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zoom RSS 株主が防衛産業を見限る日

<<   作成日時 : 2010/01/16 14:21   >>

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富士重が防衛省提訴 ヘリ発注中止で350億円求め
http://www.asahi.com/national/update/0115/TKY201001150358.html

 防衛省の戦闘ヘリコプターの調達方針変更で、米メーカーに支払ったライセンス料などのほとんどを回収できなくなったとして、富士重工業は15日、国に約350億円の支払いを求める訴えを東京地裁に起こした。

 防衛産業の一番のメリットは利益が低くても、取りっぱぐれがないことでした。

 ところが、アパッチの件ではこれが無くなっちゃったわけです。利益率が低い上にリスクも高くなったわけです。

 この一件が契機になってそれまで一つ一つの装備に上乗せされていた初度費が先払いになりました。
 ですが、防衛省はその「ルールの変更」をキチンとアナウンスしていません。納税者は調達コストが安くなったと勘違いしてくれたらラッキー、ぐらいに考えている野かも知れません。防衛産業や関係者は知っているからいいじゃないという言いぐさは通用しません。

 初度費が先払いになっても62機が10機に減らされたら、商売としては成り立たないでしょう。つまり初度費前払いも魔法の薬ではないわけです。また今後初度費が必要ない輸入品に調達が流れる可能性も高くなるでしょう。

 さて、株式を公開している防衛産業の株主の立場から見てみましょう。今後防衛費が大幅に増えるわけでもなし、リスクは上がる。FX(次期戦闘機)でもわかるように防衛省には確固とした産業育成の見識もない。

 大手企業では防衛費の売り上げ比率は低いです。業界最大手の三菱重工が15パーセントぐらいですが、あとは数パーセント、あるいは1パーセント以下。
 コマツにしても売り上げが2兆1千億程度で、ウチ防衛関連は340億ぐらい、その内装甲車輛は100億円ぐらいです。
 
 ならば防衛産業は終わりにして、人や資本などのリソースを本業あるいは儲かりそうな新規事業につぎ込んだ方がいい。その方が株価もあがるでしょう。
 逆の視点からみれば防衛費を抱えていると株価が上がらない、とも言えます。

 また会社を売り買いするとき、特に外資や外国の投資家に売る際に、防衛部門を抱えていると売りにくい。これまた株主からみれば困った点です。これも株価が上がらない原因になります。

 さりとて、防衛産業で培った高い技術が本業にフィードバックされるか。

 また我が国の場合、調達数、調達期間、総予算額を決めてメーカーと契約しません(していたら今回のアパッチのようなことは起こらないわけですが)。
 ですから、生産が5年で終わるのか20年かかるのかわかりません。要は生産計画さらには事業計画が立てられないわけです。5年と20年では人件費もラインの維持費も単純計算で4倍違います。また同じ利益を得るためかかる期間も4倍違います。

 こんなものはビジネスじゃありません。

 つまり株主の立場から見れば防衛部門は売り払うか、あるいは店じまいをする方が、利益があるわけです。
 ぼくはこのような話を20年ぐらい前からしているわけですが、防衛省は未だに「業者は仕事を出せば尻尾を振ってくると」官尊民卑意識をもった人達が多いわけです。

 つまり経営者が続けたいといっても株主がNoという可能性が年々増えてきているわけです。

 昔は防衛部門はリスクが低くても安定した儲けがあり、不況時のバッファーとして機能していたし、企業も売り上げ市場主義でした。
 仕事と名が付けば、利益率が低かろうと、筋が悪かろうと馬の糞まで拾ってきました。
ですが、時代は変わっています。北沢防衛相にそのような意識はあるのでしょうか。今回の富士重工の訴訟を「イチャモン」ぐらいにしか考えていないではないでしょうか。

 アパッチの調達打ち切りの原因と、その責任の所在を明らかにして必要とあらば関係者を処罰すべきでしょう。陸幕は露骨に「証拠隠滅」を図っていましたが「戦犯」を明らかにすべきです。

 それもやらずにOH−1ベースの戦闘ヘリを開発しようなどという「道楽」を進めていますが、世間を舐めているとしかいいようがありません。

 今回の件は海外のサプライヤーにも防衛省との取引はリスキーだ印象を与えたわけで、責任は非常に重いことも認識すべきです。今後防衛省向けの価格にはジャパンプライムが載せられるかも知れません。



成毛眞ブログで拙著『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備』が紹介されています。
http://d.hatena.ne.jp/founder/20100114/1263437960


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