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zoom RSS 「戦える自衛隊」へ本腰、は本当か?

<<   作成日時 : 2014/02/06 20:06   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 27 / トラックバック 0 / コメント 10

今回の中期防期間(平成26〜30年度)では、計画実施に必要な金額として約24兆6700億円を確保し、前中期防から1兆円以上の上積みを図った。

今大綱では、特に陸上自衛隊が「創設以来の大改革」(幹部)に取り組むことも打ち出した

戦える自衛隊」へ本腰 陸自を大変革、海空優勢
「大規模な上陸侵攻への備えは必要な範囲に限り保持し、効率化・合理化」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131218/plc13121800450002-n1.htm

 これは「大本営発表」鵜呑みの記事です。

 増額は1兆2千億円とされていますが、増額分の内半分以上の7千億円は防衛省が効率化・合理化を行って捻出することになっています。つまり毎年1千400億円の節約分を含んでいます。
 この自助努力分を抜けば増額の「真水」分は5千億円、毎年1千億円にすぎません。

 これを陸海空自の予算比率4・3・3で割るならば陸自が400億円、海自が300億円、空自も300億円の増額に過ぎません。

 その上これから大量の退職者を迎えるので人件費の増大も予想されます。
 この状態で中期防の別表という「欲しい玩具リスト」にある玩具を揃えることは不可能です。
 
 中期防では極めて高額(で国内に殆ど技術移転が期待できない)「国産」F-35Aの調達の本格化します。また更にはAAV7、オスプレイ、機動戦闘車、グローバルホークなどのこれまで存在しなかった、新しい玩具に多額の費用がかかります。
 しかもこれら新しい「玩具」は調査もしないで調達が決定されているデタラメぶりです。

 その他一機あたりこれまた想定よりもたいそう高価になったP-1哨戒機、C-2輸送機の調達が本格し、更にE-2Cの後継機、空中給油機、更にはネットワーク関連の投資にも多額のコストが掛かります。

 これらを僅か年に1千億円程度の実質増額で賄おうというですから、無理な話です

 防衛費を大幅に増額できないのであれば、空海自に傾斜配分する必要があります。
 陸自の予算を削減し、空海自に回し、また陸自の削減した予算を使って自衛隊の近代化や水陸両用部隊、ネットワーク化に使うべきです。
 ところがそのようなリストラクチャリングは全く見られません。

 これまでも陸自は頑迷に部隊数の削減に抵抗していきました。
 それは将官、将校のポストの維持のためでしょう。
 
 陸自で普通科の「自動車化」が完了したのは21世紀になってから、僅か数年前です。
 某幕僚長経験者によると、当の普通科が自動車化に反対していたそうです。
 それは車輛用に、人員を取られれば連隊数を減したり、自動車に予算を喰われるからです。それで21世紀まで、本当に足で歩くしか無い歩兵部隊が存在してきたわけです。
 それに何ら疑問を持たなかった。中の人で疑問を持った人もいましたが、それをいうと出世できないのが陸自の体質です。
 兵站にしても一個連隊中、一個中隊を支えるのがやっとレベルでしょう。これで良しとしてきたわけです。

 ですから軽装甲機動車にしても、僅か乗員が4名の装甲車をAPCとし、乗員が全員下車するようにしたわけです。これならば車両用専用の部隊に兵力を割かれることがないからでしょう。ですが、こんな胡乱なことをやっている軍隊はありません。

 極端な話、竹槍をもった100個師団と、米陸軍並の近代的な1個師団どちらかを選ぶか、ということです。で、陸自は前者に近い方を選んでいるわけです。

 「兵隊」の頭数を減らしたくないというのであれば、例えば部隊の半分はライフルとトラックだけの軽歩兵で、災害救援や戦時は後方警備などに当たらせ、残りに半分に予算をつぎ込んで部隊を近代化し、兵站を強化するというオプションもあるでしょう。
 こういう話は陸幕からは出てきません。

 方面隊はそのままで、屋上屋を重ねる形で陸自総体司令部をつくり、戦車は300輛、現在の半分以下に削減するといいつつ、漫然と10式戦車の調達を続け、まだ使用できる90式を廃棄する予定になっています。
 しかも戦車もどきの機動戦闘車を大量に調達する予定です。陸自的にはこれは戦車なんですよね。ある意味発泡酒みたいなものです。奥方にビールを飲むなと言われたので、発泡酒で我慢だからいいだろう、というようなものです。
 しかもゲリコマやら島嶼防衛に必要だという屁理屈を捏ねての調達です。既にご案内にようにこれらに機動戦闘車は不向きです。

