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zoom RSS 南アフリカが攻撃ヘリ、ロイホックの再生産を決定。

<<   作成日時 : 2014/05/02 13:05   >>

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 南アフリカ政府は南ア空軍向けに攻撃ヘリ、ロイホックの再生産が決まりそうです。
 恐らくはもう一個飛行隊が編成されることになるでしょう。輸出の可能性もあるでしょう。

http://www.janes.com/article/36210/south-africa-s-defence-minister-calls-for-rooivalk-line-to-be-reopened
画像

 ぼくは陸自のAH-1Sの後継では、このロイホックを推していました。
 それはぼくが南アびいきだからだろう批判もありますが、まったく的はずれです。これは合理的な理由に基づいたものです。
 南アの兵器は性能が高く安価で、最も大きな特徴は整備性、特に前線での整備性が高いことです。

 南ア製の兵器は先進国でも使用されております。その好例が各種MRAPです。米国のMRAPメーカー、フォースプロテクション社の初期のMRAPの多くは南アの対地雷装甲車の父とよばれる、ジョイント博士の設計によるものです。
 ぼくは90年代から我が国を含めた先進国でも南アのような耐地雷装甲車が必要になると主張してきましたが、そのような意見は少数派であり、当時陸自の「専門家」の中にも鼻で笑うような人達もいました。彼らは「野蛮なアフリカの装備」に関して興味もなく、調査もしていませんでした。結果はご存知の通りです。
 
 アメリカ製だから、フランス製だから評価する、米軍が持っているから欲しいというのであれば、それは単なるブランド志向です。

南ア国防軍は豊富な実戦経験があり、ヘリにしてもアルエートIIIに20ミリ機関砲を搭載したガンシップなどを長年運用してきたノウハウがありました。

 AH-1Sの後継当時選定当時、ティーガーやAH-1Zは開発途中でした。候補になりそうなのは、AH-64、AH-1W、マングスタ、ロイホックぐらいでした。当時の陸幕装備部が真摯にこれらの候補について考慮した跡は見られません。例によって、「米軍と同じ玩具が欲しい病」だったとしか思えません。

 ロイホックは英軍の攻撃ヘリコンペでは最後まで候補に残りましたし、上記の記事にあるようにトルコも調達を予定していましたが、コンポーネントを提供している某国(おそらくはクルド問題が理由でしょう)の妨害で頓挫しました。ですから相応の能力を有していた機体といえるでしょう。

 また中国からもサンプルを売ってくれという話が過去ありましたが、これはさすがに断っています。すぐにリバースエンジニアリングでコピーされますから。
 

 さて、採用された陸自向けのAH-64Dは、米軍とのネットワーク機能が取り払われ、陸自自らが望んでモンキーモデルにしてしまいました。AH-64Dの最大のウリであるネットワーク能力を自ら劣化させたわけです。これは恐らくコスト削減のためでしょうが、であればAH-64Dを導入する意味が極めて低くなったと言えます。
 米軍は自国とデータリンクもできないような胡乱な攻撃ヘリは危なくて戦域にいれてくれません。ということは、日米共同作戦はできません

 しかも例によって国内生産によってコストだけはバカ高くなりました。
 
 加えて言えば、AH-64Dの維持費は極めて高い。ティーガーの何倍も高いそうです。陸自がこの高い維持費、更には頻繁に行われる近代化に追従する予算が確保できるのか、これまたまともに考慮された形跡がありません。
 にも関わらず、調達が決定されました。当時メディアで批判していたのはぼくを含めた少数派でした。

 結果13機で調達が終わるという無様を晒したわけです。
 現実問題として陸幕のアパッチの国産という選択は大失敗でした。
 陸幕が調達を中止した理由のひとつが多くのAH-64Dを調達し、その後の頻繁なアップデートに追従できないことがあります。


 その上、富士重工には初度費は払わん、そんな契約していないもん、と開き直って裁判になったわけです。
 これでは危なくてメーカーは防衛省の仕事を受けられません。ということで、装備品に関しては初度費が別途払われることとなったわけです。なんともお粗末な話ではありませんか。
 これは極めて異常なことなのですが、市ヶ谷でも永田町でもさほど深刻に捉えられておりません。そんなことで今後の防衛装備調達改革がまともにできるのは心配であります。


 ぼくがロイホックを推したのは以下の理由によるものです。

 1)調達・運用費が安く、整備性が高い。
   ロイホックの調達コストは安く、しかも駆動系は殆どスーパーピューマと同じです。ですからパーツの入手が容易で安価です。また前線での整備でも高い稼働率を挙げるためのモジュラー化が徹底されているので、有事に前線で高い稼働率が期待できます。

 2)生存性
 南ア国防軍は人命を極めて重視する軍隊です。それはアパルトヘイト当時、人口的にマイノリティである白人兵が多く死傷すれば国の根幹が揺らぐという事情があったからです。
 ですからロイホックも生存性を重視しています。無論、AH-64のような高い耐弾性はありませんが、可能な限り生存性を追求しています。

