清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所 

アクセスカウンタ

zoom RSS UH-X コンバットマガジン8月号掲載記事その1

<<   作成日時 : 2012/10/07 14:33   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 8 / トラックバック 1 / コメント 0

 UH-Xの官製談合スキャンダルで、昨今取材するよりもされることが増えて、業務にいささか支障をきたしております。何しろ全国紙のすべて、地方紙やテレビ局などからも取材があり、そのリピートの取材も非常に多くなっております。
 毎回同じことを話すのにも疲れたので、今年コンバットマガジン8月号に寄稿した記事を掲載することにします。取材に見える方は事前にこれを読んでいただければ幸いです。
 

 陸自は現用の小型汎用ヘリ、UH-1Jの後継としてUH-X(次期汎用ヘリ)を開発中だ。今回は内局の報道室を通じ、防衛政策局防衛計画課、経理装備局航空機課に開発の背景と現状をうかがった。UH-Xは内局によると調達数は未定とのことだが、筆者がこれまで取材した限りでは150〜180機程が調達される予定だ。因みに現在陸自はUH-1H及びUH-1J併せて約140機を保有している。

 UH-X開発の予算は平成22年度に承認され、その総額は279億円が予定され、平成23年度で35億円、平成24年度で183億円億円が承認された。本年3月にUH-Xは川崎重工が提案したOH-1をベースに開発する案が、富士重工のUH-1の双発型案を破って採用された。
 現用のUH-1Jと同レベルの約12億円に調達単価を抑えるとしている。なお生産に際しては約71億円の初度費が予定され、調達単価12億円には光学電子系センサーなどオンボードの装備品は含まれていない。

 筆者はこのUH-Xの開発に関しては一貫して反対の立場をとっている。それはこの計画が我が国のヘリ産業を潰してしまう恐れがあるからだ。UH-Xの開発は本来平成20年度に要求されるはずだったが、3年間にわたって足踏みが続いた。これは陸幕の計画がずさんだったために内局が予算化を渋ったからだ。
 輸入やライセンス生産も検討されたがユーロコプターやアグスタ・ウエストランドなどの外国メーカーに行わせた提案も具体的なものではなく、真剣に検討された様子はない。様々な状況証拠を積み上げるとUH-X計画は初めから川重の提案するOH-1で初めから決まっていたように思える。

 筆者はこの川重案に合理性があるとは思えない。そもそも単発のUH-1Jですら12億円だ、しかもOH-1の平均調達単価は約20億円であり、このような高コストのヘリをベースにして専用のエンジンを使用し、高々150機程度の生産数でそのような、低価格に収めるというのは素人がみても不自然だ。内局によると陸幕はそれらしい数字を出し、また川重は価格を保証する誓約書を提出しているとのことだ。

 OH-1をベースにすることによってコスト削減を図るというが、それは画餅だ。
 エンジンはOH-1で採用された三菱重工製の出力659kwのTS1をベースに開発された出力940kwのXTS2が採用される予定だ。当然ギア・ボックスなど一新される。技本の資料によるとTS1とXTS2の部品はある程度共用性があるとされているが、それは35パーセントに過ぎない。
 
 これではOH-1のスペア部品を含めても大幅なコストダウンは不可能だ。そもそもTS1自体は外国製エンジンよりコストが高い。米海兵隊のUH-1YとAH-1Zはキャビンを有する汎用ヘリとタンデム・シートの攻撃ヘリであるにもかかわらず、約85パーセントのパーツの共用化を実現しているが、UH-Xでは不可能だ。因みに筆者が取材したかぎり、XTS-2は技術的な困難があり、また性能・コスト面で実用的ではないとされ、既に外国製のエンジンを採用するプランBが真剣に模索されている。

 調達単価が12億円を超える場合、調達は中止になるとされているが、かなり怪しい。12億円という単価は防衛省と川重が合意した毎年の調達ペース(非公開)から著しく調達ペースが下がったり、物価が著しく上昇した場合には見直されるという。
 また米国のように開発費が25パーセントを超えると自動的に開発が中止になるとか、調達単価が一定のパーセンテージを超えた場合には調達が中止になるとか、調達数を例えば100機から80機に減らすというような具体的な数値に基づくものではない。

 かつてOH-1は当初の調達価格は7億円だったが、その15億円となり、最高では24億円に高騰している。三菱重工が担当した空自向けUH-60も同様に当初22億円だった調達単価は後に約50〜60億円に高騰している。UH-Xでも同様に調達当初は単価が12億円で生産が承認され、その後20億円、30億円となっても調達が続いてしまう可能性がある。これらのことを踏まえれば、毅然として調達プログラムを停止することはむずかしいのではないだろうか。

 陸幕は過去OH-1、AH-64Dなどが調達を事実上途中で停止に追い込まれている。開発費や調達単価に上昇の防止のためには、数値による管理を行うべきだ。現状ではOH-1、AH-64D同様調達予定数の数分の一しか調達できずに途中で調達を断念、その上新たにコストかけて後継機種採用し、ニ機種を併用して思い運用コストを負担するはめになりかねない。その負担は我々納税者が負うことになる。