 更に火砲も300輛に削減するといいつつ、これまた新規の火砲の調達を予定しています。まだ砲身がピカピカで使える大量のFH-70は廃棄されることになります。
 陸自には削り代がまだ大幅にあります。ジャブジャブの濡れ雑巾です。それを絞ることなく、新しい玩具を欲しがっているわけです。

 民間企業のリストラから見たら幼稚園のお遊戯レベルです。

 中期防別表は絵に描いた餅に過ぎません(まあ、過去の中期防もそうなんですが)。

 しかもご案内のようにアメリカ様に言われたのか知りませんが、自分でよく調べもせずアメリカ様の兵器に大盤振る舞いして「目新しい玩具」を買うのが「新しい国」とか「日本を取り戻す」とか「戦後レジームからの脱却」とかなのでしょうか。

 安倍首相は土建屋にカネをばら撒けば景気がよくなると思っているようですが、同様にアメリカの兵器産業にカネをばら撒けば国防が全うできると思っているようです。

 このような現実を無視し、政府の主張を無批判に伝えることが新聞の役目でしょうか。日本にはプラウダやイズベスチヤは必要ありません、とあたしゃ思いますが。


新しいウェブニュースサイト、NEXT MADIA Japan In-Depthに寄稿しております

C-2輸送機の開発遅延は人災@〜震災の補正予算で発注された輸送機の調達単価200億円は当初計画100億円の2倍!杜撰な計画で最大積載量も低下
http://japan-indepth.jp/?p=3246
C-2輸送機の開発遅延は人災A〜調達コストが高く・性能も中途半端・外国に売れる見込みの無い機体を「国産機だから」と調達すべきではない
http://japan-indepth.jp/?p=3248

まともな評価もしないでオスプレイ導入を政治決定した安倍政権〜兵器は子供の玩具ではない@
http://japan-indepth.jp/?p=2962
まともな評価もしないでオスプレイ導入を政治決定した安倍政権〜兵器は子供の玩具ではないA
http://japan-indepth.jp/?p=2967
安倍政権は軍拡?! 右派?!〜その実態は多額の税金をアメリカに貢ぎ、自衛隊を弱体化させている事実に警鐘@
http://japan-indepth.jp/?p=2899
安倍政権は軍拡?! 右派?!〜その実態は多額の税金をアメリカに貢ぎ、自衛隊を弱体化させている事実に警鐘A
http://japan-indepth.jp/?p=2902

陸上自衛隊の水陸両用車の調達先は『アメリカ製』だけが候補の「出来レース」?〜水陸両用装甲車=AAV7は導入ありきでいいのか@
http://japan-indepth.jp/?p=2220
陸上自衛隊の水陸両用車の調達先は『アメリカ製』だけが候補の「出来レース」?〜水陸両用装甲車=AAV7は導入ありきでいいのかA
http://japan-indepth.jp/?p=2220
陸上自衛隊の水陸両用車の調達先は『アメリカ製』だけが候補の「出来レース」?〜水陸両用装甲車=AAV7は導入ありきでいいのかB
http://japan-indepth.jp/?p=2234
安倍政権の安全保障軽視が露呈!やっつけ仕事の国防計画?〜安倍首相はまともに安全保障を考えていない
http://japan-indepth.jp/?p=1956
これではまるで中国政府の記者会見だ!」〜情報発信強化を謳いながら、安全保障報道で外国メディアを差別する安倍政権



朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しています。

国産機銃は廃止すべきだ(上)――製品不良で多くの自衛隊員が死傷する
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014012700004.html
国産機銃は廃止すべきだ(下)――小火器メーカーの再編を
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014012700005.html?iref=webronza

オスプレイはいっそのこと、政府専用機に
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014011600005.html
陸自向けのオスプレイ導入は「裏口入学」だ
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014011500004.html
陸自の水陸両用装甲車、AAV7導入は裏口入学だ
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013122500002.html
日経が伝えないトルコとの戦車エンジン共同開発の真実(上)――トルコの狙いは何か?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013112500006.html
日経が伝えないトルコとの戦車エンジン共同開発の真実(下)――日本がパートナーを組むべき国はどこか?
アベノミクスで食材偽装が増える?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013111100009.html
機動戦闘車は必要か(上)――島嶼防衛にもゲリラ・コマンドウ対処にも不向き
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013103100010.html?iref=webronza
機動戦闘車は必要か(中)――脆弱な防御力
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013110100004.html?iref=webronza
機動戦闘車は必要か(下)――高いコスト
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013110700008.html



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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
 NHK取材班が出した本に書いてあったのですが、帝国陸軍の上層部は「これではダメだろう」と分かっていてインパール作戦を始めたんだそうです。それと同じことが繰り返されようとしている訳ですか・・・
ひゃっはー
2014/02/06 21:07
まあ周辺諸国が日本以上に『腐っている』ことを祈るしかないですな。
黒いタヌキ
2014/02/07 00:27
本気かどうかは、まず人員の面を見るべきでしょう。安倍政権は予備役の再編成など全く手付けていませんから、本気で戦う気は無いと思います。
マリンロイヤル
2014/02/07 05:16
LAVはAPCと言うよりは装甲ハンヴィーの仲間ですよね
FH-70って廃棄する場合は使える砲身は外して廃棄では?
戦車でも護衛艦でも使える状態の砲身なら外すのに野砲は違うんですか?

