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zoom RSS 補助金的な円安では景気は回復しない

<<   作成日時 : 2013/10/22 15:30   >>

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輸出 円安でも伸び悩み
貿易赤字15カ月連続 9月9321億円 成長率減速の公算
http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS2102P_R21C13A0EE8000/

輸出の回復が鈍っている。9月は最大の輸出先であるアジア向けの輸出数量が前年同月に比べて4.0%減り、全体でも7〜9月期は3四半期ぶりに前期を下回ったもよう。新興国の景気が減速していることに加え、生産の海外移転が進み、円安でも輸出が増えにくくなっている。7〜9月期の実質経済成長率は4〜6月期より減速する公算が大きくなってきた。

 輸出が増えているのは円換算の円安効果の分で、実質輸出は伸び悩んでいます。
 これは今年当初から一部の識者が指摘していました。

 安倍政権の円安誘導は大失敗ではないでしょうか。

 実際問題として円安は輸入企業から輸出企業への所得移転に過ぎません。
 つまり輸入企業から税金を取って、輸出企業にばら撒いたようなものです。国富が増えたわけではありません。
 こういうことをやっていると輸出企業の構造転換を遅らせるだけで、農業のように
 競争力を奪うでしょう。
 

 つまり、実質的に利益が増えたわけではありません。むしろ国富を減らしていると言えます。

 前から申し上げておりますように、輸出はせいぜいGDPの15パーセントにしか過ぎません。
 円高で利益を受けるのは輸入業者だけでなく、農業や漁業、国内向け生産業、そしてGDPの約55パーセントを占める個人消費=消費者です。つまりは多数派です。これらの利益を、少数の輸出業者に付け替えたわけです。
 
 円安で利益を受けるのは圧倒的に少数派です。

 この1年で約3割の円安ですから、輸入業者は大変です。仕入れが3割上がります。例えば直輸入をしているスーパーなどは更に電気代も上がりますから尚更コストが掛かります。
 大抵の業界ではこのコストを消費者にダイレクトに転換できません。できるのは電力業界みたいなところです。
 しかも中国やベトナムなど新興国でも人件費などが上がっていますから、その分原価も上がります。

 つまり、輸入業者、流通、小売業者がすべて、コスト高の負担を余儀なくされます。これで給料は上がるでしょうか。しかも物価はコストプッシュ型のインフレで上がっています。
 つまり給料は上がらないし、以前ならば100円で買えた商品が110円とか120円とかになりているわけで、その分実質的な可処分所得は減少します。

 公務員にとっても剣呑な自体でしょう。財政再建のためには公務員、特に地方公務員の賃金を下げる必要があります。これは待ったなしでしょう。物価が上がれば賃下げは更に公務員の懐を直撃するでしょう。

 また年金生活者も同様です。

 円安がすべての輸出企業にメリットがあるわけではありません。デジカメなんぞはきょうび、殆ど海外で生産されています。ですから日本のカメラメーカーの製品でも「舶来品」で、円安ならば利益が減るか、値段があがります。

 また円安は日本企業の海外進出を妨げます。去年だったら10億円だった投資に13億円かかります。海外で企業買収などもメリットが減ります。
 例えばチェーンレストランなどの海外進出は円安でかなり影響を受けるでしょう。

 仮に国内に100店舗のラーメン店が海外に同数の店舗を持てば、国内の本社や工場も売上上げは上がるでしょうし、国内に投資の還流があります。また調達量が二倍に増えるので、国内店の仕入れコストも下がるなどのメリットも考えられます。

 重要なのは国内需要の拡大です。それがアベノミクスの三本目の矢のはずですが、政治家や役人には思いつかないでしょう。内需が拡大しないで、コストだけは膨らんで、実需が減るのがこの先ではないでしょうか。しかも整備新幹線みたいなクズのような公共事業は削らないから、国の借金は減りません。
 将来を考えれば国民は貯蓄に回り、消費を抑えるでしょう。

