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zoom RSS 陸自UH-Xは「情緒」の産物だった

<<   作成日時 : 2013/02/01 18:26   >>

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 川重、防衛省次期ヘリの設計部廃止=談合問題で契約解除へ
 http://news.livedoor.com/article/detail/7368730/

 この情報はブログ読者から既に数日前に頂いておりました。

 
 率直に申しあげて陸自のUH-X(次期多用途ヘリ)は「情緒」の産物でした。
 そこには軍事的な整合性も、経済性合理性も、ヘリ産業・防衛航空産業振興のグランドデザインも全くありませんでした。

 「国産軍用ヘリが欲しい」

 その一点で突き進んだプロジェクトでした。

 情緒的、あるいは趣味的に国費を投じてきたことは極めて罪深いと言えます。
 それはカネをどぶに捨てる行為だったからです。

 母体となるべきOH-1がそもそも不要でした。
 攻撃ヘリと組ませるならば40機もあれば良かった。ところが国産ヘリを作りたかったために、機数を稼ぐために砲兵用なども全て、このOH-1でつくることになりました。

 結果、34で調達が中止、開発費を含めれば一機あたりの調達単価は約60億円、デタラメもいいところです。

 で、それでもOH-1が国産民間ヘリの開発にでも繋がれば全く無駄な投資ではありませんでした。ところが日本のヘリメーカーはリスクを負って民間市場(警察や消防含む、非軍事市場)に打って出る気は更々無かったわけです。
 
 防衛省のカネにしがみついて、寄生していくことしか考えていません。
 こういう市場経済に晒された経験もない、親方日の丸姿勢のメーカーが、優れた機体を開発できるものでしょうか。
 できるわけはありません。


 過去納税者は何十年も日本のヘリ産業に投資してきました。かつては川崎重工もバートルやBk117のような外国企業とのジョイントベンチャーで内外の民間市場に乗り出しましたが、そううい先達の志は忘れ去られ、ひたすら国にたかって糧を稼いでいます。


 防衛省・陸自のHPにはOH-1は防弾ガラスを使用していると記述がありますが、これは事実ではありません。
 http://www.mod.go.jp/gsdf/equipment/air/3_10.html
 ぼくはこの件を陸自OBの専門家に尋ねました。ところが陸幕広報室からの回答は、HPの記述は事実だの一点張りです。現物を見ればシロウトでもわかる話なんですが、何でこうも「官は誤りを犯さず」を貫くんでしょうか。こういう誤りを認めない、反省しないから何度も同じような誤りを犯すのです。
 何しろ陸幕装備部なんぞ、ウィキペディアを元に人の本を誤りだと決めつけておいて、それがばれても謝罪もしません。こういう組織的な頑迷さが税金の無駄遣い、使えない装備の調達の根源にあります。


 陸幕はAH-64Dでも同じような過ちを犯しました。「米軍と同じ玩具が欲しい」という情念、情緒だけでこれを採用しました。結果13機で調達が終わりました。

 調達単価、維持費がバカ高かかったからです。
 まだ輸入にすれば良かったのですが、富士重工に仕事を落とすため、つまり防衛省にしがみついているヘリ三社に仕事を振るために、国産にしたわけです。
 しかも陸自のAH-64Dは米軍とのリンク機能を有しておりません。つまり陸幕は米軍との共同作戦をさほど重要に考えていないようです。ならば何故アパッチに拘ったのでしょうか。

 挙げ句の果ては初度費を払わないと言いだして「お白州」沙汰です。
 
 これまた軍事的整合性、経済性、産業振興プラン無しで、情緒で計画を進めた結果です。

 ぼくは一貫してAH-64Dの採用、事に国産化は無理があると主張してきましたが、それ見たことかという結果になりました。ぼくは候補として南アのロイホックを挙げてきました。それは国産化してもコストが安いこと。中身はスーパーピューマなので部品の調達コストも安い。また前線での整備性とコストが極めて安いこと、国内の要求に併せてカスタマイズできること。更に航続距離が長く島嶼防衛に適していること、機体大きく冗長性が高いなどの理由があったからです。
 AH-1の後継選定当時、このように主張しておたくの戯言と言われましたが、AH-64Dとどちらが「おたくの戯言」だったんでしょうかね。


 これらの失敗があったにも拘わらず、UH-Xを無理やりOH-1ベースにやっちゃったわけです。それは「国産ヘリ欲しい」の一念からです。合理的な理由はありません。
 
 双発で5トンというは運用からの要求ではありません。OH-1をベースに作るとこのあたりが拡大の限界だからです 。それと、他国に競合が無かったからです。ですが他国に競合がないということは、世界的にはこのクラスは必要ない、と認識されていると換言できます。

 機動戦闘車にしても、火力戦闘車にしてもそうですが、運用が全く想定されず開発ありき、で装備の開発が決定されます。また国産開発の常套句として「他国にないから」が多用されます。結果、軍事的な整合性は無視され、他国がやっていない隙間的な装備が開発されるわけです。

 双発5トンだとUH-1Jと大差ありません。ところがエンジンは二発、着水用のエマージェンシー・フロートなど、これまで無かった装備が必要となります。また自己防御システム、装甲などもより高度なものが要求されます。その分機体は重くなります。
 また歩兵装備などが重たくなっていることは世界的な傾向です。つまり、より大きなペイロードが必要です。5トンではこれらの要求を満たすことは極めて困難です。

 しかもエンジンもOH-1の拡大型です。コスト高になるのは目に見えています。
 
 陸幕はこれを単価12億円で纏めると大見得を切りましたが、それは魔法でも使わないと無理です。エンジンだけでも二発で8億、エンジンも機体もOH-1との共用部分が少ない(共用が部分があっても高コストのOH-1では量産効果なんてたいしてでませんが)。

 まあ、そんな無理難題を川重に押しつけたので仲間割れが起こり、監察本部にチクられたようです。

 また陸幕はこれを民間市場に売っていくといっていましたが、これまたファンタジーの世界です。

 現在のヘリ市場では民間ヘリの方が安全基準も、稼働率も厳しいものが要求されます。緩い基準の軍用機は売れません。UH-Xを民間市場に売るためには相当コストを掛けて改良しないと無理です。

 軍用品がしょぼいことは陸自のUAVが震災時に一回も飛ばなかったことでもわかるでしょう。何百億円もかけて開発、調達された「大規模災害、NBC環境下の偵察で必要」とされたUAVがただに一回も飛ばなかったのです。理由は信頼性に問題があったからです。軍用品の信頼性はその程度です。
 たいして消防も警察も海保も新聞社もドクターヘリも日々此戦場です。自衛隊よりも遙かに信頼性、稼働率には敏感です。国内メーカーはこういうシリアスなユーザーに応える製品を開発も生産もできていない、ということです。

 つまりご案内のように、UHーXは「男のロマン」的な情緒や情念に基づくものであり、単なる国費の浪費です。
 ハッキリ申しあげて陸幕のメンタリティは「新しい玩具」の開発・調達は全て正しいと主張する中二病的な軍オタと目くそ鼻くそということになります。

 こいういクズみたいなプロジェクトにカネをかけているから、無線機や兵站装備などの「地味」な装備の取得と維持整備費にカネが回らないわけです。
 その結果が先の大震災で露呈したのですが、補正予算で面倒みてもらったし、UH-Xでお縄になったのは末端の「戦闘員」だけだったので、今後もこういう実用性が低く、費用対効果も考えない「目立つ玩具」偏愛の調達は続くのでしょう。

 
 まあ、前の戦争も情緒と情念で作戦立てたり、装備の開発やってボロ負けしたんですけどね。防大も防研でも戦史て教えていないんですかね。

 また政治家にこういう装備の知識がないために、無軌道な軍人の主張が無批判に防衛予算に反映されているわけです。つまり政治家の能力不足が彼らの暴走を助長してるとも言えます。

 趣味でヘリ作るなら自腹でやれよ。


 これがぼくの正直な気持ちです。

UH-Xに関係している可能性があるエライ人達
画像

 

月刊WEDGEに「いつまで続けるのか丸投げ防衛装備調達」を寄稿しております。
http://wedge.ismedia.jp/category/wedge


 朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しています。

軍事情報軽視の日本政府と防衛駐在官の構造的問題
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013012500007.html?iref=webronza


【次期輸送機XC−2と自衛隊の川崎重工への偏愛について(上)】――緊急性はあるのか?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012112000007.html?iref=webronza

次期輸送機XC−2と自衛隊の川崎重工への偏愛について(中)】――急ぐべきは偵察システム
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012120500005.html?iref=webronza

次期輸送機XC−2と自衛隊の川崎重工への偏愛について(下)】――航空輸送力へのマイナス
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012121000005.html?iref=webronza


もう一つのUH−X疑惑――空自次期救難機を巡る疑問(上)(2012/10/29)
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012103100007.html

もう一つのUH−X疑惑――空自次期救難機を巡る疑問(下)(2012/11/01)
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012102600008.html






 





 
  





 
 
 

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コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
 桜宮のバスケや柔道の暴力指導について、評論を・・
ななし
2013/02/01 23:21
そういえば・・・自衛隊の艦艇に使っている武器なんかどこの国の物なんですかね〜
純国産とも思えんけど・・・・
やっぱり力の関係上、アメリカ製ですかね?
ヘリも研究のために作るならいいけど、無駄金はやめてほしいですね。

しかし、いつのまにか2万トン級の艦船まで作ってますね〜
海の守りは大事だから仕方ないか?
(=^・・^=)
2013/02/03 08:41
自衛隊には米軍のTRADOCのような組織が存在しない、必要な兵器を導き出す「理論」を考える部署が無いため、兵器調達と開発はいつも迷走しています。
マリンロイヤル
2013/02/04 23:26
火力戦闘車なら、フランスにカエサルがあったし、機動戦闘車なら、米軍の余るだろうアフガン向け装備を安く買えばいい。
とりあえず、防衛費の額が増加したのは喜ぶとして、中身の改革はまだまだですね。
Suica割
2013/02/08 15:14
4トン4翅のOHローターを5翅化し5トン対応。ブレードは共有化できるから安くあがります、という考えだったのでしょう。特許も出願しているみたいですし。でも、あのOHハブを5翅化して実際に安全かつ確実に運用できるか、甚だ疑問です。
同じ5トンなら、安心して使えるという意味で、まだ、ベル412の方がマシな気がします。ほかの性能はたぶん劣るでしょうが、信頼性は較べようもないと思います。

テオ犬
2013/02/13 20:24
米海兵隊向けのUH-1Yが今も生産され、UH-1Nのアップグレードと同時並行ですが、日本もUH-1JをUH-1Yにアップグレードして、足りない分をノックダウン生産で米国から購入するのはどうでしょうか?有事の際に部品を共有できることや、長期運用の信頼性、欧州製等への切り替えによる工具の更新費用と教育費用の節約にも繋がると思います。世界的にも使用されているので部品供給が安定しているのもUH-1系統の強みです。防衛産業のアップグレード部品のみのライセンス生産でも、在日米海兵隊に限定的ながら部品供給もできます。富士重工はUH-1Jのアップグレード案を提示しましたが、UH-1Yとは更新部品が異なるので部品の融通には難があると考えます。
ヘリコプターマフィア
2013/02/15 12:46
追伸、略式起訴された二名の実名を知っていますが、呆れたことに国産の必要性を訴えて控訴したそうです。ジョン・ボイドの爪の垢を煎じて飲ませたいですね。ランチェスターの法則から軍事学を学びなおして欲しいものです。
ヘリコプターマフィア
2013/02/15 12:50

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