清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所 

アクセスカウンタ

zoom RSS 武器禁輸緩和、、またしても「閣内不一致」

<<   作成日時 : 2010/10/14 19:13   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 17 / トラックバック 0 / コメント 16

武器輸出3原則 基本変えない”
http://www.nhk.or.jp/news/html/20101012/t10014542171000.html

 北沢防衛大臣は武器禁輸緩和の方向性を打ち出したのですが、菅総理大臣は緩和を認めないとの発言を行いました。つまり武器禁輸に関しては鳩山内閣につづいて、今回も閣内不一致です。
 なんで、事前に擦り合わせをしておかないんでしょうかね。もう与党になって1年以上ですよ。

 それからこの問題を報道するメディアの報道にも疑問があります。

 我が国では新聞やテレビなどのマスメディア、政治家でも誤解していることが多いのですが、「武器輸出三原則」は武器、即ち兵器の輸出を禁じていません。「武器輸出三原則」とは、次の三つの場合には武器輸出を認めないという政策をいいます。

(1)共産圏諸国向けの場合
(2)国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合
(3)国際紛争の当事国又はそのおそれのある国向けの場合

 これは佐藤栄作総理大臣が一九六七年四月二十一日の衆議院決算委員会で答弁したものです。つまりこれに該当しない国々には原則輸出が可能なわけです。

 現在米国とMD(ミサイル防衛)関連の共同開発をしていますが、米国は「紛争当事国」ですから、本来は(3)に引っかかるわけです。

 さて、一九七六年二月二十七日、三木総理大臣(当時)が衆議院予算委員会における答弁で、「武器輸出に関する政府統一見解」を表明しました。

 これは、「『武器』の輸出については、平和国家としての我が国の立場から、それによって国際紛争等を助長することを回避するため、政府としては、従来から慎重に対処しており、今後とも、次の方針により処理するものとして、その輸出を促進することはしない」というものです。そして、

(1)三原則対象地域については「武器」の輸出を認めない。
(2)三原則対象地域以外の地域については、憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり、「武器」

の輸出を慎むものとしています。更に、

(3)武器製造関連設備の輸出については、「武器」に準じて取り扱うものとする。
としています。

 わが国の武器輸出政策として引用する場合、通常、「武器輸出三原則」(佐藤首相の答弁)と「武器輸出に関する政府統一見解」(三木首相の答弁)を総称して「武器輸出三原則等」と呼ばれれています。

 つまり武器の禁輸は「武器輸出三原則」ではなく、「武器輸出三原則等」によって規定されています。

 この見解は外務省のHPに掲載されています。
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/arms/mine/sanngen.html

 ところが、メディアの多くは単に「武器輸出三原則」と呼んで混同しています。実際にぼくの所にくる防衛省担当の記者クラブ会員の記者たちですら誤解していることが多々あります。

 過去の発言などを鑑みれば、首相も知らない可能性があります。

 「武器輸出三原則等」でも本来輸出は出来ます。
 あくまで「慎む」としているわけですから、内閣の解釈が変わったとして、内閣法制局長でもその線で答弁させればいいわけです。

 もっとも経産省もいい加減で、世界の兵器工場ではヤマザキマザックとか日立重機とか、日本の工作機械メーカーの製品が多数使用されています。森精機は機械にGPSを付けて、軍事転用されないように監視しているそうですが、そうしたメーカーは少数派でしょう。

 また経産省は空中給油機KC―767も昔はダメだ言っていたのが、イタリアに輸出が決まったらOKに変わっています。武器を搭載していないから、という理屈らしいですが、ならばボーイングやIAIが中共に早期警戒機を輸出してもOKということになります。

 また地雷処理用機材でも対人地雷用は「汎用」で対戦車地雷用は「軍用」とか、訳のわからない線引きをしております。

 そのくせイランへの防犯カメラの輸出などではローエンドの商業施設の防犯カメラまであれこれ経産省がうるさく言ってきます。これが日本のセキュリティ用カメラ業界の足を引っ張っています。
 タダでさえ中国、台湾、韓国が国家のサポートを受けて追い上げていますから業界は青息吐息ですが、経産省は知らんぷりです。産業の育成・振興が経産省の仕事だと思っていたのですが、気のせいだったのでしょうか。
規制はまともにはたらいていません。

 そもそもMDの共同開発とかアフガンへの地雷処理機材の輸出など「例外」の実績多数あるわけですから、戦闘機の共同開発なども「例外」にすればいいはずです。
 ですから、ぼくは現在の「武器輸出三原則等」でも本来輸出しても何ら問題はないと思っています。
  