陸上総隊は設置しないとマズイでしょう
指揮権の無い陸上幕僚監部が指揮するのは違法になりますし
第9
2014/02/07 05:30
黒いタヌキ様が御指摘の周辺諸国が日本以上に腐っていることを祈るしかないですが、改善の動きはあるものの、武器や装備品の横流しや新兵に対する虐待等の事例で、中露両国軍、特にロシア軍の腐敗ぶりが日本以上であることは聞いています。
北や韓国については、詳細を知りませんが、軍が大きな力を持っていますから、横柄さや独善さ等が日本より、マシであるとは思えないでしょう。
確かに、所詮「戦いは人間が行うもの」ですから、
人の問題は重要です。
ただ、人のふり見て、我がふり直せと言う言葉が有りますから、自衛隊は彼等の言動を注視しつつ、優れた規律をこれまで同様に維持してほしいものです。
チャイカ
2014/02/07 06:07
国民は正しい情報を得ていないと判断できません。
マスコミはその役目を果たしていません。
マスコミの責任は大きいです。
夕立
2014/02/07 08:54
黒いタヌキさんに同意です。

2014/02/08 16:30
お邪魔します。
 日本には幕末の頃からか「まともなやり方で徹底に戦ったら日本は決して勝てない」という思いがあり、先の大戦でそれがさらに補強されました。しかし「攻められたら潔く白旗を上げる、諦める」程には腹もくくれないので、目先の不安を和らげるためにハイテク(と思われる)兵器を脈絡無く買い漁っているのではないかと思われます。「戦争は外交の延長」ではなく「戦争は外交の破綻」という考えなのではないでしょうか。
 それから「戦える」というのは「(自衛隊または日本)単独で動き得る」事だと思いますが(アメリカが動かない、動けない、ヒトラーのラインラント進駐時のようにタイミングを失する)、アメリカはそれを望んでいないのかも知れません(あくまで米軍との連携でしか動けない)。日本が単独で戦えるようになれば、アメリカはそれを「脅威」と感じるかも知れませんから。
ブロガー(志望)
2014/02/09 18:42
陸のポスト維持のため部隊削減が出来ないと書いていますが、部隊の編成、配置などは、完全に内局の権限で、連隊クラスの規模であれば、大臣も形式的ではなく関与してくる筈ですが、なぜにポスト維持の為に部隊数を減らす事を反対している制服のそのような論理がまかり通るのでしょうか?
制服が反対してることを内局がなぜ抑え込めないのですか?

私なりに調べてみましたし、防衛省の広報にも電話して確認しましたし、陸幕の防衛部の班長の経験がある元幹部の方にも確認しましてみましたが、部隊の統廃合含めた編成は内局の完全が決定権があり、各幕から意見を聞いたり、各幕に意見や起案を求めたりなどはあるが、決めるのはあくまで内局であると言っていました。
一番わかりやすい一般的なパターンは、内局より例えば連隊を幾つ減らすようにと陸幕に指示が伝えられ、どこの部隊を具体的に無くすかを各幕で起案し内局に提出するが、起案した内容が必ず承認されるかと言えばそうではないそうです。
あくまで内局が主体的に決めるからだということで。

ポスト維持の為に部隊の削減に抵抗してきたとありますが、制服が部隊の削減に反対するのは当たり前だと思うのですが、一体どんな権限で、削減を阻止したのですか?何の権限もないのに阻止できるわけないと思うのですが…。

2014/02/09 21:47
あと、普通科が自動車化に反対したのは概ね事実と言われました。広報からの回答ではありませんが^_^;
が、正しく事実を伝えれてないと思います。

反対したのは、自動車化する為の予算措置として、隊員の削減が部隊の削減を迫られたからだそうです。

こんな本末転倒な話は無いですよね。自動車化するなら兵力を減らせだなんて。
反対しないほうが異常です。自動車化に反対したのではなく、自動車化する為に兵力を削減しろと言われた事に反対をしたのが事実だそうです。

ただ、反対はしたが、決めるのは制服ではないですが。

2014/02/09 21:51

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