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zoom RSS 防衛装備品開発、独と調整へ=戦車技術の相互提供など、はホントウか?

<<   作成日時 : 2014/06/08 13:44   >>

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  防衛省は防衛装備品開発のコスト削減などのため、ドイツとの共同開発を目指し調整に入る方針を固めた。戦車技術の相互提供を念頭に置いており、月内にドイツで事務レベル協議を開催し、具体的な検討に着手する。

 防衛省はまず、ドイツに対し、戦車関連技術の相互提供を働き掛ける意向。陸自最新鋭の10式戦車の特性である小型・高機動性をドイツ側にアピールし、将来的にはレオパルト2と90式の後継機の共同開発の可能性も模索する。


装備品開発、独と調整へ=戦車技術の相互提供など―防衛省
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140607-00000075-jij-pol

 こういう記事が出ると「日本の戦車技術が(大好きな)戦車大国、ドイツに認められた!」と小躍りする向きもあるでしょうが、それは多分ぬか喜びに終わります。
 この手の話はブァと多く風呂敷を広げるもので、だったらいいなあ、という「夢を語った」ものです。得てして竜頭蛇尾になります。
 単に何か商売になるお話をしてみましょう、レベルです。まずは見合で挨拶をしたレベルで、
この後デートを重ねるか、結婚するかは分からない、という状態です。

 記事中の「陸上自衛隊の90式戦車は、レオパルト2の開発企業の一つであるラインメタル社の砲身を輸入して使用」とありますが、砲身は日本製鋼所によるライセンス生産です。

 
 ぼくは最近ドイツの関係者と接触したのですが、ラインメタル社は日本製鋼所に対して戦車砲の砲身の生産を打診しています。というのも同社は現在多くの受注を抱えており、デリバリーが遅れているためです。
 無論日本製鋼所の砲身の品質が高く、また納期に正確なことから同社を下請けとして使いたい、そのような動きがこの話の発端にあるのでしょう。


 だからといって、ドイツが次世代の戦車を我が国と共同開発というのは胸躍るお話ではありますが、まあ実現の可能性は低いでしょう。
 何しろ相手は、大きな実績があり、開発技術も販路も持っている。対して我が国は自国マーケットだけで実績もない。ドイツが欲しいのはカネを出してくれる下請けでしょう。欲しいのは一部の技術とコンポーネントだけでしょう。
  

 そもそも次世代の戦車は、例えばトルコのアルタイのような現在の戦車の延長線上にはないでしょう。
 現在の戦車の重たくなりすぎており、これ以上の重量の肥大は許容できません。
 無人砲塔が採用されたり、二人乗りのコンパクトなものになる可能性だってあるでしょう。変な「先駆的」な戦車を開発してその後デファクトスタンダードになるような、別の戦車がでてくるような事になれば、あっというまに無用の長物化摩ることになり、目も当てられません。
 ですから共同開発に相手国の事情を慮って仕様などで妥協することはないでしょう。その仕様を複数の国家で決めることはかなり困難です。しかも我が国は共同開発の経験が殆どありません。

 そもそも防衛省は常々国産へ兵器開発の「我が国固有の環境と運用」を理由にしています。ドイツとは環境も運用も異なると思うですが。

 我が国は英仏、オーストラリアといろいろと協定を結んだりしている。ドイツだけそのような「実績」がない。まずは政府間の協力体制を先に挙げた国々並にしておきたいという思わくがあるのでしょう。
 ただ現実問題として政府は仏、英などとも協定や覚書などをあこれと結んでおり政府間での話し合いは進んでおりますが、民間レベルの話は寂しい限りです。それは特に日本側の企業の姿勢に問題があるようで、笛吹けど踊らず、という状態です。

 
 以前話題になった日経のアルタイの「エンジン共同開発」はかなり不正確な報道でした。
「共同開発」の実態は我が国による技術供与です。「共同開発」は嘘ではないのですが、殆どのコンポーネントを輸入して組み立てるだけを「ライセンス生産」というようなものです。ファントムもMCH-101の「ライセンス生産」ですが大きく異なります。前者は多くのコンポーネントを国産化しており、後者はほぼ組み立てに過ぎません。

 「共同開発」というのはトルコ政府のメンツを慮ったという面もあるでしょう。ですが、読者の誤解を招きます。少なくとも文字数の制限のない電子版ではそのあたりの話を補足しておくべきでした。

 また「エンジンの共同開発」ではなく実態はパワーパックの共同開発です。当然ながらエンジンはパワーパックの一部ですから間違いではないのですが、エンジンだけを開発するのと、パワーパックを開発するのでは大きな違いがあります。
 これらのこととは日経の記事がでる遥か前に、ぼくは防衛省のしかるべき筋に確認をしておりました。単にぼくの推理ではありません。

 新聞などの記事を読む場合、こういう行間を読む、あるいは疑いながら読むような訓練が必要です。
 ネットなどでは新聞にこう書いてあった、記事を金科玉条の如く振り回して、これこそ真実だと言わんばかりに主張する人達がいます。ですがそれは極めてリテラシーが低いと言わざるを得ません。これが中学生なら仕方ないでしょうが、いい歳をした社会人のやることではありません。
 
 そのような人達はかつて10式戦車の試作車のお披露目の際の産経新聞の誤報を信じ込んで大喜びをして国産戦車開発の正当性を吹聴していました。
 ですが技本が量産戦車の調達価格、それも概算要求の1年以上前に発表するなどありえません。これは公開情報だけを読んでいても分かる話です。




