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zoom RSS 防衛調達効率化は結構ですが、防衛省の零細「下請けイジメ」はかえってコストアップを招く

<<   作成日時 : 2014/08/16 20:40   >>

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 防衛省は相次ぐスキャンダルのために調達の効率化の旗を上げているのですが、見当違いばかりです。

 随意契約は悪だとばかりに、無意味な競争入札をやっております。
 10式戦車のように1社しか調達できないものまで競争入札にしたのは、脊髄反射で何も考えていなかったからでしょう。何かやらないと世間から批判されるから後先考えずに始めたのでしょう。
 
  同様な話は他にもあります。需品などではコストに3割の利潤率を認めています。
 ところが、コストの中にはサンプルや、パンフレットの作成代などは含まれません。
 輸入品であれば説明を日本語に直してもってこいと要求されますが、翻訳料も含めてはいけないことになっています。

 仮に原価100万円の製品があり、サンプルを買うと100万円、パンフやマニュアルなどをつくると60万円かかるとしましょう(専門の翻訳料は結構高いです)。国内メーカーが全部内製するにしても従業員の人件費がかかります。また防衛省・自衛隊は窓口がひとつではありませんから、広くアピールするためにはHPも必要でしょう。
 

 この製品が採用されたとして、これらのコストは認めらず、利益の中から出すことになります。であれば1個130万円で納めるとして、なんとか利益が出るのは6個目からです。

 防衛省に売り込んで採用まで数年かかることは普通です。しかも自衛隊はケチなので、調達数が少ない。利益が出るまでに10年近くかかることになります。
 外国の軍隊では当初は少数でもいいとわかれば5年間で1000個とかのオーダーがありますが、自衛隊では極めて稀有です。
 
 ところが自衛隊ではサンプルを持ってこいと命じ、半年も1年も借りっぱなしということも少なくありません。
 その場合、他の部隊への営業のために複数のサンプルが必要になる場合もあります。そうなればサンプル費はさらにかさみます。

 散々サンプルを使い倒して採用されないこともあります。サンプルを無料の実験用素材とでも思っている部隊や学校関係者も多いようです。


 で、サンプルを持っていないかないと評価はしないと言われるわけです。業者としてはリスクを負ってもサンプルを調達して提供しないわけには行きません。
 これは体の良い業者いじめです。
 
 しかも上記のコストの中には営業コストは含まれていません。営業のためには自衛隊に出向き説明やデモを行うために何度足を運ぶことになります。東京の企業が北海道や九州に行けば日帰りは大抵無理で、社員の交通費、宿泊費、出張手当も必要です。

 売り込んだ製品がすべて採用になるとは限りません。むしろ採用されないものが多いわけです。であれば、成功しなかった製品の売り込みコストの回収は、これらの費用を売り込みに成功した商品から得ることとなりますが、当然採算分岐点はかなり先に伸びることになります


 これは中小企業にとっては由々しき問題です。

 民間企業であれば下請けイジメで調査や当局の指導の対象になるでしょう。
 
 また利益率が大企業と中小企業と同じというのもおかしな話です。どこの業界でも中小企業の方が原価率が低いのは常識です。大企業ならばスケールメリットが働くけども中小はそうはいかないからです。
 本来中小企業に対しては利益率を上げるべきです。


 防衛省がこのような「中小企業いじめ」をする理由のひとつは、なんでもかんでも競争入札になったために悪徳業者、特に自衛隊OBが絡んだ業者が多くなっており、そのために被害を受けているからです。
 防衛省側が入札のための仕様書を作る能力が低いことをいいことに、仕様書の穴を探し出し、劣悪な製品や、場合によっては盗品を納めるような業者が横行しています。

 ですが、だからといってこのような「業者いじめ」は許されるべきではありません。まともな業者も多数存在します。実際に泣きを見ているのは彼らです。

 輸入品の場合、程度の悪い業者はリスクを負わず、入札をみて、最低価格を出します。で、並行輸入とか、正規業者に大幅に値引きをして自社に卸ろせとか要求します(このような場合OBが窓口になる場合が多いです)。地方調達の場合、基地の近くの業者が担当者とつるんで、その会社を通さないと採用しないとか圧力をかけたりもします。
 並行輸入でも量を確保できるかどうかは分からない場合も多々あります。100個必要なのに50個しか揃わない場合もあります。そうなれば入札はやり直しで、余分な行政コストがかかります。
 しかも現在単年度調達で、補修部品の供給や修理などのアフターサービスの責務を負わなくともいいことがおおいので、こういう業者が横行するわけです。

 正規の業者はサンプルを買い、営業活動を行い、また修理体制や予備パーツの備蓄もおこなったりしますが、これらにはすべてコストがかかかっています。
 現在の競争入札はフリーライドの悪質な業者を、防衛省みずから増やしているとも言えます。

 
 クズを掴むのは、OBとの人間関係に弱いとか、まともな仕様書を書けない防衛省側に原因があります。ここを正すべきです。


 このような中小企業いじめはもうひとつ弊害があります。

 既存企業の利益の温存です。新しい装備、製品の参入が難しければ、利益を得るのは、すでに納品している既存企業です。こういうところは技術革新も行わず、延々と旧式化した装備、製品を納入し続けています。

 新規参入の恐れがなければ研究開発も新製品の開発も行わないし、コストの削減も行わないでしょう。こういう企業が新規参入を阻むためにこれまたOBを使って圧力をかけることも多々あります。

 結果として自衛隊には時代遅れの旧式な製品が、極めて高いコストで多々納入されているのが実態です。
 愛国的自衛隊全面支持的な報道関係の方々は絶対にこのような極めて憂うべき問題を報道しようとはしません。自衛隊は常に正しい、正義である、が彼らのドグマであり商売の原点だからです。

 必要な物にはカネを払う、入札には透明性と合理性を導入する、仕様書を書く人間の質、量を向上させる。こういうことをやらずに、払うものを払わないとむしろ悪徳業者や、利権にしがみつく既存の防衛産業を温存させ、不要なコストを払い、なおかつ時代遅れの装備を調達し続けることになります。



 東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。

 
フジテレビ、愛国報道の「異様な光景」
ジャパンエキスポは排他的なイベントではない
http://toyokeizai.net/articles/-/45401?page=2
 
コマツが防衛事業から撤退すべき5つの理由
取り組み姿勢が、キャタピラーとは対照的
http://toyokeizai.net/articles/-/45208

英航空ショー出展、中小企業「匠の技」とは?
盛んな商談、航空機ビジネスに食いこむ好機に
http://toyokeizai.net/articles/-/44434


新しい防衛航空宇宙専門サイトを始めました。
「東京防衛航空宇宙時評・Tokyo Defence & Aerospace Review」

http://www.tokyo-dar.com/

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
随意契約批判キャンペーンは財務省の謀略でした。防衛調達以外にも悪影響が酷いですね。
マリンロイヤル
2014/08/17 01:12

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