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zoom RSS 鳩山首相は武器輸出三原則等の見直しをせずに防衛産業を維持できるか

<<   作成日時 : 2010/01/14 10:28   >>

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武器輸出三原則、防衛相が見直しに言及 首相は否定
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20100113ATFS1202712012010.html

北沢俊美防衛相は12日、都内で開いた防衛関連産業の新年会で、武器輸出三原則について「そろそろ基本的な考え方を見直すこともあってしかるべきだ」と述べ、見直しに前向きな考えを示した。一方、鳩山由紀夫首相は記者団に「三原則は守らないといけない。(防衛相は)多少口が軽すぎた」と即座に否定した。


 武器輸出三原則と武器輸出三原則等は異なります。新聞などでは混同していますが誤りです。
詳しくは拙著『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備 』をご覧ください。

 まあ実際問題として武器やその製造設備の輸出を全面禁輸というのは事実上尻抜けです。政府や経産省のさじ加減で以下のようにもなります。その典型例が「紛争当事国」の米国とのMDの共同開発です。


 実際問題として兵器、特に戦闘機など先端装備の開発および調達コストは高騰しており、一国だけでは難しくなってきているのが現状です。開発リスクの低減と、新たな技術に触れるためにも共同開発は必要です。

 「日本の兵器産業は他国の何倍も優秀で、少ない開発費で優秀な兵器がドンドン開発できる、あるいはひとたび輸出をすれば飛ぶように売れるだろう」、というのはフランス書院のウッフン小説並の幻想あるいは願望に過ぎません。
 むしろこのような肯定派が防衛産業が現在のような苦境に陥れてと行ってもいいかもしれません。日本の技術は大丈夫だ、国産兵器は高くないとか言われて、いれば危機感も改革への意欲も持たないし、ましては事業統合や合併など考えもしないでしょう。結果として不効率な小さな規模のメーカーの乱立体制が温存されてきたわけです。

 実戦は愚か、国際市場で揉まれたこともなく、国内の同業他社とは棲み分けをして競争が殆どありません。そもそも技本はリサーチの費用すらケチって海外視察も殆どいっていません。まずまともなリサーチ&マーケティング能力が無いわけです。

 加えていえば、我が国では充分な試験場、特にミサイルや長距離野砲などの試射場もありません。ラインメタルが南アフリカのデネル社の砲兵部門を傘下に納めたのは、技術の高さと開発力もさることながら、広大な試射場を安価に利用できるということも大きかったからです。

 ただ、我が国の技術にもアドバンテージがあるものもあります。個々の技術では世界の先端をいくものもあります。そのようなリソースを上手く活用し、外国と共同開発していくことが装備調達の効率化につながると思います。
 逆に武器禁輸を堅持し、まともな装備を開発するのであれば、少なくとも今の何倍も開発費が必要です。


 理系出身の首相は禁輸を継続するならば、どのようにして防衛技術の開発・生産能力の維持を行うのか、その青写真を納税者に示す必要があります。それができないのであれば、社民党や共産党の党首レベルということになります。
 政治家もメディアも防衛産業の問題を「産業の問題」としてではなく、政治問題としかとらえないことも問題です。

 ただ禁輸緩和で意外に見過ごされていますが、それは海外のメーカーも日本に進出し易くなるということでもあります。これによって国内メーカーの再編成が加速する可能性は高いでしょう。いずれにしても業界再編は不可避です。ならば先んじてこれを行った方が痛みが少ないでしょう。
 禁輸解禁積極論者には、えてしてこのような視点が欠けているようにも思えます。

 もし民主党が現状を放置するならば防衛産業は緩慢な死を迎えるでしょう。



防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備 (中公新書ラクレ 338)
中央公論新社
清谷 信一

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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
ミンスには「全ての兵器を楽器に」と抜かす変なおじさんがいてます。白兵戦になれば、その楽器を振り回すでしような。素手では痛いので。
武器とは?
2010/01/15 08:04
スターリンのオルガンも楽器でしょうか?
キヨタニ
2010/01/15 10:16
ついに、富士重工もブチ切れたようですね。
訴訟を起こして金よこせというのは、当然でしょうね。これからは、きちんと発注書に台数明記しないと作ってやんないよ。という会社が増えそうですね。
ワタリガラス
2010/01/15 12:39
この記事ですね。

