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zoom RSS 世界有数の国内市場を有効活用できなニートな防衛産業 武器輸出はすべてを癒すか

<<   作成日時 : 2010/07/10 23:06   >>

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 軍用品民間転用―平和外交を損なわないか
 http://www.asahi.com/paper/editorial20100710.html#Edit2

 朝日新聞の社説です。見出しが悪いのですが、本文は一読の価値があります。新聞の見出しは整理部がつけるのですが、過剰にリベラルだったのでしょう。

 保守論陣では兵器の輸出さえ解禁すれば、輸出じゃんじゃん儲かって防衛産業は潤い、兵器の調達コストも下がるので防衛省も国民もウハウハ。という都合のいい妄想が未だに流通しています。まるでフランス書院の「うっふん」系小説並の我田引水的妄想です。

 戦後ながらく我が国は世界第二の軍事費を使ってきました。
 つまり世界第二位の国内マーケットを持っていたわけです。近年は縮んだといっても未だ大きな市場には変わりません。
 オランダやベルギー、スカンジナビア諸国のように国内マーケットが小さいく、輸出をしないと防衛産業基盤が維持できない国とは事情が大きくことなります。

 そのような豊かな国内市場がありながら、今日までそれを有効に活用にできてこなかったわけです。
 そら、他所の国の何倍もの値段で装備を買っていればいくら金があっても足りません。一部にはハイテク装備がありながら、多くの分野で途上国並みのプアな装備が放置されてきたわけです。このような整合性のない装備調達はまともな戦力の整備は不可能です。

 公共事業に頼っている地方の土建屋体質の防衛産業と天下り先が欲しい官のもたれ合い、票にならないからと放置してきた政治が防衛予算をあたら無駄遣いしてきたわけです。

 何しろ国産開発を錦の御旗にして、あの手この手で、外敵=外国製品を排除してきました。外国との競合がありません。同じ分野で何社も棲み分け、競争を回避し利益を確保してきました。ですから国内の競争もなかった。天下りを受け入れてさえいれば、黙っていても仕事が入ってきたわけです。

 天下りも巧妙です。退職後2年間は直接関連のある企業に再就職できませんが、防衛産業メーカーは子会社や取引先に「再就職」をさせて面倒をみます。このような「隠れ天下り」も多数存在します。実際将官の再就職先をみると「なんでこんな会社に」と思うような企業に再就職をしています。主要取引先を見ると納得できるわけです。

 まずは、国内市場の中で出来る合理化を事業統合などを行うべきです。生産性を高めて、無駄を省くことで「市場経済」に馴れ、最低限の競争力を付けるべきです。

 フランス政府はタレスとサフラン傘下のサジェム・セキュリテの一部の事業の統合を画策しています。例えばサーマルイメージャーのコア・コンポーネントは両者と仏政府の共同出資の企業が開発・生産しています。つまりキモの部分は同じ。ならば事業を統合して市場での競争力を強めようというわけです。このようなことが他国では多々起きているわけす。


 今のままで輸出をさせてくれれば、すべて上手くいくというのは、バイエルも弾けないピアノ初心者が、プロと同じグランドピアノを買ってくれればすぐにでもプロになれますというようなものです。
 
 例えば航空産業は軍用機では世界の市場に出て行けないことはわかっていたにもかかわらず、民間機の分野に積極的に出て行かなかった。リスクを嫌って必ず儲かる防衛産業とリスクの外国メーカーの下請けに徹してきたわけです。ヘリ産業なんて殆ど防衛需要で喰ってきました。
 40,50代になっても自宅に寄生しているニートみたいなものです。それが輸出出来ないから儲からないと嘆くのは、
 「オレもやる気になれば出来るんだ。今は本気出していないだけだ」
 
 と、言うようなものです。
 利権ではなく、実力でお金を稼ぐということは、それほど甘くありません。
 まずは官業、社会主義体質からの脱却が必要です。

 つい最近、郵政公社がゆうパックとペリカン便の統合で大失態をしましたが、官業意識がつよいとこのようなミスをするという好例ですが、防衛産業も体質的には同様です。


 仮に事業が黒字化するまでには、10年単位の時間がかかる場合も多々あるでしょう。それまでに市場開拓や新製品の開発のための持ち出しもあるでしょう。しかも失敗し撤退というリスクも抱えます。
 また、意外に盲点になっているのが、日本が輸出をするならば外資ももっと国内市場に入ってくるというとです。国内の競争も激化します。


 国内で出来ることはした上で、どのような形で武器禁輸を緩和するのが、業界だけではなく国益に合致するのか、そのためにはどのような仕組みを作るかを真剣に考えていくべきです。





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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
キヨタニ先生、一年ほど前に某経済紙の記者の方から「富士重工が航空機部門を川崎重工に売り払うつもりでいる」という話を聞いたのですが今はどうなっているのでしょうか?
アパッチの件で防衛産業に見切りをつけたんじゃないかと思ったりしたのですが。
松本信二
2010/07/10 23:49
防衛産業界は何を考えているのか知りませんが、欧米のライセンス生産ばかりなのに
何を輸出するつもりなのでしょうか。
大体家電やクルマのようなブランド力は日本兵器には在りません。90式戦車や89式ライフルF2戦闘機なぞ輸出制限が無くても売れません。欧米やロシア、中国に席巻された市場で
実績の無い日本製が売れるなはずがありません。マーケットが無いのにタラレバのヨタ話をするのはいい加減にして欲しいですね。
サイクシー
2010/07/11 01:34
>サイクシーさん
>実績の無い日本製が売れるなはずがありません。マーケットが無いのにタラレバのヨタ話をするのはいい加減にして欲しいですね。

これってそんなご大層な話ではなく、商売の種を増やす為の努力の一つでしかありませんよ。それもまだ端緒についたばかりの。
後、防衛産業だけに目をやって判断するのは間違っています。
あーにゃ
2010/07/11 09:32
富士のヒット株主のトヨタがあまり、同社の航空産業を必要に思ってはいないらしいです。また、経産省もヘリ産業の統合を意識しているようです。

いずれにしても防衛需要に関して富士は今や、ドローンとへり型UAVぐらいしかない。そろそろ決断をするべき時に来ていると思います。
キヨタニ
2010/07/11 10:10
>郵政公社がゆうパックとペリカン便の統合で大失態
一応、郵政は公社じゃなくて民営化になっているけど、今でも民間と比べたら生ぬるいですからね。

みずほ銀行のシステムトラブルとかを思い出しました。
へろ
2010/07/11 10:33
【ゆうパック遅延】現場でかけずり回る職員さんたちの内部告発スレ
http://blog.livedoor.jp/goldennews/archives/51512076.html
元友店長
2010/07/11 19:02

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