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zoom RSS 宇宙戦艦ヤマトと軍事のリアリズムとリアリティ

<<   作成日時 : 2013/06/22 15:34   >>

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 さて、宇宙戦艦ヤマト2199第六章が劇場公開中です。
 帰国したら見に行こうと思っております。

 大学生の頃、縁があって前のヤマトでメカデザインなどを担当していたスタジオぬえのお歴々に絵を習ってておりました。高校時代の先輩の石津泰志氏がぬえに入社することになって、石津氏の紹介でぬえの主催する同人会に入ったという次第でした。この会には軍事評論家の浜田一穂氏もメンバーで、その頃からのお付き合いです。

 で、宇宙船とか、戦闘機とか戦車とかを描いていて、宮武一貴や加藤直之両御大、河森正治氏、佐藤道明氏らに絵をみてもらったり、仲間内で評論してしあったりしていたわけです。

 宮武氏が一目ぼくの絵をみて、「キミは左利きだね」と仰って、プロはすごいな、と思いました。

 当時、教えられたのがエイビエーション・ウィークとかジェーンズ・ディフェンス・ウィークリーなどの海外の専門誌を読め、ということでした。
 SF=空想=嘘の絵を描くには、最先端の現実を押さえておく必要がある。現実を踏まえないとリアリティが出ないというわけです。まあ、当時はその後ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリーに書くようになるとは思ってもいませんでしたが。

 何故外国の専門誌かというと、日本の雑誌にはない、一次情報あるいは一次情報に基づいた最先端の情報に接するためでした。今思えばこれが海外の現場で取材する現在の仕事につながっています。

 さて、フィクションにおけるリアリティとリアリズムは違います。

 例えば当時ぬえが担当したアニメで未来の戦車が出てくるのですが、滑腔砲ではなくライフル砲になっていました。砲身を向けたときに砲身内のライフリングが見える作画になっていました。

 当時滑腔砲の出始めで、知っている人間にとっては滑腔砲の方が未来的に見ます。が、大方の人間にとってはライフル砲の方が「本物らしく」感じられたからです
 何しろ砲身がこちらに向いたとときに、滑腔砲よりもライフル砲の方が「強そう」に見えます。滑腔砲は砲身内がのっぺりして「らしくない」わけです。
 また、更に言えば当時は近い将来滑腔砲が主流になっても更に将来にはまたライフル砲が復活している可能性だってあります。旅客機だって昔は21世紀はSSTばかりになると言われていましたが、実際は亜音速機ばかりです。新しい技術がその後主流になり続けるかどうかは限りません。ですから、その場で新しい技術が正しい技術とは限らないわけです。

 フィクションはどこまで行ってもフィクションです。
 ですから壮大なフィクション=大きな嘘をつくためには、膨大な現実の知識が必要となるわけです。誤解を恐れずに言えば、ある意味詐欺師と同じです。優秀な詐欺師は現実(リアリズム)を積み上げた上で、 リアリティのある嘘をつくわけです。

 作品によって、リアリティを薄めたり、その世界の「リアリティ」にあわせたりしているわけです。
 「西部戦線異状なし」とチャック・ノリス先生の映画では求められる「リアリティ」は異なります。
 タランティーノの「ジャンゴ」では馬の頭を打ち抜くシーンがありましたが、あれはすごいリアリティですよね。何で今まで誰も思いつかなかったのだろう?(CGの発達のおかげかもしれません)。

 「宇宙戦艦ヤマト2199」では真空中で、エンジン音がしたり、エンジンの排気熱で画面がゆがんで見えたりしますが、科学的にはあり得ないことです。ですが、「2001年宇宙の旅」みたいに宇宙空間で無音のヤマトなんてつまらないでしょう?というわけです。
 
 近年ロボットアニメや映画のリアリティとリアリズムをごっちゃにしている人が増えているような気がします。
 そんな話を2199の某シナリオライター(当時の先輩)と少し前に話しました。
 アニメや映画、ラノベを語る調子で、あるいはコアになる知識がアニメや漫画で、それを元に現実の軍事を語るのは極めて危ういと思います。 得てしてこの手の人たちは、はじめに「好き」「嫌い」とか情緒で軍事を語ったりします。所詮フィクションと現実は違います。酒場のオタク話として盛り上がるのはいいでしょうけど。

 またこの手合いに限ってアニメや漫画に現実の軍事知識や科学知識を求めたりしますが、無粋ですよね。まあ、そういう人に限って、その「正しい軍事知識」や「科学知識」が怪しかったりします。
 チャック・ノリス先生の映画に「西部戦線異状なし」のリアリティを求めて仕方ないでしょう。リアリズムを求めすぎると、大抵のアクション映画はつまらなくなりますよ。まあ嘘ばかりではリアリティが無くなるので、さじ加減が難しいんですけど。

 さて、2199は当時の仲間、先輩が多数参加しております。皆さんあの業界で生き残って、今や第一人者になっております。思い起こせば感無量であります。今回の第六章ではお話が佳境に入っているようで、楽しみです。



朝日新聞のWEBROZA+に以下の記事を寄稿しております。全四回の連載です。
東日本大震災で防衛省の無人機はなぜ飛ばなかったか(1)――墜落を恐れた?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013061900007.html
東日本大震災で防衛省の無人機はなぜ飛ばなかったか(2)――省内の食い違い
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013062000004.html
東日本大震災で防衛省の無人機はなぜ飛ばなかったか(3)――難しい新規参入
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013062700005.html?iref=webronza 

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長文になってすいませんが、書かせていただきます。失礼します。

「安倍政権で日本エンタメが右傾化!」 朝日&韓国紙「ネガキャン」に作者反論
http://www.j-cast.com/2013/06/21177767.html?p=1
> 日本で小説やドラマなどの「右傾化」が進行中――そんな記事が朝日新聞に掲載され、物議を醸している。
>槍玉に挙げられたのは、百田尚樹さんの小説『永遠の0』や『海賊とよばれた男』、また有川浩さんの『空飛ぶ広報室』など。
>韓国紙もこれを引用し、安倍政権の主張と結びつける形でセンセーショナルに報じた。
>もっとも朝日新聞の記事に対しては、批判も出ている。
>「右傾エンタメ」の先駆けとして福井晴敏さんの『亡国のイージス』(1999年)や『終戦のローレライ』(2002年)を挙げ、2000年代以降の日本社会の不安感と重ねてその勃興を論じているが、
>戦争や自衛隊を扱ったエンタメ作品がベストセラーとなったのは、高度経済成長まっただなかの1960年前後に起こった「戦記ブーム」を初め、別にここ最近に始まった話でもない。
右傾化とか言っているが、韓国だって(一部には国費を使って)反日をテーマにして軍隊が出てくる描写が出てくる小説・映画・ドラマとかあるけどな。代表例として、1999年の映画「ユリョン (유령) 」は韓国軍の潜水艦が日本の主要都市に核兵器で攻撃するというシロモノだが、これって「韓国の右傾化」じゃないのかなあ?

「日本の右傾化」とか書いた朝日新聞はこれらの韓国作品について振れず「韓国の右傾化」と論じないのはフェアじゃない気がするんだけどな・・・。
へろ
2013/06/25 21:12
お邪魔します。

>「日本の右傾化」とか書いた朝日新聞はこれらの韓国作品について振れず「韓国の右傾化」と論じないのはフェアじゃない気がするんだけどな・・・。

 連中は日本の「中」にしか興味や関心はありません。要するに日本の「中」で連中の気にいらないものが増えてきた事、連中が笛を吹いてもかつて程には民衆が踊ってくれなくなった事にイラついているだけなのではないかと思います。
ブロガー(志望)
2013/06/26 23:33
既に自分は2回見に行って3回目も見に行こうかと考えるくらいの完成度です。ツイッターでいろんな人とヤマトトークを楽しんでいますが、現実と空想の違いは多くの人がよく分かっており、またそれを皆楽しんでいるようです。
宇宙なのに空母から滑走して発艦したり、アングルトデッキ装備の空母(着艦部が別にあるのに)があったり、「雷撃」は必ず水平方向から行ったり、魚雷が命中すると水柱みたいなものが上がったりします。宇宙なのに逆ガル翼の「急降下」爆撃機という機首があったり、色々現実的ではないのですがそれがすごく面白いという人が多いです。
そんな風に、恐らく未来ではこうはならないだろうけど感覚的にこの方が面白い、かっこいいという認識を持っている人はこのブログで何度も指摘されているレベルの低い軍オタにはならないだろうなと思いつつ楽しんでいます。そうしたファンをも宇宙戦艦ヤマトは39年の間に育んできたんでしょうね。
SNK22
2013/06/27 06:50
軍事研究&JDW編集長<次号の締め切り近いけど、原稿まだぁ?
221.188.50.126

未だにこういうくずのようなコメントがあるんですよね。頭が弱いんでしょうかね?他人を騙るのは犯罪行為ですよ。
キヨタニ
2013/06/28 11:33
jaxaがミサイル開発ですかね?
http://japanese.ruvr.ru/2013_06_28/116800676/
>JAXAの計画では、ロケットは1千メートル上空まで上がり、指定した場所に落下するはずだったが、そうはならず、打ち上げ10秒後8百メートルに達したところで、ロケットはコースを逸れ山に墜落した。
unimaro
2013/06/28 19:04

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