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zoom RSS 「本命」F-35を擁するロッキード・マーチンの焦り

<<   作成日時 : 2011/11/19 13:15   >>

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 さて、ロッキード・マーチンが我が国でF-35の組み立てのみならず、ステルス機能に関わる部分も製造できるとしています。

ステルス機の生産技術提供へ=F35、日米政府合意条件―ロッキード社長
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111117-00000144-jij-soci

 ロッキード・マーチンのクリストファー・クベシック社長兼最高執行責任者(COO)が17日、都内で時事通信の単独インタビューに応じ、日米両政府が合意すればステルス機の生産技術を日本側に提供する意向を明らかにした。


 またですか、的なはなしです。こんなことをまともに信じる人っているんだろうか、と思うのですが、一般メディアやビジネスメディアの人たちは信じちゃうんですね、これが。

 既に同社は日本向けは調達単価が6500万ドル程度(約50億円)で可能、しかも毎年3機づつ購入という条件です。で、オーストラリアにはこれはエンジンなど抜きの価格と説明し、我が国にはフライ・アウェイの価格と説明しております。開発パートナー諸国が聞いたら怒るような、気前のいいセールストークをしております。

 これはF-35の将来に暗雲がたれこめてきているからでしょう。
 すでに英国は採用を予定していた垂直離着陸型のB型の調達を通常の艦載型のC型に切り替えました。これにより、ただでさえ調達単価がA型やC型よりも高いB型の調達単価は更に上がるでしょう。

 ところがB型の最大のユーザーである米海兵隊もB型の採用をやめ、代わりにスーパーホーネットで置き換えようという方向にかなり振れています。もし海兵隊が採用をやめるとユーザーはイタリアだけになります。その可能性は現在の米政府の状況をみていると、かなりありうる話です。となれば事実上B型の開発は中止でしょう。

 B型がキャンセルになれば総調達数が減り、A型C型の調達単価が上がります。既にカナダ、オランダ、ノルウェーがプロジェクトから脱退が予想されます。どこも、財政的には苦しいですから、これまた十分に有りうる話です。

 最近になって、米政府とロッキード・マーチンは既に候補が6機からユーロファイターと、ラファールの2機に絞りこまれたインドの戦闘機商戦にF-35を売り込んでいます。

 更にはロッキード・マーチンはF-16の更なる発展型の開発をすすめるようです。これはF-35がコケた場合に備えてのことだと推察されます。

 これらを総合すればF-35の将来はかなりクリティカルだと考えてよろしいでしょう。そしてそれはロッキード・マーチンも十二分に意識している。だから冒頭で紹介したような話が出てくるわけです。



 問題は英国の動向です。
 C型の調達単価がかなり上がるならば、調達もキャンセルもありうるでしょう。本来英国は垂直離着陸ができるB型を開発するからF-35の開発に加わったわけです。海軍機としては不利な、単発のF-35を艦載機として採用するメリットはどのくらいあるでしょうか。確かに高いネットワーク機能やステルス機能は先制攻撃に有用でしょう。ですがその利点とコストの上昇を量りにかけて、どの程度までのコストの上昇を許容するかでしょう。
 

 英国は財政の悪化もあり、すでにユーロファイターの調達数をかなり減らしています。F-35のC型を導入するよりもユーロファイターを増産したほうが、自国企業の仕事量の確保になり、またユーロファイターの調達単価の低減が可能となるでしょう。


WEBRONZA+で以下の記事を寄稿しております。

FXはユーロファイターを採用すべきだ
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2011110100003.html
FX購入の代わりに、コンポーネントの輸出を
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2011110200003.html
FXのユーロファイター採用は、米国に対する大きなカードになる
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2011111000009.html

また同じく、朝日新聞の谷田邦一編集委員が以下の記事を寄稿しております。
最終局面のFX選定――透明性の確保は?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2011110100004.html


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日本向け価格は1機50億円 F35でロッキード幹部 http://sankei.jp.msn.com/world/news/110816/amr11081609550003-n1.htm ...続きを見る
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内 容 ニックネーム/日時
とうとう海兵隊もF-35に見切りを付けるようになりましたか。最近のアメリカは、アフガンやイラクでの戦費が響いているのか、軒並み新型装備の開発中止が相次いでいますよね。FCSにEFV・・etc(我が国も余り他人事と高を括ってはいられませんが)。そういえば、2カ月くらい前でしたか。軍研の海外ニュースで、米海兵隊がEFVの代替車両を求めているような話が載っていましたが、どうなったのでしょうね。それと、軍研今月号の陸自から装軌式装甲車が消えるのを危惧する話ですけれど、フランスも装軌式のAMX-10Pを装輪式のVBCIで代替するわけですよね。その辺り、どう思われますか?
カッコ
2011/11/19 16:40
>ステルス機能に関わる部分も製造できるとしています。
 元記事を当たりましたがそのような内容は記されておりませんでした。LM社が提示したのは、「非常に複雑で精度が高」い、「継ぎ目のない精密さ」を得るための生産技術です。これを「ステルス機能」と表記した根拠が理解できません。
>こんなことをまともに信じる人っているんだろうか
 確かに信じる人はかなり「お目出度い」方々でしょう。なにしろ元記事には「日米両政府が合意すれば」との条件付きですから。まさに、FSX改造開発決定後のソースコード提供拒否事案と同じ様相を呈しています。
>開発パートナー諸国が聞いたら
具体的に開発パートナーの各国は日本への売却に対し、どのようなコメントを出しているのでしょうか。そのような具体的な報道が一切ないので、ご教授いただければ幸いです。
簡単な質問の名無し
2011/11/19 19:36
「ステルス機能に関わる部分も製造できる」と推測出来る内容は記載されていました。

> クベシック社長はステルス機の生産技術について、「非常に複雑で精度が高く、機体表面の処理など一つ一つが(従来機とは)違う」と説明。完成時の機体には継ぎ目のない精密さが欠かせず、手作業の工程を減らす高度な技術が必要という。

設計通りのステルス機能を発揮するには高度な製造技術が不可欠と言っているわけですから、技術開示されれば、機体の製造も可能性が出てきますから、そう言っても良いでしょう。

>開発パートナー諸国が聞いたら
当初よりの出資者よりも後からの参加者が条件が良かったら不満が出るのは社会人じゃ無くても常識でしょ?
それに、不満は最初に出資先に言うものです。そこで、自分が不利にならない回答が得られれば黙っているでしょう。
ならば、不満が表明されていないのが、コメントの嘘八百さを表しているのでは無いでしょうか。
ノナメ
2011/11/20 00:01
>ノナメ氏殿
 成程理解しました。「ステルス機能に関わる部分の製造≒レーダー・ブロッカやFSSレドーム等」ではなく、「継ぎ目のない精密な機体表面の製造=ステルス機能」と言うことですね。「平滑な機体表面」は、ステルス機の開発・生産のイロハのイと理解していたことから「ステルス機能に関わる部分」にダイレクトに該当するとは思い至りませんでした。
>当初よりの出資者よりも〜常識でしょ?
 私の文章がおかしいのかな?推敲します。
 「開発パートナーである各国は、LM社がF35を日本に有利とされる条件で売却したいとの意向を示している事に対し、どのようなコメントをLM社あるいは米国、米国防省等に表明しているのでしょうか。そのような具体的な報道が一切ないので、ご教授いただければ幸いです。」とお願いをしております。
>それに、不満は最初に出資先に言うものです。
 文章と意図が理解できません。
 不満は最初に出資先に言う→自分が不利にならない回答が得られれば黙っている→不満が表明されていない(黙っている)=不満はない/不満は解消された?...との理解でよろしいでしょうか?
>コメントの嘘八百
 何処が嘘八百なのかを具体的に指摘していただけるとありがたいです。
簡単な質問の名無し
2011/11/20 13:44
最近のイタリアに関する報道を見ていると、F-35Bを採用する国は皆無になってしまうのでは?と思ってしまうのです。同国が保有する2隻の支援空母ですけど、場合によっては英国よろしく、旧式なガリバルディ1隻だけ退役させるか、或いは新型のカブールの早期退役も有り得そうな気がするのですが。おまけに、我が国では技本がステルス機を探知する「MIMO」レーダーの技術開発も進めるようですし、何だか前途多難な気がします。
カッコ
2011/11/20 21:19
この手のセールスマンはさもありそうな話を何の具体性もなくして、それを何も知らない日本の記者が、勝手に思い違いをして、具体的であったかのように記事にするなんてことは、よくある話です。
まあ、話半分価格は2倍とみておいたほうがいいのでは?
くわばらくわばら。
ワタリガラス
2011/11/21 12:52
かなり前のことですが、LM社のF-22のセールス重役からはF-22の保守コストはレガシー機の1/10と説明されました。もちろんそんな話を記事にはかかなったのですが、一般の記者は信じたかもしれません。
キヨタニ
2011/11/21 13:18
あくまで「機体技術」じゃなくて「生産技術」の供与なのがやらしいなー、って感じですね。>LMの発表
kk
2011/11/23 14:35
ていうか私は、「BAE社のユーロファイターを採用してくれればブラックボックスフリーで生産OKデスヨ」という発言にビックリしたのですけどね。