NEXT MEDIA "Japan In-Depth"[ジャパン・インデプス]に以下の記事を寄稿しております。

<バーバリーと三陽商会>ファッション業界「ライセンスビジネス」の怪
http://japan-indepth.jp/?p=6198
<防衛産業も営利企業>政府は防衛産業の持続可能な利益確保の必要性を国民に説明すべき
http://japan-indepth.jp/?p=5052

<武器禁輸緩和>安倍政権は「防衛装備生産基盤の危機回避」という本意を国民に説明せよ
http://japan-indepth.jp/?p=5014

<200億円の海自P-1哨戒機>性能も怪しい高コスト機の開発ではなく現有機の近代化を
http://japan-indepth.jp/?p=4818

朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しました
国益のために国内ヘリ産業を潰すべきだ
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014051200007.html?iref=webronza

ロシアとウクライナが簡単に刀を抜けない理由
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014041500002.html

知られざる日本発のクールジャパン的ヒット商品「エア・ソフト・ガン」はなぜ市場を失いつつあるのか?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014032400011.html


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コメント(10件)

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清谷様

> 変な「先駆的」な戦車を開発してその後デファクトスタンダードになるような、事になれば目も当てられません。

「デファクトスタンダード」は、良い意味で世界標準となる、という意味だと思います。むしろここでは、「トンでも兵器」になる、という言葉がふさわしいかと思いますが、いかがでしょうか?

私の理解不足であれば、すみません。
ドナルド
2014/06/08 19:59
「ホントウか?」

カタカナですね、神道の「カミ」と同じです

最近は政府も冗談をよく言うようになったみたいで

日本は兵器を丸ごと作りより、その部品を作る方が向いてるんですよね

個別の要素を突き詰めるのが得意で、全体を纏めるのが苦手だからね

実現できそうもない無理な共同開発より 戦車砲の下請けがされるといいですね
Alice
2014/06/08 20:46
私も今日の大石さんのブログを見て、このニュースに接しましたが正に、「いよいよドイツと組める!」と胸熱な感じにとらわれましたが、蓋を開けてみれば、それほど期待出来る話でも無かったのですね。残念というか、我が国の技術がドイツ経由で中国に渡らずに済んで良かったというか・・・・複雑であります。それはともかく、今年のPANZERの2月号にレオパルト2の特集記事がありました。どうやらドイツは既存のA6をA7に改修するようですね。おまけに、まだまだ中古の程度の良いA4の在庫もあるというし、しばらくは商売に困らないでしょうね。しかし、今回の共同開発の話ですが、どこから出てきた物なのでしょう?防衛省がアドバルーンを上げてみただけなのでしょうか。
KU
2014/06/08 22:47
ドナルド様

その部分編集ミスで、一部間違って削除しておりました。直しておきました。
キヨタニ
2014/06/08 23:22
「将来的にはレオパルト2と90式の後継機の共同開発の可能性も模索する。」というのは、現時点では日本側からの希望的観測だけで、ドイツ側の意図についてはまったく記事には書かれていませんよね。
現状で見る限り、ドイツが防御力を犠牲にしてまで10式のようなダウンサイジング化した装備を欲するとはあまり思えませんし。
とりあえず続報が出るまでは、キヨタニさんが仰るように「ホントウか?」程度に聞いておいていいような話だと思います。

ただ武器輸出3原則が緩和となった暁には、次期レオパルトに日本製のパーツが使われるなんてことは十分に考えられるでしょうけど。
PAN
2014/06/08 23:53
対中を睨んだ政治的な案件でしょう、日本から出せる技術なんてありませんから。欧州はほっときゃ中国にバンバン兵器を売りまくりますからね。
マリンロイヤル
2014/06/09 01:13
今後なにが売れて、どこの会社が儲かって、株価が上がるのか、を新聞の行間から読もうと必死になっているのですが、まあ難しいですね(笑)
競馬新聞と赤鉛筆を持ったおっちゃんの気持ちがよくわかります。
ひゃっはー
2014/06/09 02:19
ドイツの対日観が非常に悪化している様なんですが、何故なんだろう?
一部のブログでは大飯再稼動と安倍政権誕生が原因なんてあるが、御存知ですか?
?
2014/06/10 11:02
お邪魔します。

 「『90式戦車をアメリカが褒めた』という事が専ら日本の関係者から聞こえ、アメリカの方からは聞こえてこない。」というのと似ているように思えます(アメリカにすれば日本の戦車についてあれこれ言う理由は無い?)。

 無人砲塔はスウェーデンがS戦車の次の戦車で採用するともロシアが開発していたとも聞いていますが、どちらも開発中止になったようです。またドイツのレオパルト3は二連装砲で初回命中率90%以上を狙いましたが、これも立ち消えになりました。今の戦車が限界に達しつつあるとはいえ、全く違う戦車を作ってそれとやりあえるか、コスト的に割が合うかの問題が未だ解決できていないようです。今はIT化の方に向かっていますが(味方に背中から撃たれたくない?)、その内無人戦闘車を戦車に随伴させ(障害物か多く、接近される事も多い地上では遠隔操作は難しい?)有人の戦車の目・手及び盾として使われるのではないかと予想しています。
ブロガー(志望)
2014/06/11 23:31
>日本製鋼所の砲身の品質が高く

ここ本当なんですか?M2機関銃で手抜きをしていた会社もいましたし、日本のメーカーが作る装備品ってどうにも信用ならないんですけど・・・

まあ、キヨタニさんのことだから裏づけは取っているんでしょうけど。
八王子の白豚
2014/06/14 17:01

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