清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所 

アクセスカウンタ

zoom RSS 陸自UH-Xと韓国の汎用軽ヘリコプター

<<   作成日時 : 2014/07/27 11:19   >>

ナイス ブログ気持玉 18 / トラックバック 0 / コメント 3

コリアン・エアロスペース・インダストリーズ(KAI)は、韓国産業通商資源省と国防省防衛事業庁から、軽民間ヘリコプター(LCH)と軽武装ヘリコプター(LAH)の開発メーカーに選定されたと、2014年7月23日に発表しました。

LCH/LAHは1万ポンド、約4.5トンクラスのヘリコプターで、総額1兆ウォン以上のプロジェクトになります。政府の援助と海外からの直接投資でまかなう予定です。KAIではアグスタ・ウエストランドやエアバス・ヘリコプターズ、ベル、シコルスキーと開発参加について交渉中です

韓国KAI、4.5トンクラス双発の民間/武装ヘリを開発
http://flyteam.jp/news/article/38435

これは我が国のUH-Xプログラムに触発された可能性があります。

詳細は不明ですが、我が国よりのオリジナルのUH-Xよりも遥かに合理的な考えです。航空産業を振興し、世界に輸出を増やそうという韓国政府の思惑にブレがありません。民間市場である程度の売れないと、軍における調達コストも運用コストも下がりません。

前にも書きましたが実際に一度は官製談合でスクラップになった後のUH-Xでは、内局は民間で売れることを前提としたプロジェクトに好意的です。その場合民間型が4.5トン、陸自向けが4.8トンあたりを想定しており、以前のUH-Xの5トンに拘泥していません。

率直に申し上げて、かつてのUH-XはOH-1改良型ありきで、要求仕様はそれに沿って書かれたものです。部隊運用からの要求ではありません。ハーフパレット搭載が求められたのも競合が想定される既存機に不利になるように、だからでしょう。

UH-Xは軽いBK117(EC145)あるいはその軍用型のEC645にして、機数を減らしてUH-60の調達数を増やす、などというポートフォリオなども考慮すべきでした。また軽汎用ヘリの任務自体を見直す必要もあったでしょう。BKあるいはその派生型を導入すればかなり安くあがったでしょう。米軍がなぜBK117/ラコタを採用したかよく考えるべきです。

OH-1改良型で世界・国内の民間市場に売るなど白日夢もいいところです。かつて三菱重工が開発したMH2000の二の舞いになるのは確実で税金をドブに捨てるようなものでした。

まず、川崎重工は世界にセールス・サービス網を殆ど持っていません。
何より調達・運用コストが高すぎます。
そもそも一基4億円とされるTS-2を二基搭載して、機体単価を12億円に収める、などという陸幕装備部の寝言を内局が抗しきれず、予算を通したのも間違いでした。

まともなユーザーは怪しげな国産エンジンを嫌います。民間では1機だけというユーザーも多く、稼働率には敏感です。ターボメカなどの世界中で売れているエンジンならばどこでもパーツが安価に入りますが、専用の国産エンジンではそれは望めません。
コストを考えるのであれば開発と平行して耐空証明を取る必要があります。耐空証明を後から取るならばコストは何倍もかかります。

ですからエアバスのA400Mは開発と平行してそれを行ってわけです。ところが川重のC-2はそれを行っておりません。つまり民間型を開発するのであればかなりのコストがかかり、それを回収するためにはより多くの機体を得る必要があります。川重にはその気も体力もありません。実はC-2の民間転用は現実的ではないと川重内部の人間も認めています。
かつてのUH-Xでは自衛隊型を開発してその後、民間型を開発することになっていました。当然ながら陸幕も川重もそれが不可能であることを知っていたでしょう。であれば、UH-Xの民間型など本気では無かった。財務省と内局をだますための方便だったということでないでしょうか。


仮に民間型を開発しても5トンの民間用のヘリではエアバス・ヘリコプターズが、X4を開発予定です。これと真正面から戦うこことになります。ブランド力、コスト、サービス網などの面で世界最大のメーカーにかなうはずもありません。
ODAなどでヘリをばらまければ、また多少輸出の目はあるでしょうが、現在それはWTOで禁じられているのでその手は使えません。

韓国が4.5トンにした理由のひとつはエアバスのX4との競合を避けるためではないでしょうか。韓国の国産ヘリ、スリオンはエアバスとのジョイント・ベンチャーですから、今度のプロジェクトもエアバスと組む可能性があります。
それにUH-Xに対するライバル心もあるかも知れません。当然そのくらいの情報を韓国は持っていると考えるべきです。
UH-Xも本命はエアバス・川重のジョイント・ベンチャーと見られていますから、韓国のプロジェクトがUH-Xに与える影響は少なくないでしょう。

それからもう一つの競合と目されているアグスタ・ウエストランドの4.5トンクラスのAW169ですが、単にライセンス生産ではコストが膨れるだけで国内メーカーに補助金的な仕事をバラ舞くだけになります。機体コンポーネントの一定パーセンテージを獲得しない限り、メリットはありません。

実はアグスタ・ウエストランドと三菱重工が話し合いを持っているようです。三菱重工はシコルスキーのS-76の提案を検討しておりましたが、サイズが要求に合わない。UH-60の生産もいつまで続くかわからない。それにUH-60の調達予算がオスプレイに喰われるなどといった、危機感もあるのでしょう。
アグスタ・ウエストランドは当初、富士重工と話を進めていたようですが、同社のメインはあくまでベルの412ベースの機体でAW169は保険に過ぎません。
アグスタ・ウエストランドと三菱重工の利害は一致しております。

今月の航空ファンでもUH−Xがらみの記事が掲載されていますが、些か陸幕援護、国内メーカー援護の思惑の色が強いように思えます。

特に完成品あるいは、国内の組み立て生産では稼働率が確保できない、などというところがそれです。

すでに何度もご案内しておりますが、国内で稼働している民間や地方自治体などのEC135の稼働率が9割を超えているのに、海自が練習機として採用しているEC135の稼働率は3割程度に過ぎません。これは輸入機であることが問題ではなく、海自の整備体制に問題があることは明白です。ですから防衛省も海幕に対して改善を命じています。
同じようにMCH-101にしても部品デポが英国にあり、迅速な部品の供給がなされていないことなどが、同機の稼働率の低さの一因になっております。カナダなどの他のMCH-101ユーザーに較べても海自の稼働率は低いとのことであり、これまた海自の能力に問題があるということになるでしょう。

これらの事実を無視して、輸入だから稼働率が低いと決め付けるのは事実を曲げる行為です。仮にラ国にすれば1、2割の稼働率の向上が見込めるとして、それに2倍3倍のコストを掛けてラ国をすることがリーズナブルなソリューションでしょうか。

単に国内企業に仕事をばらまきたいというのであれば、地方のいらない箱物公共事業と同じです。それは結果として農業同様に国内航空産業の競争力を奪い、また余分な予算を使うことによって自衛隊を弱体化させることになります。ありていに言えば税金の無駄使いで、国の借金を増やすわけで、これが国益になるはずがありません。

これまた何度も申しておりますが、国内市場しかも防衛省だけで3社のヘリメーカー、2社のエンジンメーカーが喰っていること自体が異常です。BKを除けば民間だけではなく警察、消防、地方自治体、ドクターヘリなども外国製ばかりで国内メーカーのシェアはゼロです。
戦後何十年も防衛費で面倒を見てもらってきても未だに自立していない。国内メーカーは防衛省に寄生しているニートのようなものです。
40ヅラ、50ヅラさげて親のすねをかじって家で引きこもっている。働いたら負けと思っているのでしょう。こういうニート企業を、税金を使って養う意義は全くありません

市場に打って出る勇気も、実力もないのであれば商売を畳むべきです。
それが嫌ならばまずは国内のヘリ産業の事業統合を行うべきです。

やる気の無いやつは出て行け、ということです。

それから防衛省ではAH-1SやOH-6などの後継UH-Xの機体を利用した軽武装ヘリを検討しています。であればそれらの計画も含めた計画を納税者に示すべきです。機種統合によって量産効果も期待でき、訓練や調達・運用コストの低減が期待できる反面、UH−Xの機体は武装ヘリとしてはともかく、観測ヘリとしては過大でしょう。
防衛省は納税者にもっと全体を俯瞰した情報を提示すべきです。それをしないのは「地方人」軽視の旧軍と同じ発想です。

繰り返しますが盲目的な国産礼賛は、やる気のない国内企業に対する補助金となり、メーカーを甘やかし、税金を浪費するだけです。

企業も目先の利益よりも、追うべき長期的利益、守るべき本当の国益があるのではないでしょうか。



新しい防衛航空宇宙専門サイトを始めました。
「東京防衛航空宇宙時評・Tokyo Defence & Aerospace Review」

http://www.tokyo-dar.com/

strong>NEXT MEDIA "Japan In-Depth"[ジャパン・インデプス]に以下の記事を寄稿しております。
NEW<海上自衛隊のシーレーン防衛はフィクション>日本には戦時に守る対象となる自国の商船隊が存在しない
http://japan-indepth.jp/?p=6994

<バーバリーと三陽商会>ファッション業界「ライセンスビジネス」の怪
http://japan-indepth.jp/?p=6198
<防衛産業も営利企業>政府は防衛産業の持続可能な利益確保の必要性を国民に説明すべき。
http://japan-indepth.jp/?p=5052

<武器禁輸緩和>安倍政権は「防衛装備生産基盤の危機回避」という本意を国民に説明せよ
http://japan-indepth.jp/?p=5014

<200億円の海自P-1哨戒機>性能も怪しい高コスト機の開発ではなく現有機の近代化を
http://japan-indepth.jp/?p=4818

朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しました
NEW国連加盟は憲法違反である
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014061900005.html?iref=webronza

国益のために国内ヘリ産業を潰すべきだ
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014051200007.html?iref=webronza

ロシアとウクライナが簡単に刀を抜けない理由
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014041500002.html

知られざる日本発のクールジャパン的ヒット商品「エア・ソフト・ガン」はなぜ市場を失いつつあるのか?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014032400011.html

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 18
ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
あの記事は、どう贔屓目に見てもあまりに露骨すぎたように思えます。そこで、輸入完成機の稼働率が低いというなら、同じように完成機を輸入している他の官公庁や民間機の稼働率も併せて示して欲しかった、と航空ファン編集部のブログにコメントさせていただきましたが、今のところ、ガン無視のようであります。やはり、ああしてまで国産開発を推すからには、何かあるのでは?と疑いたくなります(以前もF-X選定に絡んだ記事で同誌は空自OBまで引っ張り出して「空自のF-Xには、やはりF-22が相応しい」なんて趣旨の文章を書かせていたくらいですし)。やはり専門誌といえど防衛省や各幕に、それなりに気を使うのでしょう。だからと言って、あからさまに各幕の意向に沿った記事というのも困ります。
KU
2014/07/27 15:13
主様へ、「ODAなどでヘリをばらまければ、また多少輸出の目はあるでしょうが、現在それはWTOで禁じられているのでその手は使えません。」ですが、
これは軍や治安機関関係相手の援助も同様でしょうか?

豊かな水資源と肥沃な国土を有する南米パラグアイの軍と治安機関関係の装備は、経済的事情等から、小火器類を除き、旧式装備が多いです。戦車に至っては、戦後第1世代どころか、未だにシャーマン戦車を極限まで改修したものを使用している程です。
しかし、同国と日本の関係は深く、駐日大使はなんと、日本人移民1世のトヨトシ氏です。

余りにも古すぎる装備を使用せざるを得ない、パラグアイ軍や治安機関関係の為に、UH−Xに限りませんが、日本の国産装備を供与するのは、我らは国産装備の使用実績と対価として、別に外貨でなくても、日本人移民の地位向上(同国は外国人移住者には寛容ですが…)やランドラッシュに乗り遅れたと言われる我が国の食料生産場所の確保。
彼らは旧式すぎる装備で、共産ゲリラと血で血を洗う戦闘を行わざるを得ない現状からの脱却と周辺のブラジル、アルゼンチン、ボリビアより、圧倒的に劣る装備の更新。

双方に利益が有ると思いますが、これが、問題になるのでしょうか?
米露欧などは、今でも友好国等に軍事援助を行って行っているのに…。
チャイカ
2014/07/27 21:30
お邪魔します。

>我が国よりのオリジナルのUH-Xよりも遥かに合理的な考えです。航空産業を振興し、世界に輸出を増やそうという韓国政府の思惑にブレがありません。

 これ「自体」は正しいと思いますが、「中国製チキンナゲット」に見られるように儒教に基づく(儒学以外の)実学軽視、商業蔑視及び(近代以前は全世界共通の)「騙される方が馬鹿」と言わんばかりの前近代的な商業感覚がそれを骨抜きにすると思われます。また「国産か否か」ではなく、人は「負けたらおしまい」といった状況にならなければ本気になれないのが”性(さが)”だと思います。
ブロガー(志望)
2014/07/27 22:29

コメントする help

ニックネーム
本 文
陸自UH-Xと韓国の汎用軽ヘリコプター 清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所 /BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる