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zoom RSS 防衛省御用達、MAMOR誌ライター、水野某氏の批判に対する反論その4

<<   作成日時 : 2014/03/24 11:43   >>

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 またまた前回に引き続き、ぼくが関係した週刊東洋経済の2012年1/21号の「自衛隊のコスト」 という特集の「開発の総本山・技本その実力は本物か」という記事に対する月刊MAMORのライターの水野某氏の批判を検証します。

「東洋経済」1/21号の記事に関する考察
http://hiro2.txt-nifty.com/backyard/2012/01/121-e78d.html


水野氏は以下のように述べています。

「技本が海外の情報に疎いという批判も書かれている。そのために技本が開発した「内面取付型付加装甲」と「スポールライナー」を混同しているという。スポールライナーとは、被弾した際に内部の剥離物が飛散しないようにするもののこと。いや、混同しているって、内面取付型付加装甲は被弾時に内部での被害を防ぐためのものだから、スポールライナーと同じものなんですけど。開発者に取材したときにも、「ロシアのスポールライナーを参考にした」と言ってたし。どうやら海外のスポールライナーがFRPが主流なのに対し、技本の付加装甲はFRPとセラミックの複合装甲であることから、違う物だと思い込んでいるらしい。確かに技本のものは厚いけど、機能に注目すべきであって、厚さはどうだろうと関係ない」

「内面取付型付加装甲は被弾時に内部での被害を防ぐためのものだから、スポールライナーと同じものなんですけど」

これは明確な誤りです。水野氏は「装甲」と「スポールライナー」の区別が付いていません。水野氏は「本物のスポールライナー」を見たことがないのでしょう。ご主張は2ちゃんあたりに巣食っている程度の低い軍オタと同じレベルの知識・見識と言わざるを得ません。


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技本の「内面取付型付加装甲」

簡単にいえば装甲は敵弾の貫通を止めるもの、スポールライナーは被弾時の衝撃で生じた装甲板の剥離や、貫通した敵弾の被害を極小化するものです。これには形成炸薬弾による高圧ガスの被害の極小化も含まれます。
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スポールライナーの実装例

「内面取付型付加装甲」はその名の通り装甲です。
ご自身だって「、技本の付加装甲はFRPとセラミックの複合装甲である」と、書いているじゃありませんか。水野氏の主張のように「機能に注目すべき」であれば、これは装甲です。確かにあれだけ厚い「装甲」を車体に内側に貼り付ければ、スポールライナーの役目も兼ねられるでしょう。
ですが、それならばスポールライナーに使用されている素材も防弾能力があり、これを「装甲」と呼んでもいいことになります。

現在のスポールライナーは厚さが数ミリから半インチ程度のものが主流です。無論厚さは必要とされる環境における生存性、コストとの兼ね合いで変わってきますが、装甲内側の剥離などを防ぐための「スポールライナー」であればその程度の厚さで十分です。10センチもあるような「装甲」を貼り付ける必要はありません。

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armourwork社の付加装甲の説明図

ぼくはダイニーマーやデュポン、帝人、NPエアロスペース、IBD、テンカートなど多くの外国のメーカーに写真も持って尋ねましたが、皆「内面取付型付加装甲」は装甲であり、スポールライナーではないと断言していました。製品として売っているメーカーが違うと言っているのですけどもねえ。
実際に海外の見本市で、「内面取付型付加装甲」のような分厚い「スポールライナー」を見かけたことは一度もありません。

嘘だと思うならば、一度海外の見本市を取材してはどうでしょうか。

また軽装甲機動車の開発に関わっていた、その昔の陸幕広報担当のH2佐(当時)はスポールライナーに関してぼくと同じ認識でした。軽装甲機動車は当初スポールライナーを装備する構想が有ったのですがコストがかかるのでやめたそうです。
つまり、「内面取付型付加装甲」がスポールライナーというのであれば、技本の確実に10年以上は遅れていることになります。

技本の担当がネットで見て参考にした写真というのはぼくもご本人に確認しましたが、これは恐らく装甲の解説を書かれているライターの一戸氏のサイトで紹介されている旧ソ連の戦車のものでしょう。
かつてのソ連ではグラスファイバーをスポールライナーに使用していました。当然ながら、これは厚くなります。ですが既に時代遅れであり、アラミド系繊維を使用すればもっと薄く、ポリウレタン系の繊維を使用すれば更に薄くなります。

水野氏も書いているように技本の担当者は古いロシア製の戦車写真を元に、サンプルなども入手せずに「内面取付型付加装甲」を開発したのでしょう。
これは写真から想像して食べたこともない料理をつくるようなものです。
1700億円も予算がある研究機関のやることじゃないでしょう。

こういっては何ですが、水野氏は「ナポリタン」を食べて、「スパゲッティとはこういうものだ!」と断言しているようなものです。

水野氏はMAMORにこの「内面取付型付加装甲」に関するインタビューを書いているので、 ぼくから自分の記事がけなされ、自尊心が傷つけられたと感情的に反論しているだけではないでしょうか。
だとすれば随分と大人げがありません。


「厚さはどうだろうと関係ない」

そうでしょうか?装甲の剥離など防ぐ目的であれば「スポールライナー」は薄に越したことがありません。例えばこの「内面取付型付加装甲」を96式装甲車に装着したとしましょう。唯でさえ狭い車内容積は1立方メートル程度狭くなるでしょう。各種の装置や座席の据え付けなども再設計が必要になるでしょう。また被弾した際には車体自体の本装甲と「内面取付型付加装甲」の両方を取り替える必要になります。

因みにPRGなどの形成炸薬弾のガス対策のためには、本装甲とスポールライナーの間に空間を設けると効果が高まります。当然その分内部容積が圧迫されます。

ですから諸外国では余程のことがない限り、付加装甲は外部に取り付け、内部にはスポールライナーのみを装着します。機動戦闘車だってそうしているでしょう。

恐らく水野氏は外国の装甲車輌を見たことが無いのでしょう。
それとも我が国の防衛装備開発の総本山=権威である。
技本のいうことは権威であるから疑うな、とでも仰るのでしょうか。
情報はまず疑え、が鉄則である「自称」ジャーナリストには馴染みのない考え方です。
MAMORのライナーさんには違う「鉄則」がおありになるのでしょう。自分の価値基準や立場と違うというだけで他人を批判するのは如何なものでしょうか。


「そもそも技術の情報を集めるのに、見本市だけしかないと思っているのだろうか?見本市に行っていないからネット情報頼り?バカ言っちゃいけない。技本の研究者は少ない予算の中でやりくりしながら、学会に出席したり論文を集めたりしているよ」

ぼくが書いた技本の08年度の海外視察予算92万円は技本に確認した数字です。これは今ファレレンスなども含まれているとの説明でした。

ではどの程度の費用を掛けて学会に出席したりしているのでしょうか。防衛省とは「自称ジャーナリスト」などとは比べ物にならないほど太いパイプを持ってらっしゃるであろう水野氏であれば、具体的な数字を挙げて反論して欲しいものです。それができないのであれば、この批判は単に推測あるいは希望的願望に基づく誹謗中傷に過ぎません。


水野さん、技本は海外の学会視察に年にいくらの予算を使っているのでしょうか。また海外の学会でどの程度の論文を発表しているのでしょうか。
是非ともご教授頂きたいものです。

それとですねえ。92万円で6名が海外出張しているということは、恐らく全部が相手国からのご招待です。少なくともユーロサトリにきたお二人は確実にご招待です。つまりは相手国がそれなりに経費を使って招いてくれたということです。

しかもサトリに訪れた開発官、川合陸将(当時)はサトリや仏国防省施設などを見学して帰国後、40日ほどで防衛とは「縁もゆかりもない企業」に再就職しております。付け加えるならばぼくが見ていた限り、川合陸将はすべて通訳を通してやり取りをしていました。英語で専門的な会話も議論もでなかったということでしょう。

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通訳の説明を受ける川合陸将(当時)。

通訳というのも問題が実は問題ありです。というのも普通の通訳には軍事用語、特に技術用語なんてよく分かりません。
ですからある程度語学ができないと、通訳の過ちや、通訳にこう伝えて欲しいというリクエストも出せません。ですから商社に通訳をたのむことになりがちです。
通訳費用は出さなくてよいのでしょうが、彼らもボランティアではないので、それ以上に弊害がでてきます。商社にアテンドさせるのは石破氏が長官時代にやめろ、となったのですがいつのまにか復活しています。
本来防衛省で専門の通訳官でも養成すべきなんですけどね。でも水野氏はそんなものは不要だと仰るかもしれませんが。