 3)機体の大きさ
  機体はほぼAH-64と同じ規模であり、冗長性があります。つまり将来の近代化に有利です。

 4)長い航続距離
  航続距離は378海里、武装時で297海里と長大です。これは島嶼防衛で非常に有用です。対してAH-64Dの武装時の航続距離は220海里に過ぎません。


 また米国製機体と違って、かなりカスタマイズが可能です。ですから自国製のアビオや兵装の搭載も自由に可能です。ですからそれこそ「我が国独自の環境や運用」に合ったカスタマイズが可能です。またFMSは関係ないのでパーツの輸入なども迅速に行え、その面からも高い稼働率が期待できます。


 いまさらですが、武器禁輸も緩和されたわけですから、いっそAH-64Dを売り払って、ロイホックを採用してはどうでしょうか。機体を輸入し、アビオやセンサー類を国産にすればそれなりに満足がいき、また島嶼防衛に有用な攻撃ヘリが手に入ると思います。

 現実問題として現状13機、一個飛行隊のAH-64Dでは訓練も、有事の際の作戦の柔軟性も極めて低く、また一機あたりの維持費も高くつきます。

  しかも今後自衛隊の機体であるブロック2はパーツも枯渇していきます。

  現実的な選択としては、もう一個飛行隊を増す必要があるでしょう。
  その場合、新規機体はブロック3、E型で調達し、既存機もE型にアップ・グレードをする必要があります。しかもその後延々と高い整備費を払い続ける必要があります。それが負担できるのでしょうか。

 陸自の予算は今後C4IRの強化、新型装甲車の導入、水陸両用部隊の編成などカネのかかるプロジェクトが目白押しです。それでも部隊の縮小は考えていません。その上来年以降4年間、平均毎年510億円オスプレイの調達予算が必要です。
 
 現実的な方策としてはAH-64Dを転売してより安価な、攻撃ヘリを2個飛行隊ぐらい導入するか、UH-Xの武装型で補うぐらいしかないでしょう。

 ところが陸自はメンツがあるから、AH-64Dを使い続けるでしょう。
 陸自の任務は国家の防衛であって、組織防衛やOBの偉い人のメンツじゃないと思うですけど市ヶ谷ではそのような考え方は通用し辛いようです。
  



NEXT MEDIA "Japan In-Depth"[ジャパン・インデプス]に以下の記事を寄稿しております。

<防衛産業も営利企業>政府は防衛産業の持続可能な利益確保の必要性を国民に説明すべき
http://japan-indepth.jp/?p=5052

<武器禁輸緩和>安倍政権は「防衛装備生産基盤の危機回避」という本意を国民に説明せよ
http://japan-indepth.jp/?p=5014

<200億円の海自P-1哨戒機>性能も怪しい高コスト機の開発ではなく現有機の近代化を
http://japan-indepth.jp/?p=4818

朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しました
ロシアとウクライナが簡単に刀を抜けない理由
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014041500002.html

知られざる日本発のクールジャパン的ヒット商品「エア・ソフト・ガン」はなぜ市場を失いつつあるのか?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014032400011.html




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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
南ア製の兵器は実戦での戦訓に裏打ちされていて一味違いますね。陸自は攻撃ヘリのドクトリンを持ってないので、どこのヘリも使いこなせないでしょう(笑)火砲定数に引っ掛からないなら、G7 105ミリ砲なんかは、キチンと作動するか不明な国産ATMより実戦的な気がします。
マリンロイヤル
2014/05/02 14:24
陸自にAHが積極的に必要な理由がわからないのですがどなたか教えていただけませんか?
国連や多国籍軍での掃討作戦につかうならまだ理解できるのですが。

2014/05/03 01:54
なんだか、お偉いさんはろくな調査もやらずに、米国製以外の兵器はアニメの背景に出てくるモブキャラと同じで、注目に値しないと考えてそうですね(笑)
ひゃっはー
2014/05/03 09:53
お邪魔します。
 「優秀で勤勉は参謀、優秀で怠惰は指揮官、馬鹿で怠惰は兵士、馬鹿で勤勉は銃殺」というのを聞いた事があります。かつての日本軍は「馬鹿で勤勉」だったので、「国のため」と突っ走って国を滅ぼしました。そこで自衛隊は「国防には役立たなくても突っ走って国を滅ぼさなければそれで良い」と「馬鹿で怠惰」な組織として作られました。しかしだんだん「馬鹿で勤勉」になりつつあるようです。例えば「国を守るには優秀な兵器が必要」と高価な兵器に手を出すが、「馬鹿」だから「数を揃え、運用体制を整えて戦力化する」までには至らず、日本の防衛力を却って低下させているのでしょう。「優秀」になるには日本「自体」がレベルアップしなければなりませんが、「血と死と恨みを穢れとして忌み嫌う神道的価値観」の国である日本にはそれは難しいと思われます。それをあまり気にしなかったであろうリアリストの”武士(例:義経を追いやった頼朝、豊臣家を滅ぼした家康)”もいなくなってしまいましたし。