 一定の武器禁輸の縛りは必要ですが、そのためには安易な例外をつくらないようなまともな規制と、見解の統一、理論武装が必要です。


防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備 (中公新書ラクレ)
中央公論新社
清谷 信一

ユーザレビュー:
問題意識は素晴らしい ...
私には書かれているこ ...
この本の内容は信頼出 ...
amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備 (中公新書ラクレ) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



誰も語らなかった防衛産業
並木書房
桜林 美佐

ユーザレビュー:
対立しないで官民一体 ...
国防と防衛産業の意義 ...
調達・防衛産業理解の ...
amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 誰も語らなかった防衛産業 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



専守防衛──日本を支配する幻想 (祥伝社新書195) (祥伝社新書 195)
祥伝社
清谷 信一

ユーザレビュー:
〈専守防衛〉を支えた ...
「専守防衛」について ...
「専守防衛」というの ...
amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 専守防衛──日本を支配する幻想 (祥伝社新書195) (祥伝社新書 195) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 17
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス
驚いた 驚いた
面白い 面白い
ガッツ(がんばれ!)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(16件)

内 容 ニックネーム/日時
何も「三原則等」に限ったことではありませんが、我が国のマスコミは何でもかんでも自分達に都合の良い名称を付ける達人ですよね。例えば「拳銃」を「短銃」と呼んでみたり(いっそのこと、「短筒」とでも呼んでみたらどうなの?と思います><)。「国際復興開発銀行」を「世界銀行(世銀)」と呼んでみたり。最たるものは、やはり装甲車輌(自走砲他含めて)全てを「戦車」と呼んだり水上戦闘艦全般を「戦艦」と呼ぶことでしょうか。
およそ、自ら、あれこれ調べようとしない姿勢が元凶なのでしょうか。
かつかつ
2010/10/14 19:36
追伸。キヨタニ先生もご指摘なさっておられますけれども、銃関連の月刊誌にて海外の銃器メーカーの紹介記事中にて写っている工作機械って、大概、日本製ですよね。ああいうのも経産省は何ら注文を付けることなく、書類を右から左へと流すがごとく許可しているわけなのでしょうか?いくら、担当者のさじ加減次第で決まるとはいえ、ひどすぎますよ。結局は、票に繋がらない事には何ら興味を示さない政治家(更に言えば、そうした政治家を国政に送り出した我々、有権者)の怠慢が招いた事なのですね。
かつかつ
2010/10/14 20:00
小火器ならまだカワイイものです。
アパルトヘイト時代、南アの重火器工場でも
多くの日本製工作機械が活躍しておりました。
キヨタニ
2010/10/14 20:11
早速、ご返事いただき、有難うございます。南アですか・・・・。と言う事は、同国が周辺各国と揉めた際、日本製の工作機械で製造された兵器が実戦に投入された可能性もあるわけでしょうか。でもなぁ・・・仮にそうだとしても、誰も興味を持たなそうですよね。余所の国が同じ事をすれば「平和に対する挑戦だ(キリッ」とか言うのに、自分の国がすれば知らん顔。単に「知らなかった」では済みませんよね・・・・。政治家の先生方も、そういう事にいま少し興味を持ってくれれば良いのに。それはそうと、先週でしたか。民主党の長島前政務官他何人か、台湾を訪問されたはずですが、続報に関して何かキヨタニ先生の耳に入っておりませんでしょうか。最近の台湾に関しては「敵の敵は味方」なんて論理が通じなくなっているような気がするものですから。
かつかつ
2010/10/14 20:23
小火器だけでなく、北朝鮮やパキスタンの核や弾道弾にも、日本製の部品や工作機械が使われたそうですが。

それはそうと、民主党は一枚岩どころか寄合所帯の、はっきり言えば、野合与党でしょう。
何をやらしても、誰かはケチを付けて来ますよ。
原則の例外は米国ですが、これを何処まで拡げるかでしょうね。
虎の子の石油利権まで放棄させられるようでは、イランは無理だと思いますが、果たして国益を考えると、どうなのか。
歩兵
2010/10/14 20:45
武器輸出の何がいけないのでしょうか?
どなたかご存知でしょうか。

無名です。
2010/10/14 21:43
「武器輸出三原則」の中身はは知りませんでした。かなりいい加減に運用されていますね。
かって韓国には大阪のメーカーの砲身一歩手前のパイプ。北朝鮮にはロケットランチャーを外したようなOD色のトラックが輸出されていたのを思い出しました。
飯ごうは兵器かな?
2010/10/15 07:42
>武器輸出の何がいけないのでしょうか?
エントリー本文に「平和国家としての我が国の立場から、それによって国際紛争等を助長することを回避するため」と紹介してあります。

