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zoom RSS FX、F-35の選択は正しかったのか

<<   作成日時 : 2012/02/23 16:58   >>

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 どうも世の中では空自のFX(次期戦闘機)がF-35に決定したことで、F-35採用の全てを正当化するような雰囲気があります。

 例えば、試乗しないで調達することは当然だ、などというものです。
 常識的に考えれば、試乗して飛行テストをするのは航空機の選定ではごく当たり前です。それをせずに、メーカーの言い分を全部鵜呑みにするのは危険です。
 世界的に見てこのような選定は極めて異常です。
 3000円ぐらいのダイエットサプリを通販で買うような感覚で、数千億円の戦闘機を調達されてはかないません。

 また普段防衛省は国産兵器を調達するときに、「我が国固有の環境に合致した装備が必要」といっていますが、ならば何故、実際に候補機を我が国にもってきてテストをしないのでしょうか。
 輸入戦闘機に限っては我が国固有の環境に適合していなくともOKなのでしょうか。


 F-35は単座だから試乗できないというのは詭弁です。シミュレーターと実機で1年もかからずに、実機はある程度操縦できるそうです。テストパイロットならば尚更です。これはF-35参加メーカーの人間が言っていることです。

 百歩譲って、F-35は完成していないし、試乗が困難であるというのであれば、他の二機種だけでもフライトテストを行うべきです。そしてF-35に関しては性能に関して、実際と異なった場合、ペナルティを課すなどの措置をとる、あるいは性能を割引いて考慮すればよかったわけです。
 
 試乗テストをしないのが、あたりまえだというのであれば、今後F-35を候補とする国はすべての候補機を、書類審査だけで選考して選定することになります。果たしてそのような国があり得るでしょうか。
  

 飛行テストをする時間がなかったのだ、それをやっていたら間に合わなかったという主張もありますが、F-4EJの寿命がつきかけていることは百も承知で、なんとかF-35が候補になるなで選定を引き伸ばしていきたこと自体に問題があります。
 ならば少なくともF-22がダメになった段階でF-35抜きでFX選定を即座に実施すべきでした。そんなことも空自の調達責任者がわからなわけは無いと思いますが。

 空自はF-35を本命視していなかったという意見もありますが、それは過度に空自に好意的です。
 RfPの提出は数年前に行うべきだったのです。それをいままで引き伸ばし、戦闘機生産基盤まで放り投げてまで選定開始を遅らせたのはF-35を本命視していた以外にどのような理由があるでしょう。


 しかも産業への貢献が組立生産でOKならば、事実上戦闘機生産基盤を諦めたことになります。FX選定前にどの程度の国内産業基盤の維持を行うかも確定されず、産業基盤維持については曖昧なままでした。
 蓋をあけたら、組み立て生産でOKです。
 ならば全て輸入としいうオプションも検討すべきでしたが、それはありませんでした。

 はじめから産業基盤を潰すならばならば、そのことことをもっと前に関連企業に伝えていおくべきでした。

 国内組立が4割が可能という数字だけが独り歩きしていますが、4割のコンポーネントが国内で生産されるわけではありません。作業内容は組み立てが中心で、その内容は殆ど白紙の状態です。
 イタリアの場合、組立工場は米軍基地内に作られる予定です。そこでフィンメカニカの社員たちも作業しますが、重要コンポーネントを扱うところには、彼らは立ち入れず、アメリカが担当します。

 我が国でも同様になる可能性が高いでしょう。

 また、米軍の調達数も大きく減りそうですから、調達単価、ライフ・サイクル・コストは大きく値上がりする可能性があります。防衛省にロッキードマーチンが出した数字はフィックスされたものはないし、また米政府が保証した数字でもありません。これが大幅に変わる可能性があります。
 その数字を根拠に選定をすること自体に問題があります。

 即ち、値段も維持費もわからないのに盲判を押してしまったわけです。


 因みに英国が調達する最初の3機の調達単価は概ね160億円だそうです。しかも彼らは決して少ない開発費も負担しています。
 どうして、開発費もリスクも負担しない我が国が、約半額のバーゲンプライスで、しかも国内組み立ておまけ付きという厚遇をうけられるのでしょか。
 そのような口約束を信じるのは極めてナイーブです。

 またF-35を使用する際、国産ミサイルは使わない方針らしいですが、とならば兵装の兵站は二系列必要です。その分運用コストもあがりますが、FX選定はこのコストにはふられていないようです。

 更に空中給油方式はどのようにコストを計算したのか明らかにされていません。ユーロファイター、スーパーホーネットは空中給油システムの変更が必要です。

 最も安いのはKC-767のブームにアダプターを付けることです。これならば数千万円で可能です。これかば価格は誤差範囲に収まります。ですが、プローブアンドドローグ 方式のポッドを搭載し、機体に本格的な改修をおこなばかなりのコストがかかります。