 後、南アフリカ製の兵器を導入しなかったのは南アフリカが「有色人種を差別する国」だったので、日本が有色人種の国家である事と世界に於ける「世間体」を気にしたのかも知れません。後PCでも初心者とかは大手メーカーを買い、ある程度分かっている人は目的によってはネット通販やショップブランドのPCを買ったりしますが、日本の当局も「(軍事の)初心者レベル」なのかも知れません。
ブロガー(志望)
2014/05/03 19:01
日本では未だに、「南アフリカ=人種差別の国」といった見方しかしていないような気がしますね。兵器がどうこう、なんて話はしづらいのでしょうが、現実を無視した議論に走っても、何も理解出来ないと思うのですが。
それとロイホックと言えば、座席周囲にのみ防弾板を装備しているのでしたっけ(「間違いだらけの自衛隊兵器カタログ」を引っ張り出してみました)。思いきりが良いというか、取捨選択が徹底しているというべきでしょうか。それと新規生産を決定したとの事ですが、既存の機体は20ミリ砲を積んでいたハズですが、より大口径の機関砲に換装したりといった改良はしたのでしょうか?
KU
2014/05/03 22:13
清谷様

申し訳ありませんが、ローイファルクの優位性がいまいち分かりません。英語版の「Denel Rooivalk」wikiをみる限り、南アフリカ軍でも11機しか稼働しておらず、2011年に初めてATGMを使えるようになった、などと記述されており、開発は難航していると見受けられます。

なぜおすすめなのでしょうか?航続距離が大事なら、UH-60JAにスブウィングをつけた「武装ヘリ」(次の投稿で清谷さんが述べられている方法)と比べて、利点が特にないかと。。。

#気にしているのは、運用基盤です。エンジンがシュペルピューマと一致しているのは「0から考えれば」それで良いのですが、自衛隊はシュペルピューマを大規模に運用していないため、AHとして30-40機を採用すると、「新機種」として、兵站の負担になることを危惧しています。
ドナルド
2014/05/05 19:08
ロイホックの機数が少ないのは南アの戦略環境の変化と国防費の削減です。
ATMの開発がおくれたのも同様です。ATMは当面
旧型のスイフトの改良型のイングエで間に合うという考え方でしょう。
技術的に難航はしておらず、カネの問題です。

お説のようにUH-60の武装型もありでしょう。ですがこれまた国産だと40億円を超えることになるでしょう。
攻撃ヘリが必要ならば、という判断であればロイホックには上記のようなメリットがあります。それと速度の面でも武装型UH-60よりが有利です。

スーパーピューを運用しているのは国内で陸自だけではありません。また世界的に運用機数が多いためにパーツ供給が安定しているし、安価です。

キヨタニ
2014/05/05 20:49
清谷様

ありがとうございます。UH-60の武装型案は、清谷さんの案の中から「兵站が楽そう」なものを一つ挙げさせていいただいただけでして、私の手元には、現時点で判断できる材料がありません。ヘリは情報が少ないので、よく分からない、というのが本音です。

シュペルピューマそのものも、輸送機として優秀ですので、いっそUH-60も全廃(中古で販売?)して、陸自は全面的に「シュペルピューマ+ロイホック+チヌーク+何らかのLUH」のセットに移行しても良いのかもしれません。

#おそらく清谷さんは輸入を考えていると思いますが、シュペルピューマ(UH1後継+UH60後継に、90機ほど)+ロイホック(40機ほど)が130機になるとすると、ライセンス国産でもよいかもしれませんが。

個人的には、清谷さんのおっしゃる、COIN機、無人機、武装ヘリ、そして必要なら攻撃ヘリの「併用案」の詳細な分析がみてみたい気がします。攻撃ヘリは万能でないですが、「高い機動力と高い火力」の組み合わせは、戦術的に無視できない特徴です。しかし大事なのは「機動力の高い近接火力支援のツール」であって、攻撃ヘリはその解の一つにすぎない訳ですからね。
ドナルド
2014/05/05 21:45
 米軍の使っている兵器開発に資金面で協力をする、米軍の今後の兵器体系に関与していく姿勢の現れではあります。南アフリカのヘリや装甲車に砲熕兵器は良い物もあるのでしょうけど、今後数十年間で中露に対抗し得る正面装備を開発する予定があるとは思えません。
 
 MRAPにしてもイラク戦争・アフガン戦争が終われば、あとは非戦闘員救出や平和維持活動以外では今ひとつ使い勝手が悪いようですし、他の正面装備を調達する予算を削ってまで導入する意味が薄かったというのが実態でしょう。米軍自体にしてもラムズフェルド国防長官が州兵に詰問されてなお導入には時間を要し、拙速であろうと配備を急速に進めたのは長官が交代してからでした。
とん
2014/05/06 08:00
ロイホックですか、確かに選択肢としては良いかもしれませんね。

でも「エリア88」じゃないですが、米国製の「デコレーション兵器」か実用性に疑問符がつく国産装備しか調達してこなかった自衛隊が選ぶ事は無いんでしょうねぇ・・・・
八王子の白豚
2014/06/14 22:31

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