清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所 

アクセスカウンタ

zoom RSS 防衛省 なんでも一般競争入札の見直し

<<   作成日時 : 2014/02/20 16:07   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 11 / トラックバック 0 / コメント 4

防衛省は18日、同省が発注する防衛装備品の調達について、一般競争入札を一律に適用する原則を見直し、随意契約や長期契約を推進する方針を固めた。

防衛装備品の調達をめぐっては、18年の公共調達適正化に関する財務相通達により、一般競争入札の原則が決定した。それまでの防衛装備品購入件数は一般競争入札が5〜6割、随意契約が3割前後を占めていたのが、23年度には一般競争入札が88・4%を占め、随意契約は9・6%にとどまった。

防衛調達、形骸化の「入札」見直し コストダウンへ随意・長期契約推進
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140219/plc14021907410002-n1.htm

 原則一般競争入札が増えたのは守屋次官のスキャンダルを受けてのことですが、なんでもかんでも競争入札にしたのは一種の責任のがれです。

 問題は防衛省・自衛隊に調達の当事者として能力がない(穏当に言えば低い)ことが原因です。
 どこの国でも軍隊の調達は非効率だと問題になっておりますが、我が国の場合、先進国としてはかなり異様で、度を越していおります。

 まず、官の側に装備調達に関する知識がない。調達関連要員が少なすぎ、またスキルが不足しております。ですから、仕様書やら要求性能やら、試験レポートやらを業者が書くことが日常化しています。
 この現実を是正しないと何をやっても無駄です。

 人員に関しては少なくともあと、2千人ぐらいは増やすべきです。
 陸自の部隊数を減らして、こちらに人員を振り向けるべきです。装備も兵站もまともに揃わない部隊を温存するよりも、その方がよほど戦力強化になります。
 こいう現実を見ないで陸自の予算二倍にしろ、とか仰るのは責任放棄です。


 それから情報の欠如も問題です。この装備の価格や維持費は適正か、という相場観が官の側にはありません。知らないくせに知ったかぶりして、あれこれ要求をだして仕様を変更しろとかいうので余計にコストがかかって、しかも使えないものになったりします。

 このような情報の収集と分析にもカネがかかりますが、これをケチっているといつまでたっても経費の削減はできません。

 それから内部・外部の監査システムの不備があります。防衛省内部の監査システムがお寒い限りです。諸外国では米国のGAOが著名ですが、防衛予算を事細かに分析して、無駄使いを指摘する機関がありません。
 我が国の会計監査院は性能まで踏み込めませんし、そもそも防衛省担当はわずか数名とのことですからか本格的な監査はできません。ですから監査システムの強化も必要です。

 もうひとつの問題は自衛隊に軍事的な整合性よりも天下りやら、様々な「大人の事情」を優先することにあります。

 例えば空自の新たしい救難ヘリ、UH-60Jの改良型です。3機の候補機から選ばれましたが、平均調達単価が24億円弱を予定しておりましたが、現在までの6機(内2機は来年度予算で調達予定)の調達単価は約40億円です。であれば残りの機体は20億円程度で調達することになりますが、これは不可能です。
 
 現用のUH-60Jの調達価格は約40〜60億円です。新型は更に性能アップのためにコストがかかっています。これを24億円弱にコストダウンするのは通常の手段では不可能です。
 例えば新造機を諦めて既存の機体の延命・近代化でも行わないと無理でしょう。

 
 この件を齊藤治和航空幕僚長に質問しました。すると後日空幕広報室から回答がありましたが、
 「劇的にコストダウンする方策はない。頑張ります」

 とのことでした。

 つまり当初から24億円ということは無理だったけど、オトナの事情で調達を決定しちゃいました。ということでしょう。つまり入札は茶番だったということです。

 はっきり言えばインチキ。

 これは陸自のUH-X同様官製談合=犯罪の疑いが極めて強いと言えます。極めて黒に近い灰色であるといえるでしょう。当時の空幕首脳と三菱重工の癒着を疑われても仕方ないでしょう。
 
 このような極めて不明瞭な、普通の民主国家では空幕長や装備部長が国会に呼ばれてもおかしくないようなケースが、我が国では幸か不幸か納税者の興味が薄いために全く問題にされません。

 このようなインチキしてどこが悪い的な、歪んだ居直りが治らないと、いくら入札を行っても不正な調達、不合理な調達は撲滅できません。

 またなんでも単年あるいは毎度の入札にすると業者は長期の保障ができません。例えば輸入品の場合、正規輸入業者は部品を維持したり、故障の修理の設備を持ったりしますが、それを行うためは長期のお仕事が前提となります。

 ところがそのような投資を行い、営業コストを掛けても全部入札になれば、コストを負担していない並行輸入業者の方が有利になります。並行輸入だと製造元の修理を受けられないこともあります。
 
 官の側に不良業者を排除するような仕様を書く能力がないこともあり、安ければどんなクズでも採用しなければならない現状があります。
 例えば空自でロシア製の第一世代の暗視装置の採用などはその好例でしょう。

 実際無責任な「売り逃げ」をする業者が増えており、調達の現場は混乱しています。

 これは特に地方調達では深刻な問題でしょう。


 それから調達ではないのですが。整備なども大きなムダがあります。
 MCH-101の稼働率は3割強と少し前に書きましたが、最近は稼働率が徐々に上がっており、5割以上にはなっているそうです。ですがそれでも他国よりも低いようです。
 また同じく海自の練習用ヘリEC135T2+(TH-135)も、稼働率が国内の民間や公共機関に較べて低いとのことです。
 つまり、稼働率の低さはメーカーや機体にあるのではなく、海自の整備のシステムにあるといえ、これの改善が行われる予定です。
 PBLの導入も必要ですがこれはむしろコストを下げるためというよりも、稼働率を上げる方に主眼を置いたシステムであり、過剰にコスト削減を求めると失望する可能性があります。
 また、国内に十分な部品のデポを維持することも稼働率とコストを下げることにつながります。