富士重工、防衛省を提訴…ヘリ発注打ち切り
1月15日12時7分配信 読売新聞

 富士重工業は15日、陸上自衛隊が使う戦闘ヘリコプターの発注を中途で打ち切った防衛省を相手取り、米国メーカーに支払ったライセンス料など、初期経費約350億円の支払いを求める訴えを東京地裁に起こした。

 軍事機密などを理由に国と少数の専門企業が密接な関係を維持している防衛産業界で、企業が国を訴えるのは異例だ。

 訴えによると、防衛省は2001年、米国ボーイング社製の対戦車ヘリAH64Dを62機導入することを決め、富士重はボ社にライセンス料など初期経費約420億円を支払い、国内生産を開始した。多額の初期経費は取得する62機で均等割りする契約だった。その後同省は、07年度までに10機の契約を結んだ後、取得機数を62機から13機に変更。初期費用は契約済みの10機分(約70億円)しか富士重は受け取っていない。

 防衛省によると、部品価格の高騰で1機あたりの価格が、当初の約60億円から83億円にまで跳ね上がったことなどが機数変更の主な理由だ。富士重は「取得機数にかかわらず、ライセンス料など初期経費は防衛省が全額負担すべきもの」と主張している。 最終更新:1月15日12時7分

シロ
2010/01/15 14:07
 幕府は阿片戦争の情報が入ると、陳腐化した装備では国防は不可能と判断し、兵制改革と兵器の近代化に着手しました(ペリーが突然来航して、幕府が慌てふためいたというのは嘘です)。
 新型の銃や大砲、蒸気機関の開発、オランダ人軍事顧問による戦闘訓練、文献を翻訳した西洋式軍備の研究などを相当に熱心に行っていました。軍用の携帯食料として乾パンなどは、このころ作られましたし、町人や農民を徴兵して防備にあたらせることすら議論されていました。幕府は、決して遊んでも眠ってもいなかったのです。
 鎖国体制であるという状況を考慮すれば、当時の幕府の危機意識と現状認識の高さは、我々の想像以上だったと言えるでしょう。
 これだけ情報が容易に入手できる現在が、なぜかくも現状認識が低いのでしょうか?
シロ
2010/01/15 14:23
>当初の約60億円から83億円にまで跳ね上がったことから

これは眉唾ですね。英国が67機を7年で調達して単価が約60億円です。何年かかるかわからないのに60億円ということは無いでしょう。それはわかっていたはずです。

AH−1なんて最大64億円、米陸軍の8倍でした。そういう調達を平気でやってましたからね。
キヨタニ
2010/01/15 15:47
日本の防衛産業問題はキヨタニさんのジャーナリストとしてのフィールドワークの重要な一つであると同時に
日本国民として重要な問題提起にしたいのは
キヨタニさんの著書を読んでいた者からすればわかるからね。

日本の技術が外国で戦争に使われるのを防ぎたい気持ちはわからないわけではないが、日本が世界有数の武器輸入国であり武器輸出国を潤している現状について、武器輸出反対派からは聞いたことがないんだけどね。
へろ
2010/01/15 20:47
例えは悪いですが、売春はイカンが、買春はOKと同じ理屈ですね。
キヨタニ
2010/01/16 10:22
民主党のメンツだと日本航空は(例え国民の血税をたれ流し続けても)潰させません!
防衛産業は庶民には馴染みのない事だから潰れてもまぁ問題無いだろう。
これくらいの認識しか持ってないのでは無いでしょうか?
元友店長
2010/01/17 13:23
JALは官僚だけじゃなくて、政治家、ヤクザなどの利権だらけですからね。潰せない理由があれこれるわけです。防衛産業にはそこまでの利権もないですし。
キヨタニ
2010/01/17 21:36

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