>戦闘機の共同開発なども「例外」にすればいいはずです。
昨日の菅総理の答弁は、武器輸出三原則の基本理念は変えるつもりはない、という言い方をしています。(12日記者会見でも)
これと北澤、仙谷の発言をあわせると共同開発については「例外」として認める方向になりそうな感じがしますね・・・。
禿鷲
2010/10/15 09:51
武器を搭載していないから、という理屈でOKならばC−2輸送機やUS−2飛行艇もわざわざ「民間型」を開発しなくてもそのまま輸出しても良いのではないでしょうか

まあKC−767のケースはアメリカ様には逆らえないということでしょうか
もしもF−2がアメリカなり第三国が欲しがり、LMも売り込みに積極的だったりしたらなし崩し的に緩和されたのかもしれませんね(少し無理がある例えではありますが)


政治とお役所の気まぐれに付き合って国際競争力を喪失するのはたまったもんじゃありませんね

>かつかつさん
>票に繋がらない
一応その産業で働いてる人も有権者ではあるのですが
やっぱり少数派で発言力も弱いですからねえ
an
2010/10/16 05:42
 一昔前、戦後処理に関して「ドイツに見習え」論が盛んだったころ、日本のメディアによく登場したドイツ人ジャーナリストに南ドイツ新聞日本特派員ゲブハルト・ヒールシャー氏というのがいました。南ドイツ新聞といえば、社民党系、まあかなり「左派」な新聞なんですが、彼が今はなき文春の保守系雑誌「諸君」の座談会で論客から「ところでドイツは日本への武器輸出は可能なんですか?」と質問したところ、「可能です。日本はNATO諸国に準じた扱いですから」と実にシレっと応えておりました。こちらとしては「武器輸出などドイツの恥です。過去を反省し・・・」なんて反応を期待?していたんですが、「武器輸出?やってますけど、それが何か?」的な反応なんで驚いてしまいました。

 なんか、日本の左派、サヨクと全然違うな〜って感じで。
レッド・バロン
2010/10/16 09:37
個人的にはどの程度中国の軍需産業で日本製工作機械などの生産財がつかわれているかが気になっています。

それと経産省はもっと禁輸の条件を明文化すべきですし、また企業のオブジェクションを審議する第三者機関のようなものを設立すべきです。
そうでないと「グレーゾーン」の製品も企業が萎縮してしまいます。

反面何で代用不可のソニーのCCD素子の軍事利用が野放しなのかわかりません。
キヨタニ
2010/10/16 10:12
ドイツは、昔も今も対立する国の双方に兵器を供給していますね。
インドとパキスタン、ギリシャとトルコなど。ナチスドイツも、日中双方に兵器を供給していましたし。我が国も、ドイツを見習いますか?
後、日本のサヨクは、スウェーデンやスイスが大好きですが、この両国が兵器の輸出国であることを知らないのか、知っていた意図的に無視しているのかどちらなのでしょうか?
「スイスやスウェーデンは兵器の輸出国で、アメリカ軍も日本も、これらの国の兵器を使用している」というと、未だに驚く人は多いですよ。
シロ
2010/10/16 15:20
イスラエルは二股の典型例ですね。

それとこれまた「理想郷」北欧のノルウェーやフィンランドなどもあちこちに輸出しています。北欧を理想化する人達に北欧を見習って兵器を輸出し、徴兵制を行い、PKOに海外派兵しようといっても不思議なことに賛同してもらったことがありません。
キヨタニ
2010/10/16 17:27
禿鷲様
お返事有難うございます。
エントリー本文にあるのは分っていたのですが、よく理由が分からなかったので

兵器輸出の何が駄目なのでしょうか。
平和国家でなんでしょうか。
自国が平和なのが平和国家なら、武器輸出でも相手を選べば問題ないですし、周辺国の平和も含めた平和国家なら、周辺諸国への平和も守らなければならないし、第一に平和の定義って何でしょうか?国は一応回答を出しているみたいですが、国民に浸透しているのでしょうか?
よくわかりません。

武器輸出をして何が悪いのでしょうか。
無名です。
2010/10/16 19:29
CCDを輸出するなとは、ソニーには到底飲めない話でしょう。
画像センサは他にもありますが、ソニーだけですかね?

武器輸出は、外交、安全保障の一部なので、アメリカの属国的な立場では、独自にやっては何かと角が立つのかも知れませんね。
歩兵
2010/10/19 19:20
767のタンカーは民間共通仕様をエヴァレットで改造するので問題なし
通りすがり
2010/11/06 14:31

コメントする help

ニックネーム
本 文
武器禁輸緩和、、またしても「閣内不一致」 清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所 /BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる