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zoom RSS 20年後日本からヘリメーカーは消える。その戦犯は防衛省と川崎重工

<<   作成日時 : 2012/12/09 15:52   >>

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 そう遠くない将来日本からヘリコプターメーカーは無くなるでしょう。
 恐らくそれは20〜30年先のことになるでしょう。

 川重がユーロコプターと製造しているbk117を除けば川重、三菱重工、富士重工の各社は一機たりとも防衛省以外の民間ヘリ市場、民間はもとより、警察や消防などでも売り上げはありません。

 当然自社で開発した民間市場用のヘリもなく、防衛省用にしても外国製のライセンス生産、およびその改良型、あるいは単なる組み立て生産をやっているだけです。例外はOH−1ぐらいです。

 つまり自主開発能力、特に民間市場で売れるヘリを作る能力はゼロ、です。



 防衛省の需要にしても毎年調達予算は減り続けています。しかもUAVやネットワーク関連など、いままでに無かった装備の調達も多数必要であり、その分既存装備の予算は削られることになります。近い将来ヘリの予算にしても、産業として維持するだけの予算は確保できなくなるでしょう。
 
 ヘリを産業として維持するためには、民間市場への参入が必要不可欠ですが、各メーカーにはリスクをとってそれを行う気は更々ありません。
 取りっぱぐれがない(AH−64Dではありましたが)防衛省需要にしがみついており、緩慢な死を待っています。

 つまり生き残ろうという生存本能すら欠如しています。
 やる気があっても生き残りは大変なのですが、本人にやる気がないのですからある意味自殺のようなものです。

 三菱重工でも上の方はもうヘリ商売を止めたいらしいですが、現場からは止めないでくれと懇願されて切れないそうです。
 どうせ将来性もない分野に人間を金を貼り付けておくだけ損なんですが、とりあえず利益は出しているので切りずらい。また切ると小姑のOBから苛められる。で、現在の経営陣は自分の任期は問題先送りです。
 次の人、頑張ってね、てなもんです。

 川重は昔は外国メーカーとジョイントで頑張ってバートルやらBKやらやっていました。あの路線をつづけていれば、現在でも世界的にも国内的にも民間市場でそれなりのプレゼンスを維持できたでしょう。 
 また他の重工二社が脱落すれば、防衛省需要も総取りで、民間市場と防衛需要をあわせればそれなりに経営基盤も安定したでしょう。

 残念なことに同社は先輩達が苦労して築いた資産に寄生しているニートのようなものです。
 「唐様で売り家と書く三代目」ってなところでしょうか。



 世間ではOH−1をベースに開発されるUH−Xの民間市場での販売に期待をつないでいた人も多かったでしょうが、それは幻想に過ぎません。

 現在ヘリ市場では軍用よりも民間用の方が遙かに高い品質を要求されます。特に安全性、稼働率においては顕著です。たった1機しかないユーザーのヘリが故障すると稼働率はゼロですが、軍用ヘリ100の内、1機が故障しても稼働率は99パーセントを維持できます。
 当然ながら民間ユーザーの要求の方がシビアです。警察にしても消防にしても「常在戦場」です。戦争していない軍隊よりも余程要求は厳しい。
 文句を言わない沈黙のユーザー、自衛隊だけを相手しててまともな「商品」が開発できるわけはありません。

 
 ヘリコプターは本来産業として自立可能な分野でした。ところが防衛省も経産省もそういう視点で振興をしてこなかった。むしろ自分たちでそれを潰しているように見えます。
 少なくとも90年代にはヘリメーカーを1社に集約すべきでした。


 このようなニート産業にいくら税金をつぎ込んでも無駄です。将来産業として自立することもないし、繰り返しますが防衛省にも彼らを養う食い扶持を維持できない。割高なライセンス品を毎年少量調達するなんてことは近い将来破綻するでしょう。

 防衛省が割だかなライセンス機を買いつづけ、自衛隊向けに国産ヘリ開発の金をつぎ込むにしても、それが民間市場でのヘリメーカーの売り上げ増につながるのであればGDPの増加、雇用、税収にも寄与します。ところが、これまでひたすらつぎ税金を込むだけで、今後もリターンが見込めません。 
 早めに見切るの方が、税金の節約にもなるし、自らヘリ部門をリストラできないメーカーも強制的にリストラをせざるを得ませんから、余った資産を売るなり、より成長性のある市場に投入できます。
 そのほうが、国産ヘリを買い続けるよりも余程国益になります。