技本では海外出張は「役得」あるいは「利権」であるという意識が強いのでしょう。そうでなければ数少ない海外視察を退官前の英語もできない偉い人の「卒業旅行」に使うよりも、現場で開発している人間に使うべきじゃないでしょうか。少なくともぼくはそう思いますけどねえ。

自ら情報をコストを使って収集するというスタンスが無いということです。換言すれば乞食根性です。そのような意識でまともな情報収集ができるのでしょうか。


水野氏には是非ともこの川合陸将の件をMAMOR誌上で技本はこのような「卒業旅行」をしていても、如何に盤石な情報収集行っているか紹介して欲しいものです。

海外のスポールライナーに使用されているアラミド繊維は東洋紡や帝人が作っているのだから、企業に問い合わせてサンプルを取り寄せればいいとも書いているが、これもおかしな話で、東洋紡や帝人がスポールライナー用の繊維を作っているからといって、「同じものをサンプルでくれ」といってホイホイ出す訳がない。当然、厳しい契約に縛られているはずで、よそに出そう物ならとんでもないペナルティがあるはずだとは考えないのだろうか?


「ペナルティがあるはずだとは考えないのだろうか?」

「当然、厳しい契約に縛られているはず」

これまたお得意の推測です。批判をするならばペナルティが課せられるという実例、契約に縛られているを挙げてくださいよ。防衛省御用達の準広報誌で連載を持っているご立派なライターさんなら。

技本が望めばそれなりにサンプルは出してくれますよ。どこも商売ですから。

一切サンプルもデータも貰えないので、ネットで拾った写真元に試作しました、なんて言ったら外国で笑われますよ。

例えばぼくはダイニーマーの日本支社の人間にも確認しました。氏名はここでは出せませんが、お引き合わせすることは可能です。


それと水野氏は何社かあたってみて、この批判を書いているのでしょうか。であれば具体的な名前を挙げて欲しいものです。


「この清谷某という自称ジャーナリストは、そもそもが技術というものについて理解していないんじゃないかと思えてならない」

人の心配をするよりも、ご自分の心配する方が宜しいのではないでしょうか。

ぼくはこのブログをみて、あまりに杜撰なのでプロを名乗った軍オタのカタリかと思いました。
あるいは、水野氏は駆け出しの経験のなく、工学的な素養もないライターさんかとも思っていました。ところがプロフィールを見ると1963年生まれて、同世代、しかも同じ東海大の工学部(航空宇宙)のご出身です。

人様を批判するならば、事実関係だけに絞るのが「プロのライター」さんととしてはスマートじゃないでしょうかね。老婆心ながら付け加えておきます。


それから防衛省のHPでは月刊MAMORの編集者やライター各氏を紹介しております。
さすが、防衛省広報誌。当然防衛省は普通の民間の雑誌にここまでしてあげません。
その防衛省は内容をオーソライズしており、一定の責任も持つ、ということでしょう。
http://www.mod.go.jp/j/publication/kohoshiryo/mamor/prof.html

月刊MAMOR HP
http://www.fusosha.co.jp/magazines/mamor/


防衛省御用達、MAMOR誌ライター、水野某氏の批判に対する反論その1 
http://kiyotani.at.webry.info/201403/article_10.html
防衛省御用達、MAMOR誌ライター、水野某氏の批判に対する反論その2
http://kiyotani.at.webry.info/201403/article_11.html
防衛省御用達、MAMOR誌ライター、水野某氏の批判に対する反論その3
http://kiyotani.at.webry.info/201403/article_12.html

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内 容 ニックネーム/日時
防衛省の広報は食えなくなった貧乏ライターを駐屯地や基地や技本の中に連れて来て、「自衛隊ってこんなにスゴイ」という一面的な記事を書かせるのが手なわけですね。それを繰り返しているうちに、世間や世界のことなんかどうでもよくなって、気がついたら自衛隊マンセーに洗脳されてるのでしょう。どこかで聞いたことがあるような話です。
ひゃっはー
2014/03/25 08:15

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