 初等練習機に関していえば整備は勿論、訓練も民間委託を考えてもいいのではないでしょうか。既に諸外国ではぼちぼちそのような例が出始めています。


 
  新しいウェブニュースサイト、NEXT MADIA Japan In-Depthに寄稿しております

C-2輸送機の開発遅延は人災@〜震災の補正予算で発注された輸送機の調達単価200億円は当初計画100億円の2倍!杜撰な計画で最大積載量も低下
http://japan-indepth.jp/?p=3246
C-2輸送機の開発遅延は人災A〜調達コストが高く・性能も中途半端・外国に売れる見込みの無い機体を「国産機だから」と調達すべきではない
http://japan-indepth.jp/?p=3248

まともな評価もしないでオスプレイ導入を政治決定した安倍政権〜兵器は子供の玩具ではない@
http://japan-indepth.jp/?p=2962
まともな評価もしないでオスプレイ導入を政治決定した安倍政権〜兵器は子供の玩具ではないA
http://japan-indepth.jp/?p=2967
安倍政権は軍拡?! 右派?!〜その実態は多額の税金をアメリカに貢ぎ、自衛隊を弱体化させている事実に警鐘@
http://japan-indepth.jp/?p=2899
安倍政権は軍拡?! 右派?!〜その実態は多額の税金をアメリカに貢ぎ、自衛隊を弱体化させている事実に警鐘A
http://japan-indepth.jp/?p=2902

陸上自衛隊の水陸両用車の調達先は『アメリカ製』だけが候補の「出来レース」?〜水陸両用装甲車=AAV7は導入ありきでいいのか@
http://japan-indepth.jp/?p=2220
陸上自衛隊の水陸両用車の調達先は『アメリカ製』だけが候補の「出来レース」?〜水陸両用装甲車=AAV7は導入ありきでいいのかA
http://japan-indepth.jp/?p=2220
陸上自衛隊の水陸両用車の調達先は『アメリカ製』だけが候補の「出来レース」?〜水陸両用装甲車=AAV7は導入ありきでいいのかB
http://japan-indepth.jp/?p=2234

朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しています。
国産機銃は廃止すべきだ(上)――製品不良で多くの自衛隊員が死傷する
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014012700004.html
国産機銃は廃止すべきだ(下)――小火器メーカーの再編を
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014012700005.html?iref=webronza

オスプレイはいっそのこと、政府専用機に
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014011600005.html
陸自向けのオスプレイ導入は「裏口入学」だ
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014011500004.html
陸自の水陸両用装甲車、AAV7導入は裏口入学だ
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013122500002.html
日経が伝えないトルコとの戦車エンジン共同開発の真実(上)――トルコの狙いは何か?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013112500006.html
日経が伝えないトルコとの戦車エンジン共同開発の真実(下)――日本がパートナーを組むべき国はどこか?
アベノミクスで食材偽装が増える?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013111100009.html
機動戦闘車は必要か(上)――島嶼防衛にもゲリラ・コマンドウ対処にも不向き
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013103100010.html?iref=webronza
機動戦闘車は必要か(中)――脆弱な防御力
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013110100004.html?iref=webronza
機動戦闘車は必要か(下)――高いコスト
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013110700008.html



真・大東亜戦争 1
アドレナライズ
2013-02-01
林 信吾

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 真・大東亜戦争 1 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


林信吾との共著、真・大東亜戦争全17巻です

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 11
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ナイス ナイス ナイス ナイス

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
清谷様

役所の技術検証レベルが民間にかなわないのは防衛省・自衛隊に限ったことではないような気がします。

たとえば、国交省航空局。彼らが検査して、修理は問題なしと判断したJALのB747は墜落しました。

また、原発の審査でも、事実上、電力会社やメーカーが提出する書類に判を押すだけという話が、福一の事故以来、流れています。

しかも、何か起こっても許認可をした役所は責任をとらない。

入札でも、その妥当性を判断できる技官が、各省庁にどの程度、いるのでしょうね。
ブリンデン
2014/02/20 20:07
それでなくても将来の天下りポストのために隊員が納入業者に気を遣っているというのに、随契が増えたら、ますますズブズブの関係に拍車がかかってしまうのでは?
真の愛国者 ゆりか
2014/02/20 23:34
 産業の裾野まで安定して防衛の仕事を確保できるようになればいいのでしょうけども、難しいんでしょうね。
 
 自衛隊が兵器の性能を確かめるにしても、国内の演習場は手狭だったり、色々制約もあるところが多いでしょうし。知見を深めるための他国との交換留学や人員交流に共同訓練も兵器に関する経験を積むに役立つこともあるんでしょうけど、やはり自国で導入して分かることは多いでしょうし。
とん
2014/02/22 09:10
>これを24億円弱にコストダウンするのは
>通常の手段では不可能です。
米国の量産効果に伴う
ユニットコストを参考にしたのでしょうね。
FY2012で21億円弱。
もっとも米国は米国で
ライセンス生産ではないので
ライセンス使用料もなく、
為替レートや人件費の利点、
H−60系統の量産効果等、
多くの要素で実現できた価格です。
自衛隊は陸海空で幅広く使用する機体なので
多少の量産効果も望めそうですが、
どこまでそれでコストダウンできるか。
欲張りすぎずに30億円台前半にまで
圧縮できれば収穫だと思います。
名無し
2014/02/23 16:26

コメントする help

ニックネーム
本 文
防衛省 なんでも一般競争入札の見直し 清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所 /BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる