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zoom RSS 【小国の知恵】ヨルダン軍の120ミリ自走迫撃砲

<<   作成日時 : 2010/08/07 00:53   >>

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 今年のヨルダンの特殊部隊見本市SOFEXでは、同国の最新120自走迫撃砲が公開されました。

 
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 車体は英軍で不要となったサクソン装甲車です。
 ヨルダンはかつて南アの6×6歩兵戦闘車、ラーテルを一輛約2000万円ほどで調達しました。サクソンは恐らく1千万円以下で調達したと思われます。

 購入後、エンジンとギアボックスを8.2リッター、164馬力のベッドフォード500とアリソンのAT545からカミンスの5.88、リッター・ディーゼルエンジンとアリソンのアリソン2000に換装さし、機動性と燃費を向上させています。


 迫撃砲本体ですが、これはノリンコの牽引式迫撃砲、W86をベースにしています。で、反動を吸収するターンテーブルは自国開発です。システムはVM3と呼ばれています。

 反動は最大75パーセントを吸収されます。このためサクソンのような軽装甲車輛でも使用が可能となっています。砲は360度の旋回が可能で、射角は40〜85度、最大射程は7.7キロです。現在第二フェーズとしてナビゲーションシステムを統合した火器管制装置が開発されており、本年中に完成する予定です。

 つまり車体は安価な中古。砲も安価な中国製。これらを自国製の組み合わせた安価な自走砲用迫撃砲システムは価格競争力があり、輸出も可能でしょう。必要なものを安くあげ、調達性を高めているわけです。

 敢えてどこぞの島国の陸軍が採用した少数限定モデルと比較はしませんが、反動吸収するシステムのない自走迫撃砲は重い車体が必要ですし、射撃は車体に強い付加をかけます。
 またたかだか数十輛を調達するために車体まで新調すれば調達コストが上がるのは目に見えています。
 時代遅れの自走迫撃砲を高額で調達すれば、そのしわ寄せはどこかにきます。

 どこぞの陸軍では迫撃砲は愚か、砲兵部隊でもGPSを使ったネットワーク式の射撃管制システムの導入が遅れ、未だに紙の地図と音声無線で射撃を行うプリミティブな方式に頼っています。とても先進国とは思えません。
 暗視装置やレーザーレンジファインダーを組み込んだISRシステムも普及していないので、敵を探知し、その座標を味方の迫撃砲にデータ通信で知らせることもできません。

 何かが間違っていると思うのはぼくだけでしょうか。

 何事も他国のいいところは虚心坦懐に学ぶ姿勢は必要かと思います。
 年々装備調達費は減っています。しかも来年度の防衛予算は他の予算同様に10パーセント減が求められています。人件費は減らせないので、装備調達や燃料、装備維持費、訓練費がその分減らされることになります。その中で追加のアパッチ3機も要求するようです。
 いつまでも金がいくらでもあるような気でいては現実的な装備体系を揃えることはできません。

 足らぬ足らぬは頭が工夫が足りぬ、という戦時中の標語がありましたが、今一度かみしめてみることばではないかと思います。


 
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 ヨルダン軍のサクソンはAPC型も存在します。こちらは武装が南ア製のSS-77、7.62ミリ機銃あるいは12.7ミリ機銃となっています。




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コメント(13件)

内 容 ニックネーム/日時
>足らぬ足らぬは…
その標語も実際の戦時中には軍や国家の側があれほど工夫の足りない部分が山積しながらそのしわ寄せを一般庶民に押しつけるような使われ方をしてましたからね…。
今度も国や防衛省・防衛産業の側が工夫が足りなすぎるのを現場の自衛官に工夫して何とかしろ! と無理を押しつけるような結果にならないといいんですが…。この言葉はむしろそう言う過去の経緯を踏まえて見直してほしいと思います。
SNK22
2010/08/07 05:28
前年度比10%削減を求められてはいますが、「昨年は正直物がバカを見る結果になった」と言っていた官僚がいましたからねぇ。本当に概算要求段階で10%削減する官庁はない気がします。
恐らく防衛省も実際の予算は減るでしょうが、概算要求段階では強気の要求をする気がします。連立を組んでいる国民新党が防衛費増を要求していますし。
松本信二
2010/08/07 09:17
 確かに、96式自走迫撃砲は、いかにも無理やり造りました感が、ありますね、87式弾薬
輸送車がベースだったと思います。
名無し
2010/08/07 09:41
>>清谷 様
中古市場のサポート体制についてはその中古購入契約の時,どのレベルまで保証されているのでしょうか.普通はサポートは追加の有償もしくはサポート外となるはずですが,サポートが無理ならば使い捨てになってしまわないのでしょうか.さもなくば,部品取り用の中古を追加購入する必要が生じるがそういう体制は整っているのでしょうか.駆動系は交換しているようですがその時の必要になった開発費はどの程度だったのでしょうか.中古車体の改造車両は母数が限られているため限定的な数量しか生産できませんので価格競争力や輸出が可能と言うのは早計ではないのでしょうか.販売におけるライセンスの問題もあります.

近代化,価格面では問題がありますが96式自走迫撃砲の基本構造は73式装甲車の車体を流用しており整備性の向上のための共通化が図られています.価格の面で各国から装備を検討をするのはいいことだと思いますが,装備の多様化による整備士への負担は稼働率に直結します.特に寸法規格に関する系統の違いは致命的だと思うのですが,ヨルダン軍の場合,米,英,露,南アの主に4カ国の装備を所有していますので整備面での問題は生じていないのでしょうか.西側はMIL規格でしょうが,南ア,露は違う可能性があるのですが,どうなっているのでしょうか.個人的趣向からすると本記事でとりあげられているような装備は結構好きなのですが,考えれば考えるほど,疑問が沸いてきます.

私が本記事を拝読してこれだけの疑問が出てくるのですが,こういったことをまとめられる事が大切なのではないのでしょうか.なにか本を執筆されるご予定などはございませんか.
気まぐれ定期読者
2010/08/07 16:53
 今回の文中に示された情報通信装備の劣弱さには驚かされました。早急に関連装備を整えねばならない必要性を実感させられました。

 しかしながら、自走迫撃砲に関してはやや結論を急ぎすぎているような印象があります。
 このヨルダン製自走迫撃砲と国産迫撃砲砲を、単純に重量や値段、整地走行速度だけで良し悪しを判断するわけにはいきません。また、日本国内での自走迫撃砲の運用を考えた場合にこのヨルダンの車両スペックで十分なのかどうか。いろいろと冷静に吟味する必要があると思います。
 迫撃砲の射程の短さからくる相手火砲からの自己防御としてどの程度対弾性を持たせる必要があるのか、装軌と装輪のどちらが国内運用に適しているのか。あるいはそれぞれを異なった地域に配備して全体としては混用すべきなのかどうか。

そういった具体的な言及がないので疑問が残りました。
yomoyama
2010/08/08 03:19
>紙の地図と音声無線で射撃を行うプリミティブな方式
これはFO(前進観測班)とFDC(射撃指揮班)の間の話であると思いますが、(戦砲隊とFDCは電送機能がありますので…)
一応、FOにもレーザー測距や電送できる機材はありますが、重かったり、かさばったり…不便なんですよ(多くても3人くらいなので)
正直絶対必要な紙の地図と無線で済むなら済ましてしまいたい気持ちがあるようです
あとFOとFDC間は基本有線電話を引くように努力します
ゆう
2010/08/08 07:36
砲兵の運用に関しちゃ他の先進国も大して変わらんかったはず
特定の機器だけ見て良さそうに思っても実際の運用では…
pori
2010/08/08 11:29
気まぐれ定期読者様
>中古市場のサポート体制についてはその中古 購入契約の時,どのレベルまで保証されてい るのでしょうか

 契約によります。例えば車体をリファブリ シュして、引き渡すとか、保有している予備部品まで引き渡す。更には一定の技術指導や支援がつく場合もあります。また単に現状の現物のみという場合あります。初めから部品取り用として余分の買う場合もあります。

メーカーのサポートが無くても使い捨てになるとは限りません。例えば英陸軍のシュミターやスパルタンはサポートがBAEシステムズから民営化された陸軍の基地修理機構。ABROに移っています。メカニカルな部品や電装関連もABROが内製していたりしますが、BAEがやるよりも安価に済んでいます。
今回のサクソンは駆動系を入れ替えていますが、これは性能向上だけが目的ではなく、整備も意識したものです。つまり古い駆動系をいつまでも使用すれば当然維持費はかかります。ですから入れ替えた方がライフサイクルコストが安いわけです。そのコストは無論新品の装甲車を買うよりははるかに安いわけです。

中古は個数が限られていいますが、ラーテルやサクソンにしろ、レオパルト2にしろ、かなりの余剰が存在しています。またT-72などは多くの国が採用しているために部品の流通市場も存在します。またT-72などではサードパーティが独自のコンポーネントを提供しています。

販売に関してはぼくはサクソンの自走迫撃砲という意味ではなく、搭載している砲システムのことを指しています。砲身はノリンコからそのような許可を取っておき、契約で明記しておけば問題はりません。



キヨタニ
2010/08/08 13:04
続き。
>73式装甲車の流用

これは誤りです。89式あたりをファミリー化すればよかったのとも思いますが。日立に仕事を振る「オトナの事情」があったのではと思います。

調達の多様化の問題
確かにご指摘の問題は存在します。産油国など仲介者が手数料と賄賂をとるためにあちこちの装備をつぎはぎでいれており軍的な整合性があまりない。
一方で、複数の国から入れた方が交渉でフリにならないというメリットもあるわけです。例えばフランス一国にきめてしまうと、フランスに生命与奪件を握られるし、価格交渉もできなくなります。また要求にあった装備が揃えられなくなります。我が国でも米、仏、英、独、スウェーデン、イタリアなど多くの国から調達をおこなっています。
 南アはNATO規格を採用しています。

ぶっちゃけた話、「世の中三つといいことはない」という言葉があります。値段安くて、高性能、相互互換性もあるという条件を一カ国の新品ではまかなえないということです。またそれが仮にできても、安全保障上問題があるということです。

色々と示唆にとむご質問ありがとうございます。
キヨタニ
2010/08/08 13:16
yomoyama様 pori様
ぼくはこれをそのまま陸自が採用すべきとはいっておりません。このようなコストを削減しつつ、キモである搭載型の迫撃砲システムを開発するような開発や調達の姿勢を参考にしてはどうかと述べているだけです。

ただ内地の部隊でも装輪の装甲自走迫撃砲は必要だと思います。

ゆう様
現在先進国を中心にISTARアセット(FLIR、GPS、レーザー測距儀、レーザーデジネーター、コンピューター、レーダーなどを統合したもの)
から座標、標高などをデータ送信し、司令部が各砲にこれまたデータで指示をだします。射角、弾種、装薬、射撃数まで司令部から各砲にデータで指示が出されます。
 
 これらは砲兵だけでなく歩兵の迫撃砲にも普及しつつあります。我が国の場合、これらの装備に予算をかけないことは勿論、電波法の規制問題です。このため安価で性能のよい外国製品が使用できないわけです。国内メーカーは極めて狭い周波数帯で弱い出力で同様のものをつくる必要がある。しかも外国製品と競争する必要がないので価格低下が起こりにくいというわけです。

更には精密誘導弾も砲兵だけではなく、迫撃砲にも広がりつつあります。これらの導入も陸自は遅れています。
キヨタニ
2010/08/08 13:35
桜林美佐さんの『誰も語らなかった防衛産業』をご紹介いただき、まことにありがとうございました。いや、これは実に買う価値のある本でした。
清谷先生の『防衛破綻』や『専守防衛』をもう一度図書館で借りてきて、併せて読み直してみたいと思います。
スイフト
2010/08/09 09:32
ご報告ありがとうございます。
できれば拙著も書店でお求めいただければ、著者としては更に嬉しいのですが。
キヨタニ
2010/08/09 11:19
どこぞの陸軍ですか?
少なくとも日本は除外されますね!『陸軍』はないですから!(諸外国基準で陸軍相当はありますが。)
清谷氏であれば知らないという事は無いですよね?
ぐすたふ
2010/08/10 10:01

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