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zoom RSS 2014年7月ロンドン写真日記その3 日経ファンボロ−誤報 追記あり

<<   作成日時 : 2014/07/17 04:44   >>

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 本日はMRJのモックアップのプレス向け公開がありました。
すでにご存知のように、今回のショーでMRJは多くの新規顧客の獲得を発表し、オプション含めて365機を受注。なんとか売上を伸ばして欲しいものです。
 その昔MRJがパリエアショーでデビューしたさい、日本大使公邸でレセプションをしたのですが、呼ばれたのは日本の業界の関係者ばかり。顧客となりそうな外国のエアラインの担当者、プレスの人間もすべてオフリミットで、身内だけで飲み食いしていました。これでは何のための外国で開くレセプションか、とぼくは批判記事を書きましたが、当時からは三菱航空機の経営陣もスタッフも意識がかなり変わってきたと思います。
 それが受注の数字に現れていると思います。

 これは他の防衛産業を抱えている企業にもいえることだと思います。マーケット相手の商売をすれば、意識を変えざるをえない。その意味では海外の市場に乗り出す必要があります。

 しかし、ファンボローの取材は辛いですね。ぼくはロンドン市内の比較的センターのアールズコートの滞在しているのですが、ここからウォータールー駅で列車に乗り換えてファンボロー駅で降り、シャトルバス(たいてい行列)に乗って、ゲートでまた行列で概ね片道2時間から2時間半、つまり「通勤時間」が毎日往復4時間から5時間です。
 これがパリ航空ショーならば市内からせいぜい片道1時間からかかっても1時間半程度です。前回ももうファンボローに来るのはやめようと思っていたのですが、いろいろ事情があって今回も来ました。
 その昔大学を出てすぐ、こちらの語学学校に3ヶ月通った後、ファンボローのショーを見に行きました。もちろん一般日です。ショーが終わったときに、就職したらもうこういうところには来れないんだろうなぁ、など感慨深く思っていたのですが、毎回来るようになるとは。
 人生分からないものです。


 さて、日本を代表する経済紙が誤報です。記者は基本的な取材能力が欠除しているように思えます。まあ、ユーロファイターを買うと、アメリカ様との同盟関係が崩れるとか、社説で書いちゃう新聞ですから、さもありなんですが。


日本の防衛産業、手探りの出展 英航空ショー開幕
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDZ1301C_U4A710C1TJ2000/

 武器輸出三原則が緩和された日本からは川崎重工業などが初出展し、各国の国防関係者の関心を呼んだ。

 初出展した川崎重工のブースでは、潜水艦などを探索する国産哨戒機「P1」の模型を手に担当者が最新技術の説明に追われた。

 いえいえ、川崎重工も三菱重工も富士重工もIHIも、今回と同様にSJAC(一般社団法人 日本航空宇宙工業会)のメンバーとしてやる気の無いブースを延々と、ファンボロー、パリの航空ショーで出展しています。
 そのような背景を知らずとも、今回何回目の出展ですか、と尋ねれば教えてくれるのですが、そのようは基礎的な確認をしなかったのでしょう。

 しかも先のユーロサトリではそれなりの高いポジションの人間がブースにいたのですが、ファンボローでは今回もあいも変わらず、各社とも割合若手の製品の説明要員ばかりで、商売する気が全くみられませんでした。

 「ソナーブイ(音響探知機)に興味がある。日本の技術力は高く輸出できればビジネス
になるのでは」。英ウルトラ・エレクトロニクスの担当者は強い関心を示した。

 
 これも残念なコメントです。
 ぼくだったらこのようなコメントは記事にしません。日本の哨戒機のソノブイはNECと沖電気が作っていますが、性能はイマイチ、値段は米国製何倍も高い。だから海自はリムパックでは米国製のソノブイを使用しています。
このウルトラ・エレクトロニクスの人間はソノブイには明るくない人だったのでしょう。ソノブイの担当者であれば、日本の代理店の双日アエロスペースからその実態を聞いているから、上記のようなコメントは出てこないでしょう。


 まあ、P-1は海外ではまず売れません。単価が高いし、機体は専用、エンジンも専用で、しかも4発。生産数が少ないために運用コストが非常に高い。双発のベストセラー旅客機をベースにしたP-8ポセイドンと比べれば買う軍隊はないでしょう。
 調達単価が200億円、運用コストはP-8よりも何倍も高いであろう機体で、オフセットの設定もできない。これを導入する物好きはいないでしょう。

