ公の海兵隊が出るでしょ。
本当に在沖縄海兵隊が抑止力とか言うのなら、それくらいはやってもらわないとw
きらきら星
2014/09/03 03:16
そういえば、戦前も最大射程で撃った事が無い大砲が実戦で壊れてましたね(笑)
マリンロイヤル
2014/09/03 11:24
最大射程演習は、民間地等をまたいで演習すればいい。大騒ぎするだろうが、国防上必要だと押し込む。
海上に着弾させるのも並行して検討。漁民にも必要だと押し込む。
確かにUAVや陸自の個人装備、耐地雷車両等、C4IR、ネットワーク化は遅れてますね。
ただ隊員の練度は大変高いと思います。
予算や装備を組む組織がだめなだけですね。政治も含めて。
軍事オタク
2014/09/03 13:55
自分達が最強だと思っている自衛官何ていませんよ。
日常の恒常業務の中にも組織として破綻しているのが見え隠れしていますから。
三流陸曹
2014/09/03 19:29
FADS(野戦特科情報処理システム)というのは
配備されていないのでしょうか?
一部だけで、大半は紙の地図と無線?
中核自衛隊
2014/09/03 20:07
とにかくPKOだの何だので海外派兵で実戦経験を積むしかないでしょうな。とにかく実戦を積まないと、どこにどんな問題があるのか分からんでしょう。特に小火器の耐久性に興味があります。D−デイのドイツ軍のMG42のように1万発以上撃てますかね。アフリカ辺りで300円ぐらいで買えるようなAKに劣るようじゃ納税者は怒りますよ。
アラ捜し
2014/09/03 20:18
きらきら星さん。

陸自は花火職人ですか…orz

蓮舫先生に事業仕分けされても、竹中先生に民営化されても文句言えない?
波泳ぎ兼光
2014/09/03 20:33
アラ捜し様へ
陸自には海外派兵で得た経験を、装備・戦法の改良に生かそうという意識が、どうも低いんじゃないのでしょうか。
例えば、陸自はワイヤーカッターや強化された防盾を装備した軽装甲機動車を調達して、イラクに行きましたが、帰国したとたんに元の軽装甲機動車の調達に戻りましたもんね。つまり、イラクで得た教訓を装備の改良に生かしていない。むしろ、同じ失敗を何度も繰り返すことの方が多いような気がします。例えば、OH−1調達の失敗をAH−64Dで繰り返したのがいい例です。その原因は清谷氏が何度も言っているように、防衛省の過度の秘密主義にあるのかもしれません。
ひゃっはー
2014/09/04 00:38
清谷先生殿

防衛省富士山花火大会=富士総合火力演習の意義や疑問についてです。
1つ目として、世界文化遺産に登録された富士山の麓に砲弾を打ち込むのは、いかがなものかと思います。環境保護団体から苦情とかないのですか?
2 総火演で消費された弾薬は予行・本番では、おそらく数個師団の弾薬の割り当てに相当すると思います。その弾薬を富士学校・教導団が花火大会で消費するのは、本末転倒で、一般師団や旅団に配分して練度向上させる。演習場の制約が多少ありますが・・
3 総合火力演習は本来の目的は富士学校に入校している隊員に火力戦闘の様相を認識させることです。実態は、広報みたいなものです。いつから、歪曲されたのですか?空自の支離滅裂です。
元キャプテン
2014/09/08 22:51
9月中に矢臼別演習場で使用する予定の155mm砲弾だけで7320発(43kgとして約314トン)ですし富士教導団の使用弾薬の範囲でなんとかしてるんじゃないですかね
第9
2014/09/10 06:14
お邪魔します。
 この問題の根幹には「島国・海洋国家における陸上兵力の役割」というのがあると思います。今の中国のように大陸国家が強大化すると海洋に進出してきます(陸の占有の論理で)。それに対抗するために干渉・関与を行うのが島国・海洋国家における陸上兵力の役割です(かつての日本も最初はそれだったかもしれないが、次第に大陸にのめり込んだ)。今大陸に干渉・関与を行うのはアメリカです(韓国に陸上兵力を置いて中国やロシアを牽制する?)。つまり今の日本に「大陸に干渉・関与を行う」役割が無い以上、陸上兵力は軽歩兵程度で十分ではないかと思われます。離島や沿岸部「だけ」なら海兵隊の範疇ですから、「世界水準の陸戦能力」は海自の陸戦部隊にでも持たせれば良いのではないでしょうか。
ブロガー(志望)
2014/09/13 10:53
まあ、確かに凄いですよね、富士山撃ち。

でも「凄い」だけで「使える」かどうかは実戦を経てみないと分かりません。
実戦の結果を身を持って味あわされるのは特科の皆さんですから「その時」にキヨタニさんの言葉が大外れであることを祈っています。(ネット小説みたいな展開はありませんからね・・・)
個人的には特科部隊を大幅に削減して普通科にヒトとカネをかける方が「わが国特有の国情」とかに合致すると思うんですが・・・
普通科の強化に必要なものだって挙げていけばキリが無い位にあるのですし。
陸自は未だに大陸軍病が抜けてないんでしょうか?
八王子の白豚
2014/09/21 03:46

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