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zoom RSS 国際航空宇宙展2008その2 US-2は必要か。

<<   作成日時 : 2008/10/06 23:26   >>

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 さて、新明和のUS−2です。
こちらの民間転用で売り出したいというのはメーカーの深刻な台所事情があります。
 防衛省の予算に示されているUS−2の海自の収得コストは一機あたり約70億ですが、これに官から支給されたコンポーネントや装備を組み込んだ実際の価格は約100億円だそうです。

 US−2はUS−1Aに比べて耐用年数が約1.5倍に増えているそうです。このため調達は隔年となる予定です。二年で1機を生産することになり、つまり生産レートはUS−1Aの半分です。しかも寿命が長い分、補充される機体数もすくなくなります。
 US−2では改良を加えたために、US−1Aよりも事故を起こす可能性が低くなっているとのことで、この点からも海自の追加発注の可能性が減っています。

 新明和としてもラインの社員を遊ばせておくわけにはいきません。その点からも海自以外の顧客獲得という話になり、民需や対外セールスというわけです。ところが海外へはそう簡単に売れません。値段も値段です。それは新明和も重々に承知しています。
 「性能が優秀だから世界で引く手あまたで売れるだろう」というのは飛行機オタクの妄想に過ぎません。当の新明和にしても厳しい現実はわかっています。FAAの型式証明をとるのにも巨額の費用がかかります。それは新明和全社の売り上げからみてもかなりきつい負担です。しかも型式証明をとっても飛行機が売れるとは限りません。

 消火用ならキャビンの与圧はかならずしも必要ありません。ですから新明和では与圧を省いた型も検討しているそうです。ですが再設計や試作にこれまた金がかかります。

 一機百数十億円(開発費を乗せるならば更に高くなります)、しかも通常の飛行機に比べて飛行艇は維持費は高く、寿命は短い。つまり調達にも維持にも莫大な金がかかるわけです。そんな大金をだせる国はそうそうありません。
 個人はともかく(俳優のジョン・トラボルタ氏のように趣味でジャンボを購入したりする酔狂な人はいますが)、政府機関やエアラインは費用を無視して性能だけで調達を決めたりはしません。常に懐と相談し、費用対効果を考えます。

 例えば南アは山火事が多いですが、同国の消防は西側のヘリが高いためにミル17などを使用しています。その程度の予算しかないわけです。

 新明和は国内では消火や救難として国交省など防衛省以外の官庁国内に採用を期待しているそうです。で、運用自体は海自が担当する。そのような絵を描いているそうです。
 ですが「諸君!」で書きましたが、海保の予算が(人件費も込みで)年間約1600億円、消防庁はその10分の1の約160億円に過ぎません。そのようなスキームはあまり現実的ではないでしょう。

 一番現実的なのはODAでしょう。例えばアフリカ全土に展開できるようにビクトリア湖やタンガーニカ湖あたり、あるいはインフラの整っている南アあたりに基地を設けて日本が運用する。費用はすべて日本持ち。
 山火事がおこればアフリカ全土にそこから出かけていく。このような長駆を前提とするならば運用ならば与圧キャビンは必要でしょう。淡水湖で運用すれば塩害がないぶんだけ保守費用が減り機体寿命も延びるでしょう。もっともそこまでして大型飛行艇が必要かという話にもなります。

 ただ、目立つ機体ですから横っ腹に大きく日の丸を描いて運用すればODAやっていますという宣伝にはなります。要員は海自のOBを雇えばいい。まあ使わない火力発電所とかハコモノに金を使うよりはインパクトもあるし、賄賂が介在する可能性も減るでしょう。ODAのより効率的な使い方と言えなくもありません。

 US−2が優れた機体であり、有用ではあるとも思います。ですが費用対効果を考えた場合「いい機体」ではないと思います。ぼくはそこまでしてUS−2を残す必要があるかどうかは極めて疑問であると思います。

画像

「量産型」はこのような塗装になるそうです。


国産旅客機MRJ飛翔
大和書房
前間 孝則

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コメント(26件)