 そもそも論で言えば、空自の空中給油機は現在の4機のKC-767で十分でしょうか。大方の意見は更に多くの機体が必要です。ならば新造する給油機にはイタリアと同様に二種類の給油システムを搭載すれば宜しいという考えもできなくはありません。

 間接的なエビデンスを見ている限り、FX選定は最初にF-35ありきですし、また選定方式が極めて恣意的、かつ異常です。



WEBRONZA+に『防衛費における「初度費」はなぜ大切か(上)』
を寄稿しました。
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012021400007.html
同じく『防衛費における「初度費」はなぜ大切か(下)』
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012021700018.html
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コメント(11件)

内 容 ニックネーム/日時
清谷先生、スーパーホーネンって何ですか?
スーパーホーネットならありますけれど。
TK
2012/02/23 22:08
F-15FX…現物が存在しない
F-15SE…やっぱり現物が存在しない
ラファール…毎度毎度の当て馬扱いに嫌気が差したので最初からダッソーのやる気がなかった
タイフーントラ3B…どうして現物が存在しないんだ? 日本からの採用を受けて初めてカエサルレーダーの開発に乗り出せるという泥縄ぶり
スパホ…大型化改修前提……つまり無い……現物がどこにも無いんだ……
F-35…初期作戦能力獲得への道程は高く険しい……

F-Xの候補に挙げられた機体を見てみるに本当に問題の無い機体が無かったのなー
ま、こういう事ですな
2012/02/24 00:10
しかしキヨタニ先生のF-X推奨機の中では一番本命に近付いた例だったのにねF/A-18E/Fは。
米海軍機がここまで有力候補になったのはスーパータイガー以来の快挙だったというのに。

ま、こういう事ですな
2012/02/24 00:18
>スーパーホーネン
スーパーホーネットです。訂正しました。
ご指摘ありがとうございました。
キヨタニ
2012/02/24 10:59
ま、誰とは言いませんけども某航空評論家の方なんぞ、今月発売の某軍事系月刊誌上にて「試乗したくても複座機がないから出来なかった」なんて強調なさっていましたもんねぇ。個人的には好きな方なので、あまり悪くは言いたくはないのですが、あまりにもF-35をヨイショしまくっていますので、つい、あれこれと勘繰ってしまいます。
それはそうと、デザイン的にはタイフーンが一番、良かったんですけどねぇ。そら、真っ正面から見ると、お世辞にもスマートとは言えませんけど。
カッコ
2012/02/25 06:37
やはりF35ありきの選定だったようですが、そうならば国民に説得し倒して欲しいものですよね。詭弁を付くどころか、政府からは淡白な説明しかなくて…。
TooShy
2012/02/25 17:12
ちょっと疑問に思ったことがあります。戦闘機の試乗によって得られる知見は何なのでしょうか?という点についてです。

他のジャーナリストの方々についてもですが、今回のF-Xについて、「試乗の有無」を問題にしていても、それがどのような意味を持つのかの解説が無いため、どのように問題なのかがわかりません。できればこの部分について踏み込んだ解説をお願いします。
KEI
2012/02/25 22:56
失礼します。
かって某企業で防衛事業に携わっていました。
空自の方は、とにかく最高の製品が欲しいと言う気持ちが強く、戦略的見地ではあまりないようです。そもそも着攻上陸阻止が目的ですから、ステルスよりも、対艦攻撃能力や、近接格闘戦が重要です。
戦闘機の試乗についてですが、職業上の流れで、F-35のデモシミュレーターに乗りましたが、車の試乗と同様に、スティックだけで宙返りすることができる事や、15インチのディスプレイ操作など(F-35はタッチパネル)、機体を操縦しないと得られない作業タスク感覚がありますので、試乗は必要です。飛ぶだけならカタログ購入でもなんとかなりますが、新しい機能は実際の確認が不可欠です。
shima
2012/02/29 16:17
兵器の開発が大切戦闘機はの性能を無意味にする武器だ、、、レーザー銃だこれなら風向きも関係ないこれを作ったほうが勝ちだ、セスナでいいんだね。
うつ
2012/02/29 17:13
>shimaさん

はい。そういった操作感覚というのは確かに試乗しないと得られないと思います。ただ、それがどのように戦闘機の選定に影響するのかがよく分かりません。そもそも、それらの操縦感覚は戦闘機の選定の際に評価の基準に入るのでしょうか?過去の日本や各国でのF-X選定において、試乗から得られた知見がどのようなもので、それはどのように判断に生かされたか知りたい、というのが質問の主旨です。
KEI
2012/02/29 21:12
シミュレータで十分でしょ。

2012/02/29 23:44

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