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zoom RSS 富士重工VS防衛省・陸幕 アパッチ冬の陣

<<   作成日時 : 2009/12/25 19:14   >>

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富士重、防衛省提訴へ ヘリ発注中止巡り
http://www.asahi.com/business/update/1223/TKY200912220544.html

 前から予想されていたとおり、富士重工が戦闘ヘリ、アパッチの件で防衛省を訴えるようです。
 被害総額は500億円弱ですが、部品代は支払われる可能性があるとして当面訴訟は見送ったために、請求額は400億円ほどになるそうです。

 口約束で総額数千億円のプロジェクトを始めちゃうなって民間では考えられません。
 もっとも他の官庁でも考えられないでしょうが。

 前からぼくが言っているように、他国のように調達数、調達期間、総額を決めて契約していれば、こんな無様なことにはならなかったわけです。

 いくらインチキでもダムや空港では需要予測を立てて、いくらインチキでも必要とされる時期を想定し、これまたいくらインチキでも予算総額を出して、国会で承認されて初めてゴーサインが出るわけです。

 ですが、防衛装備調達だけが、「いつまでにプロジェクトが終わるかわかりません、総額がいくらかもわかりません」と、言っているにも関わらず、国会が毎年の予算を通してしまっています。
 不思議なことです。
 これは防衛省といよりも、財務省にその責任があります。財務省がわざわざ高い兵器を買わせているようなものです。

 アパッチを採用することは最初から決まっていました。
 三菱重工がAH−1Zを提案しましたが、まともに検討もされませんでした。対して英国ではデネル社のロイホックなど数機種をかなり真剣に検討した結果、アパッチを採用しました。
 
 仮のアパッチにするにしても毎年の調達数を増やして単価を下げるとか、輸入にするとか、機数を減らすとか、色々手はあったでしょう。

 何しろ総額いくらかかるか、なんて気にしないから欲しい玩具を買っちゃうわけです。陸幕には当事者意識がありません。そこらの軍オタがプラモを買う感覚で装備を選んでいるわけです。また陸幕を管理する立場の内局もメクラ判を押して良きに計らえと許してしまったわけです。

 例によって無論、誰も責任を取っていません。

 当時のエライ人達は天下りして優雅に暮らしていることでしょう。

 そして、今度はOH−1の改良型の、アパッチより小振りな攻撃ヘリを大金をかけて、開発しようとしています。無論何機調達するなんかも決めていません。
 ですから、総額いくらのプロジェクトになるのか、開発費も含めた一機当たりの単価もわかりません。

 陸自の年間のヘリ調達予算は概ね350億円です。
 その枠内で「国産新戦闘ヘリ」が何機調達できるのでしょうか。高価な戦闘ヘリを調達すればその分、汎用ヘリの調達枠が減ります。
 その汎用ヘリもこれまたOH−1をベースに開発することになっていますが、かなり高価になるでしょう。そして陸自のへりの保有数や近代化は遅々として進まず、衛生部隊で専用のヘリを導入するなんてことは無理となります。

 しかも新戦闘ヘリはたった10機のアパッチと合わせて運用されるわけです。不効率も甚だしい。

 オッさん達、脳みそ沸いとるの違うか?と言いたくなります。

 一回陸自の予算を半分ぐらいに減らさないと目が覚めないのかもしれません。

 結局つくりたいからつくるわけです。まるで夏休みの図工の課題です。

 税金所詮は人の金、後は野となれ山となれ、というところです。

 富士重工の今期の純損失は約250億円と見積もられています。
 本業の自動車は非常に厳しい。防衛省との裁判で負けると近い将来400億円の欠損を確定しないといけなくなり  これは同社に取っ手極めて大きな損害でしょう。

 同社の航空部門も厳しい状態が続いています。
 ビジネス機では出資していたが取引先が潰れて、出資分も売掛金も回収できませんでした。
 また防衛省向けのめぼしいプロジェクトはなく、参加しているCX、787も共に開発が遅れており、当面仕事が入ってきません。無論本来アパッチで入ってくるはずの数千億円の売り上げも入ってきません。

 富士重工では航空産業からの撤退や人員整理が起こる可能性があります。 
 また恐らく同社の航空部門の下請け企業の中からは、倒産や従業員の解雇をおこなうところが出てくるでしょう。
 
 まさに防衛省発の不況の嵐が吹き荒れます。また防衛産業あるいは航空産業から撤退するところもでてくるでしょう。
 これでFXの話まで流れたら、防衛産業は更に多くの倒産と失業者が出てくるでしょう。防衛産業の基盤や、そこで働く人達の生活を防衛するのは防衛省の仕事ではないのでしょう。

 またこの件は海外のサプライヤーに日本との商売はリスキーだと、宣伝したようなものです。日本とのつきあいが長いボーイングだからあれこれ言いたくてもいわなかったのでしょうが、普通が外交問題になるか、訴訟になる案件です。防衛省と陸幕は我が国の国際的信用を大きく毀損しました。

 今後防衛省向けのビジネスには「ジャパンプレミア」が乗せられる可能性あがあります。

 そのツケはすべて我々納税者が払うことになります。


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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
そもそも日本に少数の戦闘ヘリがあることによって何が出来るんでしょうか
人民解放軍が日本を攻めてくるとしたら、当然海上からだから海上自衛隊の戦闘艦の出番だし、そもそも日本に対戦車ヘリがあっても敵の戦車が上陸することは困難だから対戦車戦闘は無いと思います。
また上陸部隊は必ず大量に携帯スティンガーミサイルを持ってくるので、それで弾幕を張られたら自衛隊が持つ少数の戦闘ヘリ部隊は壊滅してしまうんじゃないでしょうか

まぁ支那大陸に自衛隊が邦人保護のための部隊を駐屯させるというなら、その時戦闘ヘリはすごく頼もしい存在になるとは思いますが

制空権を確保して、携帯ミサイルを持った歩兵が隠れる場所がない場所以外で戦闘ヘリって使えるんでしょうか?
まるこ
2009/12/26 15:51
戦車戦用というより、今後はテロリストが潜入し、破壊活動をした場合、その殲滅に役立ちそうな期がしますが…

ところで、22年度予算案で新戦車が13両計上されましたが、キヨタニさんのご意見はいかがでしょうか。
アイゼンシュタイン
2009/12/26 15:56
攻撃ヘリは以前に比べたら、生存性は落ちています。近年では対戦車攻撃のような匍匐飛行のによる攻撃よりもむしろISRアプラットフォームあるいは対地火力支援のプラットフォームとしての役割が強まっています。

ただ、対ゲリラ・コマンドウ用、あるいは味方のヘリ部隊の護衛などでは有用です。トルコ軍も対PKKの作戦では戦闘ヘリを多用しています。現在AH−1Fを使っていますが、新たに採用を決定したマングスタの戦力化が先なので、米国からつなぎでAH−1Zを導入します。

新戦車調達は金の無駄というのがぼくの主張です。そもそも次期大綱では戦車定数の大幅減もありうるわけですから、調達するか否かは新大綱がでるまで保留すべきでしょう。

新しい戦車を買う金があるならば、歩兵戦闘車やUAV、暗視装置などを増やすべきです。
キヨタニ
2009/12/26 17:23

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