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zoom RSS 兵器の値段も性能の内

<<   作成日時 : 2010/02/24 10:42   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 26 / トラックバック 0 / コメント 27

 他の工業製品同様、兵器においても値段は重要な要素です。
 値段、換言すればaffordability、調達性は性能の一部といってもいいでしょう。

 89式小銃の場合、32万円ほどします。
 対して先進国でも小銃の価格は概ね5〜8万円程度です。カナダのC7はM−16のライセンス品(メーカーはコルト社に買収されて、現在コルトカナダになっていますが)で、7万円ほど。
 ライセンス料を払ってこの値段です。英国やオランダなどにも輸出されていますから、値段、性能共にも国際競争力があったことことになります。

 仮に89式は値段が高いが故に調達が長引き、20年以上経った現在でも64式との交換が完了していません。
 もし89式の価格が8万円だったとしたら、単純に計算して調達スピードは4倍になります。恐らくは交換はとっくに完了していたでしょう。

 仮にいくら性能が優れていても、コストが高く調達が遅々としてすすまなければ、数を揃えて予定された戦力となるまで長期の時間がかかります。それは戦力化に時間がかかるということです。
 またその間訓練、整備、部品の管理など兵站の負担は二倍になります。

 仮に性能が100で値段が30万円の小銃と、性能が70で価格が5万円の小銃があったとしましょう。10万人分の小銃を調達する場合、後者は予算3年で完了、対して前者は18年かかります。その差15年です。
 後者は調達も兵士の習熟も早く数年で戦力化できます。対して前者は20年程かかります。

 仮に前者と同じペースで後者を配備するならば、1丁当たり25万の予算がほかに使えます。例えば光学照準器やタクティカルライトなどを調達しても有り余るおつりがきます。また他の装備を調達費用にも回せます。
 
 いくら性能がよくとも手に入るまでに10年も20年も待たなくてはならない兵器よりも、多少性能は劣ってもすぐ手にはいる兵器の方が有用です。特にハイテク兵器ほどこの傾向があります。最新式の兵器でも調達に20年かかればその頃には旧式兵器です。

 また工業製品にはそれに相応しい値段があります。カローラだって値段が1000万円もすれば誰も買わないでしょう。あの値段でだからこそ売れているわけです。

 実用的な価値を無視して、値段が高くても買うのはマニアやコレクターです。つまりは道楽です。兵器の調達は道楽ではありません。

 こういう観点からいえば89式はすぐれた小銃とは言えません。
 まして89式小銃は、性能が凡庸な銃です。品質的には次第点です。格段に他国の小銃に比べて優れているというわけではありません。
 これはぼくの知っている他国のライフルと比べて撃った経験のある現役、退官した複数の自衛官の感想です。

 89式には、安全装置の位置が悪い、銃床が固定式(空挺用除く)で装甲車に搭乗したり、市街戦での使い勝手が悪いなどの欠点があります。
 これらはメーカーではなく運用側の要求に問題があります。

 また運用側にはコストを下げて調達性をあげるという視点の発想に欠けています。

 例えば銃床を折りたたみ式だけに統一し、3点バースト機能、二脚などは廃止するなどすれば多少はコストの削減と使い勝手の向上になるでしょう。
 
 無論我が国の場合、他国にない制約もあります。が、それにあぐらをかいて「高いものは高いんだ」と開きなっているから現在のような状況を招いているわけです。
 

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コメント(27件)

内 容 ニックネーム/日時
>値段、換言すればaffordability、調達性は性能の一部といってもいいでしょう。

国産だろうが外国産だろうが、ちまちまと調達するしかない現状では”調達性”などという物は望むべくもないのでは?
何とかして欲しいとは思いますが、こればっかりは政治の方が断を下してくれないとどうにもなりませんからねえ……
あーにゃ
2010/02/24 14:59
前半の趣旨には文句ないのですが、後半の具体例で色々疑問符が…

> 品質的には次及点です。

「次及点」という言葉を初めて聞いたのですがおそらく「及第点の次ぐ」ということで、「落第」と言いたいのでしょうか?
「設計」はともかく、品質が悪いという話は寡聞にして知りません。また、品質に異常なまでにこだわる日本人の性質から考えて「品質に劣る」という話は信じにくいところがあります。できれば具体例を挙げていただければと。

> 銃床が固定式(空挺用除く)で装甲車に搭乗したり、市街戦での使い勝手が悪い

このあたりは野戦用に設計された小銃、ということで、野戦向け/市街戦向けのトレードオフになるのではないでしょうか。都市部で活動する特殊部隊がライフルよりはカービンや短機関銃を装備しているのは有名な話ですし。
装甲車内での取り回しについても、下車戦闘が基本と考えればあまり問題はないのでは?