 恐らくは近い将来、空自の救難ヘリがやり玉に挙がるでしょう。一機28億円程度で調達するはずが、40億円程度です。どう考えても選定が陸自のUH−X同様の始めに結果ありだったのは明白です。
 不透明な選定で、高コストの国産ヘリの調達が来年以降問題になると思います。
 今度は関係者の責任が問われるでしょう。


 UH−Xはそんな現実を直視しないで、とりあえず国産ヘリを作りたいという、ある意味北朝鮮が将軍様の偉業をたたえるモニュメントを建設するようなものでした。

 ある意味陸幕のマスターベーションです。多額の税金を使ってやるべきことではありません。


 おそらく唯一の日本のヘリメーカーはユーロコプターになるでしょう。同社が日本国内に組み立て工場をつくれば、国内メーカーはコストの面でも対抗できません。同社は外から部品を買う必要も、ライセンス料を払う必要もない。整備工場は国内だけではなく、近隣諸国のもの含めれば稼働率は高く維持できます。
 もしかするとアグスタやボーイングなども参入するかもしれません。

 これまで多額の税金をつぎ込んできた国内のヘリメーカーは自滅します。であるならば、防衛予算からの支出をできるだけ速やかに減らし、その分を他の分野に使うべきです。 


 情緒的な愛国心や国産品信仰に基づくヘリ産業応援は、現状維持を肯定するので、実は有害です。
 熱心な応援が、実は国産ヘリを破滅に追いやっているといっても過言ではありません。
 まあ、糖尿病の患者にキミは健康だと言って、酒を飲まして饅頭を腹一杯食わせるようなものです。
 



UH-Xに関係している可能性があるエライ人達
画像

 



 朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しています。
【次期輸送機XC−2と自衛隊の川崎重工への偏愛について(上)】――緊急性はあるのか?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012112000007.html?iref=webronza

次期輸送機XC−2と自衛隊の川崎重工への偏愛について(中)】――急ぐべきは偵察システム
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012120500005.html?iref=webronza


もう一つのUH−X疑惑――空自次期救難機を巡る疑問(下)(2012/11/01)
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012102600008.html

もう一つのUH−X疑惑――空自次期救難機を巡る疑問(上)(2012/10/29)
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012103100007.html






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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
自民党は装備調達や人員について
政権交代後に拡充するそうだ。
ヘリや戦車の調達単価が高いのは
調達数が低いからなので、このまま
ならば安くなりそうだ。
士採用も増えて平均年齢も若くなる。
単純な国防にはいい事だらけだ。
長期的には経済が浮上しなければ
色々つらいところではあるが、
アジアの殆どが軍拡に走っている
現状仕方ない面もある。
ANK94
2012/12/09 23:33
日本の兵器開発・生産のすべてがそうです「北朝鮮が将軍様の偉業をたたえるモニュメントを建設するようなもの」
国産開発に感情的にこだわって話がこじれ、開発が遅延して完成前に時代遅れになってしまった(そして莫大な予算を空費した)FSXの失敗から何も学んでいません
それに、古きよき時代の「平和主義」と武器三原則の代償でもあったのでしょう>「割高なライセンス品を毎年少量調達する」
武器三原則が事実上撤廃されたことで、情況が改善されればいいのですが

ユーロコプター集約に関しては、「中国と合弁事業をしている」と言う時点で、もう理屈抜きでアウト、認められることはないと思われます
少なくとも、ネット酷使たちは絶対に認めないでしょう

あと、全方位バラマキのごく一面でしかない自民党軍拡では、組織の問題解決は当然先送りされ、兵器の質的改善も先送りでしょう
(つーか、正面装備と頭数だけ増やしても、国防にはマイナスでは?)

明日はどっちだ、そもそも明日はあるのか
2012/12/11 04:20
>中国と合弁事業をしている」と言う時点

その理屈ならばシコルスキーもアウトです。
ですが彼らもバカでは無いので、中国にコアコンポーネントを触らせていません。
 
キヨタニ
2012/12/11 12:47

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