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zoom RSS ロシアの市場を脅かす中国の戦車

<<   作成日時 : 2012/06/30 16:17   >>

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 中国製の戦車、輸出戦線でロシア製に勝利=高品質・低価格で途上国市場独占の勢い―香港紙
http://www.recordchina.co.jp//group.php?groupid=62462&type=0

 かつては貧乏国や第三世界が買うのはソ連の戦車と相場が決まっていました。
 
 ところがソ連崩壊後、中国がその地位を脅かしてきています。

 かつてはソ連の劣化コピーだった中国の戦車は、この10年ほどでかなり品質を上げてきてます。
 その理由は第一に中国の工業レベルが全体的に上がってきたこと、第二に欧州やイスラエルなどの外国企業の協力があげられます。

 天安門事件以来EUは対中武器輸出、およびその生産技術の移転を禁止しましたが、これが紳士協定だったものですから、しり抜けだったわけです。どうも欧州には紳士が少ないらしい。

 で、イスラエルは節操なくインドと中国の両方に兵器やコンポーネントを売っています。
 またウクライナからもかなりの軍事技術が流れてきています。
 
 戦車のエンジンは欧州メーカーの現地生産品(欧州メーカーとの合弁企業の生産)だったりするので、ロシア製よりも信頼性が高いでしょう。
 また火器管制装置がイスラエル製だったり、暗視装置がフランス製だったりします。その分ロシア製よりもアドバンテージがあるでしょう。もっとも主砲の信頼性などはロシア製のほうがいまだ上でしょうが。
 
 値段がロシア製よりも安くて、品質や性能的は同等か、それ以上ならば当然ユーザーは安いほうを買います。しかも基本的には中国の戦車や弾薬はソ連系の規格ですからソ連戦車からの移行も比較的容易です。


 そんなわけで、ロシアは中国をライバル扱いしています。
 ロシアだけではありません。ロシアとの関係が改善されたウクライナも同様です。ウクライナの戦車や装甲車両もまた中国製と競合関係にあります。

 EUも同様です。以前はフランスを中心に対中武器禁輸の緩和を求める声が多かったですが、6年ほど前からはそのような主張はかなり減っています。
 
 それはEU諸国、とくにフランスにとっても中国はライバルとなっているからです。

 あたしゃ、前から欧州企業の連中には対中武器禁輸緩和は当然日本にとって看過できないだけでなく、中国の技術力を上げる手伝いをすることになって世界市場であんたらの縄張りを荒らされるよと、主張していました。
 おそらくぼくほど欧州企業に対中武器禁輸緩和の危険性を説いてきた日本人ジャーナリストはいないはずです。記者会見でも数多くそのような質問をしてきました。
 
 近年になってやっと彼らも現実を把握してきたようです。

 フランスの簡易型自走砲、カエサルを模したノリンコのSH-1はカエサルより早く市場に出ました。しかもネットワーク化されています。実はこの手のトラックに榴弾砲を乗せた場合の反動のマネジメントはかなり難しく、ノリンコがフランス並みの技術をもっているとは思えません。
 ですが値段は大幅に安く、途上国にとっては魅力的でしょう。実際、すでに輸出が決まっています。

 ですから、EUは中国が欲しがっている装甲車両の自動変速機など技術はリリースしていません。先に発表された8輪装甲車、VN-1Aにも使用されておりません。国内用のVN-1はマニュアル、輸出型は疑似オートマです。

 現在中国の主たる軍事技術ソースはイスラエルと思われますが、これもヒズボラやイランなどに中国製兵器や技術が流れております。また一部の市場ではイスラエル企業とも競合していますから、いずれ技術供与が細る可能性はあるでしょう。

 なにしろ、中国企業は信用がありません。
 中国企業はサンプルを買うだけでリバース・エンジニアリングで「国産品」を作ってしまいます。つまりは多くの企業が自社技術をパクられています。

 ひどいときはサンプルさえ買いません。何年か前にもフランスの防護装備関連の企業の社長が、中国人がやってきて写真を撮りまくっていった。その次の見本市ではウチの製品に瓜二つの製品が出展されていたと憤っておりました。
 見本市でも中国人を警戒する出展者は増えています。

 そんなわけで、これから先、中国に対して技術供与を積極的に行う国は少ないでしょう。ですが、中国製品は輸出市場でもまれており、企業努力によって年々品質が上がっているのも事実です。ですから、技術流入が止まったからといって中国兵器の進化が止まるわけではありません。

 またタイやインドネシア、サウジ、UAEなどでも近年装甲車が開発されております。かつては純然たる輸入国だったこれらの国々が装甲車両を生産すれば、欧米やロシアの既存の装甲車両輸出の市場は減るでしょう。
 装甲車両メーカーは構造的不況産業になる可能性大です。

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
フランスなぞ、かつて台湾にミラージュやらフリゲートを売り、中国にはクロタル他のミサイルを売り込んだくらいですからね。仮に日本と中国とがどうなろうと知ったことか、くらいの認識なのでしょうか。イスラエルは・・・シリアやイラン経由で中国製兵器を供与されたハマスに攻撃されるのは自業自得、としか感想がありません。それはそうと、中国製戦車は未だに砲安定装置を実用化していないのでしょうか(以前、陸自の90式と中国の98式の比較動画を見た事があります)。
カッコ
2012/06/30 21:23
>砲安定装置を実用化

実用化しています。欧州やらイスラエル、ウクライナあたりからの技術ではないかと。
キヨタニ
2012/07/01 16:49
ありがとうございます。かつてソ連はCOCOM等の規制により先端技術に接する機会が制限されていましたが、今の中国は堂々と先端技術に接することが出来ますものね。やり方はお世辞にもスマートとは言えないですけど。
カッコ
2012/07/01 20:20
確か中国戦車って最新のタイプまで超信地旋回ができなかったと聞きましたが、本当でしょうか。
匿名希望
2012/07/02 09:05
>なにしろ、中国企業は信用がありません。
 
 中国の「躍進」を評価されているようですが、この信用の無さが長い目でみた場合、仇になりそうな気もしますが・・。
 今のところ、市場はもっぱら途上国相手の価格勝負のビジネスですよね?まあ、発展段階でいえば、「発展途上国」から「中進国」のレベルですよね。

 そういう製品であれば、元々の期待値が高くないのですから、「信頼・信用」なんて大して重要じゃないでしょうし、政治体制がどうだろうが、なんだろうが、簡単に「追い上げる」ことができるでしょう。
 問題はそこから先、本当に付加価値の高い製品なり兵器なりを作って売ろうとした場合、この「信頼の欠如」は致命的で、その時になって挽回しようとしてもなかなかできるものではないぞ、と思いますが。
 それに、「先進国」型の付加価値の高い製品を開発するには、長期的視点でみた研究なり、試行錯誤が必要ですが、中国企業の行動(韓国もですが)ってものすごく刹那的な感じで、そんなことできるんだろうか?とも思わされます。
 まあ、兵器市場のことはよく知らない素人考えではありますが・・。
 
レッド・バロン
2012/07/03 00:24

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