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zoom RSS マイケル・ムーアの「シッコ」を見る

<<   作成日時 : 2007/09/18 23:40   >>

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 昨日マイケルムーア監督の「シッコ」を見てきました。
 
 国民保険がない米国のシステムと加入者を食い物にする保険会社を糾弾するといった映画でした。

ぼくも米国の現在の保険システムは酷いとは思いますし、企画の目の付け所は宜しいと思います。
 惜しむらくはこれがプロパガンダ的に偏りすぎているところです。

映画では米国と対比させるために、カナダ、英国、フランス、キューバなどの国民健康保険のシステムを紹介するわけですが、これらの国々のシステムがバラ色一色に描かれているわけです。

 例えば英国で肩を脱臼した旅行者の米国人の男性が、無料で治療をしてもらったりするわけですが。これなど俄に信じられません。ぼくはいつお金を払っていました。また、GPと呼ばれる地域の医療センターでは結構待たされるし、医師の質も高いとは言えません。
 日本人で偏頭痛がすると医者に言ったあれこれいじられて、かえって体調がおかしくなって足を切断する羽目になったという日本人もいるそうです。ですから金持ちは自由診療の医者にかかります。
 最近では医師不足でポーランドやチェコなどから医者を「輸入」しております。

 フランスも同様で、フランスは手厚い保護の分税金が高いけど説明しつつ、映画に登場するのは高収入のアッパーミドルの夫婦。医療費も教育費も金がなからない、金を使うのは食費とバカンスだけという感じで紹介しています。

 これも嘘で、大多数のフランス人の暮らし向きは慎ましいですよ。しかも税金はかなり高い。映画のような人間が多いなら何でパリの郊外であんなに暴動が起こるんですか。

 医療がタダだと思うとやはりかなり無駄が出てくるし、また医療関係インセンティブが働きにくい、結局不効率になりやすくなります。まあ、それでも米国よりはどこでも遙かにましなシステムであります。

 それにキューバでは最新式のMRIが「ごく普通の設備」として登場しますが、キューバでつくっているはずもなく、外貨が不足しているキューバが早々導入できるものじゃないでしょう。
 ムーア監督のプロパガンダにキューバ政府が乗った形でしょう。

 確かにアメリカの現状は酷いことに異論はありませんし、国民医療保険の導入も必要でしょう。

 ですが、国民保険を導入している国が何の問題もないかといえばそんなことはないわけです。比較的成功している我が国でさえ多々問題を抱えているわけです。またここで紹介された各国でこの映画を見た人はかなり違和感を感じるでしょう。これはどこの国の話だ?と。
 
 かつて東洋の島国でも自国を貶める、あるいは批判するために周辺の共産国を礼賛するメディアや文化人が多くおり、世論が少なからずミスリードされました。
「北朝鮮は労働者の天国」とか「文革は人類の偉大な実験」とか「ソ連の核は良い核」だとか。

 ムーア監督はアメリカ人のおつむはその程度と考えているのでしょうが、こういうあまりにカリカチュアした、客観性を排除した作品は長い目で見ればマイナスのような気がします。攻めてスパイス程度でいいから、諸外国の抱える健康保険の問題点を紹介すべきだったと思います。
 
 企画やアイディア自体は面白いだけに残念です。

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コメント(14件)

内 容 ニックネーム/日時
>医療がタダだと思うとやはりかなり無駄が出てくる
美濃部都政で老人が病院や医療所の溜まり場になり他の患者の診断に支障を来たしたのはその典型例ですね。
へろ
2007/09/19 00:15
タイでは30バーツぽっきりの医療制度ができましたが、病院の負担が大きいようで、薬は売薬程度です。金があっても30バーツ制度を利用し、病状を診察してもらって薬局でまともな薬を買うという「賢い中国系」も多いです。しわ寄せ行きますね。
unimaro
2007/09/19 01:48
The All:この夏休みに、限界集落(政治用語)で発生しているハンデキャップ(心身障害者では無く、全ての人間が生から死までに遭遇するハンデの意味。地域格差もハンデキャップと捉えるべし!)のボランテア活動を行った。マイケルムーア監督の「シッコ」は、日本社会の深刻な問題でもある。年収¥100万円にも満たない大和新世代とは、現在の保険料(国保)を支払えない奴隷階層なのだ。 日本の社会劣化は、労働市場化の前に労働法不備是正を行わなかった小泉政治の負の側面である。厚労官僚の粗雑な労務行政が引き起こした「シッコ」
現象だと労務上から指摘す。
guest
2007/09/19 07:41
 言語学者のチョムスキー氏もムーア監督と近いタイプの人ですね。自国を貶めるためにチョムスキー氏がポル・ポトマンセーをしていたのはあまりにも有名です。しかもポル・ポト賛美をしたことを彼は隠しています。
 チョムスキー氏やムーア監督のような人が一番多い国はやはり日本なのではないでしょうか?彼らは自国を貶めるために自分たちの頭の中で美化した共産国を利用した訳ですが、近年の彼らは共産国賛美抜きで日本をおとす方法の模索に必死ですね。「慰安婦慰安婦」と喚くのも「格差格差」と喚くのも彼らなりに必死で模索した結果でしょう。
 彼らに「戦前の日本や、敗戦直後の日本は今の日本よりも悲惨ではなかったのか?開発途上国や中国内陸部の農民などは今の日本のネットカフェ難民などよりはるかに悲惨ではないのか?」と議論をふっかけたことがリアルでもネットでも私はありますが、彼らは必ず「今の日本が一番悲惨なんだ!比較の対象が何処にも無いほど悲惨なんだ!ギーッ!」と火病を起こします。
きるすてん
2007/09/19 09:40
 ロジャー&ミーのころに比べると、マイケルムーアも終わったなと印象を受ける。