> 折りたたみ式だけに統一し、3点バースト機能、二脚などは廃止

世間的には固定式銃床の小銃の方が多く、折りたたみ式はオプションの一つでしかないように思います。折りたたみ式が主流にならないのは何らかの理由があると思いますが、そのあたりはどのようにお考えでしょう?
また、3点バースト機構は装備している小銃の方が多く、それを廃止する理由がわかりません。素人目から見ても、フルオートによる弾薬の浪費を防ぐ、良い構造だと思えます。
「着脱式3点バーストモジュール」を廃止して固定式にする、ということであればまだ理解できますが、どのような意図でこのようなことを書かれているのでしょうか?
2脚の廃止については同意します。
Null_Devices
2010/02/24 15:39
>次及点
及第点の誤りです。訂正します。

>折りたたみ式が主流にならない
折り畳みあるいは伸縮型がトレンドです(ブルパップ除く)。その理由は本文に書いてあるとおりです。装甲車搭乗中も銃の全長が短い方が便利です。
>3点バースト機構は装備している小銃の方が多く
多くありません。3点バーストの機能を付加するために部品点数、コストが増えます。
キヨタニ
2010/02/24 17:14
SIG SG550やH&K G36と同じようにフォールディングストックが標準でいいのではないでしょうか。
二脚はSIGが標準装備でH&Kがオプションでしたか?
どちらにしても無くしていいというものではないように思えます。

バースト機構は、特別な事情でもない限り付けるのが外国の例を見ても普通のようですが違うのでしょうか。
abcd
2010/02/24 20:12
キヨタニ氏が常々仰っていた新型戦車調達より既存の戦車を改良という意見には同意しかねますが、89式小銃に関しては諸手を挙げて同意します。ほんとふざけてますよね 1丁30万円のアサルトトライフルなんて 20年たっても部隊全部に配備できないとは 我々の税金を何だと思っているのでしょうか キヨタニ氏が日頃仰っている「所詮税金人の金後は野となれ山となれ」ですね クソ政治家クソ官僚クソ業者のしわ寄せが隊員達に背負わされるなんて どうしても納得できません。
日本元気DEショー委員会
2010/02/25 00:28
ちょっと調べてみましたが、バーストは80年代位に流行ったもののその後すたれたようです。
コストを含めたトータル的に無くても問題は無いと判断されたのでしょう。

現用ライフル
・バースト止めたモノ
#M16系のバーストは問題が有った。
M16A3
M16A5
M4A1
C7A1
・バースト有り
SG550(80年代開発・M16A2と同時期位)
89式
FN FNC(70年代半ば開発)

開発中・新採用ライフル
・バースト無し
H&K G36
XM8
タボールAR21
FN SCAR
HK416
・バースト有り
探した範囲では見当たらず
774
2010/02/25 08:52
>89式
反動はM4に比べてマイルドだとか、バイボッドは扱い易くて宜しいとかは見ますし。
価格はSG550とそんなに変わらん気が……。

それは兎も角、個人的にバイボッドは有った方が良いと思います。
地面に置く時に、機関銃にもたれ掛けないでも機関部が汚れずに置けますから。
アームストろんぐ〜
2010/02/25 09:57
>H&K G36
G36やG36Cは2発バースト機能があります。
一般的な歩兵向けのバージョンには、G36はバースト機能を残していると言うことです。
バースト無しとして上がっている小銃は、どちらかと言うなら特殊部隊向けの性格のモノが多いですね。
M16もFAなしバースト機能ありのM16A4が主力ですし。
M4A1はソーコムへの納入で、バリバリに特殊部隊向けです。