内 容 ニックネーム/日時
難しいですねー。でも、割合私はUSシリーズに好意的です。この手の機体は世界のどこにもないので、人類の技術遺産を残すためにあっても悪くないような気もします。まあ、費用が費用なワケですが、技術は一度途絶えてしまうと復活が難しいですし・・・。ODA用として生産して、各国の海難救助や消火用に運用するというのは悪くないアイデアだと思います。日本の政治宣伝として考えれば負担も応分な気がしますし・・・。
ドラゴン山崎
2008/10/07 00:05
せっかくの飛行艇、OD色に塗装して欲しかったな・・・
アッー
2008/10/07 23:02
散水飛行機として中国砂漠地帯に売り込むとか
ななし
2008/10/10 18:52
予言しよう。飛行艇の時代が復権する、と。

ロシア海軍航空隊は捜索救難飛行艇A-42を調達する
http://rian.ru/defense_safety/20080905/150986919.html
"В будущем мы планируем закупать А-42 и в противолодочном варианте"

なおこれはBe-12チャイカ飛行艇を代替する物。
7743
2008/10/11 22:49
>一番現実的なのはODAでしょう。例えばアフリカ全土に展開できるようにビクトリア湖やタンガーニカ湖あたり、あるいはインフラの整っている南アあたりに基地を設けて日本が運用する。費用はすべて日本持ち。

でそれはいくらぐらい掛かるの。
巫女の竜
2008/10/12 11:27
 確認させていただきたいのですが、キヨタニさんが仰りたいのは「US-2“消防飛行艇”は必要か」ということなんですよね? まさか救難飛行艇としてのUS-2まで否定されてるわけではありませんよね。

 US-2は消防飛行艇としてはオーバースペックだろうとワタシは思いますが、我が国の地勢や国情を鑑みるに救難飛行艇という機種そのものは必要だと思いますよ。
KWAT
2008/10/17 16:40
救難飛行艇も必要ありません。一機100億円プラス開発費を掛ければ極めて高価な機体です。しかも飛行艇は耐用年数が短いために定数を維持するためには定期的に調達する必要もあります。
既存ヘリのSAR型を調達する方が合理的です。
P3Cですら予算がなく、機体の共食いでしのいでいる状態でそんな支出が合理的でしょうか。
年収200万円のサラリーマンがベンツのステーションワゴンを買うようなものです。

たとえばあなたが、月収30万円で、現在月10万円のマンションに住んでいるとしましょう。便利だからと会社から徒歩5分、20万円のマンションに住み替えるでしょうか。
救難といっても1機あたり海保の予算の1/16ですよ。

そんな予算があればもっと必要な装備はいくらでもあります。逆に飛行艇を買うために本来必要な装備や支出を犠牲にしているとも言えます。
キヨタニ
2008/10/17 19:32
あのですね、US-1とかが救難依頼される状況って、ヘリでは航続距離が足りない、船では遅すぎるという海上とか飛行場の無い離島とかでは人命救助においては切迫した最も困難極まる状況なんですよ?
これまでもUS-1だからこそ助かった命があった事実は無視するんですか?
ヘリじゃとてもじゃない距離を飛んでいって何人もの尊い命を救ってきた実績は?
空自のパイロットやP-3Cの乗務員には、「おまいら軍人なんだから死んで当然だ、そんなおまいらにかけてやる金は無いから救難飛行艇は廃止だ」と説明するの?
救難飛行艇があれば助かった事例があった場合、どう釈明するんですか?
ガンヘッド
2008/10/28 00:39
発言の趣旨はわかりますが、それは感情論です。

役所の予算には限りがあるわけです。その中でやりくりするしかないわけです。

何故海自よりもむしろ飛行艇が必要であろう海保がUSー1やらUS−2を採用しないか。予算1600億円の海保が常時3機ほどのUSー2を可動させるならば5〜7機程度。つまり500〜700億円必要です。更に高額な運用コストがかかります。塩害で寿命が短いから何年かに一機づつぐらいのペースで調達も続けなくてはなりません。ヘタをすると飛行艇の導入で海保の予算の半分ぐらいが吹き飛びます。
 
 費用対効果を考えればUS−2は明らかにそぐいません。
 
キヨタニ
2008/10/29 10:30
他国の救難システムでは助けられない状況においても、それらが可能な装備や技術、組織があるのに費用対効果を考えて放棄しろと?

>何故海自よりもむしろ飛行艇が必要であろう海保がUSー1やらUS−2を採用しないか

何トンチキな事言ってるんですか?
それとこれとは別でしょう?
ハナシをすりかえられても困ります。
元々のUS-1やUS-2の本来の任務は無視なんですか?
海自にはどうしても必要だから常に即応体制をとって装備、運用しているだけです。

それに貴重な人命はもとより、戦闘機パイロットやP-3C乗組員のようなスペシャリストを、一人前にするまでに莫大な時間とコストをかけた貴重な人材を失うことがどれだけの損失なんてことが分からないんでしょうか?

あ、それとUS-2を廃止したときの代替え案とかも、もちろんあるんでしょうね?
救難飛行艇を使わなくても低コストでこれまで同様の仕事ができる素敵プランがw。
ガンヘッド
2008/10/29 15:09
ご自分の信じるものを信じればよろしいのではないでしょうか。

>これまで同様の仕事ができる素敵プランがw。

あなたは何様のつもりですか。単なるバカですか?

匿名の人間に本名を出している人間が回答しているのに、

>w
ですか。

人に意見をいうのならば人間としての最低限の礼儀は守りなさい。仮にあなたの主張が正しいとしてもそんな態度では人から相手にされませんよ。

匿名で人の悪口をいいたいならばそういう卑怯者に相応しい場所にどうぞ。ここはそういう人が来る場所ではありません。悪しからず。
キヨタニ
2008/10/29 16:53
キヨタニさん、こいつについてどう思います? コメントくださいな。

ロシア海軍航空隊は捜索救難飛行艇A-42を調達する
http://rian.ru/defense_safety/20080905/150986919.html
"В будущем мы планируем закупать А-42 и в противолодочном варианте"

なおこれはBe-12チャイカ飛行艇を代替する物。
7743
2008/10/29 21:22
キヨタニさん、こいつについてどう思います? コメントくださいな。

ロシア海軍航空隊は捜索救難飛行艇A-42を調達する
http://rian.ru/defense_safety/20080905/150986919.html
"В будущем мы планируем закупать А-42 и в противолодочном варианте"

なおこれはBe-12チャイカ飛行艇を代替する物。
7743
2008/10/29 21:22
清谷先生、たった一文字のネットスラングに
お怒りになるは大人気ないですよ。
それよりも、その方が質問されている事
「膨大なコストを掛けたスペシャリストである人命」
(そうでなくても人命は貴重なものですが
先生がおっしゃる「費用対効果」という意味でも
より一層重要な要素だと思います)
の損失を防ぐと言う意味での
救難飛行艇に対する、有効且つ具体的な
代替案に関するご意見を
お聞かせ願います。
(第2次大戦当時、連合軍が飛行艇を用いて
パイロットに対する救難体制を充実していた事による
優位性を思い出しました・・・)
ぶり
2008/10/30 02:19
他国同様にヘリコプターを使用すれば
宜しいでしょう。自衛隊で使用している既存の機体、例えばUH−60やAW−101を使用すれば訓練や整備の共用化もでき、運用コストが下がります。

キヨタニ
2008/10/30 13:32
US-2の調達については、一括調達などによる価格低減の工夫は必要だと思います。

ところで、キヨタニさまは、専門家なので十分ご存じかと思いますが、ヘリコプターでは本土から救難に向かった場合、沿海しか対応できないかと思います。もちろん、付近に海自の護衛艦がいれば話は別ですが。

実際、かつて三沢のF16が墜落した際は、US-1でなければ救助はできなかったと米軍も評価していると思います。

キヨタニさまとしては、ヘリコプターの進出限界を超えた場合は、救助を断念した方が良いというお考えなのでしょうか。

また、逆にヘリコプターの進出限界までしか、作戦用航空機は進出される必要がないというお考えなのでしょうか。
フェリ
2008/10/30 20:29
>US-2の調達については、一括調達

これをするとその期間が過ぎると、後新明和のラインが維持できなります。
そこが問題なわけです。US−2が毎年5機とか10機とか生産されれば、生産コストは恐らく半分程度にはなるでしょう。ところがその需要がないわけです。
カローラにしてもあれだけ量産するからあの値段なわけです。あれを毎年10台だけ生産するとかなれば単価は億単位になるでしょう。ぼくの主張はカローラに
1億円払いますか、ということです。