 人為的な円安は国富を減らすだけです。


 景気の議論を見ていると商売を実際に経験したことのないエコノミストや学者の主張には首をかしげるものが多々あります。不思議なことに日経や他の多くのメデイアは円安で損する業界や消費者の不利益をあまり報道しません。大本営アベノミクス万歳的な印象を受けるのですけども。

 マクロ経済学の数式通りにことが運ぶなら、我々は苦労しません。
 

新しいウェブニュースサイト、NEXT MADIA Japan In-Depthに寄稿しております。http://japan-indepth.jp/?cat=51


大手新聞も混同「武器輸出三原則」と「武器輸出三原則等」の大きな違い@|[連載]清谷信一「自衛隊の常識は軍隊の非常識」(3)
http://japan-indepth.jp/?p=900

大手新聞も混同「武器輸出三原則」と「武器輸出三原則等」の大きな違いA|[連載]清谷信一「自衛隊の常識は軍隊の非常識」(4)
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朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しています。
陸自の「水陸両用部隊」は米海兵隊の劣化コピーでいいのか(上)――不足する情報収集
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013102300007.html?iref=webronza

陸自の「水陸両用部隊」は米海兵隊の劣化コピーでいいのか(中)――参考になる英海兵隊
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013102400005.html?iref=webronza

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内 容 ニックネーム/日時
まあ、少数派でも声の大きな人たちがいて、政治もマスコミも、その声を利用するといった傾向はあるからね。
ネットでは前々から顕著な問題だけど、リアルでも似たような問題はあるのだよ。
ただ、過去の円高にせよ現在の円安(言われてるほど下がってないようにも見えるけど)にせよ、投機マネーの動きについて、みんなもっと敏感になった方がいいと思うよ。
いわゆるユーロ危機についても、日本のエコノミストは、投機マネーの問題について、あまりに無頓着で、上っ面奈議論しかできてなかった。
『エコノミストには絶対分からないEU危機』
(広岡裕児・著 文春新書)
という本が面白くて勉強になるので、このブログの読者にもオススメ。

俺も今月からブログ始めたので、
(http://ameblo.jp/gojibuji)
そのうちこの問題も取り上げるよ。

清谷の仕事は、円安で本当に大変だと思う。
頑張れ、としか言ってやることができないけど、
むしろ心配なのは、アベノミクスとやらが破綻した場合の反動なので、円・株・国債のトリプル暴落すらあり得るからねえ。
悩ましいところだよ。
林信吾
2013/10/22 18:17
アベノミクスも消費税増税で吹っ飛びそうですね。
マリンロイヤル
2013/10/23 13:17
お邪魔します。

第42回 なぜ! 絆を切りまくる小林幸子の不可解な行動と心理に迫る! - 生命科学的モテ研究の権威 ぐっどうぃる博士の 新感覚☆芸能ニュース解説 - MSNドニッチ!
<http://donicchi.jp.msn.com/opinion/goodwill3/article.aspx?cp-documentid=250611421&page=0>

に「人は『こうしたい』『これしかない』と強く思うと、他者がそれと違う事を言っても中々耳に入らない。そいつ自身が痛い思いをして学習するしかない。無論何度痛い思いをしても懲りない・学習しない人間もいるが、その場合はそれがそいつの性(さが)業(ごう)とでも思うしかない。また解決策を出すとすれば、最善のそれではなく、相手の意向に沿った形のものを出さないと中々受け入れられない。」といった事が書いてありました。

 政治は「こうしたい」「これしかない」のぶつかり合いですから、「論理(的整合性)」「全体としての最適化」を望むのは難しいのかも知れません。現に「消費税率アップと法人税減税」で「財政健全化でも景気対策でもない個人から企業への所得移転」が実現しますし、TPPも日本以外の国では「国家間の所得移転」との認識でしょうが、日本では「産業界から農業へ移転された所得の取り戻し」といった形で進められているように思えます。
ブロガー(志望)
2013/10/25 23:41

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