実際のところ、バーストがあった方が良いのか、FAのみで問題ないのか、議論が多いところです。
通りすがり
2010/02/25 12:42
パーツを削りまくってるM16の民間版である狩猟用AR-15でも日本国内での販売価格は一丁30万円で販売されてた
89式だろうがM-16ライセンスしようが変わりないかも
だらだらした調達数の問題であって値段で文句言ってんのははねぇ

ちなみにキヨたんの大好きな輸入にしたって予備パーツ大漁に買う羽目になるから
MIZUPE
2010/02/25 13:08
つまりコレクションするだけならいざ知らず、自国の装備として調達・運用するのであれば国産だろうが輸入だろうが掛かるコストは大して変わりゃしないという事ですか。

2010/02/25 18:12
元自衛官の立場から言わせてもらうなら、「銃床については各科部隊の運用法で有無が問われるので、固定式と折りたたみ式の2種類あっても良いと思いますが、3点バースト機能と二脚の廃止は賛成です。
3点バースト機能がなくても、指きりによる射撃訓練をすれば3連射でも5連射でも可能になります。
射撃の技能については、個人によって差があり、二脚を立てて固定射撃しても、百発百中の射撃名手にはなりませんし、軽機の代用にもなりません。
小銃に二脚を付いていると、ガチャガチャと動いてうるさく、射撃する時に二脚に触れていると違和感があり、とても射撃がやり辛いです。
せいぜい二脚が役に立つのは、小銃を地面に置く時だけです。
長時間小銃を担いで行軍は結構辛いものです。
無駄な物が付いた重い小銃よりも、無駄な物を省いた軽く扱いやすい小銃の方が、隊員達に歓迎されると思います。







バンデット
2010/02/25 20:16
日本ではやたら規制が多いし、そんなに売れるものでもないし、日本の規制に合わせて改造するにも手間がかかるしで単純にどうとは言えないと思いますが

むしろこれも武器輸出禁輸政策のせいではないでしょうか
メーカーの豊和工業の銃は民間向けの銃では海外でも一定の評価を受けていますし
an
2010/02/25 20:22
価格差が3〜4倍となると、まずいですな。
予備パーツ用に2〜3丁買えてしまいますよ。
歩兵
2010/02/25 21:17
中の人曰わく。
普通に習熟すればスタンディングでプローンレンジをバシバシ中てられる銃
全弾命中しないとか下手糞にもほどがある
反動はM16系の半分以下
不発射は弾薬不良以外で見たことない
らしいですよ。

バンデットさん
重さはM4と変わりませんし、G36やSG550もバイボッド付いてますよ。
アームストろんぐ〜
2010/02/25 23:26
774さん
バーストなしのXM8、FN SCAR、HK416この3つは米国の要求で制作されたものです。
また、練度の高い特殊部隊で一部採用してます。

また、新採用ライフルでは先日チェコがSCARを蹴ってCZ805(バーストあり)を採用しています。

あなたの書かれた新採用アサルトライフルでバーストがなく一般部隊まで装備されているのはTAR21のみです。
それとM16A5って何ですか?
goos
2010/02/26 19:28
>goosさま
M16A5はM16A3の改良タイプですね。

>キヨタニさま
>3点バースト機構は装備している小銃の方が多く
>多くありません。3点バーストの機能を付加するために部品点数、コストが増えます。

主に80〜90年代に採用され、現在も使用されているアサルト・ライフルのうち3点バーストを備えた、もしくは組み可能なものは上で挙げられた
SG550
89式
FN FNC
M16A2(M16A4)
H&K G36
CZ805(2000年以降採用)
の他に
FAMAS(フランス)
AR-70/90(イタリア)
K2(韓国)
など多数存在します。ロシアのAN-94 Abakanなどを除いたとしてもこれだけの銃が存在しているにも関わらず「多くありません」と断定してしまうのはいささか誤解を招きやすい表現に思えます。
確かに2000年代以降に開発・採用されたアサルト・ライフルにおいて3点バースト機構は主流ではないとは思いますし、個人的にも3点バーストは「なくてもよい機能」とは思います。
ここは「3点バーストは昨今のトレンドとはいいがたい」程度の表現にとどめておくのが無難ではないでしょうか。
みづせ@黒書刊行会
2010/02/28 02:27
 90年以降に開発された、あるいはサービスライフルとして採用されたライフルでバースト機能を有しているものはさほど多くありません。
 またメーカーがバースト機能付きのライフルを開発しても必ずしもそれが採用されるわけではありません。
 つまり、はやりを取り入れてみたけども思ったほどのベネフィットはなかったということでしょう。欠点のひとつはセレクターの選択がひとつ増えることで、とっさの場合の反応が遅れることも挙げられるでしょう。

