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zoom RSS F-35 最悪の調達方式が進み、空自の戦力は低下する

<<   作成日時 : 2013/01/15 16:40   >>

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 改められた防衛省の来年度の概算要求が先日発表されました。
http://www.mod.go.jp/j/yosan/2013/minaosi.pdf

 これによるとF-35は2機で308億円、単価は154億円です。
 問題は初度費です。初度費は1,168億円です。初度費は初年度だけとは限りません。今後も更に追加の初度費が計上される可能性があります。

 今年の初度費だけでも調達予定機42機で割ると、一機あたり27.8億円です。つまり現状実質的なF-35の調達単価は181.8億円です。

 しかも現在のF-35は完成したものではありませんから、今後ソフトウェアの変更など、実戦に使用できるような改修や追加で支払う金額が発生するでしょう。
 またご案内のように初度費もこれで終わりとは限りません。

 となれば、F-35一機あたりの調達金額は、おそらく200億円を超えるでしょう。
 
 それだけではありません。今後国内で生産することになるので、単純に三菱重工などに支払う金額も、ハンドリングするための管理料などで最低でも米国製の1.2倍、実際の製造のコスト、利益を乗せれば更に膨らみます。
  
 我が国はF-35の国内生産比率を4割まで獲得できると発表され、ネット上では驚喜している人達が多々見られましたが、これを素直に信じるのはあまりにナイーブ、世間知らずです。

 近年の戦闘機のキモはアビオニクス、ソフトウェア、システムなどあり、金額的も比率が大きくなっています。これらはブラックボックスであり、「狗と日本人お断り」状況です。ですから、まずこれらは除外されます。
  
 つまり担当できるのは殆ど機体のドンガラ、エンジンです。それにしても既にF-35のパートナー各国にその割り振りがきまっています。
 我が国が国産化すればその分彼らの仕事が減ります。「4割」も日本が内製するとなれば米国は多くの政府、ベンダーと話し合わないといけません。


 仮に「4割の国内生産」が可能としても、輸入分を引けば36機しか生産しないのに、コンポーネントの多くを国内で生産すれば、コストはとんでも無く高くなります。単なる組み立て生産似すぎないアパッチですら値段の高騰で調達を途中で中止しました。
 F-15にしても200機も生産したのですが、調達単価は約3倍となっています。
 

 仮にF-35の調達単価をF-15並とすれば504億円です。36機生産するならば総額は約1兆8千億円、これに輸入 分の6機960億円を加えると1.9兆円にもなります。当然今後機体が改修されて単価が上がれば更に数字が上がると思います。
 恐らくは組み立て生産に近いものになるでしょう。
 それで、価格は2倍程度、一機300億円程度に「抑え」られるのではないでしょうか。
 であれば三菱重工、三菱電機、IHIなどに金は落ちますが、技術移転は期待できません。また下請け企業も仕事があまり発生しないでしょう。つまり防衛航空産業の振興には殆ど寄与しません。

 ぼくはFXはユーロファイターを押してきました。ですが仮にF-35を採用するならば輸入にすべきだと述べてきました。国内生産をすればろくに技術移転もないまま、コストだけが膨らむからです。
 まだ我が国で生産されたコンポーネントを輸出できればまだマシですが、我が国にはそのような政治的・外交的な交渉力がありません。

 結局米国のために国内に整備施設を我が国の税金で作ってやるようなものです。

 その分自衛隊の予算が圧迫されますから、結果的に自衛隊の弱体化になります。
 早期警戒機の更新必要です。また人工衛星や通信システム、空中給油機、輸送機の増強も必要です。日々の訓練や既存整備のための予算も必要です。それらの費用を削ってF-35の調達予算を賄うしかないでしょう。

 またF-35は既存の戦闘機よりも維持費がかなり高いと言われていますが、F-35の稼働率を高水準で維持するならばかなりの出費が必要でしょう。
 
 問題はF-35が実戦に投入できるための開発が終わり、一定の纏まった機数が戦力化されるまでの時間がかなりかかることです。あと10年ぐらいかかるのではないでしょうか。
 その間中国の脅威は「存在しない」ことになるんでしょう。政治家にも防衛省にも時間という概念、時間は資源だという認識が無いようです。必要な装備が攻撃を受けた10年後に揃って意味はありません。


 あまり言いたくはありませんが、政府・防衛省・自衛隊には当事者能力がなく、米国の植民地みたいな感じをうけます。真面目に戦争に備え、自ら国を守ろうという真剣さは感じられません。とりあえず新しい玩具を並べて、アメリカ様のご機嫌さえ取り結んでおけば安泰と考えているように思えます。
  
  安倍首相が言う「新しい国」って、こういう国のことなんでしょうか。



 
朝日新聞、WEBRONZA+に以下の記事を寄稿しております。 

 陸上自衛隊に島嶼防衛はできない(上)――弱いリサーチ
 http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013011100003.html

陸上自衛隊に島嶼防衛はできない(下)――海上自衛隊は「海兵隊」をつくれ
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013011500007.html

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コメント(17件)

内 容 ニックネーム/日時
以前F-22の導入が取りざたされていた時は確か1機120億円という話だったと思いますが…。もちろんどんな機種でも正確な価格は算出はできないでしょうが、今度は1機200億とか300億ですか。
当時、そんな金が拠出できるのか? という質問に「日本くらいの国なら消費税を数%上げれば楽に金は作れるだろ」というネットのコメントがあったように思います。しかし、現在消費税が上がろうとしているのは防衛を全く計算に入れてないと思うんですがね。
「MC☆あくしず」というミリタリー美少女雑誌に「F-35が空自の嫁に決定!」というタイトルで清純そうな美少女化された「F-35ちゃん」が書かれていた記事がありましたが、まさか現実にその程度のレベルで物事を考えている政府関係者やネット上のミリオタが多いんじゃないかと真剣に心配してしまいます。
SNK22
2013/01/15 20:17
いつも清谷先生のブログを楽しく拝見させてもらってます。質問ですが逆にいえばどうして政府・防衛省・自衛隊には当事者という意識がないんでしょうか?これも戦後長らくアメリカに飼いならされてきた結果ですかね・・・・
イージス
2013/01/16 14:42
政治家にとって防衛・外交が票にならないことでしょう。つまりは国民の意識の問題ということになります。
自衛隊は法的に事実上戦争が困難になっております。ですから、実戦を想定して装備の調達や運用構想などが構築しにくいことが一番大きいのではないでしょうか。

また政治・防衛省ともに共通しているのが情報に対する感度が鈍く、世の中の動きよりも国内の思惑や自分の属する組織の内向きの利益を優先していることです。
それと外国=アメリカ、という意識も大いに問題があります。世界観が貧弱です。
キヨタニ
2013/01/16 16:23
一機300億円wwwww
そりゃあトルコも逃げ出すわな。
下手したらスーパー心神(F-3)の方が、
安上がり&早期完成するんでない?
タヌキ
2013/01/16 17:16
>政治家にとって防衛・外交が票にならないことでしょう。つまりは国民の意識の問題ということになります。

これはどうでしょう? 
公共事業は票になりますけど、まともじゃないですよね。防衛外交が票になっても正常化はしないと思いますよ。
それはどうでしょう? 
2013/01/16 23:39
F35の生産は36機ではないと思いますよ。
なぜならF15の非改修機(能力向上を行なわない機体=F15の前期生産機)がF4のあとに控えているからです。(このF15はかなり古い!)
おそらくF4の更新に続いてF15非改修機もF35によって更新されるのではないでしょうか。
YF23
2013/01/17 22:43
F35の問題は値段や防衛産業のこと以上に「今そこにある危機」に間に合わない事ですね。
マリンロイヤル
2013/01/18 10:22
>「今そこにある危機」に間に合わない事ですね
自衛隊は実戦を想定していない、
ママゴト軍隊だから問題ない。
少なくともF-35を推している連中は、
そう思っていますよ。
ABC
2013/01/20 18:22
SNK22どの、私の記憶では1機250億円と想定されていた様に思っているのですが・・・

2013/01/21 21:23
そもそも戦闘機を買わなければ良い。ちょっとやそっと数が減ったからって戦争が起きる起きないの大勢には影響を与えるほどではない。中国の指導部がF−35云々で判断を変える事はありえない。冷静に考えて、尖閣の領有権を中国も納得できるような案で話あって決着をつけるのが現実の安全保障である。いい加減に国民も日本の立場をわきまえるべきだ。
若手の男爵
2013/01/22 10:20
EF-2000は国産アビオニクスを搭載など、独自改造する場合、関連技術、国産ミサイルの情報もイギリスに持っていかれ、それをイギリスが中国に売買しようが韓国に売ろうが文句言えない契約ですよ。
ついでに空自が欲しいトランシェ3はF-35をも上回る遅延ぶりを呈していて、そもそも試作機すら出来ていません。
機体構造は従来の戦闘機と変わらぬ古典的なもので、ライセンス生産したとしてもF-2で炭素繊維で機体を作るという新技術を獲得している日本は得るものがありません。
おまけに直線加速以外ではラファールにボロ負けなことも分かって来ました。
F-22に勝ったと言われる訓練においても。「EF-200はF-22の場所を事前に知らされ、F-22はEF-2000の場所を知らない。位置関係はF-22の後方上空の最も有利な場所にEF-2000を配置。そしてF-22はアフターバーナー及びデータリンクシステムの使用禁止」という、やる意味あるの?という条件でした。EF-2000って本当に強いんですかね?

それとF-35Aは1機あたり100億円程度で調達されることが決定しましたよ。
導入されるのはステルスウェポンベイ内のミサイル搭載数を増やすなどした改良タイプのBlock3です。
ちなみに米国およびロッキードとしては、日本に部品生産の一部を委託し、世界中のF-35の部品供給源としたい。という意図もあるそうです。
ななしん
2013/01/23 08:09
>F-35Aは1機あたり100億円程度で調達されることが決定しましたよ。

防衛省のHPの概算要求の資料の調達コストを奇数で割ると、単価は154億円ですよ。
F-35
2013/01/23 12:17
ななしんさん嘘はつかないで下さい。

2013/01/24 22:35
本日の産経にF35導入は事実上不可能と出てましたね。

何でも、日本に引き渡される最初の4機は空対空ミサイルが運用できない練習機クラスだとかで、到底防衛省が要求した性能に及ばないとか。

アメリカは自前の武器を相手国に売るとき、自分の都合で契約内容を変更したり、納品しなかったりするので、今回の導入計画は最初から胡散臭かったけど、予想通りになりましたj
みけねこ
2013/01/27 18:16
みけねこさん、勝手な妄想を書きこまないで下さい。産経はF-35のバージョンを問題にしていただけです。(判っているものにはどうでも良い事)不可能などと一言も書いてません。

2013/02/03 21:49
お邪魔します。
 兵器の調達コストはうなぎ登りで、例えばシーウルフ級原潜のような「ひたすら高性能を目指した」兵器ばかりかF35のような「リーズナブルな価格を目指した」はずの兵器ですらこういった事態に陥ってしまいました。「陸上機と艦上機とVTOL機を一度に作る」というのが無謀だったのかも知れませんが。こんな高価な兵器を使って戦争が可能なのか、割に会うのかと思ったりします(例:高価な軍艦がテロリストの体当たり自爆ボートで破損)。
ブロガー(志望)
2013/02/10 09:17
完成時期も最終価格も未定なF35は導入延期すべき。F16C/Dの中古機をつなぎに購入し配備すべき。F2の経験で運用に支障なし。5年位運用し次期戦闘機の採用再検討時間を稼ぐのが良い。 
th
2013/03/05 09:39

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