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zoom RSS 防衛産業は、再編はヘリから始まる?

<<   作成日時 : 2009/08/14 00:30   >>

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次の選挙で民主が勝とうが、自民が勝とうが来年は防衛産業のあり方をめぐって一波乱があると思います。

 ぼくは15年以上前から業界の再編は必至だと主張してきました。また業界が自主的に再編を行わないと、業界全体のダメージがより大きくなるとも主張してきました。そのような状態が今、現実化しています。

 このブログで先も紹介したように、防衛産業から撤退する企業が増えています。

 アパッチの調達中止、F―2戦闘機の生産終了を目前にしてもFXがライセンス生産でいくのか、否かの決定がなされないことによって、業界の防衛省への信用はかなり揺らいでいます。

 アパッチの調達中止はその当時の内局、陸幕の責任者の責任の追及も、何故このような無様なことになったか調査も、またメーカーや商社に対するなんらの補償もありません。
 
 富士重工はアパッチでこの20〜30年数千億円も売り上げを予定していたわけですが、それがパア、になった訳です。無論この売り上げを当てにしていた下請け企業も多いでしょう。

  
 富士は本業のクルマのビジネスも大変なわけですから、下請けの面倒まで見ることは出来ないでしょう。バタバタと潰れたり、商売替えをする企業が増えてくるでしょう。防衛省無策による倒産と失業者は既にでていますが、これが更に増えるでしょう。官製倒産、官製失業が増えるでしょう。
 
 このような様子を横目でみていれば、明日は我が身と思う経営者も少なくないはずです。
 まともな経営者ならこの商売から足を洗うことを考えるでしょう。ですが、中小企業ほど防衛省の需要に依存していますから、撤退は難しい。前門の虎後門の狼という状況です。

 アパッチのラインは廃棄しないと税金がかかります。廃棄すれば損金が計上され、富士重工経営陣は株主から責任を問われるでしょう。最悪の場合株主代表訴訟の対象になるでしょう。

 またアパッチのメーカーであるボーイングも楽しいはずがありません。
 今後同様のトラブルに備えて日本向けの価格に「サブプライム」を載せることになるかも知れません。他の外国のメーカーにしても同様の行動に出るかも知れません。

 防衛省や陸幕にはその意識が薄いかもしれません(その意識があったらまともな調査や関係者の処罰をしているでしょう)が、アパッチの件は外国のメーカーに対して日本の防衛省との取引はリスキーとのイメージを作ってしまいました。換言すれば信用を毀損してしまったわけです。

 以前、空自の練習機でもインチキ不透明なコンペでピラタス社を落とし、富士に仕事を振りって問題になりました(当時、民主党の故石井紘基が国会で追及しました)。防衛省の関係者はあのときも平気だったから今回も平気だろうと、高をくくっているのでしょう。


 つまり内外の信用を失っているわけです。これはきわめて深刻な状態なのですが、防衛省のエライひとたちはそのようには思っていないのでしょう。

 よくも悪くも、取りっぱぐれと喰いぱぐれがないのが無いのが、防衛産業のメリットでした。それが怪しくなりつつあります。ところがそのような現状がなくなりつつあます。
 
 横浜ゴムや住友電工のように余力のある企業は足下が明るい内に逃げ出します。

 富士重工も防衛産業から撤退するのでは無いでしょうか。空自の練習機の調達も終わり、アパッチは調達中止だと、めぼしいプロジェクトはありません。陸自のUH−1の後継であるUH−Xは事実上川崎重工のOH−1の改良型に決定というのが業界のもっぱらの噂です。

 仮に富士が参加できるプロジェクトがあっても、株主が参加を許すでしょうか。経営陣はアパッチと同じ結果にならないと保障はできないでしょう。
 
 民間機部門ではボーイングの787の生産は遅れており、同社が主翼を納入していたビジネス機メーカー、エクリプス社が昨年倒産、富士重工業は売掛債権、出資金などで合計93億円の負債を負いました。
 同社は昨年の横浜航空宇宙展で自社独自のビジネスジェットのモックアップを展示していましたが、このような状況で自社開発は絶望的でしょう。

 これらの材料を見るに、富士重工が航空宇宙事業から撤退可能性は低いとは思えません。

 となれば、恐らく川崎重工、あるいは三菱重工あたりに事業譲渡というのが現実的なところではないでしょうか。
 
 その他ユーロコプターやアグスタ・ウエストランドあたりが、手を挙げる可能性も無いとは言えないでしょう。武器禁輸の問題がありますが、BK−117同様、汎用ヘリの生産ならOKでしょうし、今の流れからいえば規制も緩和される方向にありますから、まったく実現が不可能という話でもないでしょう。

 富士重工の防衛航空産業からの撤退が現実となればこれは我が国の防衛航空産業の再編の直接的な引き金になると思います。




小型ジェット機マーケット参入−富士重工の悩み
http://kiyotani.at.webry.info/200512/article_9.html

−国内ヘリメーカー統合の序曲になるか−全日空のヘリ整備部門、ユーロコプターが買収
http://kiyotani.at.webry.info/200906/article_5.html

スクープ 住友電工 防衛航空産業から撤退
http://kiyotani.at.webry.info/200906/article_10.html

【防衛産業再編の足音】横浜ゴム航空用タイヤ(自衛隊向け含む)から撤退。
http://kiyotani.at.webry.info/200904/article_1.html

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
多分また防衛省の内局は自分が責任を取らずに済むようになるまで保留し続けるという官僚特有の責任逃れですね…。宮崎駿の風たちぬが面白いですね…。堀越二郎の伝記ですけど
ラジオランチ
2009/08/14 09:04
防衛産業も変わっていくかもしれませんね。
長田ドーム
2009/08/15 15:57
調達を途中で打ち切るのは、アメリカで多いですが、どのような制度になっているのでしょう?
K
2009/08/15 19:55
アメリカの予算のシステムも複雑です。基本的に米国以外でもそうですが、開発、生産の契約は異なってもこれを同一のプログラムと認識し、総額を設定しておく場合が多いようです。ですから開発費がかかりすぎると、調達数がカットされたりします。
キヨタニ
2009/08/16 11:16

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