 たしかに、世論に社会問題を提起する上である程度評価はできるが、ロジャー&ミーのころのようなリアリティや客観的な手法はもう望めないでしょう。

 まず日本の医療問題が一切でてこず、 医療と国の財政は密接に絡んでいる中で、フランスにしても国の財政がどうなっているか、まったくそういう問題が出てこなかった。都合のいいとこだけ取り出し、そこを強調していたわけだが、アメリカ人のおつむを考えたら、あの程度で上出来だったんでしょう。

 それでも、ブッシュをたたくことで満足するような政治的プロパガンダ映画よりはマシだし、ボーリングフォーコロンバインのような手法に戻りかけているが・・

どこかで変わらないと危険な映画になっていく
ソクラテス
2007/09/19 09:41
 高校時代に背伸びして読んだ精神医学書に、精神科の患者で「貴方よりもひどい症状で苦しんでいる人は大勢います」と医師にいわれると「私の症状が一番ひどいんです!一番悲惨なんです!」と火病を起こす者が時々いると書いてあったのですが、格差格差と喚く連中と酷似しているような気がしてなりません。
 ムーア監督やチョムスキー氏を彼らと一緒にするのは何ぼなんでも失礼でしたね(笑)。すみません。
きるすてん
2007/09/19 09:46
 内政の失敗の矛先を歴史教育で刷り込ませて、歴史を政治的に政府は利用して日本をたたいてガス抜きを図ろうとする神通力もどこまで通用するか、半島もシナも日本も少しは貢献したんだよといっただけで、袋たたきにされるくらい、思った以上に危険な反日教育は深刻ですから。
ソクラテス
2007/09/19 09:49
アメリカなんて、移民が大量に入ってくるから保険制度なんてつくったら財政破綻する
ggggggg
2007/09/19 22:50
基本的に貧乏人や新しい移民を食い物にしているのがこの国ですから、皆保険制度は国の成り立ち上無理なのかも知れません。
キヨタニ
2007/09/20 22:51
 そのアメリカより、中国より、北朝鮮より格差が酷いのが、現代の我が祖国、日本なんだそうです。民主党党首、小沢一郎によれば……貧乏人の医療費踏み倒しにより、病院の経営難が問題になっている日本のどこが格差社会なんだか。上記のような国々では、貧乏人は最初から病院に行けないし、行っても治療を受けられないというのに。

 健康保険の滞納が、国民皆保険制度を揺るがせているとしたら、弱者の最大の敵は、格差社会を作り出した国家ではなく、弱者自身なんじゃないだろうか。
土門見人
2007/09/20 23:20
土門見人先生へ: 年金世代を支えてい
る大和新世代の労働者賃金格差(¥100
万円以下/年収)、待遇格差、公租公課
格差なる労働のアンフエアーがあっては
ならないと、国際企業労務上から主張
す。 同一作業に、正規社員一人をリス
トラし、 非正規短時間労働新世代二人
に代替させ、労務費削減で、海外労務費
との格差を埋めよなる非文書通達国家労
働政策は、おかしいと思いませんか? 
経団連/同友会の猛烈な圧力に厚労働族
議員が屈し、労働法の粗雑部分改定を怠
っているとすれば、それは政治家の風上
にもおけないのだ。



guest
2007/09/21 06:36
ある討論番組で、コメンテーターが「日本のフェミニストやリベラル派は、スウェーデンの福祉制度を手放しで賞賛するけど、あの国が兵器輸出で儲けた金で福祉をやっていることを知らない」と述べていました。金は空から降ってこないで、どこからか作らなくてはなりません。綺麗事だけではすまない、光あるところに影があるということでしょう。光の部分だけを見て、影の部分を見落とすと物事の本質が見えなくなります。
シロ
2007/09/21 13:22
おいら、医者です。
パッと見、汚い格好でフリーターに見えるけど・・・って、ネットでは意味ないか。
で、結論から言うと、ぼちぼち日本でも皆保険が破綻するでしょう。
今後、診療報酬が下がれば、いよいよ病院経営は厳しくなります。
結果として公立病院から閉鎖され、民間病院は「差額ベッド代」で診療報酬の減った分をカバーする事になるでしょう。
結果的に医療費負担は上がります。
自動車なんか買ってるお金はありませんよ。

医師の給料?
実は最近底を打って上がってます。
だって、医師不足ですから。
足らぬものは上がるのです。
市場の原理で。
因みに看護師の給料も上がってます。
同じ理由で。
「輸入」?
やれるものならやってみなさい。
アメリカよりも給料が低くて、どうして英語を話すインド人や中国人の医師が日本語勉強してまで日本に来ると思います?
医師免許を共通化すれば、腕のよく、英語の出来る医師からアメリカに逃げ、かえって医師不足と給与の上昇を招くでしょう。
むしろ、その方がありがたいかも。
怪しい精神科医
2007/09/26 22:31
 こりゃ昔みたいに、日本医師会に政治力を持ってもらって、医師自身の力で現状を改善してもらう方法も考えるべきでしょうね。我々般ピーとしては、劇薬を飲む覚悟が必要でしょうけど。医師優遇税制くらいは、底入れしてやってもいいのかも知れません。
土門見人
2007/09/26 23:00

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