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zoom RSS 燃料費削減に不熱心な自衛隊

<<   作成日時 : 2012/05/05 14:06   >>

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 米軍は本年から空軍の航空燃料はケロシンと合成燃料を半々にブレンドした燃料を本格的に採用しています。また海軍でも既存のタービンエンジンを搭載したイージス駆逐艦の駆動系を改修したり、艦艇に統合電気推進システムを導入しています。また陸軍や海兵隊ではアフガンの基地などで、太陽発電を多用しています。

 つまり米軍では燃料の脱石油・脱中東依存を進めています。
 
 また同様に予算に占める燃料費の削減を進めています。アフガンでは陸路あるいは空路を延々と伝って燃料を補給する必要があります。燃料補給コンボイ24回あたりに1名の死者がでる、といわれています。戦費の削減、人的存在の削減のためにも使用燃料の削減は急務です。

 ですが、自衛隊は燃料削減にそれほど熱心ではありません。昨年の東日本大震災派遣部隊も、あわやというところでガス欠だったのですが、のど元過ぎれば、てなところのようです。

 現実として防衛予算は大きく伸びることはないでしょう。必要な装備を導入するのであれば、燃料費を削る必要があります。例えば年間の燃料費が1700億円であれば、これを2割削減すると340億円浮きます。10式戦車ならば34輛、2年分が買える金額です。

 自衛隊で最大の燃料消費者は海自です。ところが海自は演習などの航路をいじる、あるいは訓練を減らすなどするだけで、根本的な省エネを図っていません。統合電気推進も導入する気はあまりないようです。
 
 で、いまだに護衛艦には30ノット以上の最高速度を求めています。これは米空母部隊に随伴するためなのでしょうが、英国を含めたNATO諸国の最近の水上戦闘艦の最大速度は26〜28ノット程度です。
 
 防衛省や自衛隊は例えば、5年後を目処に燃料消費を1割、10年後を目処に3割減らすといったような、数値目標を設定し、経産省や環境省など関連省庁と協力してそれを実現すべきです。それは防衛省よりも政治の問題化も知れません。同時に政府は国家としての石油依存率を一定パーセンテージに下げるような目標も定めるべきです。

 米軍が合成燃料を導入した背景には軍隊で最小のレベルのマーケットを形成し、これに民間のエアラインや教会を巻き込んで、新しい産業を立ち上げようというスケールの大きい野心があります。
 またこれは軍隊という税金を消費するだけの巨大組織(米国最大の燃料消費団体でもあります)を利用して、新しいビジネスを立ち上げ経済を活性化しようとい意図もあります。

 こういうところは素直に見習っては如何でしょうか。
 日本の役所や政治家にはこのようなスケールの大きな発想が欠けています。



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コメント(18件)

内 容 ニックネーム/日時
官僚の自己防衛本能です。w
予算があまれば翌年度は削減される。大失態で左遷間違いなし。w
反対に予算を増やし、仕事を増やして権益を増せばお手柄。また、天下り先を増やすために公益法人などを作るのもお手柄。
単年度国家予算の害毒が日本のありとあらゆるところに噴出している今日この頃。燃料の節約なんて出世に関係ないことをやる奇特な官僚はおりませんぜ旦那。w
POPPO
2012/05/05 22:47
アメリカが石炭産出国だから出来ること。
K
2012/05/06 07:19
>単年度国家予算
アメリカはじめ、世界の国の多くが単年度予算です。
>アメリカが石炭産出国だから出来ること
米軍の代用燃料のメインのソースは石炭ではなく、バイオや天然ガス。
通りすがり
2012/05/06 15:25
統合電気推進とやらが何時の間に導入コストが引き合うようになったんでしょうね?

現在あれを入れるのは、とてもじゃないがコストも信頼性も引き合わないでしょう。 
海自は電気推進系統は補充艦艇を中心に試している訳で、実用戦闘艦に投入しているのは、エンジンプラントメーカーを持つ一部の国であり。極めて少数派。

機関系は別に、要求性能に信頼性とコストが追いついてからで上等。

一部の取り組みのみで自衛隊が熱心ではないと決め付けるの不見識ですね。
エンリステッド
2012/05/06 18:57
>米軍の代用燃料のメインのソースは石炭ではなく、バイオや天然ガス。

同じ事、穀物大生産国で天然ガス生産国だから出来ること。
全て輸入の日本では、安全保障リスクの低減にならない。単に高コストで手間が増えるだけ。
K
2012/05/06 19:29
マグロ船でドッグ入りしたときの話です。船底に何やらパッチみたいなのが何個か付いていました。記憶があやふやなので、よく分かりませんが海水と船体の摩擦による電気腐食を防ぐため亜鉛のパッチを付けているようでした。
逆転の発想でそこから電気を取り出せないものでしょうかね。ある駅では人の踏圧で発電をしているみたいですし。
元船乗り
2012/05/06 19:56
燃料費削減はとても重要と思います。燃焼効率が3割よくなれば、燃料費が3割減るだけではありません。タンクの小型化分だけ船体も小さく=安くなる。さらに、備蓄燃料の実質3割増、補給艦の数の実質3割=1〜2隻増に相当するなど、有事の機動力の大幅な向上にもつながります。

私の知る限り、燃料節約の方法はいくつかあり、海自も一部は実践しています。

1:艦尾にフラップをつけて、船体長を実質的に長くする。英軍でも実施している、最近の標準的な工法であり、海自艦でも採用されています。ただ、英軍のように、既存艦にも改造適用しているかは確認しておりません。

2:巡航エンジンのディーゼル化。どんなフリゲートも、航海の9割近くを占める巡航速度は14-18kt。最高速度よりも巡航時の燃費向上が重要で、そこにディーゼルを使うのは、当然の潮流です。COGAGではなく、CODAG or CODOG or CODLAG 推進。ヨーロッパの海軍はほぼ全てこの主機構成。NZ海軍のフリゲートもディーゼルの出力を強化して、燃費の改善に取り組んでおります。海自は不熱心で、COGAGばかりです。まあ理由はあるようですが、国産ディーゼルの技術的な問題であれば、きちんと投資をすれば大抵解決します。(WR-21のような燃費向上重視のガスタービンは、価格が高いようで、まだ技術的に安定していないようで、主流になれていません)

#すみません、続きます。
ドナルド
2012/05/06 22:33
#800字制限にひっかかってしまいました。つづきです。

3:全電気推進。ガスタービンであっても、出力の高いときは燃費は悪くないので、全電気推進にすれば効率は改善できます。ただこれは新しい技術であり、現在の海自が採用していないのは、無理からぬことと思います。FREMMフリゲートもCODOGですし。ただし、将来には期待したいですね。

バイオマス燃料は、所詮輸入であり、どなたかのコメントの通り、かなりの原油/ガスを消費して生産しているため、日本ではあまり役に立たないかと思います。という訳で、短期的には「1」を全艦に適用、「2」を広く採用しつつ、「3」を順次取り入れるようなことはできないでしょうか?

燃料は戦略的物資なので、有事になればその価格はますます高くなります。有事を考えれば、燃費改善はいいコト尽くめかと。。

#長文済みません。
ドナルド
2012/05/06 22:35
その昔日本海軍が石油の最大消費者で、石油禁輸の恫喝に耐えられず開戦に踏み切ったことを思い出させますね。
一方で日本は昔から零戦に代表されるように燃費のいいものを作るのはお家芸だったのですが、組織全体ではきちんとした燃料消費の予測や管理などもできていなかったというのもこれまた昔と同じですね。
SNK22
2012/05/07 06:36
30ノット超を求めるのは主に対潜戦上の要求です。東アジアの環境とDDの任務からしてこの部分が緩和されることは近い未来にはないでしょうね。
はり
2012/05/07 22:33
>統合電気推進

これって燃料消費の改善に繋がるんでしょうか?エンジンとスクリューの間に発電機が入る以上、エネルギー効率は間違いなく落ちるはずなんですけど、その辺のシミュレーションとかを清谷先生には紹介して貰いたいんですけどね…
機関や船型の設計能力の向上も関わってくるので、建造時期の違う船の燃費を比べても参考にならないから比較の仕方がよくわからないんですよね。
K
2012/05/07 23:17
あれ、そういえば合成燃料(FTD)って製造コストで現時点で軽油と戦えましたっけ?
アメリカは天然ガスの産出国だから天然ガス由来のGTLがコストで戦えるのかもしれないですけど(それにしたって具体的な試算が欲しいですが)、日本や欧州では天然ガス価格がここ数年上昇傾向で、現在はアメリカの3倍くらいになってますよね。だとすると、今現在導入を行おうとしないのはコストの面から当然という話になるのでは?

>ドナルドさん
>バイオマス燃料は、所詮輸入であり、どなたかのコメントの通り、かなりの原油/ガスを消費して生産しているため、日本ではあまり役に立たないかと思います

っていうか、それ以前にバイオマスやFTDを使ったエンジンってのがまだ研究開発段階ですし。いちお、日本もエネルギー戦略を2006年に作って税金を投入してトヨタやらいすずやら昭和シェルやらがエンジンと燃料生成技術の開発をやってます。けど、それでも目標は「2030年に運輸部門での石油への燃料依存度を80%に下げる」ですんで、そこまで夢のような技術じゃないですよね。あったほうが絶対にいいものですけど。
なんつーか、今現在防衛賞が進めてる軍用車両のハイブリッド化のほうが希望が持てませんかね?
K
2012/05/08 00:17
ドナルドさん
海自がCOGAGばかりなのは、ディーゼルのデメリットを嫌ってるからですよ。
騒音と始動性の良さは代え難いでしょう。
ガス血糖
2012/05/14 06:04
で、艦隊補給艦までタービンにして燃料費の不足で訓練が不足していると。
米軍だってすでにタービン一辺倒から脱却しつつあるのにね。
N
2012/05/14 12:36
ガス血糖さん

おっしゃるようにガスタービンは始動性が良いのが特徴ですね。ただ、CODAGであっても、いざとなれば高速用ガスタービンで緊急始動をかければ良いので、「ガスタービンが混ざった主機構成」である限り、始動性の問題はないと言うことになります。

問題は騒音ですね。イギリスはこの問題を解決するために、23型フリゲートでディーゼルエレクトリック推進を導入して、CODLAGにしました。ディーゼルを推進軸と直結する必要がないため、ラフトに載せるなどして大幅な騒音軽減を実現しています(少なくとも英軍の主張では)。その代わり、システムがやや複雑になるため、価格が高いのでしょう。他の国々でも、必ずといっていいほど開発時に候補に登るのですが、最終的には採用されていません。イギリスほど対潜戦を重視していないからではないかと、推定しています。

COGAGはこの点、(単一機種にすれば)構成がシンプルで始動性、静粛性にすぐれ、明らかにメリットがあります。ただ、それは燃費を犠牲にしたものである、ということです。

昨今の原油価格の上昇は、中国、インド、南米諸国などの台頭によるますますの石油消費の伸張を考えれば、長期的には戻し難いトレンドと思います。今回の原発問題も、原油/LNG価格の上昇につながります。となると、燃費向上の優先順位が上がるのではないか、と考えます。その場合には、CODLAGが有望です。ラフト構造の採用など、静粛性に優れたディーゼルエンジンが必要になりますが、しかるべく投資すれば、間違いなく開発できます。日本は潜水艦を建造しているのですから。
ドナルド
2012/05/14 20:35
#連投済みません。

そう言えば、海自艦にトランサムフラップ、どんどんつけないのでしょうか?調べて見ると、艦型、艦種にもよるのでしょうが、16%(アメリカ沿岸警備隊のカッター)や13%(イギリスの23型フリゲート)の燃費向上といった数字がすぐに出てきます(少なくとも前者は、まさに重要な巡航速度における燃費向上率です)。私が勝手に設定した「3割」という目標(笑)のうち、すでに半分がこれで実現するのですが。

「改造費用は2年で元が取れる」との主張や、騒音軽減にもつながる、最高速度も上がる、という記述も出てきます。いいことづくめで、夢があると思うのですけどね。。15%の改善=0.85倍の燃料消費。5隻のAOEが5.9隻相当に増えたのと同じ効果ですよ!

#私は造船業界の関係者ではありませんのであしからず。(笑)
ドナルド
2012/05/14 20:39
Nさん
ディーゼルは、苦手な低負荷(黒煙いっぱい)での連続運転から、いきなり高負荷運転に持って行くと危ないし、タービンより五月蝿いからな。

ドナルドさん
ダッシュ力で四機と二機では違うかと。
それから、海外領を抱える英軍が海自より対潜に注力できるとは思いません。
ガス血糖
2012/05/16 07:55
だから、各国タービン、ディーゼルを混合して採用する統合電気推進が注目されています。

>ダッシュ力で四機と二機では違うかと。
そこまでして(特に費用と燃料の補給)奪取力が必要とは思いませんが。
N
2012/05/16 11:16

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