 今回のファンボロー−も米国のL3やサーブなどターボプロップのリージョナル機、あるいはボーイングのようにリージョナル・ジェットをベースにした哨戒機を提案していたメーカーが結構あります。多くの国はP-8のような哨戒機を揃える予算がないので、こういう機体を選びます。これらの機体はシステムにしても量産されているので、P-1よりは遥かに安価です。

 ショーをまともに取材すればP-1の輸出の可能性など無いに等しいことがわかるはずです。

 「長距離のミサイル開発にはあなたがたの力が必要だ」。政府が緩和を決めた今春、英国のミサイル大手、MBDAは三菱電機と戦闘機用の空対空ミサイル「ミーティア」の開発で合意した。 
 
 この話の出元は恐らく防衛省です。それも最近に知ったのでしょう。 これも誤報の可能性があります。

 この件はロイターが報じたのですが、ローターの記事では具体的なミサイルの名を出していません。
 ぼくは現地でMBDAの担当者にただしたのですが、具体的なミサイルのモデル名も、三菱電機と開発の合意に達したかどうかもまだ言える段階にないとコメントしておりました。ミーティアはかなり開発が進んでおり、今から三菱電機が入って双方にメリットがあるのか、これも疑問です。

 しかも「長距離のミサイル開発にはあなたがたの力が必要だ」とMBDAの関係者のコメントを、直接聞いたかのような書き方をしていますが、それはありえないしょう。仮に伝聞で聞いたのであれば、コメントの形で紹介するべきではありません。

 MBDAが食指を動かしたのは大型望遠鏡や家庭用エアコンにも使われる三菱電機の赤外線技術だ。赤外線を発して標的物を高精度に追尾・捕捉するもので、まさにミサイルの「目」となる。

 これまた怪しい部分です。ミーティアは視界外射程空対空ミサイルで、アクティブレーダーシーカーを採用しています。赤外線シーカーを採用するのは得てしてサイドワインダーなど、短距離用の空対空ミサイルです。
 つまり、開発対象がミーティアであるなら赤外線シーカーではありません。しかも短距離ミサイル用シーカーは、目標の出す熱を感知するパッシブ型です。赤外線を振りまいて、敵を探知するミサイルというのはあまり聞いたことがありません。
 ミサイルにちょっと知識がある人間ならばおかしいな、と思う部分です。

 この辺りは記者の捏造である可能性すらあります。

 まあ、ミーティアがアクテブ型の赤外線シーカーを採用するなら、我々の業界では全く常識が覆るような一大技術革新(たぶん)ですから、大ニュースです。

 そもそも川重が初出展とかいているような記者が書いた記事ですから、尚更疑う必要があります。この件も帰国後調査をしてみようと思います。


 防衛省の装備品の契約期間は5年と短い。


 これも間違い。これは単年度で契約した場合、最大5年間に渡って支払いが繰り延べることができるということを誤解したのでしょう。5年間契約ができれば、支払いの繰り延べが5年ですので実質10年契約と同じことになります、であれば企業は随分生産計画が立てやすくなります。

 そもそも我が国の防衛調達の問題はプロジェクトで何機(何輛)を何年で調達し、総額がいくらになるということを決めずに単年度で発注していることです。
 ですから現在複数年度の契約や、支払いの繰り延べを5年以上に渡って出来るようにしようと防衛省では動いているわけです。この辺りの事情をよく知らずに書いているように思えます。

 まあ、日経は1面で明らかな誤報をしても「記事には絶対の自信があります」といって受け付けず、書いた記者の名前も明らかにしません。
 例えば以前、これから小型UAVを開発すると報道しましたが、それはすでに写真があり、日経もその写真を掲載していました。その写真は数年前から技本のHPでも公開されていました。これから開発するのに写真があるはずはないでしょう。

 だからいつまでも誤報、飛ばし記事が減らないわけです。
 日本の防衛産業に関しては、ロイターやブルームバーグの外国の通信社の記事のほうが日経の記事よりも遥かに信用できますし、スクープも多いのが現状です。

 日経の記者はいくら取材能力が低くて誤報を垂れ流そうと、名刺を出せば上場企業の経営者も会ってくれます。会わないと悪口を書かれても困るからですが、相手が会ってくれるのを自分の力量だと勘違いしている記者も多いのではないでしょうか。
 軍事でもこれですから他の記事の信用性も推して知るべし、でしょう。ですから日経は後ろから、下から読めと言われているわけです。一番後ろは文化欄、下は広告、そして雑報。つまり大きい記事、日経独自の取材の記事は信用できない、ということです。


新しい防衛航空宇宙専門サイトを始めました。
「東京防衛航空宇宙時評・Tokyo Defence & Aerospace Review」

http://www.tokyo-dar.com/

strong>NEXT MEDIA "Japan In-Depth"[ジャパン・インデプス]に以下の記事を寄稿しております。
NEW<海上自衛隊のシーレーン防衛はフィクション>日本には戦時に守る対象となる自国の商船隊が存在しない
http://japan-indepth.jp/?p=6994

<バーバリーと三陽商会>ファッション業界「ライセンスビジネス」の怪
http://japan-indepth.jp/?p=6198
<防衛産業も営利企業>政府は防衛産業の持続可能な利益確保の必要性を国民に説明すべき
http://japan-indepth.jp/?p=5052

<武器禁輸緩和>安倍政権は「防衛装備生産基盤の危機回避」という本意を国民に説明せよ
http://japan-indepth.jp/?p=5014

<200億円の海自P-1哨戒機>性能も怪しい高コスト機の開発ではなく現有機の近代化を
http://japan-indepth.jp/?p=4818

朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しました
NEW国連加盟は憲法違反である
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014061900005.html?iref=webronza

国益のために国内ヘリ産業を潰すべきだ
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014051200007.html?iref=webronza

ロシアとウクライナが簡単に刀を抜けない理由
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014041500002.html

知られざる日本発のクールジャパン的ヒット商品「エア・ソフト・ガン」はなぜ市場を失いつつあるのか?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014032400011.html


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コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
清谷様

取材、お疲れさまです。日経の記事ですが、もともとやたらに企業広告の多い新聞ですから、企業側をヨイショした記事が多いように感じます。とくに軍事関連は一般読者に興味・関心のある人が少ないですから‥適当にお茶を濁しているような感じがします。
ブリンデン
2014/07/17 09:41
MRJはカッコがイイので期待はしています。一般紙で軍事記事が鋭いのは東京新聞だけですね、名古屋で接待した空自幹部が情報源なんでしょう(笑)
マリンロイヤル
2014/07/17 16:37
清谷様にお伺いしたいのですが、今までジェット機を作ったことがない三菱重工が、MRJを売ることができたのはなぜなのでしょうか? P−1は売れるはずがないにも関わらず、MRJは売れたのはどういうことなのでしょうか?
ひゃっはー
2014/07/17 19:36
>MRJ
マーケットを意識するかしないかの違いです。
キヨタニ
2014/07/17 22:41
清谷様

取材、お疲れさまです。MRJに関してはMU300(ダイヤモンド1)プロジェクト失敗の敗因分析が生かされているような気がします。

本来、MU300は三菱ブランドでもっと売れても良かったと思うのですが、タイミングが悪かったですね。
ブリンデン
2014/07/17 23:15
お邪魔します。

 通常メディアは「情報を提供して、判断は見る人に委ねる」ものですが、日本のマスコミは”空気”の”醸造装置”です。精神科医の熊木哲夫氏の本で、「DV夫に共依存している友人から、DVの最中にその友人からの電話を受けた女性からの相談」が載っていました。「友人を見殺しにする事は許されない事」と言う相談者に対し、熊木哲夫氏は「その友人はあなたを共依存に巻き込もうとしている」と指摘していました。日本のマスコミも自らが”空気”にまみれながら、より多くの人々をその”空気”に引きずり込もうとしているのでしょう。日本は「その場の”空気”」で物事が決まる国ですから。

 MRJも難航しているようですが、B787の「就航後にバッテリーから煙モクモク」みたいにならないか心配です。またホンダジェットも通常エンジンを置かない場所に工夫して置くようにしたと聞いています。やはりこういった「地道な努力」が必要なのかも知れません。

 最後に別件ですがマレーシア航空機がウクライナ上空で撃ち落とされました。これはかつての「ルシタニア号撃沈」「WTCビル自爆テロ」のようなウクライナ問題の「転換点」となるのでしょうか。
ブロガー(志望)
2014/07/20 08:53
ミーティアの戦力化が難航してるから、あるいはあるかなぐらいは思ってましたが、これではちょっと…。
しかし日経の記事もまあまあ読めるものは増えてきました。トルコへのパワーパック輸出については新興国への輸出があまり旨みのない、正直言って技術を渡すだけの結果になりかねないと報じてます。
輸出・共同開発において当然技術供与が行われることを考えると、マーケティング・マーチャンダイジング能力のない我が国の防衛産業は技術を切り売りするだけ(家電業界を思わせます)で終わるのではないかと危惧しております。
2CU
2014/07/30 22:34

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