 OH-1が生産中止に追い込まれた原因のひとつは、海外(特に欧州)のベンダーに愛想を尽かされたからだ。毎年の調達数はせいぜい数機、来年度の調達数はわかりないために、ラインの維持を断られたのだ。OH-1は純国産ヘリという記事が多いが、事実ではない。
 UH-Xではどの程度のコンポーネントが海外製になるかわからない。が、調達ペースが下がればOH-1と同様の運命が待っている。それを回避するために国産になって専用品を開発、生産すればコストは高くなる。国内メーカーにしても採算性が悪化し、防衛産業から撤退するベンダーは増えている。国産にすれば安心というわけでもない。



朝日新聞、WEBRONZA+に以下の記事を寄稿しております。

【UH−X官製談合疑惑と日本のヘリメーカーの病巣(1)】 国営企業的体質?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012090700002.html

【UH−X官製談合疑惑と日本のヘリメーカーの病巣(2)】 問われる調達計画
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012091000008.html?iref=webronza

【UH−X官製談合疑惑と日本のヘリメーカーの病巣(3)】 単価は妥当か?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012091300014.html


清谷信一.【UH−X官製談合疑惑と日本のヘリメーカーの病巣(最終回)】 防衛省は意識変革を
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012091400007.html?iref=webronza

【国産哨戒機P−1の開発は中止すべきだ(1)】 高すぎるコスト
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012090400012.html

【国産哨戒機P−1の開発は中止すべきだ(2)】 安価なP−3C近代化
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012090500007.html

【国産哨戒機P−1の開発は中止すべきだ(3)】 システムの開発力に疑問
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012092500014.html?iref=webronza


さて防衛調達問題を知るためにいかがでしょうか。


防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備 (中公新書ラクレ)
中央公論新社
清谷 信一

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備 (中公新書ラクレ) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



国防の死角
PHP研究所
清谷 信一

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 国防の死角 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル




  関連記事
防衛省 UH-X談合疑惑 トカゲの尻尾切りで強制収束か
http://kiyotani.at.webry.info/201209/article_19.html

川崎重工 UH-X官製談合疑惑 技本の存在意義はありや?
http://kiyotani.at.webry.info/201209/article_9.html

川崎重工 UH-X官製談合疑惑 防衛省、来年度予算でUH-X予算要求を断念
http://kiyotani.at.webry.info/201209/article_8.html

川崎重工 UH-X官製談合疑惑 川崎OH−1は名機か
http://kiyotani.at.webry.info/201209/article_7.html

UH-X 談合疑惑 ニート・ヘリメーカー、川崎重工が日本のヘリ産業を潰す日
http://kiyotani.at.webry.info/201209/article_6.html

川崎重工 UH-X官製談合疑惑と報道機関の姿勢について
http://kiyotani.at.webry.info/201209/article_4.html

陸自のUHX
http://kiyotani.at.webry.info/201202/article_1.html

川崎重工 企画本部 西野光生広報部長、 長谷川聰取締役社長に対する公開質問状その8
http://kiyotani.at.webry.info/201209/article_3.html

川崎重工の品格 UH-X官製談合疑惑
http://kiyotani.at.webry.info/201209/article_2.html

川崎重工 企画本部 西野光生広報部長、長谷川聰取締役社長に対する公開質問状その6 XC-2
http://kiyotani.at.webry.info/201207/article_20.html

川崎重工 企画本部 西野光生広報部長、長谷川聰取締役社長に対する公開質問状その5
http://kiyotani.at.webry.info/201207/article_19.html

川崎重工 企画本部 西野光生広報部長、長谷川聰取締役社長に対する公開質問状その4
http://kiyotani.at.webry.info/201207/article_18.html

川崎重工 企画本部 西野光生広報部長、長谷川聰取締役社長に対する公開質問状その3 MCH-101
http://kiyotani.at.webry.info/201207/article_17.html

川崎重工 企画本部 西野光生広報部長、長谷川聰取締役社長に対する公開質問状その2 UH-X
http://kiyotani.at.webry.info/201207/article_15.html

川崎重工 企画本部 西野光生広報部長、長谷川聰取締役社長に対する公開質問状その1
https://bblog.sso.biglobe.ne.jp/ap/tool/newsedit.do

川崎重工広報部の見識
http://kiyotani.at.webry.info/201206/article_2.html

川崎重工、橋梁部門から撤退検討
https://bblog.sso.biglobe.ne.jp/ap/tool/newsedit.do

陸自UH-Xが日本のヘリ産業を潰す
http://kiyotani.at.webry.info/201008/article_21.html

C―2の重量超過問題と空自の隠蔽体質について
http://kiyotani.at.webry.info/201103/article_6.html

【ファンボロー航空ショー3】日本の航空機メーカーは商売をする気があるのか?
http://kiyotani.at.webry.info/201007/article_9.html

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 8
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ナイス ナイス
驚いた
面白い

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
ガミラスの将軍と UH-X官製談合疑惑スキャンダルと
 先日「宇宙戦艦ヤマト2199第三章」を見てきました。  ガミラス帝国の銀河方面軍司令官、グレムト・ゲール少将が「大活躍」するのですが、その人柄、見識が  陸自の将官たちのようだなぁ、などと思って見ておりました。 ...続きを見る
清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所...
2012/10/22 11:16

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
UH-X コンバットマガジン8月号掲載記事その1 清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所 /BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる