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zoom RSS 技本のマイクロミサイルに勝算はありや?

<<   作成日時 : 2012/03/01 21:39   >>

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 先日、某議員先生の秘書から聞いたのです。
 彼らが最近ワシントンDCに言った際に保守派のシンクタンクやら、国防総省関係者から「君たち、なんでF-35なんか選んだの?ユーロファイターを買えばよかったのに」と、異口同音にいわれたそうです。

 さて、本題です。

 2月23日付の「朝雲新聞」では技本が、「マイクロミサイルシステムの研究」として、全長50センチほどの小型の携行型地対地ミサイルを来年度から行うと報道しています。世界最小が売り物だそうです。

 実はこの手のミサイルは既に各国で多数開発されており、ぼくも過去何度か関連する記事を書いています。

 近年なぜこのような小型ミサイルが人気かというと、ヘルファイアなどの対戦車ミサイルなどに比べて調達単価が安いこと、弾頭が小さいために副次被害が少ないこと、ヘリなどに搭載する場合、より多くの数が搭載でき、またペイロードの小さいUAVなどにも搭載できること、などの利点があるからです。

 最近ではこれらのミサイルはリモート・ウェポン・ステーションや装甲車両なども搭載する方向で提案や研究がされています。
 
 これらは大抵既存の70ミリクラスのロケット弾をベースに開発されています。それはコストを下げるためです。例外はタレスのLMM(Lightweight Multirole Missile、軽量汎用ミサイル)ぐらいで、これは同社の対空ミサイル、スター・ストリークをベースに開発されています。またシーカーなどにも既存のミサイルのものが流用されています。これまたコストの低減のためです。


 技本のマイクロミサイルはこれらとコンセプトが大きく異なるようです。毎度ケチをつけるようで何ですが、開発コンセプトが怪しい気がします。
 
 まず記事を読む限り、低コストの実現は無理のように思えます。
 いくら民生品を利用しようと全くの新規開発ですからその分コストは上がります。なんで他国のように既存のロケットやミサイルを流用しないのでしょうか。
 たぶん、外国で同じようなものがあれば輸入しろとなるので、何か他国と違うものを開発するという、いつもの悪癖でしょう。世界中で必要なく、我が国だけで必要なほど我が国の環境は異なっているのでしょうか。

 記事を見るかぎり普通科が運用するように思えますが、普通科が大量に採用することはありません。予算が無いからです。

 需要が無いものを開発するのはナンセンスです。
 図を見ると軽装甲機動車にも搭載するようですが、下車戦闘では全員が下車しますから、軽装甲機動車が随伴してこのミサイルで火力支援を行うことは不可能です。

 普通科に関して言えば、それ以前に火器ならば携行型グレードランチャーや自走迫撃砲などが必要ですし、それ以前に無線機や防弾ベストも必要です。

 
 そもそも量産が不可能です。この手のミサイルが安くなる理由の一つは大量生産にあります。他国ではヘリやUAVなど多様なプラットフォームに搭載するために量産が可能なります。

  ところが、我が国では空自は対地攻撃にあまり興味なしだし、攻撃ヘリはアパッチもOH-1も大幅に調達が削減され、UAVやRWSの導入すら殆ど進んでいない、とても先進国の軍隊とはいえない状態です。
 マイクロミサイルを大量に装備するような環境ではありません。


 我が国でこの種のミサイルを開発するのであれば陸海空のヘリや戦闘機などの航空部隊、地上部隊、UAVなどでどの程度の使用が見込まれるか、ということをリサーチする必要があります。多分、技本はそれをしていないでしょう。

 この手のミサイルの最大の売りは低コストによる高い調達性です。つまり、値段も性能の内です。そのへんが、まず理解されていないように思えます。


 毎度のことながら、開発と調達の予算は全く別という考えが強く防衛省を支配しています。ですから技本は量産のコストをあまり意識せずに、研究開発を行う傾向があります。来年度予算で蹴られた、火力戦闘車もその一例です。これは早急に是正する必要があります。


 諸外国が既に先行開発し、実用化しているわけですから、陸幕が研究本部なり、開発実験団なりで輸入品を評価し、それよりも高性能あるいは安価なものが開発できる見込みがあって初めて開発を行うべきです。

 幕の人たちに言わせれば、技本は我々が要求するものではなく、自分たちの開発したいもの、自分たちの予算分配上、必要なものを開発するという悪癖があります。

 リサーチと、トライアルに金を掛けないから、必要性も実用性も怪しい装備を、中途半端な開発費をかけて開発し、世間の何倍も高いコストで調達するわけです。


 現状を考えれば、このマイクロミサイルの構想は絵に書いた餅にすぎません。
 こんなものをつくるならば、無線機を一つでも揃えた方が、よほど普通科の戦力強化になります。



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コメント(19件)

内 容 ニックネーム/日時
マイクロミサイルというと我々の年代には「サイボーグ009」に登場する004が両足に仕込んでいる兵器を思い出すのではないでしょうか。
それはともかく、陸上自衛隊のイベントでスティンガーミサイルの発射機と本体を展示し、発射機をかついで記念撮影をしたりするのがあります。今回のミサイルはスティンガーと比べて性能はどの程度のものなんでしょうかね。
SNK22
2012/03/02 06:06
アメリカ人が台風を薦めた?
スパホの間違いじゃね?
あああ
2012/03/02 12:26
自衛隊のミサイルも、口径は統一されているし、かなり共通化されていると聞くが。
K
2012/03/02 12:52
だいたい、軍事研究開発費が韓国より少ないのは問題あり。
もっと色々試作研究すべき。半導体も同じだったと聞く。
また負けるぞ。
K
2012/03/02 13:10
>保守派のシンクタンクやら、国防省関係者から国防省関係者から
>「君たち、なんでF-35なんかえらんだの?ユーロファイターを買えばよかったのに」
頭大丈夫ですかその「関係者」?
いやそもそもそんな「関係者」いるんですかね?
清谷氏に限らずこういう自傷「関係者」とか
「通りすがりの友人」とか
「元関係企業に勤めていた人」とか
の話は胡散臭いんですが
はぁ?
2012/03/02 20:44
そうであれば、どうぞ新聞も雑誌も読まず、当局の公式だけ信じればいいでしょう。何を信じるのはあなたの勝手です。

別にぼくはあなたにブログを読んでくれとお願いした覚えもありません。

>頭大丈夫ですかその「関係者」?
ご自分の信じること違う話は全て、謀略、捏造と断定するもどうかと思いますが、それはあなたの勝手ですから、ご自由にどうぞ。
キヨタニ
2012/03/02 22:11
来年度予算といえば、陸の「軽量戦闘車両システム」でしたか、新規開発での要求があったかと思いますが、あれはどうなったのでしょうか(以前「軍事研究」誌上で拝見したあと、同編集部に「将来装輪戦闘車両」との関連性を確認させていただくと全くの別物、との返答をいただいたものですから。イメージ図からして、片や六輪、片や八輪。搭載火砲も別のようでしたし)? 何やら新技術の塊のような感じでしたが、蓋を開ければ他所の国で既に実用化されていました、なんてモノの寄せ集めでなければ良いと思う次第です。
カッコ
2012/03/02 22:55
清谷先生、アメリカなら国防省ではなくて
国防総省ではないのですか?
TK
2012/03/03 00:57
清谷先生、英国との榴弾砲共同開発についての記事が産経に載っていました。これは良い傾向ですね。
neko
2012/03/03 08:14
>国防省
修正しました。ご指摘ありがとうございます。

「軽量戦闘車両システム」は島嶼防衛用の装備で、ぼくは機動戦闘車よりも有用だと思います。ただ、搭載火器や仕様は吟味する必要があるでしょう。

問題は陸自に明確な運用構想がないことだと思います。

>英国との榴弾砲共同開発
日本の装填技術を供与らしいですね。ただ、AS90も削減対象になっていますから、それほどの量が確保できないでしょう。恐らくはまずは、アドバルーンを挙げてみたのでしょう。むしろその記事で紹介されている艦艇用エンジンなどの方が本命かと。
また島嶼防衛用の榴弾砲は、155ミリにしろ105ミリにしろ、英国製が有力な候補となるでしょう。
キヨタニ
2012/03/03 11:33
ご返答ありがとうございます。ところで私もさっそく産経新聞のサイトにて、件のニュースを見てみました。ま、F-X選定時の英国の熱意云々は置くとして(笑)、今時「榴弾砲は「戦闘」だの「殺傷」だのイメージさせて中国や韓国の反発を買うだろうから救助用装備を優先すべきだ」なんて言っている人が与党内にもいるんですねぇ。「とにかく反対!」と叫んでいる人よりは少しはマシと言えばマシなのでしょうけども。
それはともかく、今月就役する新「あきづき」もRR製エンジンを搭載していますし、ここ最近の海自に関しては、かつての対米重視路線から対欧(特に英国)重視に移ったような印象を受けるのですが。その辺りはどうなのでしょうか?
カッコ
2012/03/03 12:38
榴弾砲の炸薬は土嚢袋状に入れられていますが雷管らしきものは見当たりません。どうやって発火させいいるんですかね。
たれか教えて
2012/03/03 19:24
朝雲は知りませんが、技本の「中長期技術見積り」や「研究開発の現状と軍事技術の方向性」を読んでみました。
マイクロミサイルって、個人携行用ATMである01式軽MATの後継に当たるものを、将来に渡って研究開発していきますよ的な内容だったのですが、なぜここで全く違うコンセプトの航空機搭載用70mmハイドラロケット弾を流用したAPKWSが比較に引き出されるのでしょうか?

技本においても、マイクロミサイルとは別に「弾薬技術」として砲弾、ロケット弾の知能化、誘導化、終末制御化について研究すると書いてありますが、読んでないのですか?
ガンヘッド
2012/03/03 21:05
>ガンヘッド氏殿
>>01式軽MATの後継
 私はこのマイクロミサイル(MM)は01MATの後継ではなく、誘導化した「多目的ガン」であろうと考えています。メリットは射手の技量に依存しないことでしょう。勿論、APKWSと異なるコンセプトの装備であることに同意します。
※MM3行クッキング
材料1:携SAM
材料2:光学シーカー、誘導装置、新型弾頭
1 ロケットモーターをチューブごと三等分します
2 携SAMのシーカーを光学シーカーに交換します
3 短くしたロケットモーターに、弾頭、誘導装置と先程のシーカーを付け、チューブに入れてできあがり。
簡単な質問の名無し
2012/03/03 23:26
いまさらですが、日本政府の公定訳はアメリカ合衆国国防省ですよ・・・。
つまりどっちでもOKということでしょう!
禿鷲
2012/03/05 10:19
>ガンヘッド氏殿
 確認したところ、携SAMとMMの直径は大きく違ってました。携SAM(≒FIM-92)の直径は2.75in≒70mm、「朝雲」によるとMMの直径は40mmなので、切っただけでは携SAMはMMにはなりません。灰汁(白煙)も出ますので、別の材料を使う必要があるでしょう。
 お詫びとして新情報を。40mmというサイズは丁度トイレットペーパーの芯とほぼ同じでした。ロールの幅はカタログでは、114mmでしたので、約4.4個分の芯を繋げばMMの弾体のサイズを模擬出来ます。この径では、やはり威力は限られたものとならざるを得ないと思われます。
簡単な質問の名無し
2012/03/06 00:15
「弾道が小さいため副次被害が少ない」って、恐らく「弾頭が小さいため〜」の間違いですね
アルバトロス
2012/03/08 23:33
軽量戦闘車両システムは自衛隊からの要求ではなく技本からの提案なので、今現在の時点で陸自に明確な運用構想なんぞ無くても仕方ない気が。技術的に物になることが分かってからじゃないですかね。
ccc
2012/03/09 17:06
平成19年の中長期技術見積りの要素技術研究のなかで見ると、マイクロミサイルの技術課題達成は5〜15年後になってますね。で、題名が「マイクロミサイルシステムの研究」ですか。うーん、これって現時点で何から部品を流用するとか決める物なのでしょうか?
ccc
2012/03/09 17:11

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