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zoom RSS 二律背反する防衛省の戦闘機調達

<<   作成日時 : 2010/08/27 13:04   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 13 / トラックバック 1 / コメント 12

F2戦闘機後継、16年度にも開発着手へ 防衛省
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819481E0E7E2E0E58DE0E7E2EAE0E2E3E28297EAE2E2E2;at=ALL

FX選定 F35に一本化へ 23年度概算要求 7億円計上
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/100824/mca1008240946008-n1.htm


 防衛省、空幕の戦闘機調達は二律背反しています。
 FX(次期戦闘機)の本命がF-35であれば、ライセンス生産は不可能です。しかも現在開発中ですから、配備が可能なのはかなり先になります。
 で、次の戦闘機を開発するにして2028年頃までかかります。
 
 つまり我が国の戦闘機生産基盤を潰しておいて、新戦闘機を開発・生産しようといっているわけです。

 装備調達の当事者としての見識を疑われます。

 生産基盤を再整備し、生産手段を整え、人員を確保するのは並大抵ではありません。それこそ、ボーイングやらロッキードマーチンから熟練工を「お雇い外人」として招聘する必要が出てくるかも知れません。生産コストはかなり高くなるでしょう。

 生産基盤を維持するのであれば、FXでF-35という選択はありません。ライセンス生産できる既存機から選択すべきです。新戦闘機開発に向けて新規の技術を習得するのであれば技術開示に積極的なユーロファイターを選ぶべきです。ブラックボックスだらけの機体を組み立てても、新しい技術は習得できません。

 F-2増加説を触れ回っているのは三菱重工でしょう。以前も北沢大臣の逆鱗に触れたのに懲りない人達です。FXで新しい戦闘機をライセンス生産するしても、数年は戦闘機生産ラインが空いてしまいます。
対してF-2の生産を継続すれば、戦闘機生産ラインを数年は維持できるでしょう。ですが、新しい技術の取得はできず、将来に展望は開けません。
 
 F-2増産は明日の1万円より、今日の百円を選ぶ選択です。中の偉い人達は自分たちの任期中の仕事の確保を優先し、将来の戦闘機生産など知ったことではないのでしょう。「国家とともに」というキャッチフレーズはどこにいったのでしょうか。愛国心はおいておくとしても、愛社精神はどこへ行ったのでしょう。三菱マンの矜恃も過去の遺物となったのでしょうか。

 F−35の情報開示に来年度7億円以上(関係経費含む)が要求されるようですが、バカじゃないの?
 というのが正直な感想です。

 F−35に関していえば現段階ですら調達単価は135億円(カナダ議会の予算から、1ドル100円で計算)です。他の候補よりも3〜4割は高いわけです。しかも今後オランダやデンマークが開発から抜ける可能性があり、となれば米国の負担は膨らみ、我が国が仮にF−35を買えば随分と上乗せされるでしょう。
 しかも米国初め、各国の調達数が減りそうなので、量産してもコストがあまり下がりません。米空軍はF−15やF−16など既存機の調達する方向で検討に入っています。
 その上、英国がプログラムから脱退する可能性すらあります。空母用にはユーロファイターの海軍用を開発すればいいという声が国防省や産業界から上がっています。独英伊などユーロファイターのパートナー各国で調達が減っていますから、それを補えるというメリットがBAEにはあるのでしょう。また最悪、グリペンNGを採用する手も残っています。英独では特に防衛費の削減は極めて厳しくなっています。戦闘機の定数や調達にも大なたが振るわれています。ですから、まったくあり得ない話ではないでしょう。

 またイスラエルにしてもF−35をどれだけ調達するか不透明です。伝統的にイスラエルは米国製戦闘機に自国製のシステムを使用してカスタマイズして使用してきました。これらのソフトウェアは装備、兵装はイスラエル兵器産業の輸出品として大きな金額を占めています。丸ごと輸入となれあば、これらの国内産業が大打撃を受けますし、兵器輸出も深刻な影響を受けます。イスラエルも調達をやめる、あるいは極小化するという可能性があります。


 とならば尚更F-35の調達・運用コストは上がるでしょう。

 そもそも制空戦闘機が欲しいといってたのに、一部ではF−35ではなく、A−35(攻撃機)と揶揄されるF−35を調達する必要があるのでしょうか。
 仮に調達を考えるにしてもFXXの候補とすべきです。

 今大金を払って情報を開示しなくても、少し待てば米国の方から是非F−35を買ってくださいと頭を下げてきます。
風呂は沸いてから入るものです。
 なんで日本の政治家や官僚はこんなにビジネス取引のセンスがないのでしょうか。

 それからFXに限りませんが、装備調達のコンペにあたっては、出来るだけ実物を借りるなり、サンプルを購入するなどて実際に使用してみてから調達すべきです。
 ユーロファイターにしても実際に使ってみたら意外な欠点があるということもあり得ます。
 ところが防衛省はヘリコプターのような高価な買い物ですら、試乗すらせずにカタログだけみて購入を決定したりしてます。もっと装備の選定に関して費用をかけるべきです。
 それから評価用にミグなどの中古を買ってこれと空中戦をやる、なども有効な手段でしょう。
 
 一両惜しみの百両損、というケースが多々見られます。



 以下に桃山学院大学の松村昌廣教授のFX調達に関する政策提言を紹介します。拙著「防衛破綻」の主張に良く似た主張をなさっています。

次期戦闘機の調達機種提案
http://www.rips.or.jp/from_rips/pdf/teigen20100805_jp.pdf

 

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内 容 ニックネーム/日時
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100821/plc1008212255017-n1.htm
>空自は米国以外から戦闘機を調達したことはない。
>他国機が話題になること自体が、日米間のすきま風を意味するのだ。
>対米交渉に当たる防衛省・自衛隊の当事者たちは消極的だ。内局幹部は打ち明ける。
>「F35導入をめぐる条件闘争として、ユーロファイターへの興味をちらつかせることも憚(はばか)られる」
>米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題をめぐり、日米同盟にすきま風が吹くなかで、
>米政府内に強まる不満を肌身で感じる日本政府の当事者らは神風のように
>ユーロファイターという単語を口に出すことにも慎重だ。
>些(さ)細(さい)な挑発でも米側から三下り半を突きつけられかねないからだ。

こんな新聞記事が載っていたけど、防衛の内局官僚にこういう意識から頭が離れないこと自体が日本の防衛調達をおかしくしているのだと思う。
へろ
2010/08/27 13:43
まともな方もいらっしゃるのですが・・・

基本的にまず情報収集・分析し、それを元に議論をしないので、観念論や情緒、前例投入、関係各位への忖度などに流される傾向が多いようです。

まずは情報ありきです。
キヨタニ
2010/08/27 14:27
何故日本の政府や防衛関係者は、兵器調達のセンスが無いんでしょうね?
20年先、30年先にどんな戦闘機が調達できるのか、どんな兵器が必要になるのか、
この機種は確実に調達できるのかなどについて思考する能力が欠如していると言わざるを得ません。

もしもF-XにF-35が選ばれ、戦闘機の生産基盤を喪失してしまったら、
将来に大きな禍根を残す事になるでしょう。
名無し
2010/08/28 03:11
F-2はやっとまともに飛ぶようになったと思っていたらまともに地上を走ってられないという欠点があったみたいですね。うーん、これは盲点だった。ニュースを聞いて思わず笑ってしまいました。
現在、自分は引っ越しの計画中なのですが、マンション業者が提携してインテリア・家具・家電製品などの購入を斡旋してきます。ところが、そうした商品の値段が同じ物でも量販店などに比べて高いのにびっくり。価格競争にさらされていない販売ルートというものはそうしたものなんでしょう。結局、最低限のもの以外は別に自分で調達を進めていますが、日本の防衛関係者はこの程度の買い物テクニックも持っていないということなんでしょうね…。
SNK22
2010/08/28 09:59
つい、この間「F -2追加生産」なんて記事が出たかと思ったら、お次は「F-35に一本化」で今度はF-2後継機の開発ですか?空幕は何を考えているのでしょう?ただでさえ防衛費は減る一方なのに。まるで、シュミレーションゲームで好きなユニットを集めて悦に浸っているヲタじゃないですか。それにBAEは全て公開するといっているのに、それに乗ろうとしない方も、どうかしています。そんなにアメリカが大事なのでしょうか。ここまでくると単なる同盟関係とかではなく、何かの宗教ですよね。だいたい、空幕はF-35の、どのコンポーネントをどこの国が分担して生産するのか、という事を知っているのでしょうか。
かつかつ
2010/08/28 11:26
キヨタニ様、松村先生の提言を御紹介頂き、ありがとうございます。「我が国の防衛産業基盤維持を念頭に置いた安全保障」の視点を持って、F-Xをお考えになられた点には素直に賛同できます。
一方、「提言する事は批判する事よりはるかに難しい」と肝に銘じてはおりますが、検討された各機種のペイロードレンジに触れていない点、LO戦闘機を”含めた”防空戦略に対する御認識が不足しているよう見受けられる点、EFにどのような日本向け装備のインテグレーションが施されるべきで費用はどの程度になるか(現参加国のコミットメントの低下を補う観点も含めて)、またその作業を含め、初期作戦能力獲得までに、この後何年間係るかという点、に対しての記述が見られないのにも係らず、提言(EF+F-35という結論)をされている事は、非常に残念に思います。
また、同提言P.13で、「F-2では中国空軍戦力の急速な台頭には全く不十分である」と仰っておりますが、その典拠に挙げられている、林富士夫元空将による「なぜ空自F-Xにステルス戦闘機が必要なのか」『軍事研究』2009年11月号P.34を読んでみますと、「・・・単に現在と同一仕様のものを継続取得するだけでは不十分で、現代戦に通用する能力向上が必要です。」とあり、結びには、「この多くは既に研究が進められており、これらの個々の能力向上計画をインテグレートすることによって、現代戦に通用するF-2を実現できるのではないかと思います。」とあります。御主張の典拠とは到底考えられず、同提言全般の信頼性に疑義(≒恣意的な引用)があると思われても、仕方がないのではないでしょうか?
「どのような妥協、組み合わせによって最適な解を出すか」と前段で仰っている目的は、「情報」と「分析」の両方が揃って、初めて、達成されるものと愚考致します。長文、失礼いたしました。
関心
2010/08/28 12:47
海自が欧州ヘリAW−101を調達しても目立った支障は無いので、欧州機だから製造や整備がどうこうとか、日米の関係に亀裂がどうこうというのは日本側が勝手に思ってるだけではないですかね?