ユーロファイターも国際共同開発ですよね?
なのに、開発にも参加せず、資金提供もしてない国に対してパートナー国同様の金額で機体を提供しますよとか、ライセンス生産に関しては異例とも言える「ブラックボックスは設けませんよ」、なんていうBAE社の方が異様に感じるのですが?
この件に関してパートナー国が怒ってないのであれば、そもそもユーロファイターってブラックボックスにするほどの高度な最新技術は使われてないって事ですよね。「欲しけりゃやるけど開発費分担分はしっかり払って貰うけどね。」って事でしょうか?
ガンヘッド507
2011/11/23 15:31
ロッキードのセールストークを鵜呑みにしない方が良いよ、という内容については基本的に同意ですが、ミスリードととられかねない記述が散見されるのはいかがなものでしょうね。

> 米海兵隊もB型の採用をやめ

んな話は初耳ですし、そもそもB型の様なSTOVL機を欲しがったのは海兵隊です。その海兵隊が自分からB型の取得をやめるなんて言い出すはずがない。そもそもスパホでハリアーの代替はできません。
スパホに置き換えるとしたら、現在配備しているレガシーホーネットの代替としてでしょう。当初は全部B型に置き換えるという話だったと記憶していますが、予算不足or価格高騰でレガシーホーネットをスーパーホーネットに置き換える、という話ならあり得る話です。


> C型の調達単価がかなり上がるならば、調達もキャンセルもありうる

もともとB型は空母(QE2)の艦載機として取得が予定されていたものが、価格高騰によりC型への変更となったもののはずです。C型のキャンセルは空母の必要性そのものを否定することにつながりますので、現時点ではあまり可能性は高くないんじゃないかと。
とはいえ、予算不足でQE2が予断を許さない状況にあるのは確かですけどね。


> 単発のF-35を艦載機として採用するメリット

何を問題視しているのかさっぱり判りません。
艦載機は双発(以上)が好まれる、ってのはよく聞く話ですが、だからといって双発でなきゃだめ、ってわけではないでしょう。
WW2の時代であれば大半が単発機だったわけですし、比較的最近の機体だとF-8, A-7, A-4等ほかにも例があります。そもそもF-35Cは米海軍も採用するわけですが?

コストの問題は何にでも絡んでくる話で、F-35が単発か双発か、という議論とは次元が異なると思いますがいかがでしょう?
Null_Devices
2011/11/30 00:14
>> 米海兵隊もB型の採用をやめ
>んな話は初耳ですし

報道されていますよ。
例えば11月9日付けのJDW誌のWorth waiting
for ?
でF-35のキャンセルの可能性を示唆しています。
キヨタニ
2011/11/30 17:22
F-35この時期、このタイミングで亀裂の欠陥が表に出ちゃいましたが、本当にF-35しか見えてないんですかねえ
それでも本当に間に合うんでしょうか

まさか日本がF-35に決まったからもう変更は効かないからばれても大丈夫って事かな?
流石に邪推がすぎますかねえ?
ando
2011/12/03 16:32

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