ちなみにぼくが取材した銃器メーカー人間や軍人、同業者の多くもバースト機能には否定的です。
キヨタニ
2010/02/28 10:53
ではまた「90年以降」という限定条件で誰かのデータ提示を期待するしかなさそうですね。
abcd
2010/02/28 19:09
90年代以降に開発されたアサルトライフルの少なくない部分が特殊部隊向けやトライアルでの特殊部隊限定運用だったりでは?
特殊部隊のように高い練度を持った部隊ではバースト機能の必然性は薄いのですから、比較の対象として妥当とは、とても思えませんが・・・・・・
というか、バースト機能を排除してのコストダウン云々の話は「小銃のコストダウン額」とそれによって必要となる兵員の射撃訓練に必要な期間や費用とを比較する必要もあると思うんですけれどもねぇ
通りすがり
2010/03/01 10:41
>銃器メーカー人間や軍人、同業者の多くも

彼らの所属や兵科、そういった物も詳しくお願いします。
正直これだけでは判断に困ります。

2010/03/01 18:37
>90年以降に開発された、あるいはサービスライフルとして採用されたライフルでバースト機能を有しているものはさほど多くありません。

上記に該当する小銃の名前をあげていただけませんか?他の方は具体的に小銃の名前をあげているので、同様にしていただかないと説得力が全くありませんよ。
にっく
2010/03/01 19:17
証言者個人の情報などは必要ありませんが、せめて小銃や採用国の具体的な名称を出すことは必要でしょう。
そうではないですか?
abcd
2010/03/02 01:29
一旦採用されたが、使われず廃れて来た機能って事でしょ。
銃器なんかは、単純でパーツが少ない方がいいんでしょうしね。
歩兵
2010/03/02 19:30
アメリカなんかは現状でバースト機能とセミオートのみの小銃を主力小銃として採用してます。
AN94やG36のような比較的新しい先進国の小銃にも採用されている機能です。
バースト機能要不要に関しては、未だに議論が分かれ、一方的に決めつけることが可能だとは、私には思えない問題ですねぇ。
そもそも、この手の問題は「その国が小銃を持った歩兵に何を求めているのか?」から突き詰めるべき問題ではないのか、とも思います。
お値段や性能の数値を比較して優れているのどうのと断ずるのが、良いことなのかどうか。
通りすがり
2010/03/02 22:16
>みづせ@黒書刊行会さん
>M16A5はM16A3の改良タイプですね。
M16A4のフルオートと3バーストモデルはRO905とRO901で区別されていると思いましたが…
日本のみで広まった架空のモデルでは?
goos
2010/03/03 17:24
>goosさま
英文サイトでもM16A5の単語は見られるのでてっきり実在のモノかと思ってしまいましたが、どうもA4に続く次世代M16という意味合い(かエアガンの商品名)で使われてるようで実体がありませんね(^_^;)。
大変失礼しました。訂正してお詫びいたします。
みづせ@黒書刊行会
2010/03/03 23:22
>90年以降に開発された、あるいはサービ
スライフルとして採用されたライフルでバースト機能を有しているものはさほど多くありません。

思いつくだけ書いてみた。
FX-05(メキシコ)
G36(ドイツ)
CZ805(チェコ)
QBZ-03(中国)
QBZ-95(中国)
FAMAS G2(フランス)F1のオプション装備からバースト標準装備
一応M16A4も90年以降の装備品です。
goos
2010/03/04 20:33

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