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zoom RSS 価格上昇、性能不明 F-35を漫然と調達していいのか。

<<   作成日時 : 2013/04/24 15:04   >>

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昨晩BSフジの「プライムニュース」に出演しました。

テーマは空自のF-35調達についてです。
通常この番組ではこの手の安全保障関連のテーマは木曜日にやるのですが、森本元防衛大臣の都合に合わせて火曜日となりました。
以下のサイトでダイジェストを見ることができます。

http://www.bsfuji.tv/primenews/movie/index.html?d130423_0

番組の中でも指摘したのですが、元からのF-35のパートナーであるカナダは調達を白紙撤回、トルコも性能、価格が不明瞭であるとして本年調達するはずだった最初の二機の調達を見合わせています。

何故我が国だけが漫然と調達をしなければならないのでしょうか。

出演した森本元大臣、佐藤防衛政務官ともに、F-35の調達単価、プロジェクトの総額などどうでもいい、これは日本に必要なのだという主張をなさっていましたが、議会に了解もとらずに予算の上限を無視して装備を調達することを是とするのは民主国家の政治家としていかがなものでしょうか。

これでは中国や北朝鮮と同じではないでしょうか。

また両氏はFACO(最終組み立てと検査工程)が我が国の戦闘機開発・製造基盤の維持につながると主張していましたが、ぼくはそんなことは無いと申し上げました。
米国はF-35の肝であるアビオニクスやシステム統合、ステルス技術は日本に開示しません。つまり仕事量はある程度確保できるが、技術移転は期待できません。

例えばの話パソコンなら組み立てを請け負うようなものです。パソコンの組み立てをやったからといってCPUやOSの開発技術が入手できるわけではありません。

確かに整備施設が国内にあるということは稼働率の面では優位ですが、ならば米軍に作らせれば良かったわけです。わざわざ高い金を払ってまで国内生産するメリットはありません。

しかも森本氏は部品などの国内生産の比率や、どれをどのくらい輸出できるのかは今後詰めると仰っていましたが、非常にナイーブです。
こういうことは機種採用の時にネゴしておくべきです。すでに採用が決定した後では売り手の方が圧倒的に優位です。交渉のスタイルとしては下の下です。

F-2開発の時もずいぶんと痛い目にあったはずですが、忘れやすいのか、マゾなのか。


F-35は価格、性能未定です。調達コスト、運用コストは跳ね上がる可能性は大です。特に米国が調達数を大幅に減らせば尚更です。F-22は開発および調達コストの高騰で調達機数を約1/4に減らされました。
同じことが起こらないと言えるでしょうか。

森本氏はF-4の延命はいくらでもできる、飛行時間を減らせばいいと仰っていました。これは内局官僚などもよくいうことですが、軍事的にはナンセンスです。理屈で言えば飛ばさなければあと何十年でも現役に止まれるでしょう。飛行時間、訓練時間を減らせばその分パイロットの練度は落ちます。また一定以上の寿命を残していないと戦争で酷使した場合、一気に耐用が過ぎてしまい、戦いの途中で戦闘能力を失う危険性があります。




少なくともここ2年ぐらいはF-35の調達は見合わせ、様子を見て、その間F-15やF-2の近代化をすべきです。
近代化されたF-15のレーダーにしても米空軍のスタンダードからは遅れております。また未改修の機体は、米軍とのデータリンクができないので米空軍と共同作戦を行えません。米空軍に空域に入ってくることを拒否されます。

また搭乗員を増やすべきです。現在F-15は一個飛行隊18機に対してパイロットは30名、実質25名程度だそうです。これでは有事の場合、24時間の待機は不可能です。しかも我が国には予備役のパイロットはおりません。

予算には上限があります。しかも今後戦略無人機、ネットワークシステムの強化、人工衛星の調達、基地の抗甚性の向上、新型誘導兵器の導入、C-2の調達、新型AEW機の調達、前方航空統制のための地上部隊、など金がかかる事業が山盛りです。

F-35がステルスモードで戦うためには分厚いC4IRのアセットが必要ですが自衛隊には極めて不十分です。それがなければステルス機など宝の持ち腐れです。

仮にF-35の調達予算(そして維持運用コスト)が想定の二倍になったら空自は何をあきらめるのでしょうか。
たぶん全部大事というでしょう。これは自衛隊の宿痾なのですが、全部大事、優先順位がつけられない。
だから高い装備を細々と買っている。また訓練や整備を削り、装備の稼働率を落としています。
また需品など必要な装備や整備施設などが老朽化したままです。こういうところにしわ寄せが行っています。

火の出るおもちゃだけで戦争ができればどこの国の軍隊も苦労しません。

そもそもF-35の二個飛行隊はいつまでに必要なのでしょうか。森本氏も防衛省も明確に述べていません。ですが、本来脅威に対する備えであり、抑止力を期待するのであれば2個飛行隊の戦力化の「締め切り」は必要です。5年後に戦争が起こって、その20年後に機体が揃っても遅いのです。

どんなに立派な卒論でも提出締め切りの1年後に出しても卒業はできません。

公共事業だって(いくらインチキとはいえ)需要予測を行い、何年後までにこの道路やダムが必要だとして計画を立て、総予算を出します。それが国会で了承されてから各年度の予算が付きます。

対して防衛装備は、いつまでに必要で、(多くの場合数も決まっていません)、総額がいくらになるのかも国会で議論も了承もされず、導入だけが決定されます。

森本氏は防衛装備と公共事業を一緒にするなと仰いましたが、それは軍備は防衛省管轄であり、政治家や納税者は口を出すなと言うに等しいとぼくは思います。それこそ先軍政治です。

加えて言えば次期戦闘機選定はF-35に対して極めて有利な条件で行われており、昨年バレたUH-Xの官製談合と同様な官製談合の疑いすらあります。


ここは見切り千両、度胸千両で対米盲従、お買い物主義と決別をするべきです。

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コメント(19件)

内 容 ニックネーム/日時
F-35は性能?。価格もどこまで上昇するか不明。予算が厳しいなか価格上昇すれば調達数を減らす事になる。米軍の予算削減により早期退役するFー15C/DかF-16C/Dを購入すれば安価に運用できる。10年位運用できれば次期FXの再検討出来るのでは?
th
2013/04/24 18:37
日本のマスコミも世論もF-35の総維持費が暴騰している事実や機体の技術的問題、非パートナー国として国産兵器の搭載不可な問題等を無視しすぎです。
仰るとおりまともな国は調達を先延ばしし米国がIOC達成を待つのが筋だと思います(誰が好き好んで外国製試作機で6000マイルも離れた国で部隊創設するのでしょうか?)日本がこのまま米国の僕として黙々と税金をロッキードと米政府に貢ぐ姿勢は国際社会でも異常な例だと思います。
ちきてり
2013/04/24 22:57
F35のスケジュールの遅れは日本の危機を助長しています。F16をつなぎで入れざるを得ないでしょう、用が済んだらフィリピンにでも売却すればいい。
マリンロイヤル
2013/04/25 16:20
国会で追及してもらいたい。
野党は何をしているのか、税金の無駄遣いを
追求しろ。
夕立
2013/04/25 18:53
今安くても旧式の戦闘機で何十年も戦えませんよ

元々F22の予定だったんだからこれ位は高いうちに入らないでしょう

導入当時のF15もF2も相当高い戦闘機でしたしね
第9
2013/04/26 05:22
お邪魔します。
 『丸』の兵器の国際共同開発に関する記事の中で「合意形成に時間とコストがかかっているので、例えば冷戦の終結といった重大な状況の変化があっても、合意形成をやり直したくないとそのまま続行された例もある」と書かれていた記憶があります(それが何かまで記憶にありませんが)。自衛隊及び日本政府にとって一度F35と(強引に?)決めたものを蒸し返すコストはとてつもなく高いのかも知れません(納税者のコストや安全保障に関するリスクよりも?)。
ブロガー(志望)
2013/04/27 00:21

で、スパホはその35で代替されるような旧式機で、タイフーンはトランシェ3が出来上がってないんですけど この3機種の中からF-Xを決めなくてはならないのなら、35を選ぶのも不思議ではありません 今はスパホ タイフーンで他国に対処出来ても、20年後に対処出来るかは分かりません なら、最新の機種を買うのも一つの判断でしょう

「新しく選定する」という考えを持つ人がいるなら、「時間という概念が無い」と言えば宜しい
GRIEF
2013/04/27 15:37
森本氏はF-4の延命はいくらでもできる、飛行時間を減らせばいいと仰っていました。これは内局官僚などもよくいうことですが、軍事的にはナンセンスです。

清谷氏も2010/09/01の記事で、似たような主張をなされています。
74式戦車の機械的老朽化に対する反論です。
F4も74式と大体同じ時期に生産された機械です。

F4は、粗悪品なのでしょうか?
pon
2013/04/27 21:47
>pon
F-4は戦車なのでしょうか。

戦車と航空機の近代化、延命化は別物です。
例えばオリファント戦車は60年ほど使用されていますが、お説の通り飛行機も戦車も同じならばF-4も
あと何十年か使えることになります。

74式の足回りが寿命だとかいうのは妄言、都市伝説のたぐいですよ。

キヨタニ
2013/04/28 21:01
試乗もせず、空自全体の予算も考えず、新しいオモチャがあれば航空優勢を確保できると考えるのは楽観主義を通り越しています。旧式機、新型機というのも悪しきマニアの考え方です。ドイツのちょびひげの伍長も同じような考えかたをもっていました。
中国はなんでその「旧式機」のSu-35を買いたいのでしょうか。
新しい戦闘機だけあれば戦争に勝ててるというのはテレビゲームのやり過ぎです。
キヨタニ
2013/04/29 10:43
F-35を採用すれば、
その導入が20年後になろうと30年後になろうと問題ない。
これに予算が喰われて既存の戦闘機の近代化、特にネットワーク化が遅れても問題ない。

同様にAWACSやC4IR関連のアセットの調達ができなくてもかまわない。

同様にF−35の稼働率がひくくてもかまわない。

同様に基地にバンカーをつくるなどの事業が遅れてもかまわない。

と、信じている人には何をいっても無駄でしょう。
予算と時間の観念が無い議論は無意味で空論です。
キヨタニ
2013/04/29 10:51
まあ、ロシアやシナのステルス機が実戦配備されるのがそう遠くない将来であることも見越してのF35購入だったんだろうけど、この問題はもう少し様子を見てから決めても良かったような気がしますね。

確かにF4の老朽化は問題ではあるけど、F15装備部隊の配置転換とかで誤魔化せば良いのでは?

シナの脅威は気になるけど、お財布と相談してお買い物はしないといけませんな。



八王子の白豚
2013/04/29 15:46

試乗だなんて本気で言ってるんですかね 単座の戦闘機の何処に試乗者が乗るのか、考えたことも無いのでしょう 複座のある機種、つまりF-15や18のような機体でしか試乗は出来ません 何のためのシュミレータなんですかね

今回のF-Xだったらスパホ以外に間に合う機体が無いんだってのが分からないんですかね スパホじゃ20年後に対処出来ない可能性が大なんだから、わざわざ35を選択してるのが分からないんですか?

まあ、F-4EJ改が有事の際にSu-35へ対処出来るなら良いんじゃないんですか? 相当厳しいでしょうけど コストパフォーマンスについて考えられないから無駄でしょうが

で、具体的に何故、貴方は20年も開発が遅れる可能性を危惧しているのでしょうか どの程度近代化が遅れるのでしょうか 毎回毎回どんぶり勘定しかしていないblog主ですが、質問してみます
GRIEF
2013/05/01 16:07
再びお邪魔します。
 「F4はもうダメ」というのがFXの出発点だったはずです。ですから「F4はまだ使える」というのであればFXの意味自体が無くなります。少なくとも「今」価格も性能もはっきりしないF35にしなければならない理由など無いでしょう。防衛当局者の言っている事は「ああ言えばこう言う」で、それが却って「一貫性の無さ(あるのは「F35しかない」という思い込みだけ?)」を際立たせています。

>スパホはその35で代替されるような旧式機

 米海軍にとってF35Cは「海軍初のステルス機」で、主力はスパホで変わらずと聞いています。米空軍にとってはF35AはF16とA10の後継機でしょうが。

>20年後に対処出来るかは分かりません

 価格も性能もはっきりしないF35が対処可能であるとの保証はありません。B787のように就航後に不具合を起こすかも知れませんし、案外短命に終わる可能性も否定できません。

>20年も開発が遅れる

 アメリカも開発パートナー国も有権者・納税者の理解が得られないのは分かっているからそんな事はしない(できない)でしょうが、有権者・納税者など眼中に無い日本の防衛当局者はそれくらいの先送りなど平気でするでしょう。現にアメリカがF22を売ってくれない可能性があったにも関わらず、売ってくれなかった場合への対処などしていなかったのですから。

 最後にF35の開発目的は「最新鋭機をリーズナブルな価格で」だったはずです。ですからF35の開発計画は「既に」失敗しているとすら言えるのではないでしょうか。
ブロガー(志望)
2013/05/03 08:22
LCC考えたらF-4やF-15の延命なんてF-35より高く付くよ
どんなシステムでも想定寿命に近づく維持コストが激増するから
運送会社がトラック買い換えるのはそのためです
まだ乗れるから大事に使おうなんて金銭感覚の無い愚かな意見
そういう人間は導入コストより維持コストのほうが金額が大きい事を知らないし理解しようともしないのです
pak
2013/05/05 21:01
F-35Aは大金が使われているだけに、アメリカの増えすぎた借金から来た強制歳出削減が怖いかな

亡くなられた松村劭閣下はF/A-18Eを推奨していたそうですが

アメリカ海軍はF-35Cの導入に及び腰でF/A-18Eを増やすとも聞いているし
Alice
2013/05/07 10:59
清谷さん、この調子でF35信者にお灸を据えてやって下さい。
パイナポレオン
2013/05/08 23:14
お邪魔します。

>LCC考えたらF-4やF-15の延命なんてF-35より高く付くよ

 F35の性能・価格が不明である以上、F35調達の方が安くなるという保証はありません。後F4の延命を言っているのは日本の防衛当局者で、清谷氏が言っているのはF2やF15の近代化です。最後に過去に鳴り物入りの開発計画が頓挫した後、より現実的な開発に向かった例がありますが(MBT70→M1及びレオパルト2等)、ひょっとしたらF35もそうなるかも知れません。
ブロガー(志望)
2013/05/08 23:32
F35でアメリカにどれだけ貢がされ不明。未採用だったF/A18Lを替わりに日本で再設計生産すれば国内企業も技術維持できるし、アメリカも文句は言わないと思われる。日本仕様にすればE型より性能アップしそうだしエンジンも2台搭載。
F35の購入費で2倍は機数画確保できるのでは。
th
2013/05/22 16:32

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