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zoom RSS 防衛産業の落日

<<   作成日時 : 2009/06/14 12:45   >>

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6月11日付けの「朝雲新聞」に、「防衛産業 中小企業の撤退相次ぐ」という記事が掲載されています。

 記事によると防衛省が行った聞き取り調査では、戦闘機関連では約20社が事業から撤退、もしくは撤退を検討中で、装甲車輌でも13社が倒産、35社が廃業、事業からの撤退、生産辞退に追い込まれ、その他自己破産した企業もあるそうです。

 実はF―2の主要コンポーネントを製造している某住友系の上場企業も事業から撤退を決めています。その会社の広報はこれを認めていません(意図的ならば株主に対する背信行為になると思いますが)。
 恐らく撤退を決意しても発表していない企業は他にもたくさんあるでしょうし、今後撤退する企業は増えていくでしょう。

 ぼくが長年にわたってこのような事態を予見し、警告してきましたが、業界も防衛省もあまり危機意識をもってきませんでした。
 
 最近になってようやく防衛省も事態の深刻さを認識してきたようで、記者クラブを対象としてメーカー視察ツアーを組んだりしております。

 ところが防衛記者クラブにはこの種の話に興味を持っている人間は少ないようで、参加者が少ないようです。

 むしろ、経済関係の記者やぼくらのようなフリーの人間に声をかけた方が参加者が集まるでしょうに。まあ、記者クラブ制の弊害といえばそれまでですが、まだ防衛省に危機感が足りないともいえるでしょう。

 防衛産業は「産業」と思われていないし、特殊だから経済誌や経済担当記者があまり興味を持たない。かといってマニア雑誌では調達のことをあれこれ書いても読者の受けが悪いのでなかなか記事にならない。FXでも問題になるのはエアフレームとして性能だけです。

 さて、このような事態になった直接の原因は装備調達費の削減が大きいわけです。

 ですが、根元的な問題は業界大手が統合再編を先送りし、現状維持に汲々としてきたところにあります。たとえば航空機は4社、ヘリは3社など、市場規模より多くの企業が存在し、それぞれも細々と発注しているから、仕事量がまとまらない。

 官にしても産業側にして輸出できないから不効率はしかたないと開き直ってきました。で、本来できる合理化なども怠ってきたわけです。農業同様に保護産業がいかに不効率になるのかの典型的な例となっております。

 大手企業の防衛部門はだいたい数パーセント程度程度ですが、下請け企業は防衛産業への依存率が5割を越しているところも少なくありません。

 つまり、重工各社のような大手は所詮防衛産業部門は片手間ですし、企業としての体力がありますから、何とかしのげるでしょうが、下請け企業はそうではない、ということです。
 太った人間が多少食べなくてきも痩せるだけですが、痩せた人間が食べないと餓死してしまいます。

 大手が我慢比べをしている間に、オンリーワンの技術を持った下請けが、次々に倒産したり、撤退していているわけです。還元すれば大手がしょうもない現状にしがみつくことで、技術をもった下請けが次々とつぶれているわけです。大手主契約企業が防衛産業をつぶしているといっても過言ではないわけです。
 
 処方箋としては、まともな競争もせずに数だけは多い主契約社を減らすしかありません。

 いつもいっていることですが、武器輸出規制が緩和されても、それは特効薬にはなりません。
 いまの競争力が皆無の状態で、たちまち日本製の兵器が世界で引く手あまたになって、V字回復ということはありえません。
 
 大手が漫然と防衛産業部門を維持しようとすればするほど、下請け企業が姿を消していき、防衛装備生産の基盤が崩れていくことでしょう。

 しかもその大手も、儲からないわけですから、やがては社内や株主から防衛産業からの撤退を突きつけられるでしょう。
 たとえば小銃など作っている豊和工業にしろ業績はよくないわけで、工作機械大手の森精機の下請けをやっているような状態です。今年度の89式のまとまった発注がありましたがこれは、需要の先食いです。しかもこの景気です。同社が防衛産業から撤退することもある得るでしょう。

 防衛省が何故に業界再編を放置してるかといえば、天下りがあるからです。主要企業が4社から1社に減ると天下りのポストが減ります。
 ところが天下りになり得ない下請け企業がいくらつぶれても自分たちが直接困るわけではありません。業界再編が進まないのはこのあたりの事情も大きいでしょう。
  
 現状は外国で100円で買えるものを、500円で作っているようなもので、効率が悪いわけです。
 
 主契約社を絞り、量産すれば単価が下がり、同じ予算でも、より多くの仕事量が確保できるわけです。前からいっているように改革には「涙」と「血」を流す必要があります。ところがそれを避けてきた。
 
 防衛産業の衰退を招いているのは、当事者能力も将来の展望もなく、現状維持と問題先送りを行っている防衛大手と、防衛産業振興を単なる天下り先の確保ぐらいにしか考えていない官側の意識の低さです。

 また高い技術力を持っているにもかかわらず、防衛産業に関わると企業イメージが悪くなると思っている企業が結構あります。今後はこういう既存の防衛産業以外の企業を引き込めるような政策も必要です。

 いままでの慣習や「常識」にとらわれない改革をしないと防衛産業はつぶれるでしょう。



 ぼくの書いた政策提言です。

東京財団委託政策提言
「国営防衛装備調達株式会社を設立せよ」
http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2005/01023/pdf/0001.pdf

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
防衛産業も淘汰されていくのでしょうかね
長田ドーム
2009/06/14 13:27

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