日米貿易摩擦の時代ならともかく、巨額と言っても相手は世界一の経済大国ですし、航空分野は軍民合わせて日本市場での影響力と言うのは戦闘機以外の分野でも絶大なわけで
日航も全日空も伝統的にエアバスではなくボーイングが主力ですし、自衛隊機の米軍機なんてそうでない方が珍しいし

いくら巨額と言ったって、商売の契約一つで壊れるような同盟なら最初から無いも同然では?
それこそ、そんな同盟に頼るのは戦闘機の問題以上に政治的レベルで危険極まりないと思いますけど

アンドロ
2010/08/28 21:11
自衛隊、特に地方調達はまだOB天下り企業のやりたい放題が続いているようです。

FXは現実問題、ユーロファイターとホーネットしかないわけです。となるとどちらを選ぶのだ、ということですよね。
ユーロファイターに関していえば、コンフォーマルタンクの実用化はすぐにできるようです、あれこれ近代化のプランもあるとことです。
またメンバー各国が調達を減らしていますから、値段および条件はかなり交渉できるでしょう。

それと、ぼくは未だに世間はステルス機に過剰な期待と、恐れを抱いていると思います。中国が米国並みのステルス機を作れる日なんて、何十年も先ですよ。むしろネットワーク基盤と、空中給油機を揃える方が余程戦力の向上につながります。

何かというとアメリカ様が怒る、という過剰反応をする人は未だに多いですね。特に米国留学経験がある、役人h、政治家、ジャーナリスト。
ご自分達が洗脳された自覚がないのが何ともです。
キヨタニ
2010/08/28 21:29
AESAも実用化できていない上に機首が細くて拡張性に乏しいユーロファイターよりはF-18の方がまだましでしょう。
ぽこぺん
2010/08/28 21:58
私も以前でしたら、「ヨーロッパ製の戦闘機なんて、とんでもない(キリッ」なんて言いましたね。単純に「デザインが気に喰わない(特にトーネード)」というのもありますが><別に日米同盟がどうのとかインターオペラビリティがどうの、なんてモノは関係なく。それとステルス性の有無。そもそも「第5世代戦闘機」なる言葉自体、L・Mが勝手に広めた用語らしいですね。それを何の疑いもなく使用している専門誌もどうかとは思いますけど。それに我が国のマスコミな皆さんも、今だに「ステルス=何だか強そう。無敵だ」みたいな扱いじゃないですか。何とも度しがたい方々であります。最も、「イージスシステム=世界最新鋭のシステム」なんて報じている時点でお里が知れていますけどね。
かつかつ
2010/08/28 22:05
タイフーンは駄目ですね。
航空自衛隊が使うには小さ過ぎます。

ユーロファイターが、イーグル、ラプター、ジュラーヴリクの様な大型戦闘機なら良かったのですが。

西欧諸国は、戦闘機開発のセンスがありません。

タイフーンを採用する事は、戦前の日本が、
航続距離が短いSpitfireやBf109を採用する様なものです。
名無し
2010/08/28 22:17
ステルス機の導入は戦力としてよりもステルス機に対する戦術研究のために必要ではないかな。
ぽこぺん
2010/08/28 22:19

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