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zoom RSS シェールガスとGTL(ガス・ツー・リキッド、ガスを液体燃料に転換)

<<   作成日時 : 2013/03/04 12:26   >>

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 日経が一面でGTL(ガス・ツー・リキッド、ガスを液体燃料に転換)に関する記事を一面に掲載したのは初めてじゃないでしょうか。
 ぼくは4年ほど前からシェールガスや天然ガスを含む米軍の合成燃料導入に関する記事を書いていますが、日本のメディアのシェールガスやGTLに関する関心は極めて低く、新聞にシェールガスの記事が出始めたのはこの一年ほどではないでしょうか。

 日立造船は米国で、天然ガスから軽油などの石油製品を生産する中核設備を販売する。

 GTLは「ガス・ツー・リキッド(ガスを液体燃料に転換)」の略称。ガスを化学反応させ、軽油、灯油や化
学原料のナフサ(粗製ガソリン)を生産する。従来はガス価格が高く、カタールなど一部で実用化されていただ
けだった。だが、米国のガス価格下落で採算確保にめどがつき、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルや南アフリカの
エネルギー大手サソールなどが同国南部で大型プラントの建設計画を進めている。


シェールガスから軽油生産 日立造船、米で設備販売
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD280TA_R00C13A3MM8000/?dg=1

 米国はコストは勿論、エネルギー安全保障の面からも中東依存を減らすために合成燃料の導入を進めてきました。

 シェールガスを使って軽油や灯油などを造れば、石油由来の燃料の数分の一のコストで製造が可能でしょう。また原料はシェールガスや天然ガスだけではなく、石炭やバイオエタノールなども利用が可能です。
 
 またGTLは石油由来の燃料よりも燃費がよく、また不純物質が少ないために環境上も好ましい。そしてなにより現在のエンジンや給油などのインフラをそのまま使えます。
 この点、自動車の場合、電気や水素などよりも遙かに現実的な選択と言えます。

 我が国は世界最大の天然ガス輸入国ですが、シェールガスやGTLでは完全に後手に回ってきました。
 確かに我が国でシェールガスや天然ガスを原料に各種の製品を製造する場合、ハンデがあります。それはフネで輸入する際しては液化する必要があります。この液化。その輸送には莫大なコストがかかります。
  
 ですから国内でシェールガスや天然ガスを原料して製品を作る場合、コスト面で競争力低くなります。ですから、日本の燃料関連の企業は米国に生産拠点を移す方が儲かるでしょう。


 国内メーカーの再編や生産拠点の海外移転が今後進むでしょう。
 米国で軽油など生産して、輸入する方が安いでしょう。
 
 またそうはいっても、原油と比べて今後も天然ガスやシェールガスの価格が安いという状態は続くでしょう。

 
 安全保障上の面から考えればエネルギーの中東依存を減らすために、国内に一定規模のGTL製造施設を持っておく必要があります。一つはロシアからパイプラインで天然ガスを調達し、これを原料とする。ガスの価格は交渉が可能です。

 それから液化ガスを燃料にする場合、ある程度のプレミアを付けて自衛隊がGTLを調達する、などが考えられるでしょう。

 GTLで造った燃料は燃料電池にも使えます。つまり家庭用の燃料電池などでも使用が出来るメリットがあります。

 
 我が国の場合、輸入原油の一番大きい用途は輸送用燃料です。
http://www.jogmec.go.jp/recommend_library/using_oil/index.html 
http://www.nexyzbb.ne.jp/~omnika/sekiyunoyouto.html

 これらの資料は少し古いので、現在は発電用燃料の比率が増えているでしょう。
 
 ですが、依然輸送用燃料、特に車両用燃料の比率が大きいことには代わりはありません。
 しかも自家用車の比率が大きく、ガソリン車の比率が多いという特徴があります。
 これが欧州ではディーゼル車が多いのですが。
 
 乗用車をガソリン車からディーゼル車に替えれば、燃費は大きく向上します。GTLの普及と併せて、ディーゼル乗用車の普及を図るべきです。そうすればCO2の削減にも役立ちます。
 我が国ではタクシーではLPガスが多く使われており、インフラが整備されているのでガス車輛の拡大も有望でしょう。

 ガソリン車からディーゼル車、ガス車への転換のために減税などインセンティブを用意し、買い換えを勧めれば内需の拡大にもなります。
 
 つまりGTL導入と、ディーゼル車の普及は安全保障、燃料費の削減、内需拡大に効果があると言えるでしょう。

 また将来的には我が国周辺のメタンハイドレートの利用も可能になるでしょう。そうなれば国内で安価なGTL燃料の製造も可能になります。

 しかも、これまた何度も申しあげておりますが米国でのシェールガス、GTLの普及は米国の中東へのコミットメントの削減に繋がる可能性が大です。つまり中東で紛争や戦争が激化しても、米国が介入しない可能性が増えていきます。無論石油メジャーなどの権益がありますが、以前ほどの熱心にコミットする必要性は減ります。
 また米国内でも本来必要のなかったイラク、そしてアフガンでの戦争に対して多額の費用を浪費し、人的損害もだしてきた事に対する批判や反省もあります。米国が大規模な軍事作戦が可能かといえばかなり難しいでしょう。

 こういう背景を考えれば日本政府が何故GTLに興味を示さないのか不思議でなりません。 

 いずれにしても現状のエネルギーの中東偏重は是正する必要があります。
 

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
初投稿です、清谷様
 これまで、貴方様のブログをずっと閲覧しており、貴重な中東等の現地情報とそれらを踏まえた、意見の提供には心より、感謝しています。
私はチャイカと申します。
個人、それも防衛や政治の分野と関係ない一准看護師が、プロフェショナルなブログ主様並びに、先輩投稿者様に意見を申し上げるのは、大変失礼にあたりますとおもいます。

 しかし、いささか気になったことがあります。安全保障上の理由でエネルギーの獲得先の分散には、賛成です。 

ところが、隣国、しかも、北方領土問題を抱え、防衛や政治の分野で対立し、ソ連崩壊後、サハリンでのエネルギー開発で、最初の契約条件を一方的に反故にしたロシアからの天然ガス他のエネルギー源の調達には、中東からの調達と同様、いや、それ以上の政治や安全保障上のリスクを抱えているのではないでしょうか?

 この問題について、ネットで探すだけでなく
私には、難しくよくわからない所があるので、ブログ主様及び他の投稿者様に意見を問いたいと思いました。
いかかでしょうか?
チャイカ
2013/03/05 06:00
まずロシアとは中国が脅威であるという点ではある意味「仲間」です。ロシアとのつきあいはつきあい方を考えればいいだけです。中国にしても経済での関係は深いわけです。
エネルギー関係でも常にプランBを用意しておく、あるいは契約を反故にされた場合の担保を取っておくなどしておくべです。
 シェールガス革命にって、ロシアのエネルギー輸出はかなり苦しくなるでしょう。これを利用してエネルギーコストの低減、また調達の多様化を図るべきです。
 ようはキチンとリスクをマネージすればいいわけです。

国際関係は白黒、ゼロか100かだけではありません。嫌いな相手、信用できない相手とも利益があれば付き合うべです。
キヨタニ
2013/03/05 12:11
 米軍(米国)の燃料に対しての取り組みはさすが戦争を常に意識した国はすごいと感じますね。
対して日本は精製純度の高いガソリンを資源が少ないと嘆きながら他国に依存して大量消費するのですから俯瞰したら滑稽ですかね。
カド
2013/03/05 23:37
おそらくGTLは普及しないでしょう。
理由は石油製品を販売する企業に何のメリットもないからです。

石油精製の採算性は、ほぼ設備の稼働率で決まります。天然ガス由来のGTLに切り替えれば、既存の石油精製プラントの稼働率がガタ落ちとなり、大赤字です。
石油製品は製品への価格転嫁が容易なので、リスクを冒して安売りをするメリットはありません。

また北米では、採算性の低いシェールガスからシェールオイルの採掘へのシフトが進み、石油の採掘量が増大しており、GTLの必要性は低下していると思われます。
北米のシェールオイルはガソリンの多く取れる軽質油なので、ディーゼルへの転換も進まないでしょう。

天然ガスの自動車燃料への利用は拡大していますが、それは圧縮天然ガスか液化天然ガスであって、GTLではありません。

先進国では石油製品の消費量が大きく拡大する可能性は低いので、新たにGTLプラントを建設しても採算を取るのは難しいでしょう。

現在、実際に石油からガスへの転換が進んでいるのは、新興国向けの需要拡大が期待できる化学原料のエチレンで、中東で超低コストの石油随伴ガスを使ったプラント建設が進んでおり、既にかなり弱体化している我が国の石油化学産業をさらに追い詰めています。

石油・天然ガスについての情報は、日経などよりこちらの方が質量共に優れていますので、よろしければ参照してみてください。

http://oilgas-info.jogmec.go.jp/
GTLは普及しないでしょう。
2013/03/06 00:47

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