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zoom RSS 日本政府、US-2飛行艇のインド海軍向け輸出を承認?

<<   作成日時 : 2011/11/29 21:25   >>

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 11月23日付のJane's Defence Weekly に「Japan may sell US-2 Amphibian to India」
 という記事が載っています。

 この記事によるとインド海軍は救難用飛行艇を欲しており、日本政府はインド海軍のRfP(提案依頼書)を受けることを許可したと報じています。同誌によると他に、ベリエフBe-200、ボンバルディアのCL-415などが候補に上がっているようです。


 現段階で民間や非軍事の用途であればともかく、軍用機として政府がUS-2の輸出を決定したかどうかは疑う必要があるでしょう。聞くところによると、あれは非武装だし、救難用だから「武器輸出3原則等」の適用外だからOKという話もあります、ならばチヌークの部品の輸出もOKなはずですが、こちらはできません。
 また自衛隊機の民間転用を防衛省が打ち出したのは、民間型は自衛隊機とは別の機体だから、「軍用機」ではない、という理屈が成り立つからだったと思いますが。

 実際のところ、民間用であればそれなりに改装が必要ですが、軍用ならばその必要がないので余計なコストをかけずに輸出できます。商売としては民間型を開発して輸出するよりも遥かに現実的です。

 無論「武器輸出3原則等」は武器の輸出を禁止しているものでなく、「慎む」としているだけなので、仮に「軍用機」扱いでも政府の判断で例外扱いはできるでしょう。野田首相は武器禁輸の緩和に積極的ですから可能性は大いにありうるでしょう。
 
 確認したとろろ、この件に関して現段階では防衛省はなんら公式な発表をおこなっておりません。

 実はフランス向けにも消防用飛行艇としての話も進んではいます。

 問題は新明和のセールス能力です。飛行機を作るとの売るのとは全く違う才能とノウハウが必要とされます。見本市で新明和にUS-2の輸出値段を聞いたら、分かりませんという答えが返ってきた、という話を聞いたことがあります。エンジンやレーダーが官給品であり、これらを民生機用として替えたり、あるいは消火用機としての開発費用が不明などの理由でしょう。 

 本気で飛行機を売りたいならば、業界に精通した優秀なセールスマンを雇うべきです。消火型を開発したいならば、ランチカスタマーをつかまえて、手付金を払ってもらい、それを開発費に当てればいいわけです。そういう知恵をだすのもセールスマンの手腕です。飛行機のセールス担当は単に機体を売り込むだけではなく、開発、企画、生産段階にまでコミットします。

 ちなみに今年、フランス領のレユニオン島で山火事が起こった際に保安局の所有するの多数派である、CL-415
は派遣されず、リージョナルジェットベースのダッシュ8二機のみが派遣されました。
  これらの機体はマルセイユ空港(ユーロコプターの工場が隣に所在しています)を基地にしているのですが、マルセイユからレユニオンまでCL-415だと25時間が必要で、途中乗員の交代と給油で6回のトランジットが必要で、除霜機能を有しておらず、高高度飛行が不可能で夜間飛行ようにも設計されていない(11月1ル・ポワン紙)、故に派遣が見送られたそうです。

 フランスは確か12機以上のCL-415を保有しているはずです。、その後継として機数を減らすのであればUS-2という目はあるでしょう。ただし、値段にもよります。マニアはこの予算という要素を無視しがちですが、どんなにいいものでは値段の折り合いがつかないと売れません。いくら高くてもモノが売れれば商人は苦労しません。


 それから生産レートも問題です。現在二年に一機のペースの生産していますから、毎年1機ならば無理がないでしょう。聞いた話では最大年2機ならばなんとかなるようです。
 ですがが「間違って」毎年3機以上の生産が必要になった場合、ラインの拡張が必要となりますがそのようなリスクのある投資ができるしょうか。一案としては海自向けの納品を待ってもらうといことも考えるべきでしょう。


 さて、ビジネスという面ではインド人との交渉は非常にタフです。非常に長く粘り強い交渉を強要されます。決定が覆されたり、決まりかけた話がまたはじめに戻るというのはよくあることです。そのような交渉ができる人物が果たして日本にいるでしょうか。お雇い外人のセールスマンを雇ったほうが無難です。
  あたしゃかつてインド人との取引で懲りたので、個人的にはもうインド人とのビジネスは二度とやりたくありません。


 もう一つの問題はオフセットです。インドはかなりの金額相当のオフセット、特に技術移転に関する直接オフセットを要求します。ロシアはヘリコプターを輸出したらその整備工場を要求されました。近年インドのオフセットの要求があまりにも横暴だというので、オフセットを減らすように輸出国が共闘しています。

 それとまたインド洋で張り合っている中国が「日本の兵器輸出に断固抗議する!!」とか言い出すでしょう。となると中国様大事の我が国のセンセイたちやメディアが足を引っ張る可能性も出てきます。

  となれば、またぞろ「死の商人」とかいう手垢のついた言葉を持ち出すことになるでしょう。
  思うのですが「死の商人」がいけないからばその「死の商人」から商品を買う、「死の買人」はいいんでしょうか。我が国は世界有数の「死の買人」です。

  まあ、売春はイカンが、買春はOKというのと同じ理屈がまかり通っております。
  どこの国とは申しませんが、紛争国の両方に武器を売りつけるような場合をのぞいて、軍事ビジネスを死の商人呼ばわりするような幼稚なことはそろそろやめては如何でしょうか。
  ああ、こういう例えをすると防衛省では局長が解任されるようですね。

 
 とまあ、あれこれ課題は山積しております。ですが挑戦すべきだと思います。
 売るならば、メーカーも政府も本腰をいれるべきです。初めからリスクは嫌だと逃げ腰ならば成功する商談も成功しません。
 

日経ビジネスオンラインに以下の記事を寄稿しました
防衛産業の浮沈のカギ握るFX選定(前編)
予算削減の影響で中小企業の“退場”が相次ぐ

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20111125/224283/?top_updt&rt=nocnt
防衛産業の浮沈のカギ握る次期主力戦闘機選定(後編)
F-35を選べば戦闘機の国産政策は貫けない
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20111125/224298/




WEBRONZA+で以下の記事を寄稿しております。

FXはユーロファイターを採用すべきだ
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2011110100003.html
FX購入の代わりに、コンポーネントの輸出を
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2011110200003.html
FXのユーロファイター採用は、米国に対する大きなカードになる
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2011111000009.html

また同じく、朝日新聞の谷田邦一編集委員が以下の記事を寄稿しております。
最終局面のFX選定――透明性の確保は?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2011110100004.html



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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
中国嫌いの人々は、中国をやめてインドにビジネス相手を切り替え・・、なんていいますが、そんなに世の中甘くないようですね。

>それとまたインド洋で張り合っている中国が「日本の兵器輸出に断固抗議する!!」とか言い出すでしょう。となると中国様大事の我が国のセンセイたちやメディアが足を引っ張る可能性も出てきます。

 どうして、中国様に「一体、どの口で」とか「お前がいうな」と言い返すマスコミ、センセイがいないんでしょうね?あと、何度もしつこいようですが、日本の大手メディアが大好きな北欧、ドイツは世界有数の武器輸出大国なんですが、一体、彼らはその辺、どう考えているのか?未だかつて、説得力のある話を聞いたことがありません。
レッド・バロン
2011/11/30 10:05
> インド人との交渉は非常にタフ

たしかにMRCAの選定とかの記事を航空雑誌で見るだけでもかなり粘り腰だなぁ、という印象を受けます。決まりかけた話をご破算にしたり、とかですね。日本政府のF-X選定でもこのくらいやってほしいものですが。

まぁ、新明和や日本企業のセールス能力はともかく、現在政府が禁じている兵器類の海外輸出を規制緩和しないことには何も始まらないと思いますね。日本の企業だって馬鹿じゃないから、何らかの方策を考えるでしょう。単純に引きこもるだけになるかもしれませんが、それはそれで選択の結果ですし。
Null_Devices
2011/11/30 16:19
>レッド・バロンさん

中国の官製メディアを見ると、武器輸出3原則の対象外になってる「小型武器」にもケチをつけてきた事がありますからねえ

ネットで調べた限りでは04年で約7000万ドルだそうですが
「小型武器問題」で問題になってる対人地雷でもアサルトライフルでもなく(そもそも前述の武器輸出原則に引っかかるから)、豊和とかミロクのハンティングライフルですが

ひゅうが級や22DDHを「準空母」だとして中国の空母保有を擁護するかのような論調を貼ってますがそれより更に無理筋と言うか道理が引っ込むような強弁ですな

>日本の大手メディアが大好きな北欧、ドイツは世界有数の武器輸出大国

最近、大手メディアがお熱なお隣韓国も最近は武器輸出に力を入れてますねえ
ando
2011/12/02 19:21

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