進出限界に関しては他国同様空中給油機を使用すれば解決します。実際空自のC130はそのように改造されることになっています。
キヨタニ
2008/10/31 10:21
なるほど、ヘリコプターの活用ですか。
そういえば米海軍なんかは、作戦海域に
艦艇や給油機をきっちり配備して、ヘリによる救難体制を万全のものにしていそうですね。
では日本の場合も、海上自衛隊と緊密に
連携をとって作戦海域にヘリ搭載艦艇や
空中給油機を配備しておくと言う訳ですか。
あ、でもヘリ発艦や空中給油が困難な悪天候の場合はどうするんでしょう?
まぁ悪天候が相手では飛行艇であっても着水は難しいでしょうが・・・
ぶり
2008/11/01 02:34
コストパフォーマンスに優れている、あるいは絶対に必要ならば世界中の軍隊がもっとSAR用として飛行艇を使用しています。そうならないのは何故か、という視点で考えては如何でしょうか。
キヨタニ
2008/11/01 14:56
>カローラに1億円払いますか、ということです。
これって本気で言っているのですか?
世界中に「同様の性能を持つ飛行艇」が幾多もあるという前提ならハナシも分かりますが、カローラと比べるって(笑
ホント大丈夫ですか?
ガンヘッド
2008/11/03 00:54
>空中給油機
素晴らしい案ですね。
ですがそれには救難ヘリと空中給油機を常に一機は基地に即応体制で配備させないといけませんので、整備や予備機の事も考えると、最低でも3〜4機の専用空中給油機が必要ですね。
空自に頼るとしても海自に機体をまわす余裕は無いと思いますが。
あ、でもC-1のみならずC-130の後継としてC-Xを早期に大量生産する事で、機体寿命に余裕のあるC-130を海自専用給油機として運用するのはいいかもですね。
ただし、コストパフォーマンスに優れるてはとても言えませんが。

>世界中の軍隊がもっとSAR用として飛行艇を使用しています。

陸から1000海里離れた外洋まで進出し、波高3mもの荒波でも着水でき、2時間も救難活動したうえで基地まで帰投できる飛行艇を造れるのは日本だけです。輸出もしてませんしね。
これほどの能力を持った飛行艇でないと遠距離での外洋においての救難作業はできません。だから他国はしていないのでは?
ガンヘッド
2008/11/03 00:56
人様に罵声を浴びせておいて、謝罪することもなくコメントを続けるという神経がよくわかりません。

あれこれコメントをなさる前にご自分の常識をまず疑ってはいかがでしょうか。
キヨタニ
2008/11/03 16:12
防衛庁が採用する機体は全てこの種の非難は免れないでしょうね。 田母神空将
の論文の件についても同様です。 彼の行動が正しいとは金輪際思っていませんが、彼らをコントロールすべき政治家連中は今まで何をしてきたのでしょうか。
シビリアン・コントロールとは政治家が群をコントロールすることだ、と言ったきたのは政治家ではなかったのですか。
海洋哨戒機にしても輸送機にしても、肝心のところが手抜きになっています。
あほか!!!!
キューちゃん
2008/11/16 19:42
>人様に罵声を浴びせておいて

罵声って・・・、もしかして本人のブログなりHPに記述しなけえば何を言ってもいいということなんでしょうか?
それは自身の鏡返しということは自覚していますか?
それとも自身の主張が否定される発言がなされる=「罵声」という短絡的な思考しかできないのでしょうか?
私としては、自身の提案が正しいのであれば、もっと論理的み否定なりして欲しかったのですが残念です・・・。
ガンヘッド
2008/11/29 13:16
SH-60J シーホークが約60億なので、US-2 100億は高いようには思いませんが。。。
沖縄方面での作戦が課題と言われる中、外洋でのレスキューとしてUS-2は有用と思われます。
他国で同様の機種がないのは、人命第一の先進国で海洋国家が無いからでしょう。
米海軍は強力な海軍艦艇部隊にて、悪天候時には航空機でレスキューキットを運び、天候回復後にヘリで救助する。というシナリオですから。
とみぃ
2011/02/07 03:52
日本が島だけで成り立っている広大な海洋国家であることを
お忘れのようですね。

>あなたは何様のつもりですか。単なるバカですか?
>匿名の人間に本名を出している人間が回答しているのに、
ところで、本名を出すことに何か優位性でもあるんでしょうか?
大嶋 真矢
2011/